PSYCHO-PASS サイコパス 3

PSYCHO-PASS サイコパス 3

テレビアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』のコミカライズ作品。魂を数値化するシステムで治安維持をしている近未来を舞台に、新人の監視官として着任した慎導灼と炯・ミハイル・イグナトフの活躍する姿を描いたSFアクション。集英社「少年ジャンプ+」で2019年10月から2021年7月にかけて配信された作品。

正式名称
PSYCHO-PASS サイコパス 3
ふりがな
さいこぱす すりー
原作者
サイコパス製作委員会
作者
ジャンル
サスペンス
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

ライラプスの召命

人々の魂を数値化して管理するシビュラシステムにより、世の治安を維持している近未来の日本。刑事たちの中には犯罪に関する数値「犯罪係数」を測定できる特殊な拳銃「ドミネーター」を武器に、罪を犯す可能性のある「潜在犯」を突き止めて惨劇を未然に防ぐ任務を担う者たちがいた。「監視官」や「執行官」と呼ばれている彼らは、システム化された一つの正義が統べる世界で、過酷な任務に挑みながら、真実の在りかを求め続けていた。時は2120年の東京。新たに着任した公安局刑事課一係の新人監視官・慎導灼炯・ミハイル・イグナトフは、担当した事故にある違和感を覚え、二人で独自捜査を開始することとなる。その事故はハイパー・トランスポート社の大型輸送ドローンが墜落したという事故で、灼たちは同社の会計士である旭・リック・フェロウズという男性が行方不明になっていることを突き止める。メンタリストでもある灼は、追跡対象者になりきる「メンタルトレース」を開始してリックの行動を追う中で、海に浮かぶリックの遺体を発見する。状況的にリックは事故死と判断されたが、墜落前に明らかに恐怖していたリックの様子に違和感を抱いた灼は、彼の死を解明するために捜査をさらに続行する。リックの妻を訪ねた灼たちは、生前のリックが植木鉢の底に隠していた謎のデータを発見。そのデータを調べた結果、今回のドローン墜落事故は偽装であったことが判明し、内部告発の口封じのために事故を仕組んでリックを死に追いやった、犯罪者たちの影にたどり着く。偽装の手口をつかんだ灼たちは、以前から調べていたハイパー・トランスポート社の役員・与根原を追い、港区の廃棄区画へと向かう。仲間の情報で逃亡先を探るものの、すでに与根原は死亡していた。与根原を見捨てた今回の事件の黒幕として疑われるハイパー・トランスポート顧問の些々河を追い、上司の命令を無視して有明空港に駆けつけた灼たちだったが、見知らぬ者たちに行く手を阻まれてしまう。

ヘラクレスとセイレーン

大型輸送ドローン墜落事故の裏に潜んだ事件の解決後、公安局刑事課一係の慎導灼炯・ミハイル・イグナトフは、この事件の裏に潜む者たちを追うことが自分たちの求める真実につながると確信していた。熾烈な争いが繰り広げられる東京都知事選で街がにぎわう中、とあるホテルで不審な転落事故が発生する。転落死体が発見された現場を調査した灼たちは、ドアやテレビの不具合の連鎖が死につながったという、大型輸送ドローン墜落事故との共通点に気づく。さらなる捜査のため、転落死した土谷博士がメンタルケアスタッフを務めていた、アイドル政治家として知られる都知事選候補者・小宮カリナを訪ねた灼は、彼女から底知れぬ恐ろしさを直感的に感じ取る。しかし、事件の手がかりまではつかめず、混迷を極める事件に見え隠れする、謎の組織「狐」の存在がちらつき始める。選挙の裏でうごめく陰謀を暴くため、灼たちはホテルの防犯データ内に、都知事候補である薬師寺・ヘラクレス・康介の第一秘書であるリー・アキの姿を発見する。さっそくリーのもとを訪れた灼たちだったが、ホテルマンに化けていた男たちから突如襲撃に遭い、リーが殺害されてしまう。襲撃犯は移民肯定派の康介に対抗するカリナ支持者なのかと推測される中、入江一途は確保した襲撃犯の背景から、敵の拠点を茗荷谷に絞る。茗荷谷はかつて一途が縄張りにしていた、廃棄区画でもあった。そこで裏社会を取り仕切るブローカーで、元プロアスリートでもある榎宮春木に会いに行った灼たちは、彼こそが重要な容疑者であると推測したが、肝心の犯行動機や手段の確証まではつかめなかった。灼たちは襲撃者側と襲撃された側、二手に別れて捜査を進めることになるが、その先で判明したのは土谷博士が手がけていた研究、そしてカリナに隠された秘密だった。そんな中、捜査中に問題を起こした灼は停職処分となる。彼の穴埋めとして、公安局とコンサルタント契約を結ぶフリージャーナリスト・六合塚弥生が加わり、リーを襲った犯人のことを調べる中で、ある運送業者と春木の接点を見つける。

