100万円の女たち

100万円の女たち

売れない小説家の男性・道間慎は、月100万円の家賃を受け取る代わりに五人の女性達と同居する事になった。そんな中、殺人事件が発生。事件に巻き込まれた慎が真相を追ううちに、五人の女性達がどのような目的で集まったのかが次第に明かされていく。「ビッグコミックスピリッツ」'15年第51号から'16年第41号にかけて連載された作品。

正式名称
100万円の女たち
ふりがな
ひゃくまんえんのおんなたち
作者
ジャンル
サスペンス
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あらすじ

第1巻

31歳の売れない小説家・道間慎は、半年前から、鈴村みどり開菜々果小林佑希塚本ひとみ白川美波という、素性も知らない五人の女性達と同居生活をしている。ある日、何者かから招待状を受け取った彼女達は、毎月100万円の家賃を慎に支払うという条件で道間家に次々押し寄せ、慎はそれが、何らかの目的あってのものと悟りつつも、受け入れてしまったのである。そして慎は家賃を受け取る代わりに、彼女達にいっさい質問しないというルールが課せられ、ルールの範囲内で彼女達とコミュニケーションを取ったり、新たな家族としてネコを迎えたりと、それなりに楽しい日々を過ごしていた。そんなある日、慎は美波から自分の仕事場を見学しに来いと誘われる。

第2巻

鈴村みどりは男性経験のない事から、セックスをすれば何かが変わるのではと考え、全裸で道間慎に迫ろうとしていた。しかし慎は、みどりが焦るあまり衝動的な行動に出ていると気づき、みどりを諭す。こうしてみどりをなだめた慎であったが、その直後から、今度はなぜか塚本ひとみが不機嫌になり、慎は半年もいっしょに暮らしているにもかかわらず、自分は女性達の事が未だに何一つわかっていない事を実感するのだった。一方その頃みどりは、施設で暮らしていた頃の知人・神田武に大金を強請られ、困っていた。

第3巻

道間慎の新作『漂う感情』が無事完成した。そこで、慎のファンである塚本ひとみは『漂う感情』をベストセラーにするため、自分の素性を利用する事を思いつく。こうして文学賞「第50回 日本最優秀文学賞」の審査にもぐり込んだひとみは、審査員達に候補にもなっていない『漂う感情』を勧め、なんと『漂う感情』は本当に受賞してしまう。これによって慎は一気に注目の作家となるが、それを快く思わない森口竜市は、慎が殺人犯の息子である事をマスコミにばらすのであった。この日から慎は強烈なバッシングを受けるようになるが、竜市の思惑に反し『漂う感情』はますます注目を浴び、とうとう60万部を突破する大ヒットとなる。そんなある日、白川美波は、浴室で殺されている菜々果を発見する。

第4巻

開菜々果の死の直後、白川美波も殺されて、道間家は放火により全焼。道間慎達の同居は、これによって終了してしまうのであった。しかしみどりと慎は、美波が真犯人を特定したために殺されたのだと悟る。すぐそばにいた真犯人、そして理解しがたい殺人の動機。物語は思いもよらない展開をみせる。

メディアミックス

TVドラマ

2017年4月から6月にかけて、テレビ東京系列にてTVドラマ版が放送された。監督は藤井道人、脚本は山田能龍が務め、道間慎役を野田洋次郎、鈴村みどり役を武田玲奈、開菜々果役を新木優子、小林佑希役を我妻三輪子、塚本ひとみ役を松井玲奈、白川美波役を福島リラがそれぞれ演じた。

登場人物・キャラクター

道間 慎 (みちま しん)

31歳の男性小説家で、道間達之と道間加代の息子。前髪を眉上で切ったショートカットヘアで、無精ひげを生やしている。物静かで心優しい性格だが鈍感なところがあり、特に女性の気持ちを汲み取るのは苦手。開菜々果からは「ミッチー」、白川美波からは「小説」と呼ばれ、職業がら周囲には「先生」と呼ばれる事もある。 小説家を目指しながらアルバイトをしていた26歳の頃、父親・達之が母親・加代とその不倫相手、さらに警官の水口博を殺害するという事件が発生。その直後に小説家としてデビューしたが、家族が犯罪者となった事から周囲に嫌がらせをされるようになり、恋人にも去られ、以降は人とは極力かかわらずに生きて来た。機械操作が苦手で、小説は必ず手書きで書く。 また、特に連絡を取る相手もいないため、携帯電話は持っていない。テレビもインターネットも見ないため、開菜々果や広川彩音が有名人である事も知らなかった。代表作の「漂う感情」は「第50回 日本最優秀文学賞」を受賞し、100万部を超えるベストセラーとなった。

