あらすじ
第1巻
高校3年生の筒井光は、ある夏の日、遅刻したせいでプール掃除を命じられてしまう。さらに、いっしょに掃除をする相手は、非常に評判の悪い同級生の五十嵐色葉だったことに落胆する。色葉は、つねに何人もの男子と交際し、そのために女子には嫌われ、おまけに学校はさぼってばかりという、光の最も苦手とするタイプだった。それでも仕方なくいっしょに掃除をする光だったが、色葉に恋愛経験がまったくないことをからかわれ、ますます彼女への苦手意識を募らせる。しかしその日から、色葉に困っているところを助けられたり、逆に光が色葉を助けたりと、二人のかかわる機会が増えていく。そんな中、光は色葉に突然告白されるが、自分に自信のない光は冷たく断ってしまう。光はアニメやゲームが大好きなオタク気質で、コミュニケーションを取るのが苦手だったため周囲から虐げられてきたせいで、他人の好意を信じられなくなっていたのである。それでも言い過ぎたことを反省した光は、後日謝罪しようと色葉のあとをつけると、色葉が万引きの疑いをかけられている場面に遭遇。この誤解を光が解いたことで二人は和解し、今度は光からの告白で、二人は付き合うこととなる。だが、色葉はそこで半年後に転校が決まっていることを告げ、二人の期間限定の恋が始まるのだった。
第2巻
筒井光は五十嵐色葉と交際を始めたが、現実でのコミュニケーションの取り方が不慣れなせいで、具体的に何をしたらいいのかわからずにいた。さらに、色葉と過ごす時間が増えたせいで、唯一の友人、伊東悠人に淋しい思いをさせてしまい、ふがいなさを募らせる。そんなある日、光は転んだ石野ありさを助けたことがきっかけで、彼女に恋愛相談をするようになる。ありさは分け隔てないさっぱりとした性格で、コミュニケーションが不得手な光も、彼女とはなんとなく馬が合っていた。こうして二人は親しくなり、当初は二人の関係に嫉妬していた色葉や、人見知りの激しい悠人も加わり、四人はいい関係を築いていく。しかし、ここで新たな問題が発覚する。ありさは人のよい部分を見つけるのがうますぎるために騙されやすく、現在もありさのお金目当ての男性と交際していたのである。それでも光たちはありさの気持ちを尊重しようとするが、ある日偶然ありさの恋人の本音を聞いてしまったことで、色葉が激怒し、ありさは恋人と別れることとなる。こうしてありさの件は解決するが、その直後、光は見知らぬ男子に呼び出される。高梨みつやは色葉に思いを寄せており、光では色葉に釣り合わないと、因縁をつけてきたのである。そして光はみつやに理不尽に殴られ、さらに彼の策略により、変質者疑惑をかけられてしまう。
第3巻
筒井光は、迷子の高梨あんずを助けようとした際に高梨みつやに利用され、あんずを誘拐しようとした変質者だという噂を立てられてしまう。それでも光は、この原因はこれまで周囲の信用を得てこなかった自分にあると考え、すべてを受け入れていた。しかし、あんずが光の弟の筒井薫経由でこれを知り、偶然出会った五十嵐色葉に助けを求めたことで、色葉は事件の全容を把握する。一方のみつやも事態の大きさにさすがに反省しており、あんずと共に筒井家に謝罪するために出向いたことで、ひとまず事件は解決するのだった。だがその直後、光は買ったばかりのアニメ雑誌を紛失してしまう。これを拾って届けに来たのは、1年生の綾戸純恵だった。純恵もまたアニメファンで、同じ趣味を持つ光と親しくなりたいのだという。これがきっかけで二人はよく話をするようになり、さらに困っている純恵を光が助けたことにより、純恵は光への思いを強くしていく。一方の光には、現在別の悩みがあった。先日光は色葉と夏祭りに行ったのだが、その途中でなぜか色葉が機嫌を悪くしてしまい、それから二人の仲は気まずくなってしまっていたのである。それでもなんとか仲直りした光だったが、その直後、五十嵐家で色葉と二人きりになったことで気持ちが抑えきれず、色葉を押し倒してしまう。
第4巻