カエサルの金貨

東京都知事選挙の裏で小宮カリナを狙っていた犯人の榎宮春木は、捜査の手から逃れるために一人で逃亡していたが、ある人物によって行く手を阻まれ、始末されてしまう。一方、事件解決に大きく貢献してカリナを守り切った慎導灼は、廿六木天馬から狐のマークが書かれた謎の名刺を受け取る。狐のマークは色相を保ちつつ、犯罪に手を染める闇組織「狐」のシンボルでもあった。カリナが都知事になったことで大きく変わった三郷ニュータウンでは、入国者による宗教活動が全面解禁される「信仰特区」が誕生する。この特区で宗教関係者によるPRイベントも開催されることになったが、神のようなシステムが支配する世界においても、信仰や差別を巡る悲劇が繰り返されようとしていた。PRイベント当日、会場を狙って腹に爆弾を仕込んだ男が自爆テロを起こす。この自爆テロは信仰特区絡みの犯行であり、男を薬であやつった首謀者がいると推測した灼たちは、宗教特区反対派にターゲットを絞って捜査を開始。その対象は難民弁護官のシスター・テレーザ陵駕、ニュータウン工場労働者の顔役を務めるジョセフ・アウマ上人、自爆した男が信仰していた公認宗教団体「ヘブンズリープ」教祖代行のトーリ・S・アッシェンバッハの三名。それぞれ疑わしい点はあるものの、いずれの色相もクリアで、テロ事件につながる証拠は得られなかった。捜査を進める灼たちは、さらなる連続爆弾テロが予想される痕跡をつかむものの、イベントに出席していた特区賛成派唯一の生き残りである入国管理局オブザーバーの久利須=矜冶・オブライエンが、二度目の爆破事件で死亡する。さらなるテロを防ぐため、灼たちは重要参考人が管理する貸し倉庫を調査し、炯・ミハイル・イグナトフ如月真緒と共に変装し、ヘブンズリープへの潜入捜査を開始する。一方、倉庫に残っていた痕跡を頼りに、爆弾テロを起こす者があと三人いると突き止めた灼たちだったが、そう思った矢先にニュータウン工場地帯で第三の自爆テロが発生し、アウマが売春組織から逃げた入国者たちを庇って犠牲になってしまう。アウマたちがいた倉庫の奥には銃の部品パーツを製造している工場も発見し、強制売春の被害者を救いながら密売に手を染めていたアウマに違和感を覚えた灼たちは、製造された銃の流通ルートを調べ始める。

