世界観
人間世界とは別の場所に、武者頑駄無たちが暮らしている星がある。その中でも天宮と呼ばれる日本列島と酷似した形をした国の中で、武者頑駄無たちと悪の武者たちが永きにわたって戦いを繰り返している。またこの天宮は代々「大将軍」と呼ばれる役職の頑駄無が国を統治する立場にある。
あらすじ
人間の住む世界、天馬の国では、武者頑駄無たちによるチームバトル、武者バトルが流行していた。突如現れて武者バトルに勝利した小さな武者・ワカに、カツミはサポーターとなって最強の武者を目指そうと約束する。しかしその武者バトルに隠れ、ワカの命を狙う月の国の武者・叛多亜武者たちが活動を始めていた。
関連作品
本作『SD頑駄無 武者○伝2』の前編続編として、主人公や敵キャラを変更した『SD頑駄無 武者○伝』と『SD頑駄無 武者○伝Ⅲ』がある。本作には、作者や主人公を変えて展開されている「武者ガンダム」シリーズの過去作品に登場するキャラクターが多数登場している。また本作は刊行されてから数年を経て「復活ボンボンシリーズ」として復刊されており、全2巻分の内容が収録されている。
登場人物・キャラクター
ワカ
武者頑駄無たちの国、天宮を現在統治している「大将軍」の息子。「若様」と呼ばれることもある。流派は頑駄無流。頭部には猫耳のような突起があり、足も他の武者頑駄無たちのように機械らしい造形ではなく、猫の足のように丸く、指のようなものもある。基本的に口調が丁寧で、「ですぅ」などの間延びした語尾や、感情が高ぶった時に「うにゃ」と言うのが特徴。 ソフトクリームが好物で、カツミとは、カツミが手に持っていたソフトクリームを勝手に食べてしまったことで知り合った。諦めやすい性格で、叛多亜に手も足も出なかった。カツミに「ケンカのやり方」と称して戦いを教わってからは、武者姿の時には「オシショー様」と呼び慕っている。それ以降カツミに褒められると感激のあまり、握り潰しそうになることもしばしばある。 また、普段はカツミのことを「カツミン」と呼んでいる。ブライトとハッチャンを部下とは考えておらず、友人と認識している。誰かを犠牲にしてなにかを救うという考えを否定しており、烈號からは甘いと一蹴されている。號號将頑駄無から貸し与えられた、正面が鬼の顔になっている鎧をまとうと、「若神丸」という武者の姿になる。 また不思議の鎧をまとうと、「神武兜頑駄無」になり、最終戦では天宮の守護聖獣である鳳凰によって、さらにパワーアップした「超王神武兜頑駄無」になった。
カツミ
天馬の国に住んでいる男子小学生。武者バトルのファンで、強いチームのサポーターになりたいと思いながらも、万年最下位の弱小チームであるザクレロイーターズのサポーターをしていた。カツミが持っていたソフトクリームを勝手に食べたワカと出会い、「カツミン」と呼ばれるほど親しくなった。また「若神丸」には戦いのヒントを与えたことで「オシショー様」と呼ばれ慕われている。 武者小路ナオミを「オジョー」と呼ぶ友人であり、ケンカ友だち。撃鱗将頑駄無が指揮を執る合宿にも付き合い、ワカに飴やソフトクリームを与えるなど、勝手な行動をして怒られていた。カツミにケンカを教えたのは前作主人公の「武者丸」であり、またカツミは前作に登場する「ススム」の弟でもある。
ブライト
天馬の国で非合法に行われていた武者バトルを取り締まる「交通機動隊」に所属している武者頑駄無。流派は裏頑駄無流。ワカを陰で守護する役目を与えられて天馬の国にやって来た。いざという時には、活殺裏葛篭によってワカの命の予備となることも使命とされていた。当初は、ワカにその価値があるのか懊悩して鎧を制御できず、ワカに斬りかかることもあった。 しかし自分を部下としてでなく、対等な友人として扱うワカに対して次第に心を開き、真の忠誠を誓った。ハッチャンとは仲が悪いが、合宿後はともにワカを支える仲間として認識している様子が見られる。コージとは以前からの友人で、常に体を心配している。物語開始当初はカラスをモチーフとした「斧雷丸」、活殺裏葛篭によって命を落とし、さらに復活してからは、コブラをモチーフとした「光斧雷頑駄無」という武者にパワーアップした。
カラス
ブライトがワカに対する忠誠を持ちきれず、鎧を暴走させていた頃に現れていた。頭では使命を理解していながらも、ワカは自分の命をかけてまで守る価値がないと思っていたブライトに対し、厳しい言葉で叱責を繰り返した。
