あらすじ
第1巻
タケウチ製薬株式会社の総務課に勤める受付嬢の谷村ひかるは、「男と女はかつて一つのりんごだったため、失われた半分を探し求めている」という逸話を信じており、自分にピッタリ合う人と出会う事にあこがれていた。一方で、「25歳を過ぎたら結婚は無理」とされる総務課において最年長になってしまい、これからの仕事に不安を感じるようになっていた。そんなある日、本社に京都の事業所からMR(医療情報担当者)である新堂雅也と天野英史が訪れる。新堂とひかるは高校時代同じバレーボール部に所属し、当時、ひかるにとって新堂はあこがれの先輩であり、新堂にとってもひかるは気になる存在だった。二人は急接近して惹かれ合っていくが、ひかるの後輩で社内一の美女と評される泉奈津子が、新堂を紹介してほしいと言い出す。ひかるの親友で同期の八木静は、「奈津子は人の男を奪うクセがあるから気をつけろ」とひかるに警告するが、奈津子はあの手この手で新堂に接近していく。しかし新堂は、奈津子の誘いに乗らず、ひかるに真っ直ぐに思いを向け、そんな新堂の事をひかるも心から愛するようになる。一方の奈津子は、新堂がMRとして出入りする京阪医大の馬場に母親を診察させ、馬場に取り入る事で新堂への接近を図る。さらに奈津子は、新堂に噓を吹き込んでひかると別れさせようとするが、そんな事は関係なく、新堂はひかるにプロポーズするのだった。そんな中、新堂を奪う策がうまくいかずいらいらする奈津子に対し、奈津子の本性をいち早く見抜いた天野は、人のものに手を出すのをやめるよう釘を刺す。
第2巻
新堂雅也の会社の同僚にも紹介され、谷村ひかると新堂は周囲も公認の仲となった。だが、新堂の多忙さと、仕事でキャバクラなどに出入りする事などから、ひかるは結婚してもうまくやっていけるか不安になっていた。しかし、新堂を信頼する天野英史の計らいで、新堂の仕事する姿を見る事ができ、新堂の仕事に対する前向きな姿勢に胸を打たれ、新堂を支えていこうと決心する。結婚に向けて動きだし、ひかるは新堂に「結婚式は京都駅に設けられたガーデンウェディングスペースで挙げたい」と話す。一方、二人の仲を邪魔したい泉奈津子は、まずはひかるが総務課で孤立するよう仕向ける。同僚達からいじめを受けて仕事を押し付けられるひかるだったが、親友の八木静と力を合わせて仕事を成功させる。ひかると静を仲間割れさせる事に失敗し、新堂とひかるの仲を引き裂くため次の行動にでる奈津子。自分に好意を持つ馬場を利用して、休日に新堂と三人で出掛ける事に成功する。奈津子のおかげで、これまで努力しても営業がうまくいかなかった相手である馬場と接近できた新堂に対し、奈津子は営業に協力した恩を着せ、色仕掛けで迫る。しかし新堂は、ひかるを愛しているからと、その誘惑を頑として断る。一方、ひかるは偶然にも近所に住んでいる事が判明した天野に、新堂の仕事姿を見せてくれた礼を言い、第一印象は最悪だったが、悪い人ではないと思うようになる。
第3巻
新堂雅也は谷村ひかるの家族に会い、結婚の意思を伝えた。仕事もプライベートも順調で、二人の結婚は秒読みの段階であった。そんな中、仕事の取引相手である馬場と良好な関係を築いた新堂は、休日に彼の子供を預かる事になる。新堂と共に馬場の子供の面倒を見る事になったひかるは、有名幼稚園の受験勉強漬けで苦しんでいる馬場の子供を見かねて、塾をさぼらせてしまう。だが、ひかるの勝手な行動に激怒した馬場は新堂との契約を破棄し、会社に損害を及ぼす事態にまで発展してしまう。そんな中、泉奈津子の説得により馬場は怒りを鎮め、その功績から、周囲は新堂にひかるより奈津子と付き合うべきだと忠告する者まで現れる。そんなある日、新堂は奈津子が母子家庭であり、アルコール中毒の母親に苦労している事を知るのだった。 その後も新堂とひかるは馬場に謝罪を重ねていたが、ある日、馬場は急に態度を変え、契約破棄を完全に撤回する。その理由は、奈津子が馬場にホテルに連れ込まれそうになって逃げた時に事故に遭ったため、口止め料として契約破棄を撤回するよう馬場に持ち掛けていたのである。足に後遺症の残る奈津子に引け目を感じたひかるは、新堂との別れを選択するのだった。
