概要・あらすじ
江戸時代。来年六十五歳を迎える赤松藩指南役・塚原右衛門は、後進に道を譲り、隠居することを考えていた。後継者候補に、杉田新八郎と柳左近がいたが、新八郎は人物は良いが剣が凡庸、左近は剣の天才だが邪心に溢れており、どちらとも決めきれないでいた。悩んだ末に右衛門は、蘭学医の緒方玄白の力を借り、新八郎の首を左近の体に移植しようとする。
登場人物・キャラクター
柳 左近 (やなぎ さこん)
剣の天才だが邪心にあふれた侍。師匠である塚原右衛門の後継者候補だが、邪剣であるという理由で、まじめな杉田新八郎と首をすげ替えられそうになる。右衛門に裏切られた左近は、その一人娘を犯したうえ、右衛門の右腕を叩き斬り、流転の旅に出る。押しかけ弟子である少年剣士・垢胴鈴之助と二人で旅を続けるが、やがて伊濃藩の謀反騒動に巻き込まれていく。
塚原 右衛門 (つかはら うえもん)
柳左近の師匠で赤松藩指南役。六十四歳。道場を後継者に譲り、隠居生活を送ろうとするが、後継者選びに迷う。悩んだ末にまじめな杉田新八郎の首を、剣の天才・柳左近の体に移植しようとする。計画は失敗し、怒った左近に娘を犯され、自らも右腕を斬られてしまう。復讐のため、旅先の左近を狙うが返り討ちに遭い、手足を斬り落とされてしまう。 それでもなお蛇含草という霊草で一命を取り留め、ヘビのような姿に変身。蛇腹剣法を編み出し、左近を付け狙う。蛇腹剣法のくだりは、平田浩史『血だるま剣法』のパロディだと思われる。
杉田 新八郎 (すぎた しんぱちろう)
塚原右衛門の弟子で、後継者候補の一人。申し分のない人格者だが、剣の腕前は凡庸で創意工夫にかける。後継者選びに困った右衛門によって首を切断され、剣の天才・柳左近の胴体に移植されそうになる。
緒方 玄白 (おがた げんぱく)
蘭学医。塚原右衛門の友人。右衛門に後継者選びの相談をされ、人格申し分のない杉田新八郎と剣の天才・柳左近を合体させる計画を授ける。
垢胴 鈴之助 (あかどう すずのすけ)
日本一の剣士を目指して武者修行の旅をする少年剣士。柳左近の剣捌きに一目惚れし、押しかけ弟子になる。お調子者でなれなれしく、女遊びが大好きな助平な少年。武内つなよし『赤胴鈴之助』のパロディ。
伊勢谷 久兵衛 (いせや きゅうべえ)
江戸日本橋で呉服問屋を営む。娘のお夏と旅をしており、柳左近らとは、船に同乗。やたらと秘所を見せてしまう娘のお夏に手を焼く。
お夏 (おなつ)
江戸日本橋呉服問屋・伊勢谷久兵衛の娘。十四歳のあどけない少女。寝ているときや風にあおられたときなど、何かにつけて意図せずに秘所を見せてしまい、父親はもちろん、周りの人間を狼狽させる。
雲丸 (くもまる)
幕府の隠密。伊濃藩の幕府転覆計画書を盗む。追手に追われる途中で、そこに居合わせた柳左近の懐に計画書を忍ばせる。計画書を取りに左近の宿に来るが、腕を斬られて退散する。
本出 勝守 (ほんで かつもり)
伊濃藩二十万石の藩主。将軍の名前を書いた藁人形をめった切りにするほど徳川家に恨みを持ち、幕府転覆を計画する。女郎買いが道楽で、大名行列で遊郭に繰り出す。
須毛田 助左衛門 (すけだ すけざえもん)
伊濃藩家老。藩主本出勝守に仕える忠実な部下。頑固一徹な顔をしているが、女好きで女郎屋に小菊というなじみがいる。
アオ
『鬼刃流転』に登場する馬。馬子に連れられている。柳左近に暴力馬子と因縁をつけられ、対決する。馬ながら剣術の心得があり、左近の弟子・垢胴鈴之助を圧倒する。左近に敗れるが、馬にしておくのは惜しいと言われ、みね打ちにされる。
源五郎谷の浅吉 (げんごろうだにのあさきち)
研究に研究を重ね、丁半博打に勝つ術を会得する。その術とは自らサイコロに変身するというものだが、大きすぎて役には立たない。ちなみに女房もサイコロに変身できる。