コージ
体が弱く、田舎にある総合病院で入院している少年。ブライトを「事故から救ってくれた恩人」と言っているが、この事故について作中では触れられていない。過去にはブーメランを趣味としており、友人と決めたブライト、烈號には、愛用していたブーメランをプレゼントしている。
ハッチャン
ラップが趣味の僧。法術を使って戦う時防流に所属している。天馬の国では横浜のクラブハウスでDJとして雇われている。自分のことを「ミー」、相手のことを「ユー」と呼び、語尾には「Yo(ヨー)」と付ける特徴的な話し方をする。眼鏡をかけており、眼鏡が外れると、ほぼなにも見えない。登場当初は武者頑駄無全体を見下した態度を取っており、特にブライトとは犬猿の仲だった。 ワカに対しても尊敬や友愛といった感情は抱いていなかったが、合宿後は、ワカの隠れたカリスマ性に惹かれると同時に、ワカ、ブライトへの仲間意識も芽生え始めた。かつて時防流の卒業試験で蘇生したカエルを再度殺せと命じられ、どうしてもできず、宿笠に転生させた過去がある。 そのことが時防流の掲げる「自己利己なし」の精神に反するとして、落ちこぼれの烙印を押されていた。しかし破異武立闘武者に利用された上に自爆させられた亜プ皿巣を「亜布」として蘇生した際、「自己も利己もある時防流僧」として「零覇利法師」にパワーアップした。当初は黒縁だった眼鏡も、この時に白い縁に変わっている。 また、宿笠には「ハリ」と呼ばれている。
宿笠 (やどりがさ)
普段はハッチャンの被っている編笠の姿をしているキャラクター。「ゲコ」としか鳴くことができないが、ハッチャンには、その一言の中に含まれている言葉の意味が理解できている。以前は時防流の卒業試験で蘇生の術の検体にされたカエルの遺体だった。蘇生成功後は、本来なら即座に命を奪われるはずだったが、どうしてもできなかったハッチャンによって宿笠として転生させられた。 姿は変わっても、生かしてくれたハッチャンに感謝しており、亜プ皿巣を蘇生することに戸惑うハッチャンを励ました。
亜プ皿巣 (あぷさらす)
武者頑駄無世界の生き物。破異武立闘武者の「プリンス」を作ろうとしていた叛多亜武者たちによって、卵に栄養を与えるためだけに利用されていた。全身を厚い甲羅のようなもので覆った姿をしており、常にホバリングして宙に浮かんでいる。相手に鋭い針を刺し、奪ったエネルギーを卵に注入していく役目を与えられている。負ったダメージもエネルギーに変換して、卵を成長させることができる。 その作業を、叛多亜武者に鎖に繋がれて強制されており、卵が一定の大きさになって産み落とした後は、自爆させられる。その運命を知ってハッチャンに助けを求めており、死亡後はハッチャンの意識ある乗り物「亜布」として転生している。
武者小路ナオミ (むしゃのこうじなおみ)
武者小路財閥の令嬢。ザクレロイーターズのオーナーを務めている少女。大きなポニーテールとリボン、眼鏡が特徴で、非常に気が強い性格。カツミのケンカ友だちでもある。突然現れて武者バトルに連勝しているワカを、ソフトクリーム1年分の契約で、ザクレロイーターズに迎え入れ、とても可愛がっている。非合法の武者バトルを、自社主催のものに限り合法とする「武者リーグ」を開催している。
撃鱗将頑駄無 (げきりんしょうがんだむ)
號號将頑駄無とともにワカを小さい頃から鍛えている師匠。最強の流派といわれる頑駄無流の師範をしている武者頑駄無。一般の武者では会えもしない存在といわれている。ワカ、ブライト、ハッチャンの3人の武者魂を鍛えるため、強制的に合宿を行った。常に厳しい口調と厳しい態度で接しており、ワカにも躊躇なく拳を振り下ろす。 ワカからは親しみと尊敬を込めて「撃さん」と呼ばれており、ハッチャンからは、その厳しさから「オニ」と呼ばれている。
號號将頑駄無 (ごーごーしょうがんだむ)
撃鱗将頑駄無とともにワカを小さい頃から鍛えている師匠。最強の流派といわれる頑駄無流の師範をしている武者頑駄無。天宮にいる一般の武者なら会えもしない存在と言われている。撃鱗将に比べると柔和な態度を見せるが、合宿中に叛多亜武者や、弟である烈號をけしかけるなど、そのやり方は荒っぽい。ワカからは親しみと尊敬を込めて「號さん」と呼ばれている。 昔は「叛多亜號業」として、ワカを狙う叛多亜武者だった。またワカが「若神丸」の時にまとう鬼の鎧は、叛多亜號業としての鎧であり、叛多亜武者の隊長の鎧と似た造形をしている。