筒井光は五十嵐色葉を押し倒してしまったが、すんでのところで思いとどまり、帰宅した。これを深く反省した光はしばらく色葉と距離を置きたいと提案するが、色葉は強い不安を感じていた。光は自分とは距離を置きたがるのに、綾戸純恵とは変わらず親しくしていたからである。それでも色葉は、偶然純恵と話す機会を得たことで純恵の人柄を知り、さらに光や伊東悠人、石野ありさも交えて五人で食事をしたことにより、純恵となかよくなる。また、これがきっかけで、悠人は純恵が光に思いを寄せていることを知らないまま、純恵に惹かれていくのだった。そんな折、ありさが光たちを「出里キャンプ場」への旅行に誘う。ありさの叔父がここに別荘を所持しており、毎年この時期は掃除のアルバイトを頼まれているのだという。こうして光は、先日食事をした五人組と、ありさの強い希望で高梨みつやも加わり六人で旅行へ行くことになる。ここでも悠人は純恵への思いを募らせるが、純恵がやけどを負った際、真っ先に助けに入ったのは光だった。これを見た色葉と悠人は複雑な心境になり、これが伝播したのか六人は気まずい雰囲気になってしまう。そしてとうとうこの状況に耐えかねた純恵は、光に思いを寄せていることを色葉に打ち明けるのだった。
第5巻
五十嵐色葉は、綾戸純恵の筒井光への思いを知ったことで、ショックを受けて夜のキャンプ場に飛び出してしまう。光はすぐさま追いかけ色葉を見つけるものの、原因が自分と色葉、純恵の三角関係にあるとは知らなかった。結局、なぜ色葉が飛び出していったのかはわからないまま、旅行は終わってしまう。後日、このままではいけないと考えた光は色葉と改めて話し合おうとするが、綾戸純恵に呼び出され、告白される。これによってようやく事態を把握した光だったが、動揺してその場から逃げ出してしまう。その後も困惑する光だったが、伊東悠人や石野ありさに叱咤激励され、純恵との話し合いの場を持つことになる。そしてそこに色葉も呼び出し、二人に自分の正直な気持ちを聞いてもらったうえで、純恵の気持ちには応えられないことを伝えるのだった。こうして光と色葉は仲直りするが、その直後、光は現在悠人にも思いを寄せる女性がいることを知る。しかしそれが誰なのかは教えてもらえず、さらに悠人は、告白前からふられているに等しいと微妙なことを言い出す。光はこれを気にしつつも、ひとまず悠人が自分から話してくれるのを待つことにする。
第6巻
五十嵐色葉の義弟の五十嵐千夏が海外留学から戻ってきた。筒井光は、そんな千夏に色葉の恋人として認めてもらえないだけでなく、いきなり殴られたり、冷たい態度を取られたりと散々な思いをする。そこで光は、どうしたら千夏に認めてもらえるのかと悩み、石野ありさに相談。話し合いの結果、色葉に指輪をプレゼントすることが決定し、その資金を稼ぐため、光は遊園地で着ぐるみのアルバイトを始める。そしてそれがきっかけで、伊東悠人の思い人が綾戸純恵であることを知るのだった。一方、無事に色葉にプレゼントをした光は、恋人として一歩前進するが、今度は悠人に友人として協力したいと思うようになる。そこで光は色葉、悠人、純恵でのダブルデートを企画するが、なぜかありさが不在だったことで、色葉と悠人は光の企みに気づいてしまう。その結果、光はおせっかいが過ぎて悠人を怒らせてしまうが、悠人に幸せになって欲しいという自分の気持ちをきちんと伝えたことで、友情は深まるのだった。これによって悠人は思い切って純恵に告白するが、ふられてしまう。光は落胆するが、悠人は勇気を出して告白できた自分に以前より自信が持てるようになっていた。
第7巻
綾戸純恵が伊東悠人をふったのは、筒井光に失恋したばかりで、今は精神的な余裕がないことが理由だった。これを知った悠人は純恵と距離を置くべきか悩むが、お互いに大切に思う気持ちは変わらず、ひとまず二人は、これからも友人として付き合っていくことになる。そんな秋のある日、文化祭の準備が始まるが、光はくじ引きで運悪く実行委員を務めることになってしまう。しかし、純恵も実行委員に立候補していたことから、文化祭に消極的だった悠人も副委員として立候補。そして出し物は、石野ありさが中心になってメイド喫茶をすることが決定し、3年A組は一気に慌ただしくなる。一方その頃、五十嵐色葉は、クラスメートたちからミスコンに出場するよう頼まれ、困っていた。色葉の3年C組では、打ち上げの経費を確保するために、ミスコン優勝を目指していたが、色葉以外にはめぼしい候補者がいないため、このままでは別段容姿が優れているわけでもない日下部が出場することになってしまう。しかし日下部に恥をかかせたくないクラス委員長は、優勝のためにも日下部のためにも色葉に出場して欲しいと懇願し、これに押し切られた色葉は、仕方なく出場を決意するのだった。それでも目立ちたくない色葉は、自分には決して投票しないようにと光たちに頼むが、その直後のくじ引きで、光はミスコンの審査委員長も兼任することになってしまう。
