AZUMI ~あずみ~

AZUMI ~あずみ~

凄腕の美少女剣士あずみの壮絶な戦いを描いた『あずみ』の第二部にあたる作品。第一部となる『あずみ』は江戸時代初期の時代設定だったが、第二部となる本作『AZUMI~あずみ~』は、激動の幕末時代を舞台としている。同じ作者の『お~い!竜馬』(原作は武田鉄矢)のキャラクター達も登場し、あずみと坂本竜馬が出会うという展開がファンの間では話題となった。なお、第一部のあずみと、第二部のあずみの関係性について作品中では明言されていない。「ビッグコミックスペリオール」2009年第2号~2014年第6号に掲載された。

正式名称
AZUMI ~あずみ~
ふりがな
あずみ
作者
ジャンル
バトル
 
幕末
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概要・あらすじ

動乱の幕末時代、美しい少女あずみは、幼少の頃より戦士としての厳しい訓練の日々を過ごし、いまや天才的な戦いの能力を開花させた凄腕の刺客となっていた。大勢の人々の幸せのため、日本の未来のためという大義のもと、大老・井伊直弼の暗殺を見事成功させたあずみは、産まれてまもなく生き別れとなった双子の兄・向駿介のもとを尋ねる。

駿介の家族にも温かく迎えられたあずみにとって、駿介とその家族の幸せこそ、暗殺者として裏の世界で生きる彼女の希望と生きがいとなっていった。向家を悲劇が襲ったあとも、あずみは任務を遂行しながら向家と駿介を見守っていく。一方駿介は勝海舟の弟子となり、徐々に活躍の場を広げていく。

登場人物・キャラクター

あずみ

信州の安曇野にあるとされる異人の血を継ぐ者たちの隠里で産まれた美しい少女。幼い頃より仲間と共に戦士としての厳しい訓練をくぐり抜け、その天才的な才能を開花させた凄腕の刺客。大勢の人々の幸せのため、日本国の未来のためという大義のもと、三井などからなる商人集団からの支援と指令を受けて要人暗殺などの任務を遂行する。 安政七年(1860年)、江戸桜田門外にて大老の井伊直弼の暗殺という大任をやってのけたあと、生き別れだった双子の兄(あずみは兄とは認めず、弟と呼ぶ)の存在を知らされる。その向駿介に会い、駿介の家族にも温かく迎えられるが、その後向家に訪れるさまざまな悲劇に直面する。駿介には自分が刺客であることをひた隠しにし、彼の幸せを希望として任務を続けた。 幼い頃から厳しい修行に明け暮れて育ったため、恋が何なのかも知らずにいたが、坂本竜馬に対して生まれて初めて恋心を抱く。なお、あずみ自身は凄腕の剣客だが、誰からも好かれる優しく明るい娘。ただし、心を許す駿介に対してだけはやたらと乱暴で、挨拶がてらにひっぱたいたり蹴っ飛ばしたりすることもしばしば。

向 駿介 (むかい しゅんすけ)

貧しい御家人の長男。幼い頃に向家に養子としてもらわれてきた。素直でのんびり屋の性格だが、勝麟太郎や坂本竜馬との出会いを通じて、日本の未来のために命を懸けたいという思いを強くしていく。突然現れたあずみから双子であると伝えられ家族ぐるみの付き合いが始まるが、彼女が刺客だということを知るのはだいぶあとのこととなる。 貧しいながらも家族と共に幸せに暮らしていたが、大きな時代のうねりに飲み込まれていく。

向 甚平 (むかい じんぺい)

向駿介の父。三十俵二人扶持の御家人。旗本である滝沢家からたびたびひどい仕打ちを受けながらもひたすら耐え忍ぶ。激動の時代のなか、主君を裏切るような生き方はできぬ、と最期まで武士の歩むべき道を貫く。

向 淑 (むかい よし)

向駿介の母で、向甚平の妻。病弱のため、家事は娘に任せ、夫の身の回りの世話のみしている。体調が戻ったあとも武士の妻として気丈に夫を支え続ける。

向 志乃 (むかい しの)

向駿介の姉。優しくて美人の働き者。読み書きに優れ、裁縫も得意で、菅野宗一郎が開いている塾と同じ寺で一日置きに女の子たちに読み書き裁縫などを教えている。滝沢寅彦からの執拗な求婚を断り続け、菅野宗一郎のもとへ嫁ぐことを決意する。

