あらすじ
第1巻
自他共に認める平凡で「良い子」な中学2年生の楠そよは、目立つ事はせず、つねに場の空気を読んで行動する事で、平穏な暮らしを手に入れていた。そんなある日、そよのクラスに、容姿端麗で成績優秀、スポーツ万能の転校生リサ・ミカエル・ソビエスキー三世がやって来る。正直で人の目を気にしないリサの行動に面食らっていたそよは、ある日偶然、リサが不思議な力を使っている場面に出くわしてしまう。リサは魔界からやって来た魔界人であり、使い魔のモフらと共に、「プリンセス」と呼ばれる魔界の王位継承者を探しているのだという。リサの正体を知ってしまったそよは、「無事にプリンセスが見つかった際、なんでも一つ願いを叶えてもらう事」を条件に、リサのプリンセス探しに協力する事になる。
第2巻
魔界の未来のために「プリンセス」探しに励む楠そよとリサ・ミカエル・ソビエスキー三世だったが、空振りが続き、なかなかプリンセスを発見できずにいた。しかし、その過程でそよは他人の顔色をうかがう生き方をやめ、リサは時枝涼平に惹かれ始めるなど、二人には大きな変化が起きていた。だが、実は人間と魔界人の恋愛は禁忌とされており、リサはそれを破ったとして、魔法の力を剥奪されてしまう。リサを案じたそよは、リサの人間界での努力を魔界人たちに認めさせるため、一層プリンセス探しに励み、ついに真のプリンセスである西森絹子とリサを対面させる事に成功するのだった。こうして魔界は救われ、そよは約束通り、リサになんでも一つ願いを叶えてもらえる事になる。しかし、そよが願ったのは自分に関する事ではなく、リサと涼平の関係を魔界に認めてもらう事だった。これによりリサと涼平の関係は特別に認められ、魔界を去ったリサに関する記憶は、リサにかかわったすべての人間から消されてしまった。しかし、唯一リサの記憶を持ち続ける事に成功したそよは、リサとの再会の日を待ちながら、改めて自分らしく生きていく事を決意するのだった。
登場人物・キャラクター
楠 そよ (くすのき そよ)
東京都国立市にある、黒江学園女子部2年B組に所属する女子。前髪を目の上で切り、顎の下まで伸ばした亜麻色のボブヘアにしている。容姿も学力も運動能力も平均的な、自他共に認めるごく普通の中学生。場の空気を読んで極力目立たないように過ごしており、いじめに加担はしないが、いじめられっ子を助けもしないという、事なかれ主義を貫いて暮らしていた。 しかし、魔界の王位継承者である「プリンセス」を探すリサ・ミカエル・ソビエスキー三世と出会ってからは、その考えを改めて自分らしい生き方を模索するようになっていく。リサと出会った当初は時枝涼平に憧れていたが、リサと涼平が惹かれあっている事を知り、二人の関係を応援するようになる。実家はケーキ屋「パティスリー クスノキ」で、黒江学園の許可を得て店の手伝いをする事もある。 料理が得意で、リサと接するうち、将来は料理関係の職業に就きたいと考えるようになる。
リサ・ミカエル・ソビエスキー三世 (りさみかえるそびえすきーさんせい)
魔界の防衛大臣を務める魔女。人間界では「魔美坂リサ」と名乗っている。前髪を目の上で切りそろえ、胸まで伸ばしてゆるく巻いた黒髪のロングウェーブヘアにしている。非常に美しい容姿でスタイルも抜群。さらに勉強もスポーツも万能な一見完璧な存在だが、能力のすべては自身の持つ魔力か、あるいはアンリエッタから供給される魔力で成し得ており、本当は苦手なものも多い。 男性のような口調で話し、正直でマイペースなはっきりとした性格。魔界の王位継承者である「プリンセス」を探すため、使い魔のモフと共に、そよたちの住む東京都国立市にやって来た。魔法の力で何でも万能にこなしてしまうため人間の少女たちの悩みや苦しみが理解できず、悪気なく傷つけてしまう事が多い。 そのため、プリンセス探しのパートナーに選んだ楠そよと時に衝突しながら、少しずつ思いやりを学んでいく。また、その過程で時枝涼平と出会い、惹かれあうようになる。食べる事が大好きで、非常に大食いである。
時枝 涼平 (ときえだ りょうへい)
黒江学園男子部に通う3年生の男子で、楠そよの思い人。前髪を目が隠れそうなほど伸ばしたウルフカットの髪型で、眼鏡をかけている。校内では生徒会長と男子サッカー部部長を務めており、さらに容姿端麗でもある事から、女子部の生徒たちから非常に人気がある完璧な人物。しかし、実は女遊びの激しい冷淡な性格で、気に入った女性に近づいては関係を持ち、写真に残す「コレクション」という遊びを楽しんでいる。 ある日、女子部に転入して来たリサ・ミカエル・ソビエスキー三世に興味を持ち、そよを利用して近づく。しかしその過程でリサに自分の本質を見抜かれて叱られ、以降はリサに心から惹かれるようになり、自分の行いを改める。母親は女優のYOKOで、必要以上に世間体を気にする彼女に振り回され、淋しい日々を送っている。
モフ
