風音先生は飛騨くんがわからない

風音先生は飛騨くんがわからない

学業と仕事の両立のため多忙な女子高校生の漫画家、中津川風音が、同級生にして同業者の飛騨樹希と交流する中で、あきめかけていたふつうの青春を謳歌(おうか)する姿を描いた初恋物語。「comic POOL」で2021年6月から2022年5月まで配信の作品。

正式名称
風音先生は飛騨くんがわからない
ふりがな
かざねせんせいはひだくんがわからない
作者
ジャンル
作家・漫画家
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あらすじ

現役の女子高校生にして漫画家の中津川風音は、友人との付き合いや休日を返上し、初連載の仕事に打ち込む多忙な日々を送っていた。ふつうの女子高校生として青春を楽しむことをあきらめていた風音だったが、ちょっと気になる男子がいた。それはいつも眠そうな顔をしている、一風変わった同級生の飛騨樹希だった。風音は学校でトラブルに巻き込まれた際、樹希に助けてもらってから、彼のことをひそかに意識するようになっていた。そんなある日、日直で樹希といっしょになり、風変りながら思いやりのある彼に好感を抱いた風音は、生徒同士のカラオケ親睦会に、珍しく樹希が参加することを知り大興奮。カラオケ親睦会に参加するため、万全なスケジュールを立てた風音だったが、編集者のミスにより無念のドタキャンを強いられてしまう。数時間後、仕事を無事にこなした風音は、アシスタントの可児恵にうながされ、待ち合わせ場所へと向かう。ほかの生徒が全員カラオケに行った中、一人で待っていた樹希は、ドタキャンで申し訳ない思いをしていた風音を独特な言い回しで優しく慰め、キスをするのだった。樹希の意図がわからず、翌日以降、仕事や学業に集中できない状態となってしまった風音は、思い切って樹希にキスの真意を尋ねる。しかし、樹希のフワフワした言葉に振り回され、結局彼が何を考えているのかよく理解できないままだった。その後、打合せのために東京の出版社を訪問した風音は、そこで樹希と遭遇する。予期せぬことに驚く風音に対し、樹希は自分が新進気鋭の人気漫画家「わさびプリン」であることを告げるのだった。衝撃の真実を明かされた風音は、樹希に仕事を手伝ってもらったり、将来への不安を聞いてもらったりと、徐々に樹希との心の距離を縮めていく。その後、東京で開催されたサイン会を無事にこなした風音は、同行した樹希といっしょに束(つか)の間のオフを楽しむ。水族館を訪問した風音は幸せだった頃の家族の思い出を樹希に語る。「永遠なんてこの世にない」という持論を展開する風音に対し、樹希は「永遠はないからこそ人は思い出を大切にする」と返し、風音に交際を申し込むのだった。樹希の真心を受け取った風音はその申し出を受け入れ、苦楽を共有できる恋人同士として、二人だけの新たな青春の日々を歩み出すのだった。

登場人物・キャラクター

中津川 風音 (なかつがわ かざね)

とある高校に通う女子。前髪パッツンで紫色のロングヘアにしている。感受性が高く、生真面目な性格の努力家。現役の高校生にしてプロの漫画家で、ペンネームは「風間紫音」。少年漫画が好きで、中津川風音自身が描く漫画もその影響を受けている。月刊誌でファンタジー漫画「魔女の都」を連載しており、仕事と学業で二足の草鞋を履く多忙な日々を送っているが、どちらもいっさい手を抜くことはない。また、連載している漫画も好評で、学業の成績もトップクラスを誇っている。学校では漫画家であることを秘密にしているため、漫画制作の一部を休み時間中に隠れて進めたりしている。公私共に忙しいため、クラスメイトとの交流が希薄で、風音自身もふつうの青春を送ることをあきらめ、仕事に全力投球している。相談事はアシスタントの可児恵にしている。休み時間に漫画を描いていた時に複数の男子生徒にからかわれ、クラスメイトの飛騨樹希に助けてもらったことがあり、それ以来樹希のことが気になっていた。学校生活の中で樹希と少しずつ会話を交わしたことで、ミステリアスな樹希に徐々に惹(ひ)かれていく。さらに、東京の出版社に打ち合わせに行った際、樹希が売れっ子漫画家の「わさびプリン」であることを知り、仕事の手伝いなどを通じて互いの距離を縮めていくことになる。幸せだった家族が両親の離婚で離れ離れになった過去があり、そのせいで「何事にも永遠はない」という達観した考えを持っている。離れて暮らす姉の中津川琴音は大ヒットメーカーの有名漫画家「奏多はるか」だが、姉は姉、自分は自分という確固たる信念を持っているため、それを公言することなく隠し通している。また、姉妹仲は良好だが、自分を溺愛する琴音が過保護気味にベタベタしてくるのを嫌がっており、琴音には相談事もいっさいしていない。