Cubism

炯・ミハイル・イグナトフ如月真緒は、教祖代行であるトーリ・S・アッシェンバッハが爆破事件に関与していた証拠をつかむものの、トーリに潜入捜査を見破られて二人別々の部屋に拘束される。外務省の潜入捜査を疑うトーリは情報を引き出そうと炯を拷問し、さらには手術を終えたばかりの炯の妻である舞子・マイヤ・ストロンスカヤを拘束して揺さぶりをかけてくる。一方、炯たちの連絡が途絶えたことから早急な事件の解決を図る慎導灼は、以前の爆破テロで死んだはずの久利須=矜冶・オブライエンの生存をメンタルトレースを通して確認。さらに連続爆破テロの真相に辿りつき、今回の首謀者でもある彼の先回りに成功する。当初は久利須、シスター・テレーザ陵駕、ジョセフ・アウマ上人、「ヘブンズリープ」教祖・仁世の四人で立てた「終末救済プラン」と称した入国者への犯罪を告発する計画だった。しかし、自分の息子を植物状態にされた久利須は、救済ではなく差別を生む社会への復讐を選び、さらにはそれをトーリがかかわっている「ビフロスト」という巨大組織に利用されたとテレーザは語る。久利須を止めようとしたテレーザは何者かに撃たれて死亡し、なんとかトーリから逃げ出した真緒が持っていた懐中時計をもとに、計画表が保存されたサーバーを発見した灼たちは、最後の標的が小宮カリナであることを知る。先回りした灼たちに対し、差別を生み出す社会への警鐘を鳴らそうと、灼たちを巻き添えにすべての罪を背負って自爆しようとした久利須は、計画を達成することなく病死する。だが、その直前に久利須を庇うように、雛河翔のドミネーターの前に立って説得を試みた灼の犯罪係数は急激に下降し、ついには0になっていた。一方、ヘブンズリープ本部への強制捜査に踏み切った霜月美佳は、二係と共に捕まった炯の捜索に当たるが、追い詰められたトーリは舞子を人質に取って逃走していた。炯と対峙したトーリは、炯と舞子の絆をあざ笑いながら銃を向けるが、一瞬のスキを突かれ、舞子が放った銃弾を受ける。

関連作品

テレビアニメ

本作は、2019年10月から12月にかけてフジテレビほかで放送されたテレビアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』を原作としている。原作アニメ版はテレビアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 2』の続編。監督は塩谷直義、キャラクターデザインは恩田尚之が務めている。キャストは、慎導灼を梶裕貴、炯・ミハイル・イグナトフを中村悠一が演じている。

漫画

本作の続編として、橋野サルの漫画『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』がある。同名の劇場版アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』のコミカライズで、新たな事件に巻き込まれた慎導灼炯・ミハイル・イグナトフの活躍を描いたSFアクション。集英社「ジャンプコミックス」から刊行されている。

登場人物・キャラクター

慎導 灼 (しんどう あらた)

厚生省公安局刑事課一係に所属する新人監視官の男性。年齢は24歳。常守朱に推薦されて炯・ミハイル・イグナトフと共に新たに配属された。無造作にはねた黒髪ショートヘアで、小柄で細身な体型をしている。つねにひょうひょうとしており、誰にでも分け隔てなく接する明るくポジティブな性格の持ち主。その一方で、執行対象者であっても殺害することには強い抵抗があり、時折執行官を妨害することがある。炯と彼の妻である舞子・マイヤ・ストロンスカヤとは幼なじみで、三人で食卓を囲むことが多い。優秀な特A級メンタリストで、事件の被害者や犯人に一時的に成り切り、現場の状況を再現する高度な技能「メンタルトレース」を得意としており、捜査にも役立てている。ただし、メンタルトレースで深く潜り過ぎるのはさまざまなリスクを伴うため、炯がパートナーとして守る役目を担い、彼がいっしょにいないときは極力メンタルトレースをしないようにしている。特に死者のメンタルトレースは、当時の死の状況まで再現して死亡する危険すらあるため、誰かがトレースをストップさせる必要がある。しかし、捜査の進行や事件の解決を急ぐあまり、勝手にメンタルトレースをすることも多く、そのたびに炯を心配させている。また、相手の心理状態を素早く見抜く優れた洞察力を持つため、分析力や推理力も高い。過去の事件が原因で、父親の慎導篤志が乗っていたクラシックカーでしか熟睡できず、よく寝不足気味になっている。厚生省大臣官房の高級官僚であった篤志は、2年前に炯の兄を殺害したあとに自殺しており、この謎多き未解決事件の裏に何者かの陰謀が潜んでいると考え、篤志たちの死の真相を探るために炯と監視官となった。身体能力が非常に高く、パルクールで高所を素早く移動して犯人を追い詰めている。幼少期は九州北部の難民特別居留地「出島」で、移民たちと過ごしていた過去を持ち、炯や舞子とはその頃からの付き合いで仲がいい。生年月日は2096年2月11日。