リサ・ミカエル・ソビエスキー三世の使い魔で、「プリンセス」探しのために共に人間界にやって来た。小さなピンク色のうさぎのぬいぐるみのような姿をしており、語尾に「モフ」を付けて話す。魔界の王族を代々陰で支えてきた使い魔の一族の末裔で、本来はリサと共にプリンセス探しをするパートナーであった。しかし、人間界にやって来てすぐに檀一雄の『火宅の人』を読んで感動し、以降は文学に目覚めて小説家を志すようになった。 そのため、プリンセス探しにはすっかりやる気をなくしており、自分の代わりとして楠そよをリサのパートナーに推薦する。将来の夢は直木賞作家になる事。
沢渡 かれん (さわたり かれん)
黒江学園女子部2年B組に所属する女子で、楠そよのクラスメイト。生徒会役員も務めている。前髪を左寄りの位置で分けて額を全開にし、肩まで伸ばしてゆるく巻いたセミロングヘアにしている。のちに髪を切り、前髪を左寄りの位置で分けて額を全開にしたベリーショートカットヘアになる。容姿は可愛らしいが、意地悪でわがままな性格。母親は元モデルで黒江学園の理事も務めており、父親は芸能事務所の社長を務めている。 そのためクラスではボス的存在として振舞っており、周囲からは「さん」付けで呼ばれる事が多い。さらに取り巻きの絵里子とこのみと共に、「教育」と称して気に入らないクラスメートをいじめて楽しんでいる。幼い頃は母親の意向で女優を目指していたがうまく行かず、その後も何にチャレンジしても一番にはなれなかったため、母親を落胆させてばかりの人生を送ってきた。 そのため、何に対しても他人と自分を比べる癖がついており、必要以上に攻撃的に振る舞うようになってしまっている。転校して来たリサ・ミカエル・ソビエスキー三世にも一方的に意地悪をしていたが、やがて絵里子とこのみにまで愛想を尽かされかけてしまう。 それを案じたそよやリサ、鈴木雅美に心を開き、最終的には、かつていじめていた相手である雅美とも親しくなる。時枝涼平に憧れているが、あまり相手にはされていない。苦手なものは雷。
鈴木 雅美 (すずき まさみ)
黒江学園女子部2年B組に所属する女子で、楠そよのクラスメイト。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアを二本の三つ編みにしてまとめている。鼻にそばかすがあり、眼鏡をかけている。一見地味で目立たない雰囲気だが、心優しく、自分の気持ちを貫き通す意志の強さがある。部活動は手芸部に所属しているが、現在は自分以外に部員がおらず、学期末までに部員を三人集められないと廃部という危機にある。 そのため手芸部のチャリティ展示会で少しでも注目を集めようと、休み時間も惜しんで作品作りに励んでいた。その姿を沢渡かれんらに、「暗い」「クラスの雰囲気が悪くなる」と因縁をつけられ、いじめられていた。そんな中、転校して来たリサ・ミカエル・ソビエスキー三世に「プリンセス」と誤認識され、いっしょに過ごすようになる。 最終的に誤解は解けたが、その過程でいじめはやみ、さらにリサのサポートで、チャリティ展示会も成功。その後はリサのよき友人となり、最終的には自身をいじめていたかれんとも和解する。
矢部 ほのか (やべ ほのか)
黒江学園女子部のOGで、現在は男子サッカー部のコーチを務める若い女性。前髪を左寄りの位置で分けて額を全開にし、胸まで伸ばしたストレートロングヘアを、首のつけ根の高さで一つに結んでいる。のちに髪をおろし、前髪を左寄りの位置で分けて額を全開にし、胸まで伸ばしたストレートロングヘアになる。鼻にはそばかすがあり、あまり容姿には気を遣っていない。 そして、性格も話し方も男性のように勇ましい事から、周囲からは「アニキ」あるいは「矢部アニキ」と呼ばれている。サッカーが大好きで、ずっとサッカー一筋の人生を送ってきた。そのため黒江学園在学時も女子サッカー部を作ろうとしたが、うまく行かず、断念して市が主催するアマチュア団体に入った過去を持つ。サッカーをしている男っぽい自分が好きだが、女性らしい服装や髪型に、密かに憧れているところもある。 鈴木雅美の次に本物の「プリンセス」と誤認したリサ・ミカエル・ソビエスキー三世と、サッカーを通じて親しくなる。最終的に誤解は解けたが、リサのサポートで、女性らしい服装や髪型をする勇気を持てるようになった。女子部の教師である松崎と親しい。
本橋 真子 (もとはし まこ)
メイクアップアーティスト見習いとして働く若い女性。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、ロングヘアを後ろでお団子にしてまとめている。やや太目の体型をしている。メイクアップアーティストとして日本中の女性を輝かせる事を目標としており、文鋭社が発行するファッション誌「NANNA」のメイクアップアーティストとしても活動している。リサ・ミカエル・ソビエスキー三世とは、鈴木雅美と矢部ほのかが「プリンセス」ではないと発覚し、リサが次なる候補を探していた際に出会い、本橋真子こそが真の「プリンセス」であると誤認識したリサといっしょに過ごす事になる。 最終的に誤解は解けたが、一時的にモデルとして活動する事になったリサのメイクを担当するうちに勇気づけられ、ニューヨークへ留学を決めた。