第4巻
谷村ひかるに別れを告げられた新堂雅也だったが、絶対に別れないと宣言し、自分の両親にひかるを紹介しようとする。だが、新堂の実家にもすでに泉奈津子の手が回っていた。新堂の彼女のフリをして新堂の実家を訪れた奈津子は、新堂の家族の気持ちも摑み、ますます新堂は逃げ場を失くしてしまう。また、会社中に奈津子のケガの事が広まり、新堂は「女子社員をケガさせておきながら責任を取らない男」と噂され、ひかるもまた「奈津子を無視して強引に結婚を進める女」と言われてしまう。ひかるは新堂の立場を考え、再び新堂に二度と会わないと別れを告げる。こうして奈津子と結婚する以外の選択肢をなくした新堂は、心の中ではひかるを愛しつつも奈津子と結婚し、出世のためだけに生きる事を決意するのだった。だが、これによりひかるは心身共にボロボロになり、ストレスからアトピーを発症してしまう。そんな中、天野英史にハッパをかけられたひかるは元気を取り戻す。そして、自分のアトピー体験からスキンケア商品を作りたいという思いを抱くようになったひかるは、新たに会社が設立したスキン&ヘルスケア事業部に異動し、新たな一歩を踏み出す。
第5巻
スキン&ヘルスケア事業部に異動し、谷村ひかるは新しい生活を始めたが、部長の赤堀かおりや同僚からは、総務部出身という事で、畑違いだと受け入れてもらえない。本当にいい商品を作りたいという思いから、アンケートなど独自で行動を始めたひかるだが、営業経験がないため、どのようにしたらよいのかわからずにいた。天野英史は、前向きに努力するひかるに心打たれ、営業のやり方をアドバイスするようになる。そしてひかるの仕事への熱意や姿勢を見るうちに、赤堀や同僚達も次第にひかるを認めていく。真摯に営業に励み、順調に仕事をこなしていくひかるだったが、ある日、会社のイベントで奈津子と新堂に遭遇してしまい、奈津子の良妻ぶりを見せつけられて打ちのめされる。そんなひかるを天野は、ぶっきらぼうながらもさりげなく気遣う。徐々に天野と打ち解けていくうちに、ひかるは、酒癖が悪く暴力な父親と身体の弱い母親のいる大変な家庭環境で天野が育った事、小学校の体育館で子供に少林寺拳法を教えている事など、天野のさまざまな一面を知る。そして彼の事を心から尊敬し、信頼するようになる。
第6巻
新堂雅也を忘れるため、谷村ひかるは仕事に打ち込んでいた。一方、新堂もひかるへの思いを断ち切るように仕事に打ち込み、次第に社内の派閥争いに巻き込まれていく。軌道に乗り始めたスキン&ヘルスケア事業部だったが、利益を上げるためマーケティングマネージャーとして新堂が就任する事になる。実は、常務と専務の派閥争いで専務側についた新堂は、常務の提案でできた事業部を成功させるわけにいかず、専務側の手柄にするために送り込まれたのであった。消費者のために本当にいいものを作って売りたいひかると、専務の手柄のため何が何でも成果を出したい新堂は、その理念の違いで敵対する関係になってしまう。相手の事を一番に考える天野英史の営業とはまったく異なる、新堂の人間味のないやり口を目の当たりにしてひかるは落ち込むが、冷たい中にも温かさがある事を知り、振り切ったはずの気持ちを再燃させてしまうのだった。そんなある日、いっしょに営業に出掛けた二人は土砂崩れに遭遇し、地方に取り残される事となった。ホテルの部屋が一室しか空いていないため、新堂とひかるは同じ部屋で一夜を過ごす事になってしまう。その事実を知った泉奈津子は、ひかるに新堂を奪われると焦り、新堂を離さないために子供を作ろうとする。新堂がひかるを忘れていない事を知っている奈津子は、ひかると同じ香水を身につけ、酔った新堂にひかるだと錯覚させて新堂に抱かれる。
第7巻