鈴村 みどり (すずむら みどり)

道間慎の同居人の一人で、女子高校生。年齢は17歳。前髪を右から左に向かって斜めにカットし、腰まで伸ばしたストレートロングヘアを頭の高い位置でポニーテールにしている。まじめで落ち着いた性格で、潔癖性なところがある。五人の女性達の中では一番朝が早く、好きな飲み物はアセロラドリンク。生のトマトが苦手。3歳の時に両親に捨てられ、施設で育つ。 神田武とはそこで出会い、施設独自のルールで、年上である武を「お兄ちゃん」と呼ぶように強制されていた。どうしても施設に馴染めず、約半年前、何者かから招待状を受け取り、四番目に道間家へやって来る事となった。

開 菜々果 (ひらき ななか)

道間慎の同居人の一人で、世界的な人気を誇る女優。年齢は20歳。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸の下まで伸ばした茶色のロングウェーブヘアにしている。マイペースでおっとりとしたつかみどころのない性格だが、敵とみなした人物には辛辣な態度を取る。五人の女性達の中では四番目に朝が早く、昼過ぎに起きる。好きな飲み物は牛乳で、エビはアレルギーで食べられない。 椅子集めが趣味で、眠る時も椅子で寝る。14歳の時に海外の作品で映画女優としてデビューし、以来世界中からオファーが殺到するほどの人気女優となる。しかし、どの事務所にも所属せず、フリーでの活動を貫いている事から、謎の多い人物として知られている。現在は、現在の自分の年齢に適したいい役がないという理由で休業しており、気ままに暮らしていた。 しかし約半年前、何者かから招待状を受け取り、三番目に道間家へやって来る。

小林 佑希 (こばやし ゆき)

道間慎の同居人の一人で、矢野景介の妻。年齢は24歳。「小林佑希」は、道間家にやって来た際に名乗った偽名で、本名は「矢野恵」という。前髪を目の上で切り、顎の高さで切り揃えたボブヘアにしている。目は釣り目で一重。寡黙でクールな性格で、やや他人を見下したところがある。そのため、開菜々果など、自分よりも頭が悪いとみなした人間には冷たい。 また、人命を何とも思っておらず、平気でおもちゃのように扱う。五人の女性達の中では二番目に朝が早く、食べ物の好き嫌いは特にないが、飲み物は基本的にほうじ茶しか飲まない。無職で、朝食後は夕方まで自室にこもっている。二番目に道間家へやって来た。

塚本 ひとみ (つかもと ひとみ)

道間慎の同居人の一人で、無職の女性。年齢は26歳。父親の塚本克樹は、11年前に亡くなった人気小説家の「荻江響」である。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸の高さまで伸ばしたストレートロングヘアにしている。左目の下にほくろがある。明るく親しみやすい性格。五人の女性達の中では三番目に朝が早く、昼過ぎに起きる。好きな飲み物は紅茶で、香草とコーヒーは苦手。 響が42歳の時に生まれるが、母親がひとみの出産時に亡くなり、以来55歳で響が亡くなるまで二人で暮らす。その後は響の知人である千葉のもとに身を寄せていたが、18歳から一人暮らしを始めた。生活費は克樹の印税で十分間に合っており、仕事をした事は一度もなく、その後は読書ばかりして暮らしていた。 また、この頃に慎の作品に出会い熱烈なファンとなる。そして約半年前、何者かから招待状を受け取り、一番に道間家へやって来た。同居開始後、慎を男性としても好きになり、密かに思いを寄せている。

白川 美波 (しらかわ みなみ)

道間慎の同居人の一人で、超高級コールガールクラブを経営する女性。年齢は30歳。前髪を額が見えるほど短く切ったショートカットヘアにしている。左目尻と、鎖骨の左側にほくろがある。歯に衣着せぬ性格だが、情に厚く面倒見がいい。五人の女性達の中では最も朝が遅く夕方に起きる。好きな飲み物はコーヒー。身体が締め付けられる事を嫌い、家の中ではいつも全裸で過ごしている。 仕事は夕食後、砂子が車で迎えに来てから向かう。約半年前、何者かから招待状を受け取り、五番目に道間家へやって来た。

桜井 誠二 (さくらい せいじ)

