龍皇の影姫

龍皇の影姫

琥珀は、国の守り神であるはずの水龍によって故郷「御影の里」を水中に沈められ、最愛の母を失った。唯一生き残った者として、この惨劇を引き起こした龍を従える力を持つ者に復讐を誓った琥珀は、犯人と目される次期龍皇の水晶の命を狙い、皇宮で女官として働き始める。だが水晶は、琥珀の予想を裏切るかのように心優しい人柄の好青年であり、彼もまた、琥珀と同様にあの日の真実を知るために奔走していた。白泉社「LaLa」2021年9月号から掲載の作品。

正式名称
龍皇の影姫
ふりがな
りゅうおうのかげひめ
作者
ジャンル
ファンタジー
 
復讐
レーベル
花とゆめコミックス(白泉社)
巻数
既刊5巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

偽りの妃

大陸の1/5の領土を誇る大国「天阿国」の都から、遠く離れた場所にある山間の小さな村「御影の里」は、国の守り神であるはずの水龍によってある日、突然水中に沈められてしまう。この惨劇により、愛する故郷だけでなく最愛の母まで失うこととなった琥珀は、唯一生き残った者として、この惨劇を引き起こした者への復讐を胸に誓い、たった一人で生きることを決意。それから5年が経(た)ち、この国で唯一水龍を従える力を持つされる次期龍皇の水晶への復讐を目論み、琥珀は皇宮で女官として働き始めることになる。しかし内情を知れば知るほど、仇(かたき)だと思っていた水晶の優しさと同時に、民にも慕われる人柄を目の当たりにすることになる。それでも琥珀は意を決して水晶の寝所へと忍び込むが、そこで水晶の命を狙う別の者と鉢合わせとなり、思いがけず水晶を守ってしまう。さらに危険を顧みずに自分を守ろうとする水晶の姿を見て、仇(あだ)なすべきは水晶なのか疑問を抱き、5年前に故郷が水龍によって沈められたことを打ち明け、水晶が仕向けたのではないかと詰問。すると水晶は琥珀と同様に、5年前のあの日の真実を知りたいと考えていたことを伝える。そしてすべては、自分の皇位継承に異を唱える者の仕業であると考え、お互いに倒すべき敵は同じだと認識する。琥珀はこれをきっかけに、水晶から自分の妃にならないかと申し込まれるが、琥珀が求められているのは偽りの妃。琥珀は水晶の妃(きさき)としての仮面をかぶりながら、倒すべき相手を見極め、仇を討つことを決意する。それ以来、次期龍皇の妃として日常を過ごすことになるが、新婚の二人はラブラブでなければならない。そのため、一気に近づく距離感に内心どぎまぎしながらも、琥珀は水晶の人柄に惹(ひ)かれていく。

高貴な姫

天阿国を統べる皇族が住まう白驟城で、城外の皇族を迎えた大規模な茶会が行われることになった。これをチャンスととらえた琥珀は、故郷「御影の里」を沈めた者を探し出し、その目を欺くために水晶の妃として皇族たちを出迎えることはせず、女官になりすますことにした。真っ先に到着したのは、白驟城の西にある飛雨城の姫、真珠だった。真珠は生まれながらにして高貴な姫で、麗しく優美な佇(たたず)まいで水晶の前ではどこか儚(はかな)げで力なさげに振る舞っていた。そして時には水晶に必要以上のボディタッチと色仕掛けで誘惑しようとする姿は、周囲から見てもあからさまだった。そんな二人の様子を、一女官として見つめることになった琥珀は、水晶の本来あるべき皇子としての姿を目の当たりにし、自分の本当の立場を知らしめられているような複雑な感情を抱く。一方の真珠は、水晶以外の人たちに接する時は180度態度が豹変し、物言いには棘(とげ)があり、かなりの塩対応。それは女官として振る舞っていた琥珀に対しても同様で、琥珀はそんな真珠の性格を手のひらの上で転がすかのようにうまく扱いながら、茶会が終わっても帰ろうとしない彼女の行動を注視していた。実は真珠は、ある人物の命により、次期龍皇の籠絡とその妃の殺害を目論んでいたのだった。

登場人物・キャラクター

琥珀 (こはく)