叛多亜武者の隊長 (はんたーむしゃのたいちょう)
武者小路ナオミが主催する合法の武者バトル、「武者リーグ」に乱入して来た叛多亜武者たちの隊長。甲虫のような6本足のあるバックパックタイプの装備を背負っている。また鎧の正面が鬼の顔に見える造形をしている。
烈號 (れつごー)
叛多亜武者随一の猛者。號號将頑駄無の弟。叛多亜であることに誇りを持っているため、破異武立闘武者をバケモノと称しており、破異武立闘に変わり果ててまで生き残ろうとすることは醜悪だと一蹴している。ワカとの対戦後はコージの入院している病院に入院しており、人懐こいコージとの間に淡い友情を育んでいた。 また、ワカと再会後は、ワカのまっすぐな気性に気圧されている様子が見られる。ワカたちの武者魂を認めており、ブライトの命がハッチャンの活殺裏葛篭によってワカの体に入れられた後、ハッチャンに頼んでブライトの体に自らの命を入れさせた。
シャチョー
前作『SD頑駄無 武者○伝』から「鎧王」の本体として登場している武者頑駄無。武者小路ナオミが主催する合法の武者バトル、「武者リーグ」に賞品「鎧王の鎧鋼力服」の提供者として登場した時は、「鎧屋錦之助」という偽名を使用していたが、参加者の武者たちには、正体がシャチョーだとバレていた。
集団・組織
頑駄無流 (がんだむりゅう)
最強の武者頑駄無集団といわれる流派。ワカが所属している。師範代だけで約25人、師範代補佐なら100人以上存在するといわれている。超優秀とされる武者たちの頂点に立ち、師範として教えているのが、撃鱗将頑駄無と號號将頑駄無の2人。ワカはこの頑駄無流の代表として、破異武立闘武者と戦う先陣を切るよう定められていた。
裏頑駄無流 (うらがんだむりゅう)
ブライトが所属している武者頑駄無の流派。作中においてその詳細はほとんど説明されていないが、頑駄無流や「大将軍」家の血筋を守るために、所属者の命を犠牲にすることも想定としている様子が見られる。またその命を賭して尽くす性質は、時防流などにもよく知られている。
時防流 (じぼうりゅう)
ハッチャンが所属している「僧」の流派。「式神」を使役したりと、特殊な術を使うことができる。「自己利己なし」の精神を掲げており、常に感情を支配して自我に溺れることなく精進することを最大奥義としている。卒業試験として、死んだカエルの蘇生を課題としている。また、感情をコントロールするために、その蘇生したカエルを即座に殺すことも命じられる。 武者を蘇生するためには、生きている武者の命を移すしか方法がなく、その術は活殺裏葛篭と呼ばれている。
叛多亜武者 (はんたーむしゃ)
武者頑駄無たちを敵視している、月の国の武者。弱い叛多亜たちは語尾に「ムーン」が付くのが特徴。また理由は説明されていないが、武者頑駄無たちが使用していない鎧をまとって登場することが多い。烈號は、叛多亜武者を、強い相手と戦い、その緊張に名誉と命をかける種族だと語っている。
破異武立闘武者 (かいぶりっとむしゃ)
叛多亜武者たちが作り出した存在。改造武者という位置づけであり、一種のサイボーグやアンドロイドのようなもの。強固な体を持っており、試作強化型であっても、烈號の斬撃で傷一つ負わない。亜プ皿巣は、この破異武立闘武者の頂点となる「プリンス」を育てる母体として利用されていた。
ザクレロイーターズ
武者バトルの参加チーム。武者小路財閥、武者小路ナオミがオーナーを務めている。非常に弱く常に2軍扱い、サポーターはカツミただ1人だった。しかしワカが加入してからは、勝っている様子が見られる。所属しているのはワカの他に、「うっかりざくれろ」「風車の百式」「天零頑駄無」となっている。
武者小路財閥 (むしゃのこうじざいばつ)
武者小路ナオミを令嬢とする財閥。本来は非合法であるはずの武者バトルを、自社主催のものに限ってとはいえ合法化、リーグ化した「武者リーグ」を開催するなど、かなりの権力を持っている。また子会社として「武者小路エレクトロニックス」が確認でき、所有物件にムシャノコージスタジアムが存在する。
場所
天馬の国 (ぺがさすのくに)
人間たちが暮らしている世界。天馬の国沈没エネルギーと呼ばれる強大なエネルギーが眠っているという伝説がある。一度は天宮との道は閉ざされていたが、超時空転移装置のレプリカを用いて、比較的自由に行き来することができるようになっている。また天馬の国では、武者頑駄無同士がバトルを行う武者バトルが流行している。
