概要・あらすじ
元プロボクサーで、人並み外れた大男だが心優しい青年、神御蔵一號は警察庁の特殊部隊「NPS」の突入隊員。いかな凶悪犯罪でも、犯人を殺害せずに確保することを目的とする「NPS」の一員である一號は、場合によってはSATの狙撃からも犯人を守ろうとする熱血漢である。さまざまな事件を、まさに「体を張って」解決へと導こうとする一號とNPSメンバーたちだったが、その行動原理は警察内でも疎ましがられ、特に殺害を含めた犯人制圧を主目的とするSATとの対立構造が形成されていくことになる。
登場人物・キャラクター
神御蔵 一號 (かみくら いちご)
NPS隊員の巡査で、通称「突1」と呼ばれる突入要員の一番手を務める。優しい性格で、喜怒哀楽をストレートに表現する大男。スカウトした隊長の香椎秀樹からは、「邪気を祓う拳を持つ」と評価されている。幼い頃に目の前で母親を殺害された経験があり、事件の被害者を救いたいという意識が強いため、命令を無視して独断専行する傾向がある。 元クルーザー級のプロボクサーで、「ミクラス一號」のリングネームを持っていた。その鍛えられた体格の印象から、「ゴリラ」あるいは「ゴリマッチョ」等のあだ名をつけられやすい。遅れて入隊した林イルマからは「一號ッチ」と呼ばれる。スイーツ好きで、趣味は模型作り。
蘇我 伊織 (そが いおり)
警視庁警備部警備第一課特殊部隊(SAT)隊員。26歳で階級は巡査。クールな性格で切れ長の目が特徴の美青年。SAT創設以来最高の狙撃手(スナイパー)と評価されており、射殺も含め犯人を撃つ任務に誇りを持っている。神御蔵一號とは対立する思想の持ち主。実の姉を仮釈放中の犯罪者に殺害された過去がある。 押しが強くマイペースな横川秋に対して苦手意識を持っている。
香椎 秀樹 (かしい ひでき)
『S -最後の警官-』の登場人物で、NPSの隊長。41歳で、階級は警視。かつてはSATの「突1」で、中丸文夫の部下だったが、犯人を殺害する中丸のやり方に納得できず辞表を提出。天城光の打診を受け、NPS創設に協力した。普段はのらりくらりとしたところがあり、勤務中、パチンコに行くこともある。
速田 仁 (はやた ひとし)
『S -最後の警官-』の登場人物で、NPSの副官。メガネをかけた35歳の物静かな男性で、階級は警部。元SIT隊員で、「トカゲ」と通称される二輪部隊に属していた。走りのエキスパートで、バイクに乗ると人格が変わる。また、救急救命士の資格を持っており、捜査中に犯人の蘇生処置を行うこともある。SIT時代、未解決に終わっている誘拐事件の容疑者のひとりだった女性・藤波優子と恋をし、SITを辞めている。
古橋 誠二朗 (ふるはし せいじろう)
『S -最後の警官-』の登場人物で、NPSの小隊長。34歳で、階級は警部補。短く刈った髪と、普段から閉じているように見える細い目が特徴。関西出身で気楽な会話では関西弁を使うことが多い。ネゴシエーションに関するさまざまな特別訓練を受けており、犯人との交渉役を務めることが多い。結婚していたが離婚し、息子は母親の元で暮らしている。
梶尾 竜一 (かじお りゅういち)
『S -最後の警官-』の登場人物で、NPS隊員。30歳で、階級は巡査部長。速田仁同様、救急救命士の資格を持っている。警備犬のポインター号を連れて捜査に臨むことが多く、自身が撃たれても犬を心配するほど犬に対して強い愛情を持っている。自宅では犬以外さまざまなペットを飼っており、長男なのに結婚の気配がないと親から心配され、見合いの話も持ちかけられている。
林 イルマ (はやし いるま)
『S -最後の警官-』の登場人物で、NPS隊員。25歳の女性で、階級は巡査。毛先のはねたショートボブの髪型が特徴で、底抜けに明るい性格の持ち主。元SFGp(陸上自衛隊特殊作戦群)に所属していたが、セクハラ上司をペイント弾の矢で射てクビになった過去がある。一時的にNPSに出向していた蘇我伊織がSATに戻ることになり、狙撃手候補として香椎秀樹にスカウトされる。 宮崎県出身で故郷に伝わる焼酎を飲みながら正座して射る「四半的(しはんまと)」という弓術を得意とし、狙撃手としても非常に高度な技能を有している。かしましく、「ゴリラ」と呼ばれる神御蔵一號と言い争うことが多いため、「チンパンジー」などと呼ばれることがある。 セクハラやストーカー行為をする男を「ゴキブリ」を意味する「あまめ野郎」と呼んで激しく嫌悪している。