第8巻
文化祭が終わり、伊東悠人と綾戸純恵の関係も、以前より進展しているようだった。そんなある日、筒井光と五十嵐色葉は光の父親の筒井充が、見知らぬ女性と食事しているところを目撃してしまう。光は、自分同様目立たないタイプの充が不倫などできるはずもないと考えていたが、この疑惑はすぐに母親の筒井紀江の耳に入り、充は問い詰められる。しかし、充は謝るだけで詳しいことを話そうとはせず、業を煮やした紀江は離婚を決意。光か筒井薫のどちらかを連れて、実家のある北海道長万部町に帰ると言い出すのだった。こうして両親のけんかに巻き込まれた光と薫は、なんとか両親に仲直りしてもらおうと奔走するが、うまくいかない。一方その頃色葉は、充と偶然街で出会い、話すうちにやはり彼が不倫をするはずがないという思いを強くしていた。そこで色葉が筒井家に向かったところ、先日の女性が訪問して来る。彼女は充の部下の河野で、充に思いを寄せていることを正直に話し、いっしょに食事をしたことしかないと付け加える。こうして事態を把握した光は、充に紀江ともう一度話し合うように頼み込む。
第9巻
筒井家の離婚問題は解決し、伊東悠人と綾戸純恵も、紆余曲折を経て正式に交際を始めた。こうして筒井光と五十嵐色葉にも平和が訪れるが、石野ありさは、つねにみんなの問題に協力しているにもかかわらず、自分だけ恋愛がうまくいかないことに思い悩んでいた。ありさは変わらず高梨みつやにアプローチをしているのだが、一向に相手にされずにいたのである。そんなある日、ありさはみつやとデートすることになり浮かれるが、デート中に筒井薫と高梨あんずに遭遇。あんずに対して過保護なみつやは、二人がデートしているだけで怒り、耐え切れなくなったあんずは薫を連れて逃げ出してしまう。みつやは一人で薫とあんずを探そうとするが、放っておけないありさは協力を申し出て、無事二人を発見。みつやは、ありさの心優しく面倒見のよい一面に改めて触れ、二人は以前よりも少しだけ距離を縮めるのだった。しかし、そんな二人をただの友人関係だと思っている桜田が現れ、ありさに思いを寄せるようになり、思わぬ三角関係が発生するのだった。
第10巻
筒井薫は、改めて高梨みつやと話し合い、以前よりも高梨あんずとの関係を認めてもらえるようになった。一方の筒井光は、五十嵐色葉から次の連休旅行に行こうと誘われたものの、より深い関係になる覚悟を決められず、承諾できずにいた。しかし、色葉がガイドブックを熱心に読み込んでいることを知り、旅行へ行くことを決意して、お互いの両親の了承を得たうえで出かけることになるのだった。一方その頃みつやは、入院した母親のお見舞いの帰りに、偶然元恋人の亜紀に再会する。二人は中学時代に交際しており、亜紀は父親を亡くしたみつやを支えると宣言していた。しかしみつやが家事で忙しくなった途端疎遠になり、みつやにとっては、あまりよい思い出ではなかったのである。そんな亜紀に会ったことでみつやは落ち込むが、そこに現れたのが石野ありさだった。みつやの母親が入院したことを聞いたありさはすぐさま協力を申し出て、二人はその夜、あんずも交えて食事をする。そして、これがきっかけとなり、ありさとみつやは交際を始めるのだった。こうして連休が始まり、光と色葉、伊東悠人と綾戸純恵はそれぞれいっしょに過ごすが、セックスに前向きな色葉と純恵に対し、光と悠人は未だに踏ん切りがつかずにいた。
第11巻