出版社「中学館」で、道間慎の担当編集を務める男性。年齢は36歳。前髪を額が見えるほど短く切ったショートカットヘアに、無精ひげを生やしている。明るく仕事熱心で、根気強い性格。慎とは、慎のデビュー時からの付き合いで、慎の作品を高く評価している。慎の作品が文学賞を受賞した際、報告の電話を掛けたのも桜井誠二である。インターネットが使えない慎のために、原稿はすべて道間家へ直接訪問して受け取っており、道間家の事情についても把握している。 そのため、鈴村みどり達五人の女性達全員と知り合いである。慎の作品を何としてでも売り出したいと考えており『漂う感情』が発売された際には、販売戦略として開菜々果と協力し、慎と菜々果の嘘のスキャンダル写真をでっちあげた。 その後は慎が数々の災難に遭い、創作意欲をなくしかけた時も慎を支え続ける。そして最終的に、よくも悪くも話題作となった『漂う感情』以外の慎の作品にも徐々に注目が集まり、重版が決まった事によって『漂う感情』だけではなく、慎の作品全体が評価されたと感じる。そして慎と喜び合い、今後も作家と編集者として付き合っていく決意を新たにした。

花木 ゆず (はなき ゆず)

人気小説家の男性で、年齢は30歳。前髪を目の上で切ったウルフカットヘアに、ピアスをしている。明るく自己主張の激しい自信家。小説家という職業に強い使命感を感じており、人々がうまく言葉にできない感情を、自分が文章にする事で代弁するのが役目だと考えている。結果、自分が書きたいもの、面白いと考えるものではなく、理屈に当てはめて考えた、売れると思われるものを書いて活動している。 また、この創作方法が成功しているため、自分のファンを見下したところがある。完璧主義者で、自分の作品に他人が関与する事を嫌う。そのため、自作が出版される際は装丁デザインも担当し、映像化される際にはキャスティングと脚本も務めるという徹底ぶりを見せる代表作は『のんきな救世主』『セカイロン』。

森口 竜市 (もりぐち りゅういち)

文芸評論家の男性で、年齢は34歳。前髪を左寄りの位置で分けて、肩につくほど伸ばしたセミロングヘアに、眼鏡をかけている。他人を見下したところのある、批判的で嫌味な性格の持ち主。文芸とサブカルチャーにおいて、自分が知らない事はないと自負しており、自分の価値観こそが正しいと考えている。そのため花木ゆずの作品は好きだが、道間慎の事は作品も人間性自体も毛嫌いしているため、何かにつけて二人を比較しては慎をこき下ろし、攻撃的な態度を取る。

小島 愛子 (こじま あいこ)

高級ソープランド「COMFORT」で働く女性で、店では源氏名の「ほたる」を名乗っている。年齢は28歳。前髪を眉上で切り揃えた、肩につくほどのセミロングヘアにしている。下がり眉でたれ目。道間慎のお気に入りのキャストである事から慎とは親しく、悩める慎の支えになっている。慎の事をよく理解しており、時に鋭い指摘やアドバイスをする。

道間 達之 (みちま たつゆき)

道間慎の父親で、年齢は56歳。道間加代の夫でもある。前髪を額が見えるほど短く切ったショートカットヘアにしている。5年前のある日、妻の加代が不倫している事を知り、それが許せずに家から刃物を持ちだす。そして加代の不倫相手である土井守の自宅へ行き、室内にいっしょにいた守と加代を殺害した。その際、加代があげた悲鳴により警察が駆けつけるが、それでも加代を刺し続ける事をやめなかったため、止めに入った水口博と揉み合いになり、誤って殺害してしまう。 これによって三人の人間を殺した事となり、逮捕される。その後、すんなり罪を認めた事で、一審で死刑が確定した。現在は拘置所におり、一日中正座をして過ごし、食事もろくに取らず、慎が差し入れた小説も読まずに静かに過ごしている。

道間 加代 (みちま かよ)

道間慎の母親で、道間達之の妻であり故人。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、肩につくほどの外はねセミロングヘアにしている。5年前、土井守と不倫関係にあり、それに激怒した達之の手によって刺殺された。

砂子 (すなこ)

白川美波の部下で、美波の経営する超高級コールガールクラブで働く男性。前髪を上げて額を全開にし、顎の高さほどまで伸ばしたストレートボブヘアを、首の付け根の位置で一つに結んでいる。たれ目で三白眼。目が細く、目を閉じているように見える事が多い。寡黙で落ち着いた性格で、美波に強い恩義を感じている。また美波の運転手も務めており、毎日美波の出勤時間になると道間家を高級外車で訪れる。 美波のコールガールクラブの事務所兼待機所は、表向きは砂子の自宅という事になっているため、実質この場所の管理も行っている。

神田 武 (かんだ たけし)