炯・ミハイル・イグナトフ (けい みはいる いぐなとふ)

厚生省公安局刑事課一係に所属する新人監視官の男性。年齢は24歳。霜月美佳に推薦されて慎導灼と共に新たに配属された。ロシア系移民の二世であり帰化準日本人で、青みがかった黒髪ショートヘアに長身が特徴。正義感が強く生真面目な性格だが、仲間や家族のことになると熱くなりやすい一面もある。同じロシア系移民の妻である舞子・マイヤ・ストロンスカヤと二人で暮らしており、灼と三人で食卓を囲むことが多い。幼少期は海外の紛争地帯で育ち、軍事訓練を受けて格闘・射撃・解析を得意とする元兵士でもある。幼なじみの灼とはお互いに精神的ザイルパートナーであり、さまざまな危険を伴うメンタルトレースを行う彼を守る役割を担うが、無理をしがちな灼のことをつねに心配している。2年前に兄の煇・ワシリー・イグナトフを、灼の父親である慎導篤志によって殺害され、篤志も自殺したこの未解決事件の真相を突き止めるべく、灼と共に監視官になった。灼とは被害者遺族と加害者遺族という関係でもあり、シビュラシステムにはバディ不適合と判定されていたが、それでも彼の相棒として共に行動している。移民である自分や舞子を受け入れてくれたシビュラシステムには強い信頼や感謝を寄せる一方で、それがすべてではないという価値観を持つ。ふだんは灼より冷静で、執行官たちの威圧的な態度にも怯まないが、家族や仲間が危険な目に遭ったり馬鹿にされたりすることを嫌悪している。頭に血が上ると民間人にすら手を出すことがあり、実際にそれが原因で停職処分を受けたこともある。灼と共に美佳の命令を無視してまで独断専行に走ることもあり、あくまで真実を追い求める姿勢を大切にしているが、そのために彼女を悩ませることも多い。黒髪なのは黒っぽく染めているためで、もとの地毛は金髪である。監視官でありながら殺人に躊躇せず、必要と判断すれば銃の引き金を引くこともいとわない冷酷な一面を持つ。殺人によって色相が濁りにくい、軍人に適したPSYCHO-PASSを持っている。生年月日は2096年1月18日。

雛河 翔 (ひなかわ しょう)

厚生省公安局刑事課一係に所属する執行官の男性。年齢は25歳。赤みがかった茶髪で、瘦せた体型をしている。長い前髪で目元が隠れていることが多く、内向的で人付き合いが苦手。一係の中では一番の古株で、かつての上司だった常守朱を尊敬している。うつ病から薬物依存になってドラッグバイヤーをしていたことがあり、顧客が命を落としたのをきっかけに潜在犯となった過去を持つ。元・ホログラムデザイナーでもあり、それらの知識や技術を捜査にも生かしている。昔よりもコミュニケーション能力が改善され、積極的に意見を述べるようになり、特にホログラム技術や知識を発揮して活躍している。朱が拘留されてからも彼女との仲は以前と変わらず、時折連絡を取っているが、彼女を優先しすぎて今の一係への対応が遅れることがある。丼飯に大量のサプリメントを混ぜて食べている。

廿六木 天馬 (とどろき てんま)

厚生省公安局刑事課一係に所属する執行官の中年男性。年齢は55歳。灰色の短髪で荒々しい性格をしており、やられたらやり返すのをモットーとしている。政治家の家系で上流階級の出身ながら、窮屈な環境からかえって粗暴な力を求めるようになった。潜在犯として認定されたあとは、家族の縁を切られて絶縁状態にあり、父親や弟からも毛嫌いされて一族の恥という扱いを受けている。一係ではほかの執行官たちのリーダー的な存在としても行動しており、新たに配属された新人監視官の慎導灼と炯・ミハイル・イグナトフを試すような態度を取ることもある。

入江 一途 (いりえ かずみち)