連休中、伊東悠人と綾戸純恵はついに結ばれたが、筒井光と五十嵐色葉は進展せずに終わっていた。こうして10月になり、高校3年生の光たちは進路について話し合うが、色葉は何も語らず、光もまた卒業後になにを学ぶべきか、明確に決められずにいた。そして光は、色葉と過ごせる時間が残り少ないことを改めて実感し、今は受験勉強よりも色葉との時間を優先することを決意。そこで光は、筒井紀江からお金を借りて、色葉と思いつく限りの遊びを実行し始める。しかし悠人は、これに不安を感じていた。光は最近学校の補習講義に参加しないだけでなく、成績も落ちていたからである。これを聞いた色葉は光を心配しつつも、光が自分のために思い出作りをしようとしていることを知る。そして、海に遊びに行ったその日、今日は自宅には戻らずに近くの民宿に泊まろうと誘うのだった。その夜、お互いの気持ちを改めて伝え合った二人はとうとう結ばれるが、その日帰宅しなかったことが原因で、色葉は五十嵐千夏に叱られてしまう。さらに、このままでは光は色葉のために将来を棒に振ってしまうと指摘され、これに危機感を抱いた色葉は、あと一か月交際期間を残したまま別れを決意する。
第12巻
五十嵐色葉は、自分が脳に重い病気を抱えており、来月手術を控えていること、成功しても記憶障害が残る可能性があることを筒井光に打ち明けたうえで別れを告げた。一人残された光は自暴自棄になりかけるが、伊東悠人たち友人や家族に励まされて、無事に大学現役合格を果たす。そして、無理に色葉を忘れることはせず、今の気持ちを抱えて生きて行くことを決意するのだった。それから7年が経過し、25歳になった光たちは、社会人として日々忙しくしていた。そんなある日、石野ありさが高梨みつやの子供を妊娠し、結婚が決まる。光もまた、同僚の篠崎にアプローチされていたが、どうしても色葉を忘れられず、淋しい思いを抱えていた。だがそんな光のもとに、やはり記憶障害となり、光たちのことを思い出せないまま25歳になった色葉と、五十嵐千夏が現れる。
メディアミックス
実写映画
2018年9月、本作『3D彼女 リアルガール』の実写映画版『3D彼女 リアルガール』が公開された。監督は英勉、脚本は高野水登と英勉が担当した。筒井光役をM!LKの佐野勇斗、五十嵐色葉役を中条あやみが演じている。
TVアニメ
2018年4月から6月にかけてと、2019年1月から3月にかけて、本作『3D彼女 リアルガール』のTVアニメ版『3D彼女 リアルガール』が日本テレビ系列で放送された。監督は直谷たかし、シリーズ構成は赤尾でこ、キャラクターデザインは栗田聡美が担当した。筒井光役を上西哲平、五十嵐色葉役を芹澤優が演じている。
登場人物・キャラクター
筒井 光 (つつい ひかり)
波高校3年A組に在籍する男子。長めのもっさりとしたウルフカットに眼鏡をかけた、地味で目立たない容姿をしている。あだ名は苗字の「筒井」からとった「つっつん」。誠実でまじめな性格で、困っている人を放っておけないというお人好し。しかし、これまでアニメやゲームといった筒井光自身のオタク趣味を、周囲から気持ち悪いとからかわれ、虐げられ続けてきたことにより、極端に自己評価が低く、卑屈になってしまっている。そのため、高校3年生になっても伊東悠人以外にはまったく友人がおらず、家族にも将来を不安視される、暗く鬱屈とした日々を送っていた。そんな高校3年生の夏のある日、遅刻したことがきっかけで五十嵐色葉と知り合う。そしてその人柄を気に入られて、色葉と半年間限定で交際を始めることとなる。当初は周囲の評判を鵜呑みにして、色葉のことを不誠実な遊んでいる女性だと誤解していた。しかしすぐに色葉の本当の人柄に触れ、真剣に向き合うようになる。またこれをきっかけに、これまで親しんだ「2D」の世界だけでなく「3D」の現実世界での経験を積んでいくこととなる。成績は非常によく、手先も器用でイラストを描いたりフィギュアを作ったりしている。また、色葉と交際を始めてからは、邪念を払うためにお菓子作りに没頭するようになり、友人たちにさまざまなお菓子を振る舞うようになる。幸段中学校出身で、悠人とはこの頃からの付き合い。アニメ作品の中では「魔法少女 えぞみち」が大好きで、主人公キャラクターであるえぞみちと、心の中でよく会話している。
五十嵐 色葉 (いがらし いろは)
