2018年に放送され人気を呼んだスペースバトルアニメ「プラネット・ウィズ」を、作者の水上悟志が自らコミカライズ。主人公・黒井宗矢は過去の記憶を一切失った高校生だ。事故で家族を亡くしたことをきっかけに、ゴスロリ少女の黒井銀子と猫型の生きものである「先生」と同居している。ある日、彼らが住む宙見坂(そらみさか)市に向かって、クマのような形をした謎の巨大飛行物体が接近し、周囲はパニックに。そこに現れたのは7人のサイキッカー「グランドパラディン」だった。
彼らは「念動巨神装光(ねんどうきょしんそうこう)」という光の装甲を身にまとい戦いに挑む。銀子は宗矢にも戦うよう命じるが、何と討伐する相手はグランドパラディンの方だった。実は、宗矢は銀子たちが所属する「宇宙政府ネビュラ」の兵器「龍」に滅ぼされた戦闘民族・シリウス人の生き残りであることが発覚する。ネビュラは、地球人はシリウス人と同様「力」の進化をすることを危険視し、銀子たちはその力を奪おうとしていたのであった。一方グランドパラディンは、龍の力をサイキックに用いネビュラと対立する。宗矢は龍への復讐心も相まって、因果渦巻く戦いに身を投じてゆく。壮大な世界観に加え宗矢を取り巻く複雑な人間模様が大胆かつ繊細に描かれており、戦闘シーンにも引きつけられること間違いなしである。
現代で出会った男女の「過去生」と因果を描いた輪廻転生ファンタジー。主人公・桶屋風太はちょっぴり霊感の強い中学2年生だ。ある日、ミステリアスな雰囲気をまとった美少女・石神鉱子(こうこ)が風太のクラスに転入してくる。一目ぼれした風太は積極的に彼女に話しかけ、二人はいい雰囲気に。しかし、彼女の背後霊・イーストに話しかけられ思わず返事をしてしまったことで鉱子の態度が豹変。なぜか激高した彼女に殴られ階段から転落し、意識を失い、ある夢を見る。
夢の中で風太は太古の昔にタイムスリップし、「フォン」と名乗る少年になっていた。フォンは、恋人が生贄にされるのを防ごうとするが神官に殺されてしまう。死ぬ直前に見た神官の顔が鉱子そっくりであることに気づいたところで風太は目を覚ます。鉱子は、風太が見たそれは「過去生」であり、あと7回死んでもらうと言い放つ。実は二人は、過去生で何度も出会い憎しみ合ってきた仲であり、鉱子は現世で決着をつけようとしていたのだ。戸惑う風太であったが、イーストが、過去生に縛られる鉱子が救われることを願っているのを聞き、過去生と対峙する覚悟を決める。時代や国を超えたいくつもの過去生の描写がリアルであるとともに、輪廻転生がおりなす人の縁と因果について考えさせられるだろう。
戦乱の世を舞台に、人間と妖狐の義姉弟が活躍するバトルファンタジー。時は永禄7年、冴えない浪人・兵頭(ひょうどう)真介は、不思議な仙術で敵をなぎ倒す男女二人組に偶然出会う。200年の時を生きる人間好きな妖狐・たまと、人間嫌いな仙術使いの少年・山戸迅火(やまとじんか)は乱世を憂う「世直し姉弟」と名乗り、世にはびこる人外・闇(かたわら)による悪行を滅する旅をしているという。真介は好奇心から二人に同行するが、彼らの目の前に人喰いの闇「灼岩」が立ちはだかる。
灼岩は、闇退治を行う僧兵集団である断怪衆(だんがいしゅう)の攻撃を受けるがびくともせず、迅火の手でようやく倒され正体を現した。断怪衆曰く、灼岩は人間の女性だったが、僧兵強化のための人体実験の対象となった「霊力強化改造人間」であるという。姉弟や真介は義憤にかられ、断怪衆にお灸を据えるべく総本山に殴り込みをかける。しかし、迅火には彼らへの制裁以外に別の目的があった。本作の前半は、人間であることに葛藤をおぼえる迅火の成長と破滅の物語である。また、後半は千の闇を内包する魔力を持ちつつも、力を捨て人間として生きようとする少年・千夜が主人公となり迅火と対峙してゆく。二人の運命がどう交錯していくか、クライマックスまで読み応えたっぷりだ。
拝み屋の兄妹と座敷童の少女が織りなすバトルファンタジー。座敷童の「ねりね」は、すずめたちが乗るロボットに追われ逃げ惑っていた。捕まりそうになっていたところを偶然通りすがった謎の二人組の男女に助けられる。ねりねが目を覚ますと、昨日彼女を助けた男女の家だった。彼らは半火精の兄・二本松朱彦(あけひこ)と半氷精の妹・二本松雪緒(ゆきお)の兄妹であり、怪異絡みの「拝み屋」を生業としていた。そんな二人を見て、ねりねはある頼みごとをする。
ねりねは退魔師の家である零堂(れいどう)一族にさらわれた過去を持ち、逃亡中の身であった。氷剣二刀流を操りすずめたちを撃破した朱彦の腕を見込み、ねりねは兄妹に自らの護衛と彼女の生まれ故郷である「木造渓谷」への門探しを依頼する。多額の借金を背負っていた二人は渡りに船の申し出に快諾するが、零堂一族の最強剣士でありすずめたちのボス・零堂天吉(てんきち)がすぐ側まで迫っていた。天吉に再び捕らわれたねりねを取り戻すべく、二人は戦うことを決意する。1巻完結ということもあり、笑いと涙に溢れたストーリーや骨太なバトルがテンポ良く展開されるため、一気に読み進めるのがおすすめだ。ねりねは再び兄妹の元に戻れるのか、木造渓谷へ辿り着けるのか、最後まで目が離せない。
姫と地球を守るために選ばれた騎士たちの戦いを描いた、現代バトル・サーガ。主人公・雨宮夕日は心に闇を抱えた大学生だ。ある日突然やってきた言葉を話すトカゲ・ノイ=クレザント卿から「悪の魔法使いから姫を守るために力を貸して欲しい」と頼まれる。夕日はその申し出の内容を到底信じることができず、ぞんざいな態度を取ってしまう。しかし、魔法使いが使役する敵・泥人形がいきなり現れ、夕日は襲撃を受ける。必死に逃げ惑う彼を救ったのは、意外な人物であった。
すんでのところで泥人形を撃破し、夕日を救ったのは隣の家に住む少女・朝日奈さみだれであった。協力を渋る彼にさみだれは、地球を粉砕しようと脅かす巨大な泥人形「ビスケットハンマー」を大学の屋上で見せ、そこから飛び降りる。夕日は覚えたての騎士の能力を駆使しさみだれをどうにか救い、彼女の真の目的を知ることとなる。「トカゲの騎士」として彼女に忠誠を誓った夕日は、仲間となる他の10人の「獣の騎士」たちとの出会いや死による別れを経験しながら、戦いの渦に身を投じてゆく。水上悟志ならではの壮大なスケールで描かれる、魔法使いや泥人形と騎士たちとの戦いは迫力満点だ。あっと驚くラストは感動必至であり、タイトルである「惑星のさみだれ」の真の意味を知ることになるだろう。