谷村ひかるは、専務の差し金で新堂雅也が赤堀かおりの手柄を奪おうとしている事に気づく。その事実を赤堀に伝えた事で、新堂と真っ向から対立する事となってしまう。落ち込むひかるを、天野英史は自分の教える少林寺教室のクリスマスパーティに呼んで励ます。だが、ひかるが信頼していた赤堀は、手段を選ばないやり方でスキン&ヘルスケア事業部を立て直す新堂に手柄を奪われ、とうとう事業部を追い出されてしまう。泉奈津子は、ホームパーティーを開いてひかる達を招待し、わざとひかるの前で妊娠した事を明かす。もう新堂の事はあきらめたと思っていたひかるだったが、妊娠の事実を知り、新堂を振り切るため一層仕事に打ち込む決意をする。そんな時、天野が少林寺拳法教室を辞めた事を知り、ひかるは心配して天野の自宅を訪れる。アルコール中毒で問題を起こす父親と、それに逆らえない母親と暮らす大変さを目の当たりにし、いつも平気そうな顔をしている天野が、本当は辛い思いをしている事を知る。一方、子供ができた事ではしゃぐ奈津子だったが、奈津子の母親が新堂の両親にお金をせびるなど、非常識な行為を繰り返すようになる。自分の母親が迷惑をかける事で新堂に捨てられるのではと不安になり、必死にいい嫁を演じる奈津子だったが、実は妊娠が勘違いだった事がわかり、子供なしでは新堂をつなぎとめられないと絶望する。そんな時、ひかるは新堂といっしょに化粧品の営業の一環として産婦人科に訪れていたところを、奈津子の知り合いに目撃される。これにより、奈津子はひかるが新堂と不倫し、さらに妊娠していると誤解してしまう。町中で偶然声会った奈津子に、何気なくラベンダーを薦めたひかるだったが、ラベンダーが妊娠中にはよくない事を知り、ラベンダーを使わないよう奈津子にFAXを送る。ひかるが妊娠していると思い込み、嫉妬に狂った奈津子は、ひかるを追い詰めるために、自分が妊娠していなかった事実を隠し、「ひかるに薦められたラベンダーを使ったせいで流産した」と新堂や周りに噓をつく。
第8巻
泉奈津子が自分が薦めたラベンダーのせいで流産したと知った谷村ひかるは、八木静や天野英史から励まされるものの、罪悪感で苦しむ日々を送っていた。そんなある日、偶然帰り道でボロボロになっている天野の母親を見掛け、励ますために自分の持っていた商品を使って簡単なエステを施す。ひかるに励まされて元気を取り戻した母親を見て、天野もひかるに感謝し、ひかるもまた、もっと消費者のために頑張りたいと元気を取り戻す。一方、ひかるが妊娠してると思い込んでいる奈津子は、お金を貸す代わりに母親にひかるが流産するよう依頼する。そんな中、あと3か月でスキン&ヘルスケア事業部から異動する事が決まったひかるは、最後に大きな仕事を取りたいと、舞妓に自社の商品を使ってもらう事で知名度を上げる事を思いつくが、なかなかうまくいかない。ある日、ひかるは天野といっしょにいる時にバイクのひったくりに遭うが、実はそのひったくりは奈津子の母親の知り合いの男であった。計画が失敗した事がわかった奈津子は次の作戦に移るために、妊娠中絶薬を調べていたところを新堂雅也に見られてしまう。奈津子の動きを怪しみ始める新堂。一方、ひかるは舞妓に話を聞いてもらうよう、自腹を切ってアプローチを続けていた。そんな時、静から「天野の事が本気で好きだ」と打ち明けられるが、ひかるは「うまくいくよう応援する」と答える。
第9巻
谷村ひかるは舞妓に何度もアプローチするものの、なかなか自社の化粧品を使ってもらうまでには至らなかった。舞妓達が「お母さん」と呼ぶ女性に認められなければ、使用する事は難しいと言われるものの、「お母さん」にはいっさい拒否され、なかなか会う事ができないでいた。行き詰ったひかるが、いつものように天野英史に相談しようとするが、八木静が天野にアタック中のため遠慮して避けるようになる。新堂雅也は、残業して偶然ひかると二人きりになった時に、改めてひかるが好きだと実感し、思わず抱きしめてしまう。新堂は自分の本当の気持ちに気づいて戸惑いながらも、ひどい母親に苦しめられ、捨てられる恐怖に怯える泉奈津子を見放す事もできないでいた。そんな時、静の計らいで新堂、天野と四人で飲む事になったが、天野は電話を受けて急に席を外してしまう。様子がおかしい天野を三人で追いかけたところ、奈津子の母親の経営するスナックでお金を渡しているところを見てしまう。それは、天野の父親がスナックで暴れた弁償代であり、奈津子の母親が天野に請求していたものであった。その店で偶然、ひかるを襲ったひったくりのバイクが停めてある事に、天野とひかるは気づく。そしてひかる達は店に来た男と奈津子の母親を問い詰め、ひったくりが奈津子の企みだった事を知る。奈津子を呼び出して問い詰める新堂だが、奈津子は母親が勝手にやった事だとシラを切る。