御影の里出身の女性。ショートヘアにしている。つねに冷静沈着で優れた身体能力を誇り、武芸にも長(た)けている。5年前に御影の里が水龍による水害で、水没した際の唯一の生き残り。故郷を失い、最愛の母の命を奪った相手に復讐を誓い、いつか水龍を従える力を持つ者を自分の手で殺すためだけに生きてきた。その目的を果たすために、天阿国の皇宮で女官として働き始めた。しかし、実際に水龍を従える力を持つ次期龍皇の水晶と接するうちに、彼の優しさを知ることとなり、動揺を隠せないでいる。意を決して水晶の寝所に忍び込んだが、そこで水晶の命を狙うほかの者と鉢合わせとなり、剣を交えることになった。水晶をこの手で葬りたいとの強い思いがありながらも、奇(く)しくも水晶を守る形になってしまう。結局、琥珀は水晶を手にかけることを断念し、5年前に故郷が水龍によって沈められたことを打ち明け、水晶が仕向けたことなのかを確認する。だが、水晶からもあの日の真実が知りたいと伝えられ、互いの敵が同じであることを認識する。そして、闇に潜む刺客を明らかにするため水晶の提案で、琥珀は水晶の妃として迎え入れられることとなる。偽りの妃としての仮面をかぶりながら、水晶とは夫婦としてラブラブな様子を見せなければならず、一気に距離感が近くなったことに内心動揺しつつ、表向きには平常心を保とうと必死になっている。そうこうしていくうちに、水晶との信頼関係が強くなり、いつしか水晶を心から慕うようになる。水晶の妃として現龍皇の藍晶への挨拶を済ませたとはいえ、君主から爵位を授かる「冊封」が済むまでは、正式に正妃として認められているわけではない。

水晶 (みあき)

天阿国の現龍皇、藍晶の息子。水龍を従える力が継承されているため、次期龍皇との呼び声が高い。優しい性格で皇族らしからぬ言動によって、民とも分け隔てなく接するため、みんなに慕われている。しかし、水龍をあやつるたびに床に伏しているため、その姿を知る者からは「軟弱者」と蔑まれ、皇位継承を認めない者も少なくない。水龍を従わせた日の夜、何者かに命を狙われたが、女官の琥珀に助けられた。この時、琥珀から5年前に御影の里を沈めたのが水龍だったことを打ち明けられると、その日の夜について水晶自身も真実を知りたいと思っていたことを明かした。そして、自分の皇位継承に異を唱える者と、琥珀が仇なす者は同じなのではないかと語ったのち、琥珀に自分の妃になってほしいと提案した。偽りの妃としての仮面をかぶりながら、闇に潜む刺客を明らかにするため、行動を共にすることを求めた。それ以来、琥珀とは夫婦として仲睦(なかむつ)まじい様子を周囲に見せなければならず、時には琥珀を困惑させながら必要以上にラブラブを装っている。そうこうしていくうちに、互いの信頼関係が強くなり、琥珀を心から慕うようになり大切に思うようになる。龍皇の器の証(あかし)である龍の紋は、藍晶から力を譲り受けたと同時に自らの左腕に刻まれた。本来なら力が移行したと同時に龍皇として即位するべきだったが、御影の里の惨劇を引き起こした者を捕らえるまでという条件で、藍晶には即位を待ってもらっている状態となっている。

灰簾 (かいれん)

天阿国の現龍皇、藍晶の実弟で、水晶の叔父(おじ)。白驟城の将軍を務めている。温厚な性格の水晶とは真逆で、些細(ささい)なことでも灰簾の逆鱗(げきりん)に触れることがあり、何が怒りの引き金になるかわからないため、側近はいつも怯(おび)えている。水龍を従える力を継承する水晶を快く思っておらず、水龍を従えるたびに床に伏してしまうほど軟弱にもかかわらず、次期龍皇と言われていることに不満を抱いている。また、水晶の妃となった琥珀ともそりが合わず、何かと毛嫌いしている。

藍晶 (らんしょう)

