BLUE MOON

BLUE MOON

双子の兄弟である菅野英一と菅野英二は、5歳の時に父親に捨てられ、母親はずっと入院中という環境に育ち、2人だけで強く生きてきた。しかし母親の退院をきっかけに、危うい均衡で保たれていた2人の関係が揺らぎ始める。寄り添い合い、支え合うことで生き延びてきた双子が、痛みを伴いながらもそれぞれの人生に向き合っていく姿を描くビルドゥングスロマン。「プチフラワー」1986年5月号から1988年10月号にかけて不定期に掲載された作品。

正式名称
BLUE MOON
ふりがな
ぶるー むーん
作者
ジャンル
その他歴史・時代
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概要・あらすじ

父親に捨てられたという忌まわしい過去を持つ菅野英一菅野英二は、さすらいの旅を続けていた。そんな中、母親を見舞うため、彼女が入院している病院のある町を訪れたところ、母親はすでに退院していた。ひとまず町に留まることを決めるが、英一は次第に精神のバランスを崩していく。遠縁の親戚で、2人の養父でもあった青木薫が母親と結婚すると知った英一の精神状態はさらに悪化。

不安になった英二は英一を青木のもとに連れて行くことにする。かつて青木に引き取られて一緒に暮らしていた頃、同じように心を病んでいた英一を青木が治したことがあり、今回もそれを期待したからだった。青木の家で母親と再会した英一は、一見静穏を装いつつも徐々に強迫観念にとらわれていく。

やがて追いつめられた英一は、英二の制止を振り切って自らを破滅させる道へと突き進んでいく。

登場人物・キャラクター

菅野 英一 (すがの えいいち)

菅野英二の双子の兄。両親が籍を入れておらず、出生届も出されなかったため、書類上は存在しないことになっている少年。人を食ったような態度でつかみどころがない性格ながら、男女問わず人を惹きつける魅力がある。特に男性から一方的に執着されることが多く、思春期以降は月に一度は痴漢に遭遇している。一方で内面は繊細で神経質なところがあり、子供の頃は自家中毒で食事が取れなくなったり、声が出なくなったりしていた。 青木薫に引き取られて愛情を注がれることで症状が改善したが、母親の退院を期に再び心身に不調をきたす。

菅野 英二 (すがの えいじ)

菅野英一の双子の弟。両親が籍を入れておらず、出生届も出されなかったため、書類上は存在しないことになっている少年。英一とは対照的な、やや幼さがある無邪気で楽天的な性格。普段は英一を頼りにしているが、英一の心理状態が不安定になると一転して主体的に行動し、サポートしている。ほとんどのことで自分より秀でている英一にコンプレックスを持っているが、反面自分だけが息子として母親の愛情を受けていたことに罪悪感を抱いている。

菅野 英明 (すがの ひであき)

菅野英一と菅野英二の父親。自由気ままな性格で、2人が5歳の時に姿を消してしまう。菅野亜矢子と結婚してからも根無し草のような暮らしで、何の仕事をしているのかも定かでないが、生活費を使い切る前に出所不明の金を稼いでくる。家庭には執着していないように見えるため、亜矢子が不安を感じている。絵画の才能がある。

菅野 亜矢子 (すがの あやこ)

菅野英一と菅野英二の母親。英一と英二を産んだ頃は、まだ少女に見えるほど若かった。菅野英明と結婚する際、「行く先も告げずに数日から1か月いなくなることがあるが、それを我慢できるなら一緒に暮らしてもいい」という約束をしている。出産以降、育児ノイローゼに陥っており、家が火事になって英一が取り残されたことをきっかけに、罪の意識から自分は子供を1人だけを産んだと思い込み、抱いて逃げた英二を「英一」と呼ぶようになった。 精神疾患によって入院中で神経科と内科にも通っており、本物の英一のことは忘れている。

青木 薫 (あおき かおる)

菅野英一と菅野英二の遠縁の親戚の男性で、名の知られたインテリアデザイナー。父親に捨てられた英一たちを引き取り、2年ほど一緒に暮らしていた。天才肌でほとんどのことはそつなくこなし、誰からも愛されている。浮世離れした性格で何事にも執着しないが、珍しく英一には愛情を注いでいたため、周囲には愛人だったと誤解されている。 菅野亜矢子とのちに結婚し、退院後の面倒を見ている。ワニが好き。

土屋 貴志 (つちや たかし)

青木薫の義弟で、青木とは母親が違う。大学を卒業後に新聞社に就職したが、2年おきに転職を繰り返しており、直近の職場である写真雑誌の出版社も退職したばかり。天才肌で誰からも愛される青木に強いコンプレックスを持っており、菅野英一を利用して青木を脅迫して金を強請ろうとした。英一が青木の愛人だったと思い込んでおり、かつて青木が撮った映像や写真を入手して脅そうとしたが、効果がないとわかると性的暴行を加えているように見える写真をねつ造して、青木を社会的に抹殺しようとした。 もともとは生真面目で実直な性格のため、この事件以降は、青木はともかく英一と菅野英二については気にかける様子を見せる。