向駿介の祖父 (むかいしゅんすけのそふ)

向駿介の祖父で、向甚平の父。隠居するまでの35年間、向家代々の馬預配下の役をひたすら慎ましく勤め上げた。最近は呆けが進んでおり、芸を命じられたと思い込んでいるのか「おっこり、もっこり」と腰を突き出す奇妙な踊りをよく続けている。

沢木 圭次郎 (さわき けいじろう)

向駿介の幼馴染で親友。意固地なところがあるが、義理堅い人物。勝麟太郎をもっとも尊敬しており、麟太郎の弟子となった駿介を通じて対面するが、麟太郎の開国論には賛同できなかった。その後、剣術修行のため北辰一刀流千葉道場に通い、清河八郎に心酔。その清河八郎もあずみに暗殺されて見廻組に入るが、御家人であることから旗本から小間使い扱いされる状態が続いたため、実力本位で出世できる新選組に入隊する。

竹本 源之丞 (たけもと げんのじょう)

向駿介、沢木圭次郎の幼馴染で親友。臆病で蛇が苦手。怖い目や情けない目に遭うと、屁が抑えようもなく出てしまう体質。菅野宗一郎の死後は、新しい塾に通い勉学に励んでいる。

菅野 宗一郎 (すがの そういちろう)

向駿介や沢木圭次郎らが尊敬する御家人。十五俵一人半扶持の長男。寺の一棟を借りて塾を開き、武士、町人のへだてなく読み書きなどを教えている。向志乃に好意を寄せているが、生活が苦しいため自分の気持ちは伝えずにいた。しかし、志乃からの申し出を受けて猛勉強ののち測量御用手伝いの登用試験に合格して五人扶持に出世し、志乃との婚約を決める。

滝沢 寅彦 (たきざわ とらひこ)

500石取りの旗本である滝沢家の長男。向志乃に惚れており嫁にしたいと考えているが、志乃が貧乏御家人の娘であるため、家族からは反対されている。

滝沢 欣矢 (たきざわ きんや)

滝沢家の次男。兄の滝沢寅彦よりも文武に優れるが、性悪でいつも仲間を連れだって向駿介らをいじめている。兄が貧乏御家人の娘である向志乃を嫁にしようとしていることに反対しており、機会があれば志乃に乱暴しようとも考えている。

康平 (こうへい)

あずみとともに長く厳しい訓練を受けてきた5人の戦士の1人。戦いで足を負傷し、歩けない身体になった。自分たちの代表であるあずみを誇りに思い、好意を抱いている。

猪一 (いいち)

あずみと共に長く厳しい訓練を受けてきた5人の戦士の1人。負傷して左目を失っている。かつての戦闘経験の悪夢にうなされ、押し入れで怯えていることがあり、よくあずみに慰められている。清河八郎暗殺の役目を申し出る。

段 啄平 (だん たくへい)

勝麟太郎の自宅に住み込み、教えを乞うている。尊敬する勝先生から、いつどんな質問をされても即座に完璧に答えてみせると意気込み、膨大な蘭学の知識を頭に詰め込むため、常に勉強している。学問一筋だったが、英会話を学ぶために出会った真帆に恋してしまう。

勝 麟太郎 (かつ りんたろう)

わずか40俵の貧乏旗本から出世を重ねて軍艦操練所教授方頭取になり、咸臨丸でアメリカへ渡った。江戸へ戻ってからは閑職にまわされていたが、軍艦操練所 500石、軍艦奉行並 1千石とどんどん出世していく。アメリカに習い、身分制度にとらわれる日本を変えるべきという考えを持つ開国論者のため、攘夷派からは命を狙われている。 後の勝海舟。実在した勝海舟がモデル。

徳川 斉昭 (とくがわ なりあき)

過激な攘夷論者で、駐日公使のハリス暗殺を企てるが、あずみによって阻止される。息子の徳川慶喜を将軍に担ぎ上げ、己が政権を握って国を動かそうと画策しているが、指令を受けたあずみによって暗殺された。実在した徳川斉昭がモデル。

谷 典禅 (たに てんぜん)