厚生省公安局刑事課一係に所属する執行官の男性。年齢は33歳。黒髪ショートヘアであごヒゲを生やし、左耳にピアスをつけている。廃棄区画のスラム街出身であり、サイマティックスキャンすらない最下層で育った過去を持つ。このため縄張りにしていた茗荷谷を中心に廃棄区画には知り合いが多く、裏社会の状況にも詳しい。それらの経験や知識、人脈は捜査にも生かし、スラムの案内人としても活躍している。年下の如月真緒にはよくちょっかいを出しているが、あまり相手にされていない。誰に対してもなれなれしく悪意すら感じる軽薄さで接するが、兄貴肌のような面倒見のよさや優しい一面を持つ。

如月 真緒 (きさらぎ まお)

厚生省公安局刑事課一係に所属する執行官の女性。年齢は26歳。黒髪をショートヘアにしている。元・スイミングアスリートで、身体能力に優れている。ほかの執行官たちともなれ合わないクールな性格で、職務は完璧に遂行するものの基本的に冷めた言動で、他人が気安く愛称で呼ぶことを嫌う。上司である慎導灼と炯・ミハイル・イグナトフにもあまり期待をしていないが、監視官らしからぬ型破りな行動を取る二人にはよく驚かされている。捜査では炯と行動することが多く、ある事件をきっかけに彼にささやかなあこがれを抱く。

霜月 美佳 (しもつき みか)

厚生省公安局刑事課課長と統括監視官を務める女性。年齢は24歳。茶髪のセミロングヘアで、顔にそばかすがある。シビュラシステムの適性判断により、最年少で厚生省公安局に入局した過去を持つ。元刑事課一係の監視官として、さまざまな事件にかかわっていたが、現在は昇格して一係のリーダーとして刑事課を統括する立場にある。現場からは一線引きながらも、監視官としての経験を生かして個性的な部下たちを引っ張っている。特に奔放な新人監視官の慎導灼と炯・ミハイル・イグナトフに手を焼いているが、苦言や愚痴をこぼしながらも陰から二人の行動を支援している。ただし、部下たちの暴走に頭を悩まされることが多く、つねにストレスを抱えているために薬が手放せずにいる。また、外部や他省庁からのクレームの処理や、外務省との協力・調整なども担当している。

唐之杜 志恩 (からのもり しおん)

公安局総合分析室に所属する分析官の女性。年齢は35歳。金髪のセミロングヘアで垂れ目が特徴。赤いワンピースの上から白衣をまとっている。主に情報収集やデータ解析を通して、慎導灼たちの捜査をバックアップしている。鑑識ドローンや高機能小型ドローンといったさまざまなドローンをあやつって情報を集め、時にはハッキングをすることもある。執行官たちと同様に潜在犯でもあるが、最近は犯罪係数が低下しつつある。

常守 朱 (つねもり あかね)

厚生省公安局刑事課一係に所属する監視官を務めていた女性。濃い茶髪のショートボブヘアで、華奢な体型ながら優秀な監視官として一係をまとめていた。ある事件をきっかけに現在は拘留中の身となっており、一部からは「人殺しの元監視官」などと評される。しかし、ほかの刑事課の者たちからは「伝説の監視官」と高く評されている。慎導灼を監視官として推薦した張本人でもあり、彼らが謎多き組織「ビフロスト」の真実を暴くことを願っている。生年月日は2092年4月1日。

舞子・マイヤ・ストロンスカヤ (まいこ まいや すとろんすかや)

炯・ミハイル・イグナトフの妻。年齢は24歳。炯や慎導灼とは幼なじみで、炯と同じロシア系移民であるため、差別の対象になることもある。愛称は「舞ちゃん」。過去に故郷の紛争に巻き込まれた時の爆撃で、母親と両目の視力を失っている。ふだんは介助AIに助けられながら暮らしており、目の手術を控えている。過去に故郷で紛争を体験しているため、宗教特区での爆弾テロ事件以降、日本でも争い事が起きるのではと心配している。灼とは今でも仲がよく、彼を家に招いて炯との三人で食卓を囲むことも多い。料理上手で、フードプリンターなどに頼らずに祖国の郷土料理を作っている。幼少期は出島で暮らしたあとに、徴兵義務のために炯と共に祖国に戻り、この際に軍役を経験していた元軍人。このため、か弱い見かけによらず格闘術や銃器の扱いも得意としている。目の手術を終えたあとは無事に視力を取り戻したが、炯を揺さぶる人質として敵に捕らわれてしまう。

