黒鉄・改 〈KUROGANE-KAI〉

黒鉄・改 〈KUROGANE-KAI〉

冬目景の『黒鉄〈KUROGANE〉』の続編。半身が機関(からくり)仕掛けの渡世人の迅鉄と、その相棒である銘刀鋼丸の旅路を描いた和風ファンタジー道中記。無常感を前面に押し出しつつも、人と人の心温まるつながりもテーマに据えられている。「グランドジャンプ」2017年5月号より連載の作品で、コミックス第1巻には「グランドジャンプ」2016年23号に掲載された読み切り版『黒鉄〈KUROGANE〉』も収録されている。

正式名称
黒鉄・改 〈KUROGANE-KAI〉
ふりがな
くろがねかい
作者
ジャンル
アクション
 
時代劇
関連商品
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作品誕生のいきさつ

本作『黒鉄・改 〈KUROGANE-KAI〉』は1996年に連載開始し、2003年に休載となった『黒鉄〈KUROGANE〉』の続編。「グランドジャンプ」2016年23号に読み切り版『黒鉄〈KUROGANE〉』が掲載され、2017年5号より正式な続編となる本作の連載が始まった。作者の冬目景は長いブランク期間があったことで当時の執筆姿勢を忘れていたため、心機一転して本作の執筆に臨むと語っている。これにより、前作から設定の一部などがあえて変更されており、前作を知らない新規の読者も楽しめる内容となっている。

あらすじ

第1巻

渡世の掟に縛られない一匹狼で、機関(からくり)仕掛けの体を持つ迅鉄は、金をもらって人を斬ることを生業としながら、各地を転々と旅していた。そんなある日、迅鉄は謎の集団の襲撃を受けて重傷を負う。さらに逃げ出す際、迅鉄は相棒の銘刀鋼丸と離れ離れになってしまうが、薬園で働く兄妹に拾われて九死に一生を得る。兄妹の献身な介護でケガを癒やす中、謎の集団の追手が現れ、妹を人質に取られてしまう。迅鉄は危機に陥るが、その場に駆けつけた紅雀の丹と銘刀鋼丸の力を借り、辛うじて追手を返り討ちにすることに成功する。しかし妹は戦いの中、追手の凶刃に倒れて死亡。迅鉄は彼女を手厚く葬るが、妹の死を知って絶望した兄の姿を見て、世の無常さを嚙みしめるのだった。

第2巻

迅鉄銘刀鋼丸を届けた紅雀の丹は、彼らと別れて再び一人旅に戻る。そこで紅雀の丹は、幕府の役人が何者かに襲われる現場に出くわす。役人から書状を託された紅雀の丹は厄介事はごめんだと、書状を埋めて隠してしまう。しかし書状を探す襲撃者は、再び紅雀の丹に襲い掛かるのだった。襲撃者に襲われる中、紅雀の丹は狩野久作に助けられ、迅鉄を探す久作と行動を共にすることとなる。一方、迅鉄は追われていたものの、旅一座の月百に匿われていた。しかし月百は、迅鉄をだまして捕縛。彼を謎の一団に引き渡そうとする。そんな中、迅鉄は月百の妹の月等に取り引きを持ち掛けられる。彼女の助けを借りることで抜け出した迅鉄であったが、追手である名無しのおっさんの攻撃で左腕を切り落とされてしまう。重症を負って月等と逃げ惑う迅鉄は、その途中で紅雀の丹や久作と合流。久作は迅鉄の機関(からくり)に興味津々で、彼の治療を進んで引き受けるものの、翌朝、久作は迅鉄の千切れた左腕を持ったまま忽然と姿を消してしまう。さらに新たなすご腕の女剣士である瑠璃が追手として現れ、紅雀の丹をかどわかす。

第3巻

迅鉄は左腕を失い、彼の仲間と勘違いされた紅雀の丹もさらわれてしまう。一方、追ってきた月百と合流した月等は、身を守るために迅鉄と行動を共にすることを決める。そんな中、迅鉄たちは伊奈信治と出会い、彼から紅雀の丹が囚われたことを教えられる。信治と月等に説得され、紅雀の丹を助けるために襲撃者の灰土隊が根城にしている廃寺に襲撃を掛ける。そして、迅鉄が灰土隊を率いる安達と戦っている頃、紅雀の丹は瑠璃の手引きで逃げ延びていた。敵から逃げ回るうちに紅雀の丹は、姿を消していた狩野久作と合流する。久作は迅鉄や敵の目を欺き、紅雀の丹の隠した書状を切り札として回収していたのだった。久作と紅雀の丹は安達を倒した一行に合流。そこで正体を現した信治と交渉し、一連の事件を完全に終息させるのだった。バラバラに集まった迅鉄一行だったが、乗り掛かった舟と月等を母親の故郷に送ることを決意し、能州を目指す。

