落窪物語

落窪物語

継母からいじめられている姫君が、素晴らしい貴公子から愛されて幸福になっていく姿を描く。平安時代のシンデレラストーリーである『落窪物語』のコミカライズ作品。継子いじめをしていた継母が報いを受ける部分に比重を置いている原作に対し、本作では継子いじめを受けている姫君のラブストーリーをメインに据えている。1997年10月に中央公論社「マンガ日本の古典」シリーズの第2巻として描き下ろされ、本シリーズは1997年度の文化庁メディア芸術祭マンガ部門の大賞を受賞した。

正式名称
落窪物語
ふりがな
おちくぼものがたり
作者
ジャンル
時代劇
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概要・あらすじ

落窪の君は早くに母親を亡くし、継母である北の方と同じ邸で暮らしていた。北の方は落窪の君を嫌って彼女をお針子として扱い、食事や着物すら満足に与えない。落窪の君は自身の不幸を悲しみつつも、人生は変わりようがないと半ば諦め、日々を過ごしていた。しかし、都で評判の貴公子である藤原道頼に見初められて愛され、思いがけない人生の転機に恵まれる。

道頼との関係を通して人生に希望を持ち、変わりたいと決意した落窪の君は、道頼と幸福になるための行動を開始する。

登場人物・キャラクター

落窪の君 (おちくぼのきみ)

中納言の娘。母親を早くに亡くしたために、父親に引き取られて、継母である北の方と一緒に暮らしている。母親は皇族の血を引いて血筋は良いが、北の方から継子いじめを受けており、身分の低い者ですら嫌がる針仕事を、寝る間もなくさせられている。また、床の落ち窪んだ部屋に住まわせられているので、「落窪」という不名誉な名で呼ばれている。 食事も満足に与えられず、破れて着用に堪えない古着ばかりを着せられている。落窪の君自身は、その境遇を苦しく思うこともあるが、継母を恨むことはなく、優しい心を持ち続けて周囲への気配りを忘れない人格者。一方で人生を諦めている節があり、世間の人から存在を知られぬまま、ひっそりと死んでしまってもいいと考えている。 しかし、藤原道頼からの求愛を受けるうちに、彼と幸福になりたいと願うようになる。

藤原 道頼 (ふじわらの みちより)

左大将の息子。都の中でも1、2を争う評判の良い貴公子。現在の身分は少将だが、いずれは大臣に上り詰めるだろうといわれている。多くの女友達がおり、縁談も降るようにきているが、いまだに独身。帯刀から落窪の君の話を聞いて興味を持ち、遊び半分で言い寄る。しかし、その美貌を目の当たりにしてからは、彼女の控え目で奥ゆかしい性格を好ましく思い、本気で愛し始める。 以後は、彼女を劣悪な環境から救い出し、正妻として自身の邸に迎えたいと考えるようになった。落窪の君を愛しているからこそ、彼女を迫害している北の方を許せず、復讐したいと思っている。

阿漕 (あこぎ)

落窪の君に仕えている唯一の女房。落窪の君を幸福にしたいと考え、できる限り手助けをしている。北の方が落窪の君にいじわるをする時は、主人に代わって言い返すことすらある。裕福な叔母がおり、時にはその力を借りて、落窪の君に必要な物を準備することもある。髪が美しく、顔がかわいらしいので、藤原道頼の家来である帯刀に見初められて妻になった。 その後、夫の帯刀に落窪の君の話をし、道頼と落窪の君が出会うきっかけを作る。

帯刀 (たてわき)

藤原道頼に仕える男性。道頼とは乳兄弟の関係にあり、主従という関係を越えて、冗談を言い合ったり秘密を共有するほどに仲が良い。阿漕に出会って彼女の愛らしさに夢中になり、妻とした。妻である阿漕が落窪の君のために奔走しているのを見たり、時に助言を求められたりしたことで、落窪の君を救ってあげたいと考えるようになる。 のちに、落窪の君が良い夫を持てば窮地から脱出できるのではないかと考え、主人の道頼に彼女の話をして、2人が出会うきっかけを作った。基本的にはしっかりとした人物であるが、やや詰めの甘いところがあり、時には大きなミスをしでかすこともある。

中納言 (ちゅうなごん)

落窪の君の父親。中納言というある程度高い身分にあるが、それ以上の昇進は望めない状態にある。「先に希望のない人」と評されることもあり、自分で自分のことを「老いぼれ」と言うこともある。性格は真面目で勤勉、自身の子供たちも分け隔てなく愛している。北の方が落窪の君の継子いじめをしているのではないかと疑うこともあるが、その度に、口達者な北の方の言い訳や噓に騙され、我が家には問題がないと思い込んでいる。