小宮 カリナ (こみや かりな)

アイドル政治家として活躍する女性。年齢は20歳。肯定党から東京都知事に立候補する。幼少期からシビュラシステムにアイドルとしての適正を見いだ出され、さまざまな困難に見舞われながらもカリスマアイドルとしての道を歩み、18歳からは政治家に転身。移民には否定的で、現在の日本国民を重視した「隣人政策」を中心に取り組む。対立候補で移民肯定派でもある薬師寺・ヘラクレス・康介とは人気を二分していたが、選挙活動を通してさらに人気を集めていく。しかし選挙期間中に、メンタルケアを担当していたスタッフの土谷博士が謎の転落死によって亡くなったことで、慎導灼たちと知り合う。灼からは底知れぬ恐ろしさを感じ取られているが、それは肯定党が用意した代理人格AI「マカリナ」を使用しているためである。土谷博士が開発したマカリナが、一般人に使用規制が敷かれている全身ホログラムであるために存在を公表しておらず、康介を支持する榎宮春木の一派に狙われる。春木の策略でマカリナを暴かれて彼の手下に拉致されたものの、灼たちによって救出され、東京都知事に当選した。

梓澤 廣一 (あずさわ こういち)

謎多き中年男性で、謎の組織「狐」を使った事件にかかわる犯罪プランメーカー。年齢は46歳。黒のオールバックで垂れ目が特徴。ひょうひょうとした態度が多く、つねに気さくに軽口を叩いているが、その裏には人間への興味がまったくないほどの邪悪な精神と知略に優れた悪魔的な頭脳を抱えている。元・日空航空空港本部空港本部長であるほか、1年単位でさまざまな職を転々としており、数々の肩書きを持つ捉えどころのないニヒルな中立者として、事件を追う慎導灼たちの前に次々と罠を仕掛けてくる。その正体は「狐」をあやつる謎の組織「ビフロスト」の1stインスペクター。細かい要因を巧みに連鎖させ、自ら手を下すことなく相手を死に追い込むやり方を好む。日東学院行動経済学科出身で、刑事課二係の執行官を務めていたこともある。パートナーは11thインスペクターの天才クラッカー・小畑千夜。知能犯として優れているほかにも格闘術が得意で、元・格闘技プロアスリートの榎宮春木をあっさり返り討ちにしている。春木を始末したあともさまざまな事件の裏で暗躍を続けており、ビフロストの最上位である「コングレスマン」の座を狙っている。

榎宮 春木 (えのみや はるき)

違法賭博格闘場をはじめ、茗荷谷廃棄区画の裏社会を取り仕切るブローカーの男性。元女性で元プロアスリートながら、男性ホルモンの注入をはじめとするドーピングで引退し、裏社会に手を染めるようになった。その正体はビフロストに所属する2ndインスペクターで、裏で小宮カリナを妨害しながら薬師寺・ヘラクレス・康介の当選をもくろんでいた。しかし、慎導灼たちの活躍で失敗に終わり、一人で逃亡していたところで梓澤廣一に遭遇し、事故死に見せかけて始末された。

