風雲児たち 蘭学革命篇

風雲児たち 蘭学革命篇

みなもと太郎の『風雲児たち』のエピソードの一つである、『解体新書』刊行の秘話を抜粋した特別編集版。江戸時代中期を舞台に、蘭学者の前野良沢や杉田玄白らが、西洋の医学書「たあへるあなとみあ」を苦心の末に翻訳する姿を描く。コメディ調ながら、学問への純粋な思いゆえにすれ違い、決裂に至る良沢と玄白の葛藤も掘り下げられ、蘭学者のみならず、林子平などほかの文化人の人間模様にも触れられている。

正式名称
風雲児たち 蘭学革命篇
ふりがな
ふううんじたち らんがくれぼりゅうしへん
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
 
時代劇
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あらすじ

第1巻

医者で蘭学者の前野良沢は、100日の長崎滞在を終えて江戸に戻るものの、目的だったオランダ語はほとんど習得できず途方に暮れていた。そんな折、学者仲間の杉田玄白が良沢を訪問し、小塚原の刑場で腑分け(人体解剖)が行われると告げる。腑分けを見学した良沢や玄白、中川淳庵らは、西洋の医学書「たあへるあなとみあ」の解剖図の正確さに驚嘆し、同書の翻訳を決意する。しかし、当時の日本の語学水準は貧弱であり、辞書も文法書もない状態での翻訳は困難を極めた。時を同じくして、勤皇家の高山彦九郎、海防思想家の林子平など、のちの幕末の動乱に影響を与える思想家達も活動し始めていた。

登場人物・キャラクター

前野 良沢 (まえの りょうたく)

中津藩の医師を務める中年の男性。長崎でのオランダ貿易によって伝えられた西洋の医学に、強い関心を抱く。学問への純粋な熱意を持っているが、しばしば感情を高ぶらせる悪癖がある。杉田玄白や中川淳庵と共に、「たあへるあなとみあ」の翻訳事業を始める。三人で白熱した議論を交しながら、徐々に翻訳業を軌道に乗せていく。しかし、完璧な翻訳を追求する良沢の理想主義は、玄白の現実主義と決定的な衝突を起こしてしまう。実在の人物、前野良沢がモデルとなっている。

杉田 玄白 (すぎた げんぱく)

江戸で蘭方医(オランダ式の医術を施す医師)を開業している中年の男性。前野良沢とは蘭学を志す仲間であるが、気性の激しい良沢をたびたびたしなめている。理想主義を掲げる良沢とは対照的に、合理的かつ現実主義的な考え方を持つ。「たあへるあなとみあ」の翻訳が難航する中、図版などをヒントに分かる部分から訳していく方法を提案し、作業を軌道に乗せた。しかし、作業が終盤に差し掛かった頃、「訳が完全でなくとも、早く世に出した方が医学に貢献できる」と主張し、完璧主義の良沢と対立してしまう。実在の人物、杉田玄白がモデルとなっている。

中川 淳庵 (なかがわ じゅんあん)

蘭学を志す医師の男性。前野良沢や杉田玄白と共に、刑場での腑分けを見学し、「たあへるあなとみあ」の翻訳作業に参加する。ややお調子者の軽い性格で、言い争いをする時は幼稚な語彙で罵倒する癖がある。良沢や玄白からは、あまり作業の役に立っていないと思われている節がある。実在の人物、中川淳庵がモデルとなっている。

前野 峰子 (まえの みねこ)

前野良沢の娘。偏屈で暴走しやすい性格の父親をたしなめる事が多い。「たあへるあなとみあ」の翻訳作業のためにやって来る良沢や杉田玄白、中川淳庵らの世話をしている。自由奔放な三人の言動に振り回される事も多いが、翻訳事業の完成を願い、傍で見守っている。実在の人物、前野峰子がモデルとなっている。

高山 彦九郎 (たかやま ひこくろう)

上州出身の下級武士である男性。かなりの大男で、生真面目ながら気性の激しい性格をしている。南北朝時代の英雄、新田義貞の子孫にあたると知り、勤皇思想に目覚める。その後、藩内で汚職の尻尾を摑もうとしていた父親が何者かに殺されてしまい、仇討ちを決意する。武者修行のために江戸へ上るものの、剣術の師範に仇討ちを止められてしまう。目的を見失って自棄になっていたところ、酒場で林子平と出会う。実在の人物、高山彦九郎がモデルとなっている。

林 子平 (はやし しへい)

下級武士出身の思想家である男性。幼い頃、父親が刃傷沙汰を起こして改易される。その後、姉の林なほが仙台藩主の側室となったため、林家は仙台藩士となった。しかし、次男坊である林子平は部屋住みの身分に過ぎず、充実感のない日々を送っていた。仙台藩の飢饉などの社会問題に接したのをきっかけに、学問を志す。日本各地を旅して知識人と交流した結果、政治や国防について独自の思想を持つに至った。志のために結婚はしていないが、よく遊郭に通っている。実在の人物、林子平がモデルとなっている。

