概要・あらすじ
箱崎優子は東京の谷中にある骨董屋、谷中古稀堂の一人娘で三代目として修行中。幼い頃から手で触ったぬくもりで、物の真贋を見分けられる才能を持っている。ある日、山中で茶碗を抱いた白骨死体が見つかり、その茶碗の鑑定を父の箱崎京太郎が頼まれる。父のお供でその訳ありの茶碗の鑑定に赴いた箱崎優子は好奇心から事件に首を突っ込み、池端東介と共に真相の究明にのりだしていく。
他にも、古伊万里、高麗青磁、狩野派屏風、ドールハウスなど、さまざまな骨董品と事件が絡み合う。
登場人物・キャラクター
箱崎 優子 (はこざき ゆうこ)
東京の谷中にある骨董屋、谷中古稀堂の一人娘。短大を卒業して一度は就職したが、今は辞めてぶらぶらしている。今のところ嫁に行く気が無いので、三代目として修行中。好奇心旺盛で危ない事にも首をつっこんでしまい、危険な目にもあったことがある。手で触ったぬくもりで、物の真贋を見分けられる才能を持っている。
池端 東介 (いけはた とうすけ)
国立博物館の学芸員。専門は中国磁器。箱崎優子に好意を抱いているが、その思いはまったく届いていない。高知県出身。母は実家の高知県にいて、父は亡くなっている。漁師の息子で船を操舵することができる。少年の頃、美術書で中国の美しい工芸品を見てその完璧な美に魅せられ、黄河流域と万里の長城を踏査するのが一生の願いになった。
箱崎 京太郎 (はこざき きょうたろう)
箱崎優子の父親。東京の谷中にある骨董屋、谷中古稀堂の二代目。眼鏡をかけて髭をはやしている。服は日頃から和服を着用。妻は初子。骨董界随一といわれるくらいの目利きの持ち主。娘の箱崎優子の目利きの力を信用している。
綾倉 春生 (あやくら はるお)
箱崎優子のお見合い相手。髪をオールバックにしている。銀座で西洋美術を扱っている綾倉美術の跡取り。綾倉家は昔は香道の家として知られていた。西洋古美術を扱うようになったのは、綾倉春生の父が若い頃ヨーロッパに遊学してから。イタリアのボローニャ大学で美学を学び、帰国後は父親の店で修行中。 元公家の家柄で、女性と会話するときは女言葉を使う習慣がある。
大内 陶犀 (おおうち とうさい)
陶芸家。文化功労者として叙勲もされるくらいの人物。陶磁器のコレクターとしても有名で、九州に窯と屋敷を構えている。秋元亮太が弟子だったときに焼いた茶碗を見て、目もくらむような嫉妬を感じ破門にした。それにより自分がどういう人間であるかを思い知ったが、逃げずに陶芸と向き合った。
秋元 亮太 (あきもと りょうた)
箱崎優子と池端東介が古伊万里の贋作について調べに行った九州で出会った青年。大内陶犀の弟子でかなりの才能の持ち主だったが、破門同然で半年くらいで辞めている。以前は、年が離れた章一というロクロ師の兄と二人で作品を制作していたが、兄弟喧嘩をして章一は他の土地に出て行ったらしい。 贋作を売るブローカーに頼まれて贋物の古伊万里の茶碗を作っているが、本人は贋作かどうかなど問題ではなく、ただ古伊万里を愛して美を追求している。
芳村 苑子 (よしむら そのこ)
吉野の山林王といわれていた雨宮洋造の隠し子の一人。奈良市内の「ハニーエンジェル」というキャバクラで働いている。死んだ父親が大切にしていた屏風を、息子の雨宮洋一郎が勝手に売ろうとしている事を知り、屏風を盗んだ。屏風の事で店を訪ねてきた箱崎優子の事を気に入り、自分に何かあったら屏風を守って欲しいと頼む。
更級 昭子 (さらしな あきこ)
谷中古稀堂に一億はくだらない古九谷の大皿の買取を頼みに来た。戦前は華族であったが、更級家に恨みをもつ野島征造にだまされ全てを失い没落し、今は祖母と二人で鎌倉に住んでいる。古九谷の大皿を、骨董マニアの野島征造には渡すまいと、人目につかないように売却するために谷中古稀堂を訪れた。
桂木 秋秀 (かつらぎ あきひで)
さまざまな国の大使を歴任している。綾倉美術のお得意様。元オペラ歌手の伊都子夫人と結婚しているが、子供はいない。家や別荘まで売って、ノンナ・シュペングラーのドールハウスを購入した。しかし、そのドールハウスは麻薬と関わるものだった。
場所
谷中古稀堂 (やなかこきどう)
『骨董屋優子』に登場する店。東京の谷中にある骨董屋。箱崎優子はそこの三代目として修行中で、現在の店主は箱崎優子の父、箱崎京太郎が務める。木造2階建ての建物で、障子やふすまがある日本家屋。箱崎優子と両親の3人が商いをしながら暮らしている。