水戸一の剣の遣い手といわれる武士。徳川斉昭を警護するが、あずみの斉昭暗殺を阻止できなかった。その責で切腹を覚悟するが、斉昭は表向き心臓発作による急死と発表されたため、藩を捨てて浪士となる。桂小五郎に出会う席で偶然あずみに再会し、勝負を申し出る。

お駒 (おこま)

あずみが受けた徳川斉昭暗殺の任を手伝った女性。危険と判断して暗殺実行を延期したあずみを怖気づいたと一時は疑っていた。その次の計画では機転をきかせてあずみをサポートし、困難な斉昭暗殺を見事成功させた。任務のため公家言葉、京言葉を流暢に話すことができ、忍び技も身につけている。聖覚院慈行の暗殺任務の際も、あずみのサポート役をみずから名乗り出た。 以降もあずみの姉のような存在として、行動を共にする。

角倉 鉄心 (かどくら てっしん)

あずみ、康平、猪一、善太、弁ノ助の5人を戦士として育て上げた先生。幼い頃よりあずみたちを訓練し、不治の病に侵されながらも最後まで教え通した。戦闘技術だけでなく、自分が教えた武術は、世の中の大勢の人々の幸せを守るため、日本のためになる場合にのみ使うものであって、決して己の欲や怒りの感情などによって人を殺めてはいけないということも掟として教え込んだ。

真帆 (まほ)

勝麟太郎が向駿介と段啄平に英会話を学ばせるために、教師として選んだ美女。麟太郎の愛人の1人。横浜貿易商の娘だったが、異人たちとねんごろになり過ぎたという噂が広がったため、周囲からの誹謗中傷の嵐にさらされ、親元を勘当された。叔父のもとにいたところ、英語を話せる人を探していた麟太郎と出会う。駿介と恋に落ちる。

桂 小五郎 (かつら こごろう)

長州藩士。天下の練兵館(斎藤道場)に入ってすぐに免許皆伝を受け、入門たった1年で練兵館塾頭となった剣の達人。後の木戸孝允。変装の名人で、長州藩狩りが激しくなった京では、乞食や芸者、老婆などに変装して追手を逃れていた。逃亡中にたまたまあずみと再会し、幕府に捕らわれていた向駿介の救出にも手を貸した。その見返りとして、あずみに長州征討軍の参謀となった篠田源太郎の暗殺を依頼する。 実在した桂小五郎がモデル。

池谷 新平 (いけたに しんぺい)

長州藩邸にやっかいになっている少年。代々武士の家系だったが、祖父の代で浪人となり、父は竹細工職人。桂小五郎らの動きを探るために「さよ」という偽名で長州藩に近づいてきたあずみと仲良くなる。長州藩が導入した新式銃の射撃に才能を発揮する。

宍戸 魁 (ししど かい)

水戸脱藩浪士を率いて、桂小五郎ら長州藩と手を組む攘夷派。勝麟太郎の暗殺を目論むが、あずみに阻止される。豪商らから金を巻き上げ、それを資金として新式の銃を入手し、イギリス総領事のオールコックと老中の安藤信正の暗殺をもくろむ。

坂本 竜馬 (さかもと りょうま)

土佐藩を脱藩した浪士。勝麟太郎の教えに心酔し弟子入り、そこで向駿介と出会う。その後、神戸海軍操練所の塾頭となる。倒幕思想があると嫌疑をかけられた部下の無実を伝えるために服部半蔵のもとへ直訴に向かい、そこであずみと出会う。幕府があずみを捕らえるために駿介の両親を捕縛した際、追われる身のあずみやお駒たちを千葉道場に頼み込んで匿ってもらうよう取り計らってくれた。 幾度かの逢瀬を重ねるうち、あずみの初恋の相手となる。実在した坂本竜馬がモデル。

岡田 以蔵 (おかだ いぞう)

「人斬り以蔵」の名で知られる刺客。坂本竜馬、武市半平太の幼馴染。半平太からの命令を受けて勝麟太郎(勝海舟)を斬ろうとするが、竜馬に止められる。竜馬の説得により、勝海舟を護衛しながら斬るべき人物であるかどうかを見極めようとしている。勝海舟と行動をともにする向駿介の護衛を頼んできたあずみに惚れてしまう。 実在した岡田以蔵がモデル。