横川 秋 (よこかわ あき)
NRIPS(警察庁科学警察研究所)の研究主任で、主な研究テーマは行動心理学。34歳のグラマーな美女で、階級は警視。男勝りな性格で車の運転は乱暴になりがち。香椎秀樹とは親しく、「香椎ちゃん」「横川ちゃん」と呼びあっている。科学捜査を駆使して迷宮入りしそうな事件を度々解決に導いており、「凄腕のシークレット・ハンター」とも呼ばれている他、プロファイルの達人でもある。 香椎から捜査協力を頼まれた際には、見返りに高級肉を要求することが多い。
中丸 文夫 (なかまる ふみお)
『S -最後の警官-』の登場人物で、SATの隊長。45歳で、階級は警視。任務遂行のためには犯人の殺害も厭わない人物で、冷酷さの現れた強面をしているが、本来はSAT隊員を家族のように愛する優しい性格の持ち主。横川秋のことは「秋」と呼び捨てで呼んでいる。
霧山 六郎 (きりやま ろくろう)
元警察庁次長で、現在は作家。かねてより日本国内で国際的なテロリズムが実行されると主張し、鎮圧のため警察に犯人の殺害を含む強い権限を持たせるべきと主張している人物。日本警察の改革を目指す「霧山塾」の主宰者でもあり、参加メンバーには政界、官界、財界からそうそうたる顔ぶれが並んでいる。NPS設立の立役者でもあるが、それは「確保」という生ぬるい手段では国際テロに対抗できないことを国民に知らしめるための、いわば「噛ませ犬」とする意図だった。
天城 光 (あまぎ ひかる)
警察庁長官で、官房審議官。人当たりの良さそうな目を細めた笑顔が特徴的な49歳。霧山六郎の右腕的存在。賭け事が好きで、NPSとSATの合同演習のときも、各競技でどちらが勝つかを霧山と賭けていた。常に霧山に従って行動しているようだが、時折霧山に対して含むところがあるような表情も見せる。
棟方 ゆづる (むなかた ゆづる)
棟方彬の孫娘で、神御蔵一號とは義理の兄妹の関係にあり、幼なじみでもある。いつも祖父や一號のことを心配している優しい女性。一號に好意を持っているが、良い反応がないため不満を抱いている。飲酒によって不満が表に出ることがあり、一號には酒癖が悪いと思われている。
棟方 彬 (むなかた あきら)
両親を亡くし児童養護施設に入っていた神御蔵一號にボクシングを教えた、「棟方ボクシングジム」の会長。幼い一號の素質を見抜き、引き取って家族に迎えた人物。一號からは「会長」、ゆづるからは「おじいちゃん」と呼ばれている。頭頂の禿げた厳しい顔つきの老人だが、子供の頃から老け顔で、現役のボクサー時代には額が後退しはじめていた。
正木 圭吾 (まさき けいご)
神御蔵一號を狙う、日本人の国際テロリスト。NPSとSATが合同訓練を行った際、横川秋を拉致した。霧山六郎を「先生」と呼び、SATを知らしめるためにNPSを利用する計画を知っており、かつては「霧山塾」とも関係があった人物。またフランスに一時返還されるプルトニウム1.8トンを積んだ「第2あかつき丸」のシージャック事件の首謀者でもある。 ネットを通じて公開された犯行声明ビデオにおいて、かつて震災後被災地でボランティア活動を行っていたことが明かされている。
集団・組織
NPS (えぬぴーえす)
『S -最後の警官-』に描かれている、警察庁に設置されたという設定の架空組織。2009年1月に秘密裏に作られた特殊部隊で、SAT(警視庁警備部特殊部隊)やSIT(各都道府県警刑事部の特殊犯捜査第1係)とは異なり、犯人を生きたまま確保することを主目的とする。エンブレムは「盾」の形にデザインされており、確保と人を守るという信条が表現されている。 立場上、日本の各地で捜査を行えるが、縄張り意識の強い都道府県警察からは「警察庁の腰巾着」などと揶揄され歓迎されないことが多い。