玲子 (れいこ)

菅野英一と菅野英二が青木薫の養子として暮らしていた頃に、2人の家庭教師をしていた女性。現在は動物専門のぬいぐるみデザイナーとして働いている。スランプに陥っていたところ、気分転換にと青木から別荘を提供され、そこで別荘を訪ねて来た英一と再会する。昔から青木に思いを寄せており、青木に頼まれたワニのぬいぐるみを作りながら、青木が別荘を訪れるのを待っている。

佐伯 (さえき)

玲子のデザインスタジオでアシスタントを務める男性。玲子に好意を抱いており、玲子が昔から想いを寄せている青木薫にも、突然現れて玲子と親しげに振る舞う菅野英一にも敵愾心を隠さない。極めて男尊女卑な思想の持ち主で、玲子には早く仕事を辞めて自分と結婚し、家庭に入ってほしいと考えている。英一を追い出そうと嫌がらせを繰り返す。

椎名 (しいな)

青木薫の知人の男性。菅野英一と菅野英二も、養子として青木に引き取られていた時に出会っている。服装の趣味が悪く、いつも極彩色の洋服を着ている。しばしば非合法な薬物が飛びかうパーティを開いている。意外に面倒見が良く、怪我をした英二を病院に運んだり、2人を青木が住む家に送り届けたりする。

石橋 ユカリ (いしばし ゆかり)

幼い頃、菅野英一と菅野英二に遠足の弁当を丸ごと差し出したことがある少女。現在は高校生。久しぶりに町に戻って来た2人と偶然に再会する。もともとは自身の叔父に恋をしていたが、ある事件をきっかけに叔父が姿を消して以降、英一や英二と交流を続けるうちに2人に対して淡い想いを抱くようになる。

志保子 (しほこ)

恋人と別れ話をしているところを菅野英一に目撃された女性。さらに中学の同級生に頼まれて、甲田貴志のもとから逃げて来た英一を10日間預かることになった。勝ち気でかんしゃく持ちだが、生真面目な性格で面倒見がいい。当初はペットか子供のように英一を扱っていたが、英一にヒゲが生えたのを見て男性として意識するようになる。

甲田 貴志 (こうだ たかし)

音大のピアノ科に通う大学生の男性。両親がピアニストをしている。自分勝手な性格で周囲からは嫌われており、自殺未遂を起こしたことで、さらに気難しくなって友人をすべてなくしてしまう。その頃に菅野英一と知り合って友人となったが、次第に英一に執着するようになり、行く先々に付きまとって他人との交流を断たせ、ついには自分のマンションに閉じ込めてしまう。

藍川 正典 (あいかわ まさのり)

菅野英明の知人の男性。雪の降る大晦日に家財道具一式を売っていた英明と出会い、子供が生まれるのに病院に駆けつけるタクシー代もないという英明にお金を貸して病院まで付き添った。その時に生まれた菅野英一と菅野英二にも会っている。画廊を営む夫婦に養子として育てられたこともあり芸術を見る目は確かで、英明の絵の才能を認めて本格的に取り組むことを勧め、英明の求めに応じて絵を買い取るようになる。 養父母にレールを敷かれた生活に鬱屈を感じている。のちに成長した英一と偶然に再会し、昔の思い出を語って聞かせる。

門崎 (もんざき)

有名な画伯の息子だが、本人は画家として大成しなかった。父親の車と接触して病院にかつぎこまれた菅野英明と出会い、英明に心を奪われる。しかし父親が亡くなった後、金や美術品、婚約者までも英明に奪われ、恨みを抱くようになる。かつて英明が暮らしていた町を訪れた菅野英一を見かけて英明だと思い込み、復讐するためつけ狙う。

美鈴 (めいりん)

菅野英一の昔なじみの女性。クラブ「鈴」を営んでいる。門崎に白い粉を渡された英一がそれを持ち込み、相談を受けた。そのまま転がり込んだ英一を受け入れ、しばらく一緒に暮らしていた。菅野英二に冷淡に対応する英一をとがめ、2人の仲を心配する優しい一面もある。

春名 (はるな)

かつて菅野英一に彼女を奪われ、深い恨みを抱いている男性。現在は暴力団の組員になっている。英一と菅野英二を人質に取って青木薫を強請ろうと企て、まずは英二を監禁し、英一をおびき寄せようとした。狡猾で冷酷な性格だが、幼なじみでもあり、ガールフレンドでもある牛島彩子には頭が上がらない。

牛島 彩子 (うしじま あやこ)

春名の幼なじみでガールフレンドの女性。普段は常識人だが酒癖が悪く、酔っ払うと傍若無人に振る舞うため春名も手を焼いている。付き合いの長い春名を愛しており、彼が暴力団組員になっても別れずに関係を続けている。ささいなことで春名とケンカをして、売り言葉に買い言葉であてつけに菅野英一と浮気しようとする。

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