概要・あらすじ
他人の考えていることやイメージが否応なしに頭に流れ込んでくる精神感応能力者(テレパス)の火田七瀬は、幼い頃からその能力に苦しめられ、苦難の人生を歩んでいた。16歳の時に交通事故で両親を亡くして以来、高校を辞めて故郷を離れ、派遣の家政婦として転々とし暮らす七瀬。久しぶりに故郷に戻り、人並みの暮らしをしてみたいと考えた彼女だったが、高校時代の教師に捕まり、監禁されてしまう。
何とか危機は脱したものの、故郷に安らげる場所はなかったと落胆し、再び旅へ。その後、七瀬は同じ電車に乗り合わせた4歳の少年、ノリオと出会う。彼は七瀬が初めて出会った自分以外の能力者で、七瀬と同じ精神感応能力者だった。さらに同じ電車にて予知能力を持つ岩淵恒夫とも出会う。
電車が脱線事故を起こすことを予知した恒夫は、無事に事故を免れるのは、恒夫と七瀬、ノリオの3人だけであることを七瀬に告げるのだった。
登場人物・キャラクター
火田 七瀬 (ひた ななせ)
他人の思考を読める精神感応能力者(テレパス)の女性。16歳の時に両親を交通事故で亡くしている。近くにいる人間の考えていることが、否応なしにビジュアルを伴って頭に流れ込んでくるため、苦難の人生を歩んでいる。美しい容姿のため、ほとんどの男は彼女を心の中で犯し、女は心の中で嫉妬の罵詈雑言を浴びせる、それらのイメージが常に彼女の心を傷つけている。 他人の思考を読めることを利用して当人の精神を崩壊させることもでき、悪人を成敗することも。意識を集中すれば、ある程度離れた人間の思考も読める。小さい頃から男の欲望を剥き出しのまま見せつけられてきたため潔癖になり、いまだに処女。
ノリオ
火田七瀬が電車内で出会った4歳の少年。七瀬が初めて出会った精神感応能力者(テレパス)で、七瀬と同じく他人の思考を読める。能力について自覚はなかったが、七瀬の思考を読み取り瞬時に理解した。父親は酒飲みで、生みの母親は自殺しており、現在の育ての母親からは疎まれている。ある程度までなら離れていても七瀬と思考による会話ができる。
岩淵 恒夫 (いわぶち つねお)
火田七瀬が電車内で出会った青年。予知能力者で、七瀬と出会う20分ほど前に自分の乗った電車が脱線事故を起こすことを予知していた。子供の頃から予知能力があり、今まで一度も予知が外れたことがないという。脱線事故による犠牲者の正確な人数のほか、無傷で事故から免れるのは自分を含めた3人だけであることも予知していた。
西尾
化粧品会社を営む28歳の青年。透視能力者(クレア・ヴォヤンス)で、裸を透視するだけでなく、力を込めれば内臓まで見透かせる。その能力を利用して日常的に女を脅してレイプし、その優越感でプライドを保っている。高級クラブで働く火田七瀬に目をつけ、狙っている。
ヘンリー
火田七瀬の讃美者であり、崇拝者で召使いであると言う黒人の男性。念動力(テレキネシス)を使える。かつては同じく念動力を使える父親のためにだけその能力を使えたが、父親が死んだため、新たに仕える者を捜すため来日し、七瀬を見つけた。七瀬の命令に触発されないと能力を十分に発揮できない。
藤子
火田七瀬がフェリーで出会った女性。時間旅行者(タイム・トラベラー)で、これまでに遡行してきた累計時間のせいで実年齢の17歳よりも老けて見える。七瀬から、とあるトラブルを回避するために協力して欲しいと頼まれる。
真弓 瑠璃 (まゆみ るり)
火田七瀬が生活資金を稼ぐために訪れたマカオのカジノで出会った若い日本人女性。ショートカットの美人で、特殊な能力は持たない普通の人間。屈託のない人柄に惹かれた七瀬から声をかけられて仲良くなる。早口のおしゃべりで、すぐ話が飛躍するため、七瀬からはこっそりと精神的混乱を意味する心理学用語「ヘニーデ」を冠した「ヘニーデ姫」というあだ名を付けられている。
殺人者 (さつじんしゃ)
超能力者を人類の敵とみなし、抹殺を考えている集団の一員。訓練によって人の考えることを少しは察知でき、また思考を閉じて精神感応能力者(テレパス)に心を読めないようにすることができる。火田七瀬を殺すために追跡する。
根岸 新三
大学教授。寝たきりの母親と高校生の息子との3人暮らしで、18歳の火田七瀬を家政婦として雇う。超能力について研究しており、過去に七瀬の父親である火田精一郎にESPの実験をしていた。偶然家政婦として雇った七瀬が、ESP実験で驚くべき結果を出した火田精一郎の娘であることに気づく。
クレジット
- 原作
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筒井康隆