江戸時代を舞台に、母を早くに亡くした少年・栗太郎と犬の栗之助、貧乏侍の父の家族を中心に描く人情噺コメディ。栗太郎は、幼い頃に母を亡くし、浪人で貧乏侍の父と二人暮らしをしている。ある雨の日、栗太郎はあじさいの花の下に隠れるようにしてたたずむ子犬を見つける。渋る父に頼み込んで飼うことを許してもらうと、栗太郎は犬を栗之助と名付けて家族の一員として迎えるのだった。一話完結形式で父子と一匹の日常を描いていく。2004年にOVAが発売。
主人公の栗太郎は寺子屋に通う元気な少年。父は浪人の身で傘張りの仕事で生計をたてている。肩を寄せ合って暮らしていた父子の元にやってきたのが、犬の栗之助だ。雨の中で濡れそぼり行き場を失っていたところを栗太郎が見つけたのだ。当初父は犬を飼うことに良い顔をしなかったが、栗太郎と栗之助が仲良く遊ぶ姿にほだされ、「今さら捨てにいくというわけにもいかんじゃろう?」と優しく認めるのだった。栗太郎と犬の栗之助、そして父と、お互いを思い合いながら暮らしていく日々が描かれていく。栗之助の、犬ながら人間の言葉がわかっているようなコミカルで、時にシニカルな行動も味わい深い。雨の中でも咲くあじさいのような健気さとたくましさが同居する作品だ。
庭いっぱいにあじさいが咲き誇る家に迷い込んだ少女とクラスメイトの男子の恋を描く少女漫画。ある日の雨上がり、幸千絵美(ゆきちえみ)は、あじさいが庭いっぱいに咲く家を見つける。偶然にもそこはクラスメイトの佐藤くんの家だった。紹介された佐藤くんのお母さんがお姉さんのように若いことにも千絵美は驚く。あじさいの花が結ぶ初々しいラブストーリーを描いた表題作の他に、「吾木香の詩」「1枚の笑顔」「願かけ地蔵さま」「恋がそっとゆれている」を収録。
主人公の千絵美は雨上がりの町が好き。雨上がりにはいつもと違う道を通ってみることにしていた。ある日の雨上がり、見事なあじさいの花にひかれて、見知らぬ家に足を踏み入れてしまう。あじさいばかりが咲き誇るその家はクラスメイトの佐藤くんの家。突然やってきたにもかかわらず、佐藤くんは快く庭を案内してくれ、花好きな千絵美にあじさいをわけてくれるのだった。素敵な偶然に浮き立つ千絵美だったが、佐藤くんと親しく話をするうちに、時折彼が見せる寂しそうな雰囲気が気になりだす。佐藤くんの寂しそうな雰囲気と家の庭にあじさいが植えられている理由は、関係があるようなのだ。千絵美の健気な恋心が、花を大切に育てるように丁寧に描かれる。
ルームシェアする女子たちの日々を描く日常系コメディ。クールな大学生の紫月秋乃(しづきあきの)は、ベビーシッターとして働く柳小春と、あじさい荘の201号室でルームシェア中だ。202号室には今時な女子高生・陽向(ひなた)晴奈とわけありお嬢様・西陰雨音(にしかげあまね)がルームシェア。彼女たちは時々もめたりしつつも、小学生ながらしっかり者の大家さん・藍咲(あいさき)優子のもと和気あいあいと共同生活を送っている。キュートな入居者たちのほのぼのした日常を4コマ形式で描く。
あじさい荘に暮らすのは、年齢も職業もバラバラの女子ばかり。201号室に住む大学生の秋乃は18歳だし、彼女とルームシェアするベビーシッターの小春は24歳。大家さんの優子にいたってはなんと9歳の小学4年生だ。性格も見事にバラバラで、秋乃はクールできっちりしているタイプだが、ルームシェアする小春は、社会人のわりに少々だらしない。お酒を飲んだまま後片付けもせずに眠りこけてしまい、朝から秋乃に怒られたりしている。202号室の晴奈は、ミニスカートの制服に耳にはピアスと見た目は完全に今時のギャル。そんな彼女の同居人は正反対の雰囲気の正統派お嬢様。凸凹でちぐはぐだけど、楽しそうに暮らす彼女たちの姿に癒される作品だ。
一生懸命だけどちょっとドジな女子大生が教育実習生として奮闘する熱血学園コメディ。南部なつきは、教師になるのが夢の大学生。夢への第一歩として、中学校での教育実習がスタートするが、初日から遅刻ぎりぎり。なんとか担当する2年I組との初対面をはたすが、クラスは不良ぶる男子生徒の小早川秀(ひで)や、売り出し中で多忙な新人歌手の吉川(きっかわ)小春と問題児揃いだった。表題作の他、「たんぽぽ色の風の中」「サルビア色の風の中」「銀の森」を収録。
主人公のなつきの教育実習生活がスタートしたのはあじさいが咲く梅雨時のこと。教育実習にむけて、張り切っているなつきとは対照的に、友人たちは「ちかごろの中学生はおとなびてる」「背は高いし口はまわるし」と心配気味だ。実際、なつきの教育実習は初日から戸惑いの連続だった。初めて対面した生徒たちは、小柄ななつきより背が高い子がほとんどで、圧倒されてしまう。当然のように遅刻してくる小早川や、芸能活動で遅刻や早退ばかりの小春など、難儀な生徒もおり、出欠をとるだけでも大わらわだ。指導教諭の北条にいたっては、我関せずで2年I組のいっさいを任せると言い出す始末。それでも、生徒ひとりひとりに寄り添いたいと願うなつきは、未熟ながら孤軍奮闘し始める。
3ヶ月だけの転校生と主人公の、女子中学生同士の交流を描いたリリカルストーリー。小杉愛は、中学校に通うごく普通の15歳。つまらない授業とさえない部活動の日々を繰り返していた小杉に、変化をもたらした少女がいた。彼女は母の療養に付き添って転校してきた神宮海帆(じんぐうみほ)。偶然にも愛の住むアパートの隣室に越してきたのだった。大人びた雰囲気をまとい、周囲と親しくなろうとしない海帆に愛は不思議とひきつけられていく。
小雨の降る梅雨時、転校生の海帆は赤い傘をさしてやってきた。黒いブレザーの制服の中で、薄茶のセーラー服をまとった美少女の海帆はそれだけで浮き立つように目立つ存在。しかし、それ以上に衝撃的だったのは、期間限定の転校の理由をたずねられた海帆が、「お母さんが子宮がんで余命3ヶ月なの」とはっきりと言い放ったことだった。戸惑い微妙に彼女と距離をとる同級生らの中にあって、愛は家が隣ということもあり話をする関係に。海帆と言葉をかわすうちに、愛は海帆の強さにどんどんひかれていく。しかし、それは死に瀕した母のそばで過ごす海帆が見せる一面にすぎなかった。やがて、海帆が期間限定の転校を終え、町を離れなければいけない日がやってくる。