西森 絹子 (にしもり きぬこ)
楠そよの知人で、そよの実家であるケーキ店「パティスリー クスノキ」の常連客の年老いた女性。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、ウェーブがかったショートカットヘアにしている。体調が悪く、車いす生活をしている。穏やかで心優しい性格。楠家とは店員と客として親しく、「パティスリー クスノキ」のバウムクーヘンがお気に入り。特にそよの母親と仲がよかったが、現在は入退院を繰り返しており、なかなか来店できずにいる。 のちに真の「プリンセス」である事が発覚し、体調不良の原因も、人間の身体が抱えるには大きすぎる「ロータス」を心に咲かせていたことにあったのが判明。自分の身体に咲いた「ロータス」をリサ・ミカエル・ソビエスキー三世に託し、それを魔界のエネルギーとして利用するように頼んで亡くなった。
絵里子 (えりこ)
黒江学園女子部2年B組に所属する女子。楠そよのクラスメイトで、沢渡かれんの取り巻きの一人。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、顎の高さまで伸ばしたボブヘアにしている。あだ名は「エリ」。けだるく不良っぽい雰囲気を醸し出しており、かれんとこのみと共に、「教育」と称してクラスメイトをいじめている。かれんといっしょに行動してはいるが、かれんのわがままさに辟易しており、一時期はかれんを見捨てようとした事もある。
このみ
黒江学園女子部2年B組に所属する女子。楠そよのクラスメイトで、沢渡かれんの取り巻きの一人。前髪を目の上で切りそろえ、肩につくまでの長さのセミロングヘアをツーサイドアップにしている。小柄で幼く可愛らしい雰囲気の持ち主だが、場の雰囲気を読まず、思ったままの言動をするマイペースな性格。かれんと絵里子と共に、「教育」と称してクラスメイトをいじめている。 かれんといっしょに行動してはいるが、かれんのわがままさに辟易しており、一時期はかれんを見捨てようとした事もある。
アンリエッタ
フェリックスの恋人の魔女。「プリンセス」捜索のため、リサ・ミカエル・ソビエスキー三世、モフ、フェリックスと共に人間界にやって来た。魔界の王族の血を引いていたが、平民であるフェリックスと身分違いの恋をした事から魔力を剥奪され、現在では、リサに「プリンセス」の位置情報を教えたり、魔力を供給するためのスマートフォンの姿に変えられてしまった。 本来は、前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸まで伸ばしたロングウェーブヘアにドレスを着た若い女性の姿をしている。フェリックスは充電器に変えられても言葉を発しているが、アンリエッタは言葉を発しない。
フェリックス
アンリエッタの恋人の男性魔法使い。「プリンセス」捜索のため、リサ・ミカエル・ソビエスキー三世、モフ、アンリエッタと共に人間界にやって来た。元は魔界人だったが、王族の血を引くアンリエッタと身分違いの恋をした事から魔力をはく奪され、現在ではアンリエッタとセットで使用する、スマートフォン用充電器の姿に変えられてしまった。 そのため、スマートフォンの立て掛け型の充電器に、目と手足が付いたような姿をしている。本来は前髪を真ん中で分けて額を全開にした、癖のある刈り上げヘアに無精ひげを生やした若い男性の姿をしている。リサにとっては兄的存在で、人間の女性との付き合い方がわからないリサにアドバイスをする事が多い。フェリックスは充電器に変えられても言葉を発しているが、アンリエッタは言葉を発しない。
その他キーワード
プリンセス
魔界の王位を継承する女性。200年前、母親の死を機に王位を継承する予定だった。だがその際、人間の女性だけが持つ感情の宝石であり、魔界でエネルギー源として利用できる花「ロータス」を心に咲かせた事から、純粋な魔界の人間ではなく、父親が人間、母親が魔界人のハーフである事が発覚。これにより、王位にはふさわしくないという理由で、人間界へ追放された。 それから輪廻転生を繰り返し、現在では東京都国立市に住む人間の女性・西森絹子として暮らしている。絹子はかつて自身が「プリンセス」であったという記憶を持ち続けているが、リサ・ミカエル・ソビエスキー三世らには誤った情報が伝わっており、「プリンセス」は魔力と当時の記憶を失っており、自分が「プリンセス」であるという自覚がないと考えられていた。 そのためリサとモフは、「ロータス」を美しく咲かせている女性が「プリンセス」候補であると考え、鈴木雅美や矢部ほのか、本橋真子に近づくこととなった。