北の方 (きたのかた)

中納言の正妻。年を取っていて、髪の毛もほとんど抜け落ちている。継子である落窪の君を訳もなく嫌っていて、彼女を不幸にすることが生きがい。中納言との間には4人の実娘がおり、彼女たちが良い結婚をして、幸福になることを祈っている。そのため、北の方自身の娘たちにはきめ細かな情愛を注ぐ一方で、落窪の君のことは結婚をさせずに、自分の娘たちの召し使いとして一生涯働かせようと計画を立てている。 口達者なところがあり、夫の中納言をうまく操縦する手腕を持つ。

三の君 (さんのきみ)

北の方の三番目の娘。母親に似て、小生意気で思いやりのない性格をしている。異母妹である落窪の君を気遣う様子は一切見せず、妹というよりもお針子の1人としか見ていない。母親と協力して、落窪の君をいじめることすらある。夫の蔵人少将に対しても横柄な態度を取ることが多く、夫婦仲は冷え入りつつある。

四の君 (よんのきみ)

北の方の四番目の娘。優しく従順な性格をしており、異母妹の落窪の君をいじめることもない。父母に大切にされていて、将来性のある藤原道頼との結婚を望まれていた。しかし、道頼に騙されて、馬面で有名な兵部少輔と結婚することになる。夫があまりにも変な顔であることに絶望し、情けないと思いながらも、夫のことを優しく受け入れ、子供も授かる。 この結婚が、のちに中納言家を不幸にする遠因となる。

三郎君 (さぶろうのきみ)

北の方の三男で、10歳になる少年。異母姉の落窪の君を慕っていて、お琴を教えてもらっている。優しい性格の持ち主で、落窪の君が不遇な扱いを受けていることをかわいそうに思い、どうにか慰めたいと考えている。食事すら与えられないことのある落窪の君のために、こっそりと食事を差し入れるなどして、姉弟としての情愛を示すこともある。

蔵人の少将 (くろうどのしょうしょう)

プライドが高く、物事に白黒はっきりとつけたがる性格の貴公子。順調に官位を進めているため、将来を中納言に見込まれ、三の君の婿となった。中納言から自慢の婿として大切にされていることもあり、三の君とは離婚を踏みとどまっているが、彼女の横柄な性格には苛立ちを感じることも多い。将来に希望のない義父の中納言を見限って、他家の婿になろうかと考えることもある。

兵部少輔 (ひょうぶのしょう)

藤原道頼のいとこにあたる青年。鼻が大きく顔が長いので、行く先々で「馬のようだ」と笑い者にされており、馬面の面白い顔をしているので、「面白の駒」というあだ名を付けられた。そのことに酷く傷つき、軍事を司る兵部省の次官でありながら、引きこもりになっている。世間知らずなところがあるが、性格は優しく素直。藤原道頼から四の君をもらい、彼女の夫になる。 優しく従順な妻に癒しを感じているが、相婿の蔵人の少将からは嫌われている。

典薬助 (てんやくのすけ)

北の方の叔父。医師をしているものの貧乏。60歳を越しており、当時としてはかなりの年寄りでありながら、いまだ女に目がない。落窪の君をひどい目に遭わせたいと考えている北の方から、彼女を好きにしても良いと言われて、妻にしようと考えている。お腹が弱く、お漏らしをすることもあり、さらに薄毛を笑い物にされることが多い。

少納言 (しょうなごん)

北の方の召し使いの女性。優しく気の利く性格で、落窪の君のことをかわいそうに思っている。手助けをしたいと思いながらも、北の方に逆らうと自身の身も危うくなるため、うまく動けずにいた。のちに落窪の君が良縁をつかんで結婚すれば良いと考え、従妹が仕えている弁少将に落窪の君の話をするなど、2人が結ばれるように水面下で行動する。

弁少将 (べんのしょうしょう)

かなりの美男子と評判の貴公子。高貴な家柄で、女性扱いが上手く、多くの愛人を持つ。少納言から落窪の君の評判を聞き、母親がおらず苦労している人ならば、細かな心遣いのできる素晴らしい女性だろうと考えて、妻にしたいと思うようになる。その後は、少納言に会うたびに落窪の君のことを熱心に聞き、恋文の仲介を頼んでいる。

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