第10巻
泉奈津子の恐ろしさに気づいた新堂雅也は、別居に踏み切った。一方、谷村ひかるも自分を襲った事故が奈津子の仕組んだものであった事を知り、また何かされるのではと心配な日々を送っていた。舞妓に協力依頼を断られ続けていたひかるだったが、ある日、偶然舞妓が必死に稽古する様子を見て、自分が今まで舞妓の華やかな外見しか見ていなかった事に気づき、猛省する。舞妓の世界について一から勉強し、再度アプローチするひかる。その努力が少しずつ舞妓達にも伝わりはじめ、ますます営業に力が入るひかるを、天野英史が何度もサポートしてくれるのだった。その様子を見て、ひかるの気持ちが天野に向いているのではと焦った新堂は、ひかるを抱きしめてずっと愛していたと告げ、奈津子と別れてひかるとやり直す決意をする。一方、ひかるを排除したい奈津子は、天野に思いを寄せる八木静に、天野が好きなひかるを排除するため、協力を持ち掛ける。そんな中、ひかるは舞妓の協力を得られないままスキン&ヘルスケア事業部の最終出勤日を迎えた。百貨店で行うイベントで、予定していた広告塔のアーティストにドタキャンされてしまった事で、ひかるは社運のかかったイベントの失敗を覚悟する。しかし、そのピンチをひかるが営業し続けた舞妓達が救う。ひかるの誠意を認めた彼女達が、大物アーティストの代わりを務めてくれた事で、イベントは大成功に終わるのだった。
第11巻
医療食品事業部に異動した谷村ひかるは、患者が楽しく食事するための医療用食品を作るという事業部のコンセプトに感動し、新しい仕事も頑張ろうと心を新たにする。一方、ひかるとやり直すために泉奈津子に離婚を持ち掛ける新堂雅也だが、奈津子は頑なにその申し出を受け入れない。ひかるはこれまでのように天野英史に仕事の事を相談するが、新堂がひかるとヨリを戻そうとしている事を知る天野は、「新堂を頼れ」とそっけない態度を取る。これまでのように天野と接する事ができない事に、ひかるは寂しさを感じる。ある日偶然、奈津子の母親が倒れるところに遭遇してしまったひかるは、彼女を病院へ連れていき、そこで奈津子と母親の関係が険悪である事を初めて知る。さらにひかるは奈津子から、八木静が天野にふられた事実を聞かされ、親友である自分に話してくれなかった事にショックを受ける。そんな時、タケウチ製薬株式会社で最も売れている肝臓の新薬、ヴィンザードが、副作用として糖尿病を引き起こしてしまう可能性がある事に気づいた天野は、新堂にのみその事実を打ち明け、一人で調査を始める。新堂は自分を派閥に入れてくれた専務にその事を打ち明けるが、自身の出世が大事な専務は、開発に膨大な時間とお金をかけた薬にそんなはずがない、と取りつく島もない。一方のひかるは、自分の気持ちが新堂と天野どちらに向いているのかわからなくなって悩んでいた。そこへ、静から協力を了承する連絡を受けた奈津子は、ひかるを呼び出して静の裏切りを目の当たりにさせようとする。しかし、静は、自分のせいで奈津子が流産したと苦しむひかるを救うため、奈津子に協力するふりをしていただけだった。静は総務課のポジションを利用して奈津子の産婦人科の通院記録を調べており、奈津子の流産が噓であった事を明かし、ひかるの心を救うのだった。
第12巻