波高校3年C組に在籍する女子。腰まで伸ばした桃色のロングウェーブヘアにしている。スタイル抜群で非常に派手な美少女。綾戸純恵からは、筒井光の恋人であるという理由で「彼女先輩」と呼ばれていた。まじめで正義感の強い心優しい性格ながら、脳に重い病気を抱えている。そのため人生に投げやりになっているが、高校3年生の冬にアメリカで手術を受けることが決まっていることから、周囲と深くかかわろうとしていない。その結果、男子とは本気の付き合いをしないことから、女子には嫌われており、友達がいない。さらに、不特定多数の男性と遊んでいる、人間性に問題があるといった、あらぬ噂を立てられていることから孤独な日々を送っていた。そんな高校3年生の夏、手術を半年後に控えたある日、遅刻したのがきっかけで、光と出会う。さらに、光に困っているところを助けられたことで強い関心を持ち、半年間限定の交際を始めることとなる。一人でいることには慣れており、食事やカラオケなども平気で一人で出掛ける。また、周囲に左右されないはっきりとした自分の価値観を持ち、光や伊東悠人のオタク趣味にも偏見がまったくない。その反面、人とのコミュニケーションには慣れておらず、自分の思うことをうまく表現できない、不器用な一面がある。また実は嫉妬深く、光と交際を始めてからは石野ありさや、純恵への嫉妬に悩むようになる。
伊東 悠人 (いとう ゆうと)
波高校3年A組に在籍する男子。筒井光の友人でありクラスメート。金色のマッシュボブヘアに、つねに猫耳カチューシャを付けた、小柄な体型で中性的な雰囲気を漂わせている。のちに髪を切って猫耳カチューシャを外すが、綾戸純恵からは、「猫耳先輩」と呼ばれている。また、高校3年生の文化祭ではこの容姿を活かして「いとうぃる」の源氏名で女装して給仕を務めた。穏やかで心優しい性格だが、気弱なので周囲に合わせがちなのが災いして、中学1年生までは人に利用されることが多かった。しかし中学に入学してすぐに光に出会い、彼の存在がきっかけで無理に人に合わせるのをやめ、自分らしく生きるようになった。そのため光とは非常に気が合い、高校3年生になった現在もなかよくしていた。しかし、周囲には自分たちの趣味を理解されず、また極度の人見知りでもあることから、光と二人きりの閉じた学校生活を送っていた。だが、光が五十嵐色葉と交際を始めたことがきっかけで、色葉や石野ありさとも親しくなり、やがて純恵に思いを寄せるようになる。人の幸せを喜べる器の広さがあり、光と色葉の交際も応援している。しかし、二人が交際を始めたことで、光と過ごす時間が減ってしまったことを淋しく思うこともある。
綾戸 純恵 (あやど すみえ)
波高校1年A組に在籍する女子。筒井光の友人。園芸部に所属している。黒のマッシュボブヘアに眼鏡をかけている。一見地味に見えるが、実際は顔立ちもかわいらしくスタイル抜群。しかし、綾戸純恵自身はその自覚はまったくなく、周囲から地味な女性と見られていることから、自らの自己評価も低くなってしまっている。穏やかで心優しい性格をしており、おおらかな公務員の両親のもとでのびのびと育ったたため、中学2年生までは平穏に暮らしていた。しかし中学2年生のある日、初めて好きになった男性が、アニメキャラクターの「ドムイストン」であったことがきっかけで、急激に二次元の世界にのめり込むようになる。その結果、次第に周囲と話が合わなくなり、読書などに集中すると周りが見えなくなるために、感じの悪い女性だと誤解されるようになってしまう。それからは他人が怖くなり、自分をうまく表現できなくなってしまっている。波高校に入学してからは趣味の園芸に打ち込み、花壇の手入れのみが楽しみという、淋しい学校生活を送っていた。しかしそんなある日、光が落としたアニメ雑誌を拾ったことで、光に関心を持つ。そして、これがきっかけで光たちと親しくなり、やがて伊東悠人と交際を始めるようになる。アウトドア好きの両親に育てられたため、園芸だけでなく、釣りやキャンプにも精通している。
石野 ありさ (いしの ありさ)