登場人物・キャラクター

狩野 久作 (かのう きゅうさく)

長崎から旅をしてきた学究者の青年で、メガネを掛けている。好奇心旺盛な性格で、深い見識を持つ。実家は廻船問屋ながら嫡男ではないため、洋学を学ぶうちに学問の虜となる。噂で聞いた死者蘇生の技術に興味を持ち、迅鉄を探して旅をしていた。その最中、紅雀の丹を発見。迅鉄に会うため、半ば押し掛けるかたちで紅雀の丹の道行に同行する。迅鉄と合流後、彼の機関(からくり)仕掛けの体に興味を持ち、整備と治療を申し出るが、技術的に不可能なために断念。その後、迅鉄の千切れた左腕の義手を持って姿を消す。紅雀の丹からは腕を持ち逃げしたと思われていたが、大きな陰謀の陰を察し、紅雀の丹の隠した書状を回収。紅雀の丹たちが襲われている中、再び合流し、彼らを助けた。非力だが一人で旅をするため、吹き矢を飛ばす武器を自作している。毒の付いた矢を飛ばして敵を戦闘不能にするが、武器の扱いに慣れていないため、うっかり味方に攻撃してしまうことがある。

月百 (つくも)

旅芸人一座を率いる妙齢の女性で、黒い髪を長く伸ばしている。月等の姉で、幼い月等をかわいがっている。親の借金を返すため、表向きは芝居で日銭を稼ぎつつ、裏ではあくどい仕事をしている。迅鉄を捕まえる仕事を受け、追っ手に追われてケガをした迅鉄に近づいた。迅鉄を追っ手から匿うと騙して捕まえるが、月等が迅鉄を逃がして失敗。逃げた迅鉄と月等を追ううちに、依頼人が自分たちもろとも迅鉄を殺そうとしていることを知る。それからは月等と自らの身を守るために迅鉄に協力し、能州に行くまで彼と行動を共にすることを決める。女の身ながら荒事に慣れており、ヒモ付きの暗器を投げての戦いを得意とする。月等には、母親がいなくなったのは自分と母親がケンカ別れしたからだと伝えているが、母親は幕府や商人の機密にかかわる立場で、なんらかの秘密を知り、危険を感じて逃げ出したのではないかと考えている。

月等 (つぐら)

旅芸人の少女で、月百の妹。黒い髪をおかっぱ頭にした、小柄な体格をしている。月百から大切にされているものの、母親のことが気がかりでその行方を追うためにたびたび家出を繰り返している。月百たちが迅鉄を捕まえたのを知り、迅鉄に逃亡を手助けする代わりに自分を連れ出す取り引きを持ち掛ける。迅鉄からは邪魔者扱いされ、すぐに置いて行かれたが無理やり同行する。のちに追ってきた月百と合流し、母親のいる能州まで迅鉄に同行することとなる。幼いながら旅慣れしており、月百と同じくヒモ付きの暗器の扱いに長ける。紅雀の丹とは同じ旅人で、さらに同年代の同性であることから親近感を感じており、仲が非常にいい。

瑠璃 (るり)

灰土隊の女武芸者。異人の血を継いだ少女で、白銀色の髪に碧い瞳をしている。父親は貿易のために長崎の出島に出入りしていた外国人で、生まれてすぐに捨てられていたところを安達に拾われて育てられた。身軽な身のこなしで敵を翻弄するすご腕剣士で、迅鉄の身柄を狙って彼らの前に姿を現し、紅雀の丹を一方的に打ち倒して彼女を捕える。その後は紅雀の丹の世話役を任せられ、彼女と交流を育んだ。異人の血を引くため、安達以外の人間からは奇異な目で見られており、等身大の自分を見て接してくれる紅雀の丹に次第に友情を感じていく。そのため、紅雀の丹が迅鉄に対する人質にされそうになった時は、火事を起こして騒動にまぎれる形で紅雀の丹を逃がしている。安達が敗れたあとは紅雀の丹に旅に誘われるものの、それを断って故郷に戻った。

伊奈 信治 (いな しんじ)