飛騨 樹希 (ひだ いつき)

中津川風音と同じ高校に通う男子。柔らかな金髪ショートヘアで、赤いフチの眼鏡をかけている。少々のことでは動じないクールさと、おおらかな性格の持ち主。いつも眠そうにしており、けだるげな口調で話すのが特徴。大切なものは睡眠時間。風音のクラスメイトで、ほかの男子生徒に絡まれていた彼女を助けたことがあり、それ以来風音にとって気になる男子となっている。実は漫画好きなら誰もが知る売れっ子の漫画家で、ペンネームは「わさびプリン」。ただし、飛騨樹希自身は特に正体を隠しているつもりはない。初めて漫画を描いたのは小学6年生の時で、高校1年生の時のデビュー作「初恋アンチテーゼ」がそのまま連載作品となり、一躍人気者に駆け上がった天才肌。要領が非常によく、学校ではできるだけ低燃費で過ごすことを心掛け、帰宅後に全力で原稿を仕上げている。高校入学後に風音が漫画家であることに気づき、不器用ながら漫画と学業に全力投球している彼女のことをひそかに尊敬していた。風音に自分の正体を知られたあとは、漫画制作の手伝いをすることで彼女との距離を積極的に縮めていき、最終的に交際を申し込む。

池田 杏美 (いけだ きょうみ)

中津川風音と同じ高校に通う女子。ツインのお団子ヘアにしている。明るく世話好きでいつも笑顔を浮かべており、社交的な性格をしている。SNSでバスを生み出すのが得意で、PR案件でお金を稼いでいる、いわゆるインフルエンサー。大切にしているものはお金。多くの生徒から慕われ、あこがれの対象となっているが、肩書しか見ない周囲の人間にほとほと嫌気がさしている。そのため、一人でいる時にはどっと疲れが出て、言葉遣いもぶっきらぼうになってしまう。ここ最近は登校することに苦痛を感じていたが、池田杏美自身の素をさらけ出しても動じないクラスメイトの中津川風音となかよくなったことで、昔のように登校するのが楽しみになった。のちに風音と飛騨樹希がプロの漫画家であることを知り、風音にちょっかいを出す樹希から風音を懸命に守ろうとしている。風音と樹希が交際を宣言したあとも、可児恵といっしょに「風音を泣かせたら飛騨の命はない」と公言していた。

可児 恵 (かに めぐみ)

漫画家のアシスタントをしている女性。年齢は26歳。ショートボブで、眼鏡をかけている。生真面目で面倒見がいい性格をしている。中津川風音のアシスタントを務めており、その堅実な仕事ぶりで彼女の作品を裏から支えている。過去にさまざまな有名漫画家のアシスタントを務めてきたベテラン。PCを介したオンライン上で風音と仕事をしている関係で、プライベートな会話も頻繁にしており、風音の悩み相談にも乗っているよき理解者。風音が思いを寄せている飛騨樹希のことも聞いており、態度がはっきりしない樹希に対し業を煮やしている。樹希が有名な漫画家だと知り、風音のもとに仕事の手伝いに来た時は、彼に対して警戒心をあらわにし、現場にいた池田杏美に対して風音を守るようにお願いした。風音と樹希が交際を宣言したあとも、「風音を泣かせたら飛騨の命はない」と公言していた。

中津川 琴音 (なかつがわ ことね)

中津川風音の姉で、漫画家の女性。肩口まで伸ばした黒髪をしている。大ヒットメーカーの漫画家で、ペンネームは「奏多はるか」。風音のことを溺愛しているが、仕事の都合で仕方なく関東で暮らしている。風音と離れて暮らす寂しさを紛らわすため、仕事中は日々アシスタントに風音の自慢話をしている。風音が住む家を建て替えるなど、できる限りのサポートをしている。妹思いの優しい性格ながら、風音が飛騨樹希と付き合っていることを知った時は、夜叉(やしゃ)のような顔になり、風音に樹希の素性を問い質していた。

海津 洋平 (かいづ ようへい)

中津川風音と同じ高校に通う男子。爽やかな風貌をした黒髪の美少年。明るく元気一杯で、優しい性格をしている。サッカー部に所属しており、女子から非常に人気がある。大切なものは仲間。今は彼女がいないため、休み時間になるとほかのクラスの女子が海津洋平のもとに殺到する。クラスメイトの飛騨樹希とは幼なじみで、いつも眠そうにしている彼のことを気にかけている。樹希が漫画家であることは知っているが、樹希を気遣って誰にも話していない。中津川風音がプロの漫画家で、樹希と仲がいいことを知った時は、樹希に仲間ができたことを心から喜んでいた。なお、樹希からは、幼なじみでなかったら絶対にかかわっていなかった人種と言われている。

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