「ビルドマスター」を目指す大工たち
本作の舞台となる世界は、「大建設時代」と呼ばれる時代を迎えており、特殊な力を持った大工たちが多数存在する。彼らは自らの超人的な力と、古来より伝わる特殊な工具を駆使して、高い耐久性や美麗な外観、優れた居住性を兼ね備えた建造物を建築し、住民たちから信頼されている。大工たちは、太古から残る奇跡の建造物である「ビルドキング」の建設や設計、修繕を志す者が多く、実際にビルドキングを建設した大工は「ビルドマスター」と呼ばれて賞賛される。過酷なハンマー島で暮らしているとんかちとレンガも、いつか「ビルドマスター」と呼ばれるにふさわしい大工になるべく、修行の日々を送っている。なお、この世界で大工として認められるには「ビルドユニオン」が主催する試験を受け、その合格証となるライセンスを所有する必要がある。
特別な大工のみが使える「ビガー工法」
本作に登場する大工には、体内に蓄積された「ビガー」と呼ばれるエネルギーをほかの物質に伝達できる素質を持つ者がおり、これを利用した工事方法を「ビガー工法」と呼ぶ。ビガーは基本的に8つの属性があり、素材の強度や密度をあげて耐久性を増やす「レッドビガー」、柔軟性や伸縮性を司る「ブラウンビガー」、素材の外皮に代謝機能やバリア機能を付加して耐火性を高める「オレンジビガー」、素材の老化や腐食を食い止める「イエロービガー」、温度調節や気密性の向上に利用される「グリーンビガー」、生物の呼吸機能を司り、通気性や耐水性を高める「ブルービガー」、毒に対する耐性を付与する「パープルビガー」、回復や自己再生能力を付与する「ピンクビガー」のうち、修練次第で4種類以上の属性をあやつることが可能となる。また、複数の属性を統合する「レインボービガー」や、あらゆる物質に活力を与える「ゴールドビガー」、ゴールドビガーとは逆に、活力を奪う効果を持つ「ブラックビガー」など、選ばれた大工のみに操作可能なビガーも存在する。なお、ビガー工法を行える大工は少なく、その割合はわずか0.01%といわれている。
伝説の建造物「ビルドキング」
「巨大な山脈マンション」「マグマに浮かぶ暗黒城」「よみの国の牢獄」など、生物が絶滅するほどの天変地異を何度も耐え抜き、太古から残る奇跡の建造物を「ビルドキング」と呼んでいる。とんかちはハンマー島に住む人々が、ビルドキングに住むことで平和に暮らせると信じており、「ビルドマスター」になって世界に平和を築くことを大きな目標としている。一方で、家喰いの一族であるトロルの頭領や、コモーリ族の王であるコモーリ王13世、ビルドユニオンの上層部メンバーからは、ビルドキングが災いの象徴であるという声も聞かれる。これらの噂の真偽は、とんかちとレンガが旅を続ける中で解明され、やがて「ツーバイフォー」をはじめとする意思を持つビルドキングの存在が明らかになる。
登場人物・キャラクター
とんかち
ハンマー島に住む大工の少年。年齢は15歳。伝説の大工集団「カーペンターズ」の三代目頭領であるシャベルの弟子。レンガとは仲がよく、彼が危機に陥った際は自分の危険を顧みずに助けようとする。小柄ながら強靭な体の持ち主で、抜群の身体能力を誇る。体力と体内に累積されているビガーの量は、一流の大工にも引けを取らない。一方で、大雑把で設計技術も未熟なため、玄関を作り忘れるなどのミスが目立ち、一人ではうまく家を建てることができない。つねに明るく快活なことから、ハンマー島の住人たちから慕われている。また、平和を何よりも重要視しており、どんな過酷な環境にも耐えられる「ビルドキング」の建築を夢見ている。シャベルから「ビガーハンマー」と呼ばれる工具を授かり、攻撃や破壊に利用するほか、自らのビガーを他者に分け与えて再生をうながすこともできる。好物はレンガの作る料理と“釘チョコ”。
レンガ
ハンマー島に住む大工の少年。とんかちを兄と慕っている。年齢は14歳。伝説の大工集団「カーペンターズ」の三代目頭領であるシャベルの弟子。レンガを尊敬しており、決して住みやすい環境ではないハンマー島の暮らしも、彼といっしょなら楽しいと考えている。体力が劣る反面、設計に関する知識が豊富で巨大な丸太を一瞬で解体するほどの技術力を持ち、立派な家を建てることができる。また、ビガーの量もとんかちに負けず劣らずで、大工としての適性は非常に高い。しかし引っ込み思案で自己肯定感が低く、尊敬するとんかちと自分を比較して委縮してしまうことがある。そのため、いっしょにビルドユニオンの資格試験を受験したコネチカからは、「自分の弱さにうぬぼれているのではないか」と苦言を呈されている。シャベルから「ビガーソウ」と呼ばれるノコギリ型の工具を授り、これを利用して離れた距離にある素材を寸断する技「ノコイタチ」を使用する。ケーキやプリンなどのお菓子類が好物。
書誌情報
BUILD KING 全3巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2021-04-02発行、 978-4088826486)
第2巻
(2021-06-04発行、 978-4088826837)
第3巻
(2021-09-03発行、 978-4088827612)