波高校の3年A組に在籍する女子。筒井光の友人でクラスメート。桃色のストレートロングヘアを高い位置でポニーテールにしている。高校3年生の文化祭では「アリエール」の源氏名でメイド喫茶の給仕を行った。誰とでも分け隔てなく接する爽やかな性格をしている。特に、人のよい面を見つけるのが非常にうまく、世話焼きなところも相まって、誰とでもすぐになかよくなれる。しかしその反面、人の悪い面は見過ごしがちで、人に騙されやすい。そのため、恋愛にも強引なほど積極的でありながら、中々うまくいかずに歯がゆい思いをしている。光とは高校3年生の夏、校内で転んでしまったところを助けられたのがきっかけで親しくなり、これによって五十嵐色葉や伊東悠人たちともなかよくなった。また、その直後から光とかかわりを持つようになった高梨みつやを気に入り、積極的にアプローチするようになる。人の話に素直に共感し、光たちのグループでは恋愛相談に乗ったり、人間関係のトラブルの解決に積極的にかかわるなど、非常に面倒見がいい。みつやからは当初まったく相手にされていなかったものの、次第にその人柄が伝わり、徐々に親しくなっていく。食べることが大好きな大食漢で、料理を作るのも得意。
高梨 みつや (たかなし みつや)
波高校の3年D組に在籍する男子。筒井光の友人。桃色のふんわりとした短髪のイケメンだが、気難しいところがある。中学3年生の頃に父親が家を出ていき、それからは母親と妹の高梨あんずとの三人暮らし。そのため高梨家唯一の男子として、家族を支えなくてはならないという気持ちが強い。特にあんずに対しては、異常なほどに過保護である。わがままな性格で、プライドが非常に高いため、自分に非があっても素直に謝れなかったり、自分のプライドを傷つけた相手には理不尽に振る舞うなど、子供っぽい一面がある。以前から五十嵐色葉に思いを寄せていたが、高校3年生の夏、色葉が突然光と交際を始めたことに驚く。そこで光は色葉にふさわしくないと因縁をつけるが、次第に光の人柄に触れ、親しくなっていく。また、光経由で石野ありさと出会い、彼女に積極的にアプローチされるようになる。当初、筒井薫のことはあんずの友人として認識しており、光の弟であることは知らなかった。しかしその後に二人が兄弟であり、さらに薫があんずに思いを寄せていると知って敵視するようになる。そのため、筒井兄弟に対しては当たりが強いが、素直になれないだけで、内心では二人を認めてもいる。父親がいなくなってからは家事全般を担当しており、料理が得意。
五十嵐 千夏 (いがらし ちか)
五十嵐色葉の義弟の少年。うぐいす色のマッシュボブヘアにしたクールなイケメンだが、神経質なところがある。5歳の頃から色葉に思いを寄せており、色葉の病気のことも知っているため、色葉に近づく男性に非常に厳しい。色葉が高校3年生の夏を迎えるまでは海外留学していたため、色葉の交友関係については知らずにいた。帰国してすぐに色葉が筒井光と交際していることを知り、光では色葉にふさわしくないと考え、彼に冷たく当たるようになる。だが、その過程で光の人柄に触れ、考えを改める。そして、二人の期間限定の交際は光にとってはつらいものであり、色葉の態度は無責任なのではないかと思うようになる。
筒井 充 (つつい みつる)
筒井紀江の夫で、筒井光と筒井薫の父親。とある企業で部長を務める、研究者の中年男性。もっさりとした朴訥な人物で、癖のあるショートヘアに眼鏡をかけている。顔立ちは、息子たちとよく似ている。まじめで心優しく、誠実な性格をしている。しかし言葉が足りないことが多いため、誤解されやすい。学生時代から接着剤に関する研究を行っており、紀江とは20年前、靴を壊して困っている紀江を助け、靴を直してあげたことで知り合い結婚した。この時、研究に打ち込む姿が好きだと言われたことを、非常に嬉しく思っている。しかし、この言葉を真に受け過ぎた結果、紀江と距離ができるほど研究に没頭しすぎたことを後悔している。そんなある日、部下の河野に気に入られ時々食事するようになるが、これを周囲には不倫だと誤解されてしまう。
筒井 紀江 (つつい きえ)