ヴィンザードの危険性を訴え続けた新堂雅也は専務の反感を買い、製品統括部に異動させられ、ヴィンザードを担当するよう命じられた。社内で一番売れているヴィンザードの管理を任され、周囲には大出世したかのように見られる新堂だったが、その立場は副作用を疑っている薬を、誰よりも売らなければならないという辛いものであり、陰で一人調査を続ける天野英史とは対立する立場となってしまう。病院に通って医療食品の勉強をしていたひかるも、ヴィンザードを使用した患者の血糖値が上がる事に疑問を持ち始め、偶然天野がヴィンザードを調べている事を知り、副作用があるのではと気づく。しかし、ヴィンザードはすでに日本医療界の主流となっており、天野の行為は次第に会社への背信と見なされるものとなっていく。本当に患者のためになる仕事がしたいと考える谷村ひかるは、新堂に背く事になるにもかかわらず、天野の調査に協力するよう動き出す。アンケートを独自で行った結果、副作用があるという天野の推測が正しいと確信したひかるは、天野と二人で新堂にヴィンザードの定期報告書にこの事実を記載するよう頼み込む。しかし、その後すぐにヴィンザードの副作用の事がニュースとして取り上げられてしまう。世間から薬の副作用で叩かれ、新堂は責任者として記者会見を開く事になった。その会見で、自分達の報告内容を新堂が報告書に記載していない事を知り、天野とひかるは新堂の裏切りに愕然とする。
第13巻
タケウチ製薬株式会社は、ヴィンザードのニュースにより世間の信頼を失い、ほかの薬も売れなくなり、とうとう集団訴訟される事態にまで陥ってしまう。すでに社長となっていた専務は、副作用を疑っていた事を口外しないよう天野英史と谷村ひかるに打診する。一方、新堂雅也に強く離婚を突き付けられて激高した泉奈津子は、社内にヴィンザードの副作用を疑っていたのに黙認してた人間がいた事、それがひかるである事をマスコミに漏らしてしまう。これによりひかると、彼女をかばった天野は、世間の非難を一身に浴びるようになる。その状況を利用し、「一社員が報告を怠ったために起きた事態であり、会社に責任はない」という釈明方法を考えついた社長は、天野とひかるに莫大な金を渡し、罪を背負って会社をやめるよう促す。これまで会社のために働いてきた新堂は、その状況に嫌気がさし、記者会見を開いてすべてを暴露し、会社を辞める事を決意。しかし、新堂の決意を知った天野は、ひかるも新堂もかばい、「自分一人が副作用に気づいていたが会社への報告を怠った」と説明し、責任を取って会社を退職してしまう。新堂は、自分を犠牲にしてまで新堂とひかるを守った天野の思いを汲み、会社のトップに登りつめて会社を変える事を宣言する。そんな新堂を支えたいと思ったひかるは、新堂とやり直す事を決意する。だが、新堂が離婚のため奈津子と改めて真剣に話そうとした矢先、奈津子の母親が倒れて危篤状態に陥る。奈津子は母親の手術を拒否し、新堂とひかるがやり直そうとしている事を知り、二人の目の前で自殺を図る。
第14巻
自殺を図った泉奈津子は、一命を取り留めた。目を覚ましても母親の手術を了承しない奈津子に、谷村ひかるは、奈津子の母親は、自分と新堂雅也の二人で面倒を見ていくと宣言する。それを聞き、ひかるには勝てないと悟った奈津子は自暴自棄になるが、見舞いに来た天野英史と話すうちに、母親の気持ちを初めて知る事になる。母親の孤独を理解した奈津子は、本当は母親に死んでほしくないという自分の気持ちと向き合い、手術を了承する。一方、新堂は、ヴィンザードの被害者と誠意をもって向き合っていかなければならないと考え、社長の意向に背いた行動を取るものの、社内には新堂を支持する人間がどんどん増えていく。そして、何もかもふっきれた奈津子は新堂とひかるを呼び出し、母親の面倒は自分で見る事、離婚を了承する事を告げるのだった。長く続いた奈津子との戦いが終わり、新堂とひかるの前には障害がなくなった。しかしそんな中、ひかるは八木静から天野が医療支援として何年かソマリアに行く事を聞かされる。これまで天野に何度も助けてもらった事を思い出し、ひかるは自分が本当に愛しているのは天野だと気づく。ひかるは新堂に天野が好きだと告げ、それを聞いた新堂も、自分の中に奈津子への思いがある事を自覚するのだった。
