屋台スタイルのバーを営む女性バーテンダーの仕事ぶりと日常を描いた、ほろ酔いカクテルコミック。物語の主人公・月川雪はバーテンダー。営業場所を転々と変える気まぐれな屋台バー「SATELLITE(サテライト)」を営む、少々変わり者の女性だ。雪は、夜起きているのが苦手で、仕事中にまどろんでしまうこともしばしば。そんな彼女だが、バーテンダーとしての腕は一級品。今宵も雪は、一期一会の一杯を振る舞い、客の心に忘れられないひと時を刻んでいく。
タイトルにある「バーメイド(barmaid)」とは、女性のバーテンダーを指す英語だ。「屋台で1杯」というと、おでん、焼き鳥を肴に日本酒や焼酎を飲む赤提灯が一般的。ところが、本作の主人公・雪は、屋台でバーを営むユニークな女性である。ただし、奇をてらった色物ではなく、その仕事ぶりは本格派だ。固定観念に囚われず、季節や天候、客の体調に応じて、レシピを柔軟にアレンジする。無駄なく流れるような所作に加えて、人あしらいも柔らかい。嫌がらせに近い客の、無茶な注文にも見事に応える。そんな雪の作る心づくしのカクテルは、ときに客の人生観すら変える。思わず1杯飲みたくなる、彩り豊かなカクテルコミックだ。
夜になると突然出現する不思議なバー「シルバー」を運営する人々と、さまざまな客たちの交流を描く4コマコメディ。妖艶な美人ママ・銀子に、客あしらいの巧いホステス・タマオ、寡黙だが腕は確かなバテンダー・シンちゃん。彼らが営むバー「シルバー」は、アットホームな雰囲気で毎晩盛況。実は、ママの正体は、100歳を超えるギンギツネ。さらに、タマオはネコで、シンちゃんはお地蔵様。バーの面々は皆、「人ならざる者」だったのだ。
腕の立つバーテンダーの作るカクテルは、家庭では簡単に真似できない。しかし、バーの魅力は、多彩なカクテルだけではない。人生経験豊かな店主との会話や、店の醸し出す独特の雰囲気、常連客との交流も、バーに足を運ぶ大きな理由となる。本作の「シルバー」は、そんな魅力に満ちたバーだ。中でも多くの客のお目当ては、妖艶な美人で、物腰柔らかく京都弁で客に語りかけるママ・銀子。彼女は、若者から90歳を超える老人まで、あらゆる年齢層と話を合わせられる、巧みな話術の持ち主である。それもそのはず、何しろ彼女の正体は、100歳を超えるギンギツネなのだ。確かな年輪と、お茶目な天然気質を併せ持つ銀子は、さまざまな客を魅了していく。
フランス帰りの若き天才バーテンダー・佐々倉溜を主人公に、さまざまな酒にまつわるエピソードを絡めながら描かれる人間ドラマ。また、連載終了後、同じく城アラキ原作による世界観を共有する作品『バーテンダー à Paris』、『バーテンダー à Tokyo』が発表されている。ただし、これらの作画は、本作の長友健篩に代って、加治佐修が担当している。2006年10月にテレビアニメ化され、2011年2月にはテレビドラマ化もされた。
本作の主人公・佐々倉溜は、ヨーロッパ食品協会主催のカクテルコンテストで優勝。パリの名門ホテルでチーフバーテンダーを務め、彼の供する1杯は「神のグラス」と称えられるほどの天才バーテンダーである。バーテンダーの仕事は、ただレシピ通りにカクテルを作るだけではない。佐々倉の考えるバーテンダーとは、「優しい(テンダー)止まり木(バー)」。鋭い観察眼で客のコンディションを読み取り、客に癒しのひとときを与えるために全力を尽くす。そんな佐々倉の供する1杯は、ときには疲れた客を元気づけ、またあるときは古き想い出を甦らせる。身分や肩書きに囚われず、ひとりの人間になれるバーという空間で、さまざまなドラマが紡がれていく。
東京の某所にあるバー「レモン・ハート」を舞台に、酒に関わるささやかなドラマが展開される、1話完結式の連作。店名のレモン・ハートは、ラム酒の銘柄のひとつ。18世紀末にイギリス海軍にラム酒を納入していた。ハート家に由来する。コミック文庫版の冒頭には、各巻で登場する名酒のの中でも逸品を紹介するカラーページが設けられている。2015年10月にテレビドラマ化された。
本作の主人公であるマスターは、酒をこよなく愛する男である。バーには数多くの酒があるのは当然だが、マスターのコレクションは想像を絶する。カクテルに用いられるウィスキーやブランデー、リキュール類のような洋酒はもちろん、日本酒や中国酒ほか、ありとあらゆる酒を揃えている。ただし、マスターのモットーは「単なるコレクションでは意味がない。酒は飲んでこそ」だ。スコットランドで幻のスコッチを苦労して入手した彼は、その場で栓を開けて売り主と共にグビリ。そんなマスターだけに、酒に関する知識も実に膨大だ。マスターの酒愛が迸る蘊蓄に耳を傾けつつ呑む1杯は、普段以上に美味しく感じられること間違いなしだ。
性格も前歴も大きく異なる2人の女性が、数奇な巡り合わせから共同でバーを営む姿を描く、ハートフルなストーリー。指名ナンバー1のキャバクラ嬢「ミケ」こと三宅鈴は、常連客・拓也に誘われ、彼が銀座に持つバーを共同経営することとなる。全財産の250万円を改修費用として投資したミケは、意気揚々とバーへ向う。ところがそこに拓也の姿はなし。彼女の前に現れたのは、同じく拓也に250万円を投資した、雨宮翔子という女性だった。
本作の見所は、個性豊かな2人の女性のぶつかり合い。元・キャバ嬢で顔が広い銀座オタクのミケは、銀座で1番居心地の良い店を目指す。一方、国際カクテルコンクールでの入賞経験があり、有名ホテルのチーフ・バーテンダーでもあった「アメショー」こと雨宮翔子は、世界に通用する本格的なバーを目指す。ミケとアメショーは、性格だけでなく、目指すバーの方向性も大きく違う。2人の共通点と言えば、同じ男・拓也に騙されたことぐらい。そのせいもあって、2人はバーの開店当初からギクシャクし通し。そんなミケとアメショーの関係は、ある強面客の登場で変化の兆しを見せていく。文字通り凸凹コンビのバー運営の行方は、是非ご自身で見届けて頂きたい。