清河 八郎 (きよかわ はちろう)

文武に優れ、文武指南所清河塾を開校している。攘夷論者。沢木圭次郎が心酔している。将軍警護の名目で集めた浪士たちを、尊王攘夷の浪士団へと変貌させ、横浜の異人居留地焼き討ちをもくろむ。実在した清河八郎がモデル。

聖覚院 慈行 (せいがくいん じこう)

強烈なカリスマを持つ聖覚院の僧。朝廷に攘夷を焚き付け、さらに朝廷や志士たちに自分のことを日本の守護神で救世主であると信じ込ませ、自分が祈祷している限りは絶対に列国に勝利する、と唱えている。危険分子と判断され、あずみに暗殺指令が下る。

新座 胆蔵 (しんざ たんぞう)

聖覚院慈行から坂本竜馬暗殺を依頼された殺し屋。やたらと食い意地が張っており、相棒である万六の飯も奪おうとするほど。だが、最後には命を賭して万六を守った。

万六 (まんろく)

新座胆蔵の相棒。胆蔵のことを「胆ちゃん」と呼び親しみ、暗殺任務の際は胆蔵をサポートする。その言動から知的障がいと思われるが、聖覚院慈行の暗殺任務のために潜入したお駒とあずみを助ける活躍を見せた。胆蔵の死後は、1人でいずこかへと旅立っていった。

西郷 吉之助 (さいごう きちのすけ)

薩摩藩の軍賦役。のちの西郷隆盛。徳川慶喜らが、長州藩の仕業と見せかけて西郷吉之助の暗殺を企てるがあずみに助けられる。その後もあずみに命を助けられ、あずみを薩摩藩に欲しがり、大久保一蔵(のちの大久保利通)を説得役として派遣するが失敗した。その後、異国との交渉での通訳として向駿介を雇う。実在した西郷隆盛がモデル。

服部 半蔵 (はっとり はんぞう)

伝説の忍といわれる服部半蔵の子孫。桑名藩で代々家老職を世襲し、服部半蔵の名も引き継いでいる。その裏では孤児たちを山奥に集め、服部一族の武術を継承させるべく特訓し、兵士を育てる。訓練中の負傷で足の骨を折るなどし、一族の技を受け継ぐ兵士にはなれぬと判断されれば、幼い子供であろうと命を絶たれる。

はな

舞妓か芸妓見習いの娘。討幕派の疑いをかけられた向駿介が桂小五郎の家に匿われているあいだ、駿介の身の回りの世話をしてくれる。駿介と沢木圭次郎の両方から愛を告白される。

茂吉 (もきち)

有馬温泉近くの村で暮らす竹細工職人。病気の母親と暮らしている。死んだ父は色狂い、夜這い狂いで村では有名で、まだ女を知らない茂吉もそのことで村人からからかわれている。服部半蔵の配下に撃たれて負傷したあずみを家で匿うことになる。

壮太 (そうた)

武士ではないが、目の見えない妹のきよを守るために山中で独力の二刀流の稽古を重ね、野獣のような速さと強さを身につけた少年。きよを乱暴して死なせた5人の野武士を殺したため、富次と共に故郷を出たのち、その剣の腕を買われて出羽守に雇われた。あずみと一対一で闘い、逃げられたもののあずみに「初めて負けた」と思わせたほどの実力の持ち主。 富次のことは命の恩人だと感謝しており、仕事でもらった金はすべて渡している。

富次 (とみじ)

壮太の仲間。母を亡くして兄妹2人になってしまった壮太ときよが可愛そうだと、自分の飯を2人に分け与えてきた心の優しい少年。足が悪く、壮太が活躍することに自分の夢を託している。

ちこ

服部半蔵のもとで兵士として育てられた孤児の少女。あずみ暗殺に向かった仲間の長平、猪、孝太、茂一がすべて返り討ちに遭ったため、復讐すべくあずみに近づく。

岩倉 具視 (いわくら ともみ)

大政奉還を進める坂本竜馬の暗殺を大久保一蔵(のちの大久保利通)と共にあずみに依頼する。従わなければ向駿介と駿介の両親、お駒の4人を殺す、と強要した。実在した岩倉具視がモデル。

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