鈴村みどりの知人で、みどりと同じ施設で育った男性。年齢は28歳。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸の上まで伸ばしたストレートロングヘアにしている。釣り目で三白眼で目つきが悪く、ピアスをしている。単純で幼稚な性格の持ち主。施設で暮らしていた際、施設独自のルールで、年下であるみどりからは「お兄ちゃん」と呼ばれていた。 そのためみどりとは血のつながりはないが、兄であるかのように振る舞う事がある。

水口 博 (みずぐち ひろし)

水口栄子の息子で故人。前髪を真ん中で分けて額を見せたストレートショートカットヘアにしている。たれ目で太眉。5年前、通報を受けて土井守の家へ向かった際、道間加代の身体を刃物で刺し続けている道間達之を止めようと揉み合いになる。その際、喉元に刃物が刺さり、26歳で亡くなった。小学生の頃に父親を亡くしており、栄子一人に育てられた。

水口 栄子 (みずぐち えいこ)

水口博の母親で、年齢は54歳。前髪を額が見えるほど短く切って、右下がりになるようカットした、ベリーショートの髪型をしている。博が小学生の頃に夫を亡くし、以来一人で博を育てた。しかし5年前、道間達之によって博が殺害されてからは、一人で暮らしている。そのため、達之とその家族である道間慎に強い恨みを抱いており、毎日慎の自宅宛てに、慎と達之を中傷するFAXを送り続けている。 だが、月命日に線香を上げに自宅へやって来る慎に対しては、母親を殺された被害者遺族である事から、自分達は仲間のようなものであると語り、好意的に振る舞っていた。

三浦 菜穂 (みうら なほ)

出版社「中学館」で、花木ゆずの担当編集として働く女性。年齢は31歳。桜井誠二とは同僚である。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸の高さまで伸ばしたストレートロングヘアを首の付け根の位置で一つに結んで、眼鏡をかけている。担当編集としてゆずを支え、応援しているが、ゆずのわがままな言動には手を焼いている。また、ゆずが開菜々果のファンになり、対談を希望した際には、菜々果と親しい道間慎の担当編集である誠二に頼んで菜々果へ話を通してもらった。

矢野 景介 (やの けいすけ)

フィクサーとして絶大な富と権力を持つ男性で、年齢は71歳。表向きは、不動産業を営んでいる。前髪を額が見えるほど短く切ったベリーショートカットヘアにしている。68歳の頃に当時家政婦を務めていた、当時21歳の小林佑希に結婚を申し込んだ。1年以上前に脳梗塞で倒れ、現在は病院で意識不明の状態が続いている。

西村 健吾 (にしむら けんご)

43歳の男性。前髪を目の上で切ったショートカットヘアにしている。たれ目で目つきが悪い。3000万円の借金を背負っており、その借金を肩代わりしてもらうという条件で小林佑希に雇われる。

広川 彩音

人気アイドルグループのメンバーで、白川美波の経営する超高級コールガールクラブで働いている少女。前髪を目の上で切り、胸の高さまで伸ばしたロングヘアをツーサイドアップにしている。明るく人懐っこい性格。一晩600万円で会員達に抱かれており、道間慎とは、美波が自分の仕事場を慎に見学させたのがきっかけで知り合った。その際、美波が慎を自分の夫であると紹介したため、二人の真の関係は知らない。 花木ゆずとも知り合いで、雑誌の対談の仕事で知り合った。

ネコ

道間家で飼っている猫で、たれ目で灰色の身体をしている。道間慎ら六人がいっしょに暮らすようになって半年以上が経過したある日、塚本ひとみが自室の窓を開けたままにしていたところ、部屋に入って来たのがきっかけで飼う事になった。その際、命名会議が行われて結局名前は「ネコ」となり、以来そう呼ばれている。主にひとみと小林佑希が面倒を見ている。

場所

道間家 (みちまけ)

道間慎、鈴村みどり、開菜々果、小林佑希、塚本ひとみ、白川美波の六人が暮らす家。5年前、道間達之が殺人を犯すまでは、慎、達之、道間加代の三人で住んでいた。達之が拘置所へ行ってからは慎が一人で暮らしていたが、ある日謎の人物から女性達に招待状が送られた。そして招待状にある入居条件である、家賃として毎月28日に慎へ100万円を支払う事を飲んだみどり達五人が入居し、現在に至る。 慎含む住人達にはほかにも円滑に生活するためのルールがあり、まず五人の女性達に対して、素性など慎が質問をする事は禁じられている。夕食はみどりが帰宅後の19時頃、全員でとる。慎は家賃を受け取る代わりに全員の世話をしており、家政婦のような役割も担っている。 1階にはみどりとひとみ、2階には菜々果、佑希、美波の部屋がある。五人に部屋を与えた事により慎の自室はなく、執筆作業はリビングの机、眠る時はリビングのソファで眠っている。

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