筒井充の妻で、筒井光と筒井薫の母親。主婦の中年女性。癖のあるもじゃもじゃのショートヘアで、体型はややぽっちゃりとしている。かつては周囲も認める美形だったが、現在はすっかり太ってしまったため、当時の面影はまったくない。おおらかな性格で、細かいことは気にしない懐の深さを持つ。しかし、光のオタク気質とコミュニケーション下手なことについては非常に心配しており、やや手厳しく接している。しかし、光が高校3年生の夏、五十嵐色葉と交際を始めたことから、色葉を歓迎して応援するようになる。充とは20年前、靴を壊して困っているところを充に助けてもらい、研究に打ち込む充の人柄に惹かれて結婚した。しかしやがて仕事が忙しい充と距離ができてしまい、自分の体型も大きく変わってしまったことから、もう充には女性として見られていないのではないかと悩んでいた。そんなある日、充と河野の不倫疑惑が出たことで、離婚を考えるようになってしまう。北海道の長万部町出身。
筒井 薫 (つつい かおる)
筒井光の弟で、筒井充と筒井紀江の息子。小学生の男子だが、クールで大人びた雰囲気を漂わせており、気が強く理屈っぽい性格で、物おじしない。そのため口げんかが非常に強く、毒舌家でもある。相手が年上であっても、尊敬できない人物に対しては容赦がないため、光は言われっぱなしになることが多い。紀江同様、光のオタク気質やコミュニケーション能力のなさを心配しており、光の趣味にもあまり好意的でないため、手厳しく接している。しかし、光が高校3年生の夏、五十嵐色葉と交際を始めたことがきっかけで、次第に態度が軟化していく。友人の高梨あんずに思いを寄せており、のちに交際を始めるが、高梨みつやには反対されている。そのため、自分たちの関係に否定的なだけでなく、理不尽な態度を取りがちなみつやとは相性が悪く険悪な関係ながら、次第に認められるようになる。
高梨 あんず (たかなし あんず)
高梨みつやの妹。小学生の女子で、筒井薫のクラスメートでもある。ロングヘアをツインテールにした、快活でかわいらしい少女。明るく素直な性格で、みつやとも仲がいい。そのためみつやの愛情は理解しつつも、彼の過保護さには辟易することがある。筒井光とは、ある日迷子になっていたところを助けてもらうが、この状況を利用できると考えたみつやに指示されるままに声を上げる。これによって光が変質者扱いされることとなったが、のちに光と薫が兄弟であること、そして自分のために筒井家が困惑していることを知り、みつやと共に謝罪に出向いた。その時に五十嵐色葉と知り合った。薫に思いを寄せており、のちに交際を始めるが、みつやの妨害が激しいことに悩んでいる。魚が大好き。
ミカ
筒井光のかつての同級生の女子。顎まで伸ばしたボブヘアで、クールで意地の悪い性格をしている。アニメやゲームといったオタク趣味に理解がなく見下しており、当時イラストを描いていた光を馬鹿にしていじめていた。高校は光とは別の学校に進学したが、高校3年生の夏に偶然街で光を見かけ、再び意地悪する。しかし、それを偶然同じ店にいた五十嵐色葉に目撃され、反撃されることとなる。
五十嵐色葉の主治医 (いがらしいろはのしゅじい)
若い医者の男性。五十嵐色葉の主治医を務めている。中性的で穏やかな雰囲気を漂わせており、丸みのある短髪にしている。色葉が自らの脳の病気については隠しており、周囲には喘息であるとウソをついて病院に通っていることを知っているため、話を合わせている。筒井光とは、光が高校3年生の夏に知り合い、色葉との関係に悩む光に時には厳しいつっこみを入れつつも、温かく応援している。
日下部 (くさかべ)
波高校3年C組に在籍する女子。五十嵐色葉のクラスメート。前髪を目が隠れないようにきっちりと分けてショートヘアにした、知的で落ち着いた人物。性格は沈着冷静で分析力に長けるが、目的のためには自分を犠牲にすることもいとわない、慈悲深いところがある。そのため、高校3年生の文化祭では、自分の容姿に自信がないにもかかわらず、優勝賞品のためにクラス対抗のミスコンに参加しなくてはならないと考えていた。しかし、これをクラス委員長に止められ、彼の説得で色葉が出場に応じたことに安堵する。しかし、この委員長の行動が優勝を目指すためではなく、日下部に恥をかかせないためのものだということには気づいていない。
秋山 麗子 (あきやま れいこ)