天阿国を統べる国王で現龍皇の男性。息子の水晶に水龍を従える力を継承したため、現状は水龍を従える能力は持っていない。もともと龍皇の器として龍の紋が背中に刻まれていたが、力が水晶に移行したと同時に消失した。本来ならば力が移行したと同時に水晶に即位させるべきだったが、御影の里の惨劇を引き起こした者を捕らえたいという水晶からの意向を汲(く)む形で、解決するまで即位を待っている状態となっている。

虎目 (とらめ)

天阿国白驟城の第二師団長を務める男性。若いながらも実力があり、水晶からも一目置かれている。水晶とは身分や立場を超えた関係性を築いており、純粋に水晶を慕っているため、つねに彼の役に立ちたいと思っている。そのため、虎目自身が水晶の側近だと言い張り、水晶を守ろうとしているが、水晶からは側近であることを認めてもらっていない。水晶が婚姻したと聞いて駆け付けた際、妃として琥珀を紹介されたが、皇子のとなりにふさわしいのは自分であるとして頑(かたく)なに認めようとしなかった。さらに、琥珀に勝てば自分を側近として認めてほしいと言い出し、水晶の制止を無視して琥珀に勝負を挑んだ。結局、琥珀に相手にされなかったうえ、水晶が虎目を側近として認めないのは友人として大切な存在だと思っているからだと諭され、琥珀を妃として認めざるを得ない状況となった。それ以来、水晶の妃としてふさわしくないと思ったら、いつでも琥珀を倒しに行くと公言。結局、琥珀をライバル視し続けており、何かと張り合っている。

真珠 (しんじゅ)

天阿国の白驟城から西にある飛雨城で暮らす皇族の血を引く姫。雅楽では笛を得意としている。生まれながらにして高貴な姫君で、美しく優美な佇まいながら、少々棘のある物言いをする。白驟城で開催される茶会に参加するため、水晶のもとを訪れた。次期龍皇の妃の立場を手に入れようとしつこくせまったが、水晶がなびくことはなかった。短気な性格で、女官として接していた琥珀が水晶の妃だとは知らなかったため、琥珀からの挑発に乗せられることが多く、そのたびに失態をさらしている。ある者からの命令によって琥珀から妃の座を奪い、その命を奪おうとしていたが、結局失敗に終わる。その企てが明らかになり、白驟城に捕らわれることになったが、その黒幕が誰なのかはわかっていない。御影の里の惨劇の際、水晶の側近として命を失った柘榴は叔父にあたる。

璃玻 (あきは)

御影の里で暮らしていた男性。琥珀と仲がよく、惨劇が起きるまではいっしょに山歩きをしていた。顔立ちが水晶にそっくりで、龍皇の器の証である龍の紋が右腕に刻まれている。黒い龍をあやつることができる。

場所

天阿国 (てんあこく)

大陸の1/5の領土を誇る大国。白驟城には国王と皇族が住んでいる。天阿国を守るのは、雨を呼び大地を潤す守り神の水龍で、この国を統べる王は、水龍を従えることのできる唯一の龍皇であるとされている。現龍皇は藍晶ながら、水龍を従える力はすでに息子の水晶に継承されており、水晶は次期龍皇として扱われている。龍皇の器には、体のどこかに龍の紋が浮かび上がっている。

御影の里 (みかげのさと)

天阿国の都から遠く離れた場所にある山間の小さな村。琥珀の生まれ育った場所。5年前、国を守るはずの水龍が引き起こした水害が原因で、御影の里の村人もろとも水底に沈んでしまい、生き残ったのは琥珀だけだった。琥珀は水龍が暴れる姿を目撃したが、水龍によって御影の里が沈められことは琥珀以外誰も知らない。この惨劇以来、地盤が緩んで危険という理由で、藍晶の指示により、この区域へのいっさいの立ち入りが禁じられている。さらに、その区域の湖には被害に遭った村人の怨念が渦巻いて黒い影となって姿を現すとの噂(うわさ)が広まることになった。

書誌情報

龍皇の影姫 5巻 白泉社〈花とゆめコミックス〉

第3巻

(2022-11-04発行、 978-4592221050)

第4巻

(2023-06-05発行、 978-4592221616)

第5巻

(2024-01-04発行、 978-4592221623)

SHARE
EC
Amazon
logo