天宮 (あーく)
ワカたちが本来暮らしている国。武者頑駄無たちが暮らしている星にある。列島で、日本と酷似した形状をしているとされる。天宮が確立した際、異世界から武法と錬金術が伝承されたといわれている。この起源は明らかにされていないが、この2つの文化をもたらしたのは、天馬の国の人間ではないかとされている。
ムシャノコージスタジアム
海沿いにある巨大なスタジアム。武者小路財閥が所有している。本来は非合法である武者バトルを、武者小路財閥が主催するバトルのみ合法化した「武者リーグ」が行われる会場となっている。叛多亜武者によって、二度天井が吹き飛ばされている。
イベント・出来事
武者バトル (むしゃばとる)
武者頑駄無たちのチーム同士による非合法バトル。天馬の国で流行している。開催許可を得ていない往来などで突如として開始されるため、警察組織「交通機動隊」による取り締まりが行われている。のちに、武者小路財閥主催の合法武者バトルリーグ、「武者リーグ」が開催される。本来は武者たちが精神修養のために行っていたらしいが、現在はスポーツとして定着している。
合宿 (がっしゅく)
ワカ、ブライト、ハッチャンの武者魂を鍛えるために、撃鱗将頑駄無が主催した合宿。山中で行われ、「返事の必要なし」「参加者に上下関係なし」「おやつなし」といった合宿三原則が敷かれている。脱走しようとすると、ボコボコに殴られた上で連れ戻されるなど、その内容は非常に厳しい。
その他キーワード
超時空転移装置 (ぶっとびしすてむ)
前作『SD頑駄無 武者○伝』で発見された巨大な機械。時間と空間の移動を可能とする驚天動地のカラクリとされている。本物は現在使用されていないが、簡易的なレプリカが天馬の国、天宮の両方に設置されており、比較的自由に行き来ができるようになっている。
不思議の鎧 (ふしぎのよろい)
カブトムシの形をしている巨大な鎧。自分の意思で動き、身にまとう者を自分で選定する。また主に選ばれた者は、天をも揺るがす力を手に入れると伝えられている。その伝説により、力を得ようとする悪しき心の持ち主が多く狙っている。しかし、誰も身にまとえず災いを運ぶだけならと封印し、天馬の国沈没エネルギーのある天馬の国に棄てようと、合宿の場に持ち込まれていた。 その際、なぜ天馬の国沈没エネルギーがあるということが理由になったのかは、明かされていない。
鎧鋼力服 (よろいすーつ)
シャチョーが「鎧王」の姿になるために乗り込んでいる乗り物。「武者リーグ」の賞品として提供されたものは、前作『SD頑駄無 武者○伝』で、シャチョーの借金の形に璃ゲ瑠組に差し押さえられたもの。「武者世界最強の伝説の鎧」と銘打って、壇に上げられていた。
天馬の国沈没エネルギー (ぺがさすのくにちんぼつえねつぎー)
天馬の国に眠っているとされる強大なエネルギー。天宮の歴史で、2002年に天馬の国を海の底に沈めたとされる。このエネルギーの正体は不明だが、烈號が不思議の鎧が奪おうとした際、大暴れしていた不思議の鎧に、カツミが飛び乗ったのをきっかけに大人しくなっている。烈號は、この不思議な現象こそが天馬の国沈没エネルギーと呼ばれるものではないかと考察している。
武者頑駄無 (むしゃがんだむ)
天宮に暮らしている種族の総称。機械でできているように見えるが、親子関係もあり、成長もする、人間と変わらない生態を持っている。天宮が成立した際に異世界からもたらされた武法によって、武者となったとされている。
武者魂 (むしゃだましい)
武者頑駄無が持っている戦いへの意欲や戦闘力そのもの、精神力の強さなどの総称。叛多亜武者たちは持っていないとされており、武者魂自体を小馬鹿にするような発言も見られた。しかし、活殺裏葛篭によってブライトに命を差し出した烈號は、「叛多亜にもある」と発言している。
活殺裏葛篭 (かっさつうらつづら)
時防流の僧が使用することができる蘇生の術の1つ。死亡した武者頑駄無を生き返らせることのできる術。これを成功させるには、生きている武者の命を死んだ武者の体に入れなければならない。破異武立闘武者の試作強化型に不意を打たれてワカが死亡した際には、ブライトの命が代替として使用された。また、そのブライトを生き返らせるために、烈號の命が、それぞれ本人たちの意思によって使用された。
クレジット
- 原作
-
サンライズ