波高校3年D組に在籍する女子。胸の下まで伸ばしたストレートロングヘアで、清楚な雰囲気を漂わせている。しかし性格は打算的でプライドが非常に高く、裏表が激しい。高校3年生の秋、文化祭でクラス代表としてミスコンに出場することとなり、何がなんでも優勝したいと考えている。そこで、ライバルは五十嵐色葉とみなし、色葉の恋人である筒井光以外の審査員を買収したり、本来の性格とはまったく違う異性受けする女性を演じたりして、優勝を目指す。
河野 (こうの)
会社員の女性。筒井充の部下でもある。年齢は24歳。肩の下まで伸ばした巻き髪セミロングヘアで、少しぽっちゃりした体型をしている。性格は実年齢に対してやや幼く、夢見がちでマイペースなところがある。そのため、その時の自分の感情を優先しすぎて非常識な行動を取ったり、話が脱線したりと、周囲を困惑させることが多い。充とは上司と部下の関係だが、やがて思いを寄せるようになる。その結果気持ちを暴走させて、充にふられたあとも何度も彼を食事に誘っていた。しかし根はまじめなため、充との性的な行為はいっさいなかった。なお、既婚者である充と二人きりで食事することが、倫理的にあまり好ましくないことは自覚している。
桜田 (さくらだ)
波高校に通う3年生の男子。高梨みつやの友人。顎の高さまで伸ばしたボブヘアで、容姿や話し方が中性的。チャラチャラして見えるが、人懐っこく素直な性格をしている。高校3年生の秋、文化祭がきっかけで知り合った石野ありさを気に入り、積極的にアプローチするようになる。初恋は保育園の先生で、彼女が釣り目でポニーテールヘアの女性だったことから、似た容姿のありさに思いを寄せている。甘いものが大好きで、よく友人や姉と食べに行くため、スイーツショップには造詣が深い。
亜紀 (あき)
筒井光たちとは違う高校に通う3年生の女子。高梨みつやの元恋人。ボブヘアで、おしゃれで落ち着いた性格をしている。みつやとは中学3年生の頃に交際しており、父親が出て行ったみつやの苦労もよく知っている。しかし、当時はみつやを支えると宣言したものの、彼が家事などで多忙になった途端に距離を置き、ほかの男性と浮気して去っていった。そのため、みつやには亜紀との交際はあまりいい印象を持たれていない。また、亜紀自身もこれを理解しており、高校3年生の秋、街で偶然見かけたみつやに当時のことを謝罪しようと声を掛ける。
民宿の経営者の男性 (みんしゅくのけいえいしゃのだんせい)
とある海辺の地域で、妻と共に民宿を営む男性。目が隠れるほど伸ばしたぼさぼさのショートヘアに無精ひげを生やし、ぶっきらぼうで口が悪いため誤解されやすいが、実際は無類の世話焼きで、困っている人を放っておけない優しい性格をしている。筒井光と五十嵐色葉とは、高校3年生の11月のある日、終電を逃して困っている二人と偶然出会い、この日自分の民宿は休業中だったにもかかわらず、特別に泊めて食事を振る舞った。また話を聞いて二人の関係を察し、応援するようになる。お金に無頓着で、光たちが泊まった日は妻が民宿にいなかったこともあり、たった1000円で宿泊させた。
篠崎 (しのざき)
とある商社で働く会社員の若い女性。筒井光と同じ会社に勤めている。光とは会社員になってから知り合ったため、年齢はあまり変わらない。セミロングヘアの、気さくで落ち着いた性格をしている。光に思いを寄せており積極的にアプローチしているが、光がまるで誘いに乗ってこないことを残念に思っている。しかし、光の人柄そのものが好きなため、交際できなくとも友人としてなかよくしたいと考えている。
えぞみち
アニメ「魔法少女 えぞみち」の主人公の少女。くるくるのロングヘアをツインテールの髪型にして、セーラー服を身につけている。語尾に「~べさ」を付ける、北海道弁のような話し方をする。魔法使いとして人間界を守るべくやってきた存在で、性格は気が強くやや強引なところがある。筒井光の最もお気に入りのキャラクターであることから、光の心の中で相談相手としてよく登場し、光に厳しくも温かいアドバイスを送る。そのため、アニメの主人公としてのえぞみちと、このキャラクターをベースに光の心が作り出した、架空の友人としてのえぞみちが存在する。