概要・あらすじ
首代手形を持つ者の依頼を受け、金銭の取り立てを行う浪人、首代半四郎と取り立てられる者、あるいは周囲の人間を描いた時代劇の短編連作。父と子の物語である第1話を皮切りに、人情話、叙述トリックを使用した物語、取り立てを依頼した側の話など、バラエティに富んだヒューマンドラマとなっている。
登場人物・キャラクター
首代 半四郎 (くびだい はんしろう)
武士たちが合戦時に「命を助けてもらう代わりに金を払う」という契約を記した首代手形を持つ者から依頼を受け、代理で金銭を回収する取り立て屋。剣の達人。金銭の取り立てを行うが、道に外れたことはしない。義に厚い男。
坂部 兵部 (さかべ ひょうぶ)
「武士の鏡」と呼ばれるほどの人物だが、これは演技であり、大阪夏の陣のさい、深沢強左衛門(ふかざわすねざえもん)に命乞いをし、首代として百両を渡す約束をしていた。
田辺 軍十郎 (たなべ ぐんじゅうろう)
筑後柳川田中家で禄五百石を得ていた武士だったが、主家が没落し、浪人となっている。病に倒れた篠田茂左衛門のために、仕官の道があればと土井利勝の屋敷に出向き、「腹を切りたいので庭先を借りたい」と願い出たが、家臣によって切り捨てられる。
篠田 茂左衛門 (しのだ しげざえもん)
加藤家臣下の武士だったが、主家がお取り潰しにあい、浪人となった後、病に倒れ、嫁を遊郭に取られるほど困窮する。自分を助けるために土井勝利の屋敷へ赴いた田辺軍十郎が殺されたことを知り、子供を切り捨て、自身は土井利勝の家の前で腹を切り、その表札に腑を投げつけた。
寺田 与左衛門 (てらだ よざえもん)
土井利勝の家臣。篠田茂左衛門を殺した人物から首代を得ようと屋敷を訪れた首代半四郎にはめられ、千両の首代手形の契約をさせられる。土井利勝の家老で、実在の人物であった寺田与左衛門がモデルと思われる。
村長 (むらおさ)
元は三万石の城主だったが、三十年前、関ヶ原の戦いで西軍につき、破れ、落ち延びる際に三千両の首代手形を発行する。その後、残党狩りや手形引受人から逃れるため各地を転々とする。飛騨に落ち着き、村長の娘を嫁にもらい跡を継いで村を納めていたところに、首代半四郎が現れる。
鯖江 詮房 (さばえ あきふさ)
元は武士であったが、大阪夏の陣の落城時、城を出て逃亡しているところを東軍の武士に見つかり、殺されそうになる。そのさい、共にいた小姓たちの命を助けようと金千両の首代手形を発行する。だが、その後、野党となってしまった小姓たちによって両手両足を切られた上、中風を煩い、言葉も不自由となっている。
赤松 (あかまつ)
鯖江詮房の小姓であったが、大阪夏の陣での敗走後、他10人の小姓達と共に野党となっている。首代半四郎が鯖江詮房の取り立てに来たところ、他の人間は鯖江詮房首を持って行けというところ、彼だけは金を払うと言って仲間と悶着となる。
杵柄 (きねづか)
首代半四郎に千両の首代手形の取立てを依頼する。しかし、自身も三百両の首代手形を発行しており、この取立てにきた人々に、金を用立てなければならなくなっている。刻限までに戻らなければ家族全員死ぬように言い残し、家老に借金を申し出に行く。
生実 (おいみ)
房州酒井山城城主。二万五千石の石高を持つ。戦のさい藤十郎に発行した首代手形のせいで藤十郎に脅され続けている。かんしゃく持ちの小物。藤十郎が持っているはずの首代手形を、首代半四郎が取り立てにきたことから、どちらかの手形が偽物ではないかと考え、半四郎を襲う。
藤十郎 (とうじゅうろう)
生実の首代手形を持っているが仲間に預けてあり、有事の際には生実家がつぶれるよう露にすると脅し、生実の家臣となる。以降、生実を恐喝し続けるも金も受け取らず、生実の側に居続け、無茶な要求を突きつけ続ける謎の男。生実からは怪物と呼ばれている。
温井 次左衛門 (ぬくい じざえもん)
藤十郎の弟で鷹匠。藤十郎に首代の受け取りを頼まれ、酒井山城主の生実と会うものの、殺され、その死体は肥だめに沈められてしまう。そのさい、連れていた鷹が生実から首代手形を奪い、持ち帰ったことで、藤十郎は酒井山城で次左衛門が殺されたと察する。
その他キーワード
首代手形 (くびだいてがた)
『首代引受人』に登場する概念。平田弘史の創作と思われる。合戦において敵に殺されそうになったさい、金を払うので助けてほしいと命乞いし、その約束手形を発行する。この時の手形が首代手形とされる。武士にとって恥辱とされ、これを発行している事が知れた場合、蔑まれ、仕官が難しくなったり、最悪、お家が取り潰される可能性もあるとされる。
手形引受人 (てがたひきうけにん)
『首代引受人』に登場する概念。合戦において敵に殺されそうになったさい、金を払うので助けてほしいと命乞いし、発行した約束手形である「首代手形」を持つ者から依頼を受け、金銭の回収を行う者のこと。平田弘史の創作と思われる。
関連リンク
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