渡世人の青年。信州の利兵衛一家の一員だったが、一家が灰土隊によって壊滅。その敵討ちのため、灰土隊の一味を追っていた。その一環で紅雀の丹が連中に狙われているのを知り、紅雀の丹の仲間である迅鉄に接触、彼らの旅ゆきに同行する。逃げ足の速さが自慢で「韋駄天の信治」の異名を持つが、誰もその異名を知らず、頭をひねられることが多い。その正体は幕府直轄の検使役。鉄砲や大砲の密造の調査を目的としており、紅雀の丹が偶然その陰謀にかかわったのを知り、話を聞くために探していた。迅鉄に語った身の上や異名もデタラメで、安達との戦いのあと、正体を明かした。安達を捕えたあとは、彼の最後の頼みを聞いて彼らの仲間を解放し、迅鉄たちに別れを告げて元の役職に戻った。

安達 (あだち)

灰土隊を率いる中年男性で、ヒゲを生やしている。頭を丸くそり上げ、鍛え上げたたくましい体格をしている。隠れ切支丹(キリシタン)の末裔で、信仰の自由を勝ち取るために扇会に属し、ひそかに暗躍を続けている。長崎の武器商人と通じて銃の密輸を行っていたが、幕府にかぎつけられて盗まれた銃の設計図を探している。書状入手と並行して特殊な機関(からくり)を持つ迅鉄の存在に興味を持ち、彼を生け捕ろうとしている。信州では利兵衛一家の家を根城として、迅鉄と書状の行方を捜していたが、迅鉄の反撃によって右手を失う大ケガを負う。また信州から撤収する際には、利兵衛一家を口封じに殺している。さまざまな企みを裏で糸引いているが、根は実直な人物で腫れ物扱いされている瑠璃を気に掛けたり、弾圧されている同志を憂いたりしている。のちに商人を通じて外国から義手を手に入れ、右手に装着。迅鉄との再戦の際には、刀の攻撃にも耐えうる頑丈な義手と新型の銃を使って戦った。仲間たちと共に迅鉄に襲い掛かるが敗北。仲間の助命を引き換えに、伊奈信治に捕縛される。

流似 (るい)

旅芸人の少女で、東雲をお供に各地を巡っている。黒い髪を長く伸ばしており、かつてはその浮世離れした雰囲気から「尸童(よりまし)」として扱われていた。物おじしない性格で、無頼の輩である迅鉄にも進んでかかわりを持っていた。迅鉄を恨むヤクザ者の抗争に巻き込まれて死亡するが、その直後に迅鉄の目の前で息を吹き返す。実は子供の姿をしているが、よわい200歳を超え、致命傷も再生する謎の存在。迅鉄からこの一件における迷惑料をせしめたあと、彼に忠告を残して旅立っていった。

東雲 (あずも)

旅芸人の妙齢の女性で、冷静沈着な性格をしている。流似を連れて各地を巡っているが、流似を敬い、仕える言動をしている。流似の不死性を知っており、彼女が致命傷を負った際には、亡きがらを運ぶふりをして流似を外に連れ出した。

名無しのおっさん (ななしのおっさん)

渡世人の中年男性。本名は不明で、名を名乗るのを嫌がった本人が月百から「おっさん」呼ばわりされたのを利用し、「名無しのおっさん」と名乗った。灰土隊から迅鉄を捕える仕事を受ける。かなりずぼらでいい加減な性格をしており、灰土隊から月百に渡すように報酬金を渡されるが、そのお金を中抜きして飲み歩いていた。月百に何かと理由をつけて報酬を払い渋ったが、そのせいで月百につきまとわれることとなる。ずぼらな性格ながら剣の腕は確かで、鎖鎌と刀を使った技で迅鉄と戦い、彼の左腕の義手を切り落としている。迅鉄を追い詰めるが、乱入してきた瑠璃に不意打ちを食らって大ケガを負う。依頼人である灰土隊に口封じされかかったと察し、身を隠すことを決意。ケガを手当てしてくれた迅鉄に灰土隊の情報を渡したあとは、何処かへと去った。

ベース

黒鉄〈KUROGANE〉 (くろがね)

賞金首だった江戸時代の渡世人・迅鉄は追手によって命を落とすが、偶然通りかかった源吉という天才蘭学者によって機械の体に改造されたことで生き返る。そんな迅鉄が、同じく源吉によって刀に改造された元人間・銘刀... 関連ページ:黒鉄〈KUROGANE〉

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