概要・あらすじ
曽祖父が日本人である日系アメリカ人のクロード・バターメーカーは、祖母から曽祖父の話をよく聞かされていた。曽祖父は日本の酒蔵の生まれで、アメリカでも日本酒を広めようとして、渡米してきたのだという。ある日、祖母はその蔵の酒を味わってみたかったと言い残し亡くなってしまう。祖母の死をきっかけに、クロードはその酒蔵を探すために来日するも、既にその酒蔵は存在せず、跡地にはパチンコ店が建っていた。
クロードは、岩下本家酒造の跡取りの岩下宏や、その幼なじみである小野寺せつなど、多くの人々の協力を得ながら、酒蔵再建のために歩み始める。
登場人物・キャラクター
クロード・バターメーカー
シアトル出身のアメリカ人。日系三世であり、曽祖父が酒蔵生まれの日本人。祖母が生前語ってくれた曽祖父との思い出話を胸に、曽祖父の生まれた酒蔵を探しに、日本にやってくる。残念ながらその酒蔵は既に存在しなかったが、酒蔵で造られていた酒「神在」の復活、果ては酒蔵の再建を目指し、日本酒造りに全力で取り組んでいく。
小野寺 せつ (おのでら せつ)
居酒屋あやかを母と切り盛りする活発な女性。日本酒にあまり興味はなかったが、クロードや酒に関わる人々とふれあい、興味を持つようになる。そして熱心に日本酒について学び、今まであまり身の入っていなかったあやかの仕事にも積極的に活かすようになる。日本酒の味にはかなり敏感で、特に食事と酒の組み合わせを考える力はピカイチ。 英語が大の苦手で、クロードとのコミュニケーションに困ることも。ヒロとは幼なじみ。
岩下 宏 (いわした ひろ)
クロードが働くことになる岩下本家酒造の跡取りであり、専務職を務める青年。蔵の酒造りの方針を、売上で蔵を支えている普通酒ではなく、今後のびる可能性があり味も良いが、コストの掛かる純米酒中心に切り替えようとし、父としばしば衝突している。クロード達と関わるようになり、さらに良い酒を造ろうとする気持ちが強くなっていく。
白石 真奈美 (しらいし まなみ)
新聞記者。日本酒造りを学びにアメリカからやって来たクロードに興味を持ち、取材にきた女性。そのことをきっかけに、クロードや、その周囲の人々とも親しくなり、せつとその母が営む居酒屋あやかの常連となる。その後もクロードが「神在」の復活にむけて奔走する姿も記事にするために、取材を続ける。
安本 卓也 (やすもと たくや)
地元で酒屋を営む男性。日本酒にはこだわりがあり、純米酒、それも自分が売りたいと思ったものしか店に並べない。岩下本家酒造の酒は、味を知ったうえで店に並べていなかった。しかし、クロードやヒロ、せつの情熱を見て、次第に彼らに協力的になっていく。酒の味や接客に敏感で、クロードやヒロの造る酒や、せつの居酒屋あやかでの接客について、ズバリと問題点を提示してくる。
庄司 健作 (しょうじ けんさく)
曽祖父の生まれた蔵、野田酒造で働いていた杜氏であり、クロードが復活させようとしている日本酒「神在」の作り方、そして味を唯一知っている男性。彼の助けを借りながらクロード達は、「神在」を産んだ日本古来の酒造りの手法、生酛造りを学ぶ。
鉄 (てつ)
せつとその母が営む居酒屋あやかの常連の男性。少々口が悪く、調子のいい性格をしている。あまり日本酒のことは知らなかったが、あやかがせつによって日本酒中心の居酒屋になるにつれ、日本酒にのめり込むようになる。
ジェニファー
クロードの存在を知りアメリカからやってきたクロードの異母妹。クロードは母を捨てて出て行った父を嫌っており、その娘として育った彼女に対してもあまり友好的ではなく、妹と認めようとしなかったが、せつの助言などもあり次第に打ち解けていく。打ち解けた後は、クロードと父の仲を取り持とうと努力する。
場所
岩下本家酒造 (いわしたほんけしゅぞう)
クロードが日本酒造りを学ぶために働き、跡取りのヒロが専務を務める酒蔵。クロードはここで、今はなき曽祖父の生まれた酒蔵の酒「神在」を復活させるための酒造りの技術のみならず、日本語や、様々なことを学んでいく。ヒロは父と衝突しながらも、自分のやりたい酒造りをここで少しずつ形にしていく。
その他キーワード
神在 (かみあり)
『蔵人』に登場する日本酒。クロードの曽祖父の生まれた酒蔵、野田酒造が造っていた日本酒の銘柄。日本古来の酒造りの手法である生酛造りで造られている。クロードは今はなき野田酒造のこの酒を復活させようと奔走するが、日本酒造り自体が素人な上に、扱いの難しい生酛が相まって、一筋縄ではいかなかった。