林 なほ (はやし なほ)

林子平の姉。美しく優しい性格の女性で、幼い子平から慕われていた。仙台藩主の伊達宗村の側室となった事で、林家は仙台藩士に取り立てられた。藩主に嫁いでからも、子平から密かな慕情を受け続けていた。しかし夫と死別し、自らも35歳の若さで病没した。実在の人物、林なほがモデルとなっている。

平賀 源内 (ひらが げんない)

香川藩の足軽の出身である男性。発明家で、薬草や鉱石の研究家でもある。実業家の顔も持ち、絵画や歌舞伎の脚本、小説などにも才能を発揮した。浮世絵師の鈴木春信に、多色刷りの技法を教えた。朗らかな性格の自由人で、でたらめの外国語をしゃべって杉田玄白や中川淳庵をからかっていた。その才能は同時代の常識の枠にはまるものではなく、体制側の無理解に苦しむ事も多い。実在の人物、平賀源内がモデルとなっている。

鈴木 春信 (すずき はるのぶ)

江戸の浮世絵師で、中年の男性。平賀源内と懇意であり、多色刷りの技法を教わった。彼の描いた多色刷りの版画は「錦絵」と呼ばれて人気となり、後世の浮世絵ブームの先駆者となった。弟子の鈴木春重を源内に紹介するが、礼儀知らずの春重に手を焼いている。実在の人物、鈴木春信がモデルとなっている。

鈴木 春重 (すずき はるしげ)

鈴木春信の弟子である浮世絵師の若い男性。空気が読めず、失礼な事をさらりと言う悪癖がある。春信の紹介で平賀源内と出会った際、西洋画を見せられてその魅力の虜となる。源内を通じて前野良沢と出会い、翻訳した医学書の図版を依頼される。しかし、内臓や人骨の絵があまりにも下手で、別の絵師に依頼する事になった。実在の人物、鈴木春重がモデルとなっている。

田沼 意次 (たぬま おきつぐ)

老中として幕府の実権を握る老齢な男性。低い身分から出世したため、身分に囚われず優秀な人材を進んで登用した。幕政の行き詰まりに対して、工業や商業、外国貿易の推進などで対処しようとしている。平賀源内の才能を見込んで懇意にしているが、その開明的な思想から保守的な勢力を敵に回している。実在の人物、田沼意次がモデルとなっている。

佐竹 義敦 (さたけ よしあつ)

秋田藩の第八代藩主を務める青年。平賀源内の才覚を聞きつけ、銅山の再開発のために源内を秋田に招いた。一介の浪人に過ぎない源内に対しても、賓客として丁寧に接した。絵画を趣味としており、小田野武助と共に源内から西洋画の技法を教わった。これがきっかけで、秋田藩では西洋画の技法を取り入れた「秋田蘭画」というジャンルが生まれた。実在の人物、佐竹義敦がモデルとなっている。

小田野 武助 (おだの ぶすけ)

秋田藩士の青年。本名は「直武」だが、周囲の人達からは通称の「武助」で呼ばれる。平賀源内が秋田藩に招かれた際、藩主の佐竹義敦と共に西洋画の技法を習う。源内が江戸に帰ってからも彼を慕っており、義敦の計らいで江戸勤務となる。純朴な性格だがやや要領が悪く、思っている事がすぐに顔に出る事がある。写実的および立体的な絵を描ける事から、源内の推薦で「たあへるあなとみあ」の訳書の挿絵を描く事になった。実在の人物、小田野直武がモデルとなっている。

その他キーワード

部屋住み (へやずみ)

武士の次男や三男が、家督を継がずに実家に居候し続ける事を指す。武士の家督は長男が継ぐが、長男が死んだり男子に恵まれなかったりした場合に備え、次男や三男は家にとどまらなければならなかった。肩身の狭い居候の立場であり、部屋住みの武士のほとんどが結婚もできず、みじめな生涯を送る事となる。林子平は、仙台藩士の部屋住みという身分であったが、時間が有り余っている事を逆手に取り、学問を究める事を志した。

たあへるあなとみあ

長崎でオランダから輸入された医学書。前野良沢が長崎滞在の成果として江戸に持ち帰ったが、杉田玄白は「たあへるあなとみあ」を既に入手していた。良沢や玄白の見学した腑分けにおいて、西洋医学の正確さを実証した書物。辞書も文法書もない状況から、足かけ4年にわたる苦労の末に翻訳が完成し、『解体新書』として出版された。

ベース

風雲児たち (ふううんじたち)

徳川家康や石田三成などの関ヶ原の戦い時代の人物から坂本龍馬など幕末期までに存在し、日本の歴史を動かしてきた様々な偉人たちの人生を中心に、ギャグ漫画的な表現を使いつつ歴史を描く大河ドラマ漫画。 関連ページ:風雲児たち

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