トーリ・S・アッシェンバッハ

シビュラシステム公認宗教団体「ヘブンズリープ」の教祖代行を務める青年。半年前から教祖代行に任命された。13歳の頃からさまざまな企業を渡り歩いてきた、異色の経歴を持つ謎多き人物。シビュラシステムを熱心に信仰する宗教家であるとともに、移民と宗教を隔離させる三郷ニュータウン宗教特区政策には反抗的。その正体は謎の組織「ビフロスト」の3rdインスペクターであり、コングレスマンの一人・裁園寺莢子の息子。以前は色相が濁っていたが、ヘブンズリープに入信後は改善している。教祖の仁世には恩義を感じるとともに、その恩返しとして色相を改善させる装置を発明する。しかし、これを受けた者は植物状態になる危険性があり、久利須=矜冶・オブライエンの息子も薬漬けの末に植物状態にされていた。教団に潜入していた炯・ミハイル・イグナトフと如月真緒には拷問に近い尋問を開始し、舞子・マイヤ・ストロンスカヤを人質に取って炯を追い詰めようとする。公安局が教団本部の強制捜査に踏み切ると、ビフロストの者たちに切り捨てられたが、ひそかに莢子のルール違反を密告することで彼女のコングレスマンの席を奪おうともくろんでいた。

久利須=矜冶・オブライエン (くりす きょうじ おぶらいえん)

末期癌を患った日本移民の老齢な男性。入国管理局でオブザーバーを務める。年齢は64歳。三郷ニュータウン宗教特区推進派で、PRイベントのプロモーターも務める。かつてはシスター・テレーザ陵駕、ジョセフ・アウマ上人、宗教団体「ヘブンズリープ」の教祖・仁世の三人と共に開国運動に力を入れ、その記念品である懐中時計を持っており、彼女たちと共に移民を使った犯罪を告発することを目的とするテロ計画「終末救済プラン」を計画した。信心深かった息子のフラナガンが、ヘブンズリープで薬漬けにされて植物状態になったうえに、自分も人工的に癌を発症させられてしまう。やがて余命わずかなのを悟るうちに、復讐が目的と化していった終末救済プランをトーリ・S・アッシェンバッハに利用されているのを知りながらも、彼と組んでテロ計画を進めていく。第一の爆破テロのあと、自らの片腕を切り落として死亡を偽装したうえで逃走し、その後のテロ事件の裏で暗躍を続ける。フラナガンが目覚めた時に移民差別をなくすため、そして復讐を遂げるために、彼を虐待したヘブンズリープ信者を自爆させた。その後は小宮カリナを狙っていたが、慎導灼たちに行く手を阻まれ、計画を完遂できないままで病死した。

集団・組織

ビフロスト

さまざまな事件の裏で「狐」をあやつって犯罪を犯す謎の巨大組織。もとはシビュラシステム開発初期にデバッグを担っていた極秘部署だったが、その立場を利用した出資者や開発者たちが、あらゆる手段でシビュラシステムの盲点を突いて利益を得る方法を考案しながら、わずかな人物だけで暗躍を始めたことが発端となっている。厚生省シンボルタワーの地下で、シビュラシステムですら認識できないデッドスペースに潜み、使われなくなった併設型自動デバッグ診断・修復サブシステム「ラウンドロビン」のもとで運営されている。メンバーの階級は最上級の「コングレスマン」、コングレスマンの指示下で暗躍する「インスペクター」、末端の「狐」に分類され、それぞれが役割を担って計画を実行する三層構造となっており、さまざまな事件や経済現象・社会現象を含めた「事案」に影響を与えている。

その他キーワード

潜在犯 (せんざいはん)

シビュラシステムによって、規定値を超える犯罪係数が測定された人間のこと。将来的に犯罪を犯す可能性がある者として、社会からの排除や隔離の対象となり、数値に応じた施設に送られる。更生の見込みがあれば潜在犯更生施設で治療を受けられるが、より重篤な者は潜在犯隔離施設に隔離される。犯罪係数を下げられるさまざまな治療法も存在するが、規定値が継続的に超えてしまったり、更生の見込みがないと判断されたりする可能性もあるため、潜在犯に認定されることを人生の終わりと考える者も多い。犯罪係数が非情に高い潜在犯であれば、ドミネーターの殺傷モードによる射殺も認められている。

サイマティックスキャン

シビュラシステムによる計測システム。人間の脈拍や体温をもとに対象者の精神状態を科学的に分析し、犯罪係数を測定することができる。街のあちこちに装置が設置されているが、サイマティックスキャン妨害ヘルメットのように計測を妨害する手段や道具もいくつか存在する。"

クレジット

原作

サイコパス製作委員会

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