登場人物・キャラクター
谷村 ひかる (たにむら ひかる)
タケウチ製薬株式会社の総務課に勤める女性。年齢は27歳。「男と女は太古の昔一つの林檎だった」という「Half an appleの神話」を信じており、自分にピッタリ合う半分の林檎である「運命の相手」に出会う事を夢見ている。高校生の頃、バレーボール部の先輩である新堂雅也にあこがれており、10年の時を経て偶然再会した新堂と恋に落ちる。 明るく前向きな性格の持ち主。当初は総務課に勤めていたが、のちにスキン&ヘルスケア事業部、医療食品事業部へと異動する。
新堂 雅也 (しんどう まさや)
タケウチ製薬株式会社の京都事業所に勤めるMR(医療情報担当者)の男性。谷村ひかるの高校時代の部活の先輩。ハンサムで仕事ができるため、社内でも有名な存在である。偶然再会したひかるが、高校時代に好意を抱いていた後輩の女の子だったと気づき、本気で愛するようになる。会社にはバレーボール推薦で入社したものの、肩を負傷した事でバレーボールを続ける事ができなくなったため、なりふり構わずに仕事に打ち込むようになった。 同期である天野英史と仲がいい反面、天野の営業が薬の効能を説く正面からの正攻法であるのとは対照的に、接待をはじめとする、手段を選ばない営業方針で成績を上げてきた。そのため、営業成績はトップであるものの、社内には敵が多い。
天野 英史 (あまの えいじ)
タケウチ製薬株式会社の京都事業所に勤めるMR(医療情報担当者)の男性。薬剤師の資格も持っている。新堂雅也とは同期。不愛想かつぶっきらぼうな性格で、仕事には厳しい。酒癖が悪く暴力的な父親と、それに逆らえない気弱な母親という複雑な家庭で育った経験から、自分は女性と付き合わず、結婚もしないと決めている。少林寺拳法の有段者で、教室を開いて子供達に教えている。 バイクに乗るのが趣味。
泉 奈津子 (いずみ なつこ)
タケウチ製薬株式会社の総務課に勤める女性。谷村ひかるの後輩。容姿端麗で、会社でも有名な美女で、男性から人気がある。父親にも母親にも捨てられた過去があり、誰の事も信じられず、目的のためなら手段を選ばない性格。ひかるが社内で最も人気のある新堂雅也と付き合った事を妬み、当てつけに新堂を奪おうとしていたが、新堂の優しさに触れて本気で愛し、奪いたいと思うようになる。 アルコール中毒で借金を繰り返す母親に迷惑をかけられているものの、見放す事ができないでいる。
八木 静 (やぎ しずか)
タケウチ製薬株式会社の総務課に勤める女性。年齢は27歳。谷村ひかるとは、同僚にして親友。明るく姉御肌な性格で、ひかるからの信頼も厚い。あけすけな性格に見える一方、内面は女らしく、豪快に振る舞っているのも恥ずかしさからくるもの。そんな無理をしている自分に理解を示してくれる天野英史に思いを寄せるようになる。
馬場 (ばば)
京都の病院に勤める整形外科医の男性。新堂雅也の取引相手。気難しい性格で、MR(医療情報担当者)が馬場から仕事を取る事は不可能だといわれていた。泉奈津子の母親の担当医になった事をきっかけに、奈津子に思いを寄せるようになり、彼女の知り合いである新堂とも交友を深めていく。
奈津子の母親 (なつこのははおや)
泉奈津子の母親。スナックのママをしている。アルコール中毒で、いつも酒を飲んでは暴れており、奈津子と仲が悪い。身体を壊して男に捨てられたため、奈津子の住むアパートに転がり込んで来た。
赤堀 かおり (あかほり かおり)
タケウチ製薬株式会社のスキン&ヘルスケア事業部で部長を務める男性。入社してから20年間営業として活躍してきた、パワフルで前向きな性格の人物。当初は総務部出身という理由で谷村ひかるには期待していなかったが、前向きに努力する姿勢に心打たれ、次第に信頼するようになる。
その他キーワード
ヴィンザード
タケウチ製薬株式会社が開発した肝臓の新薬。効果が高く、副作用のない薬といわれ、会社の主力製品として発売していた。副作用として糖尿病を引き起こす可能性があるという因果関係が判明する。