「手紙」が物語を大きく動かす！オススメ漫画５選57 Pt.

本作で手紙を送るのは人間ではなく、「犬の国」に暮らしている犬だ。「犬の国」では、亡くなった犬が好きな仕事について自由に生活をしているのだ。生前の病気や怪我も消えた幸福な暮らしの中で、彼らは生前に関わった大切な人との思い出を反芻し、一度だけ手紙を送る。本作では亡くなった犬から飼い主へのメッセージという形で、共に生きた時間で紡がれた絆が描かれていく。転校がきっかけで孤独な学校生活に苦しむ小学生、獣医になる夢への道半ばで難病を患った女子高校生、進路で対立する母と娘など、人々の人生の様々な場面に立ちあってきた犬たち。彼らはどんな思いで人間たちを見つめていたのか。人から犬へ、犬から人へむけられた細やかな想いが物語になっていく。

本作タイトルの『テガミバチ』は、人々にテガミを届ける国家公務郵便配達員BEEの通称だ。テガミバチが運ぶのは、いわゆる手紙や小包といった郵便物だけでない。依頼があれば人間をも運ぶ。ゴーシュは、行方不明となっているはずのラグの母からの配達依頼を受けて、ラグをテガミとして配達することに。しかし、アンバーグラウンドにおいて、テガミバチの仕事は大きな危険を伴う。町と町の狭間には、人々の「ココロ」に反応して襲ってくる巨大な生物・鎧虫（がいちゅう）が出没。テガミバチは自身のココロを弾として打ち込む心弾銃で闘うのだ。配達の道中、ラグはゴーシュへの信頼と尊敬を深め、自身もテガミバチとなることを目指すようになる。ココロとテガミが鍵を握る冒険物語だ。

本作では手紙が、主人公の菜穂をはじめとする登場人物たちの行動を大きく変えることになる。ごく普通の手紙として郵便受けにあったそれは、しかし本来なら届くはずのない「10年後の自分」からの手紙。最初は信じなかった菜穂だが、自分と同じ筆跡に、手紙の内容とあまりにぴたりと一致する日々の出来事に、その手紙が語ることが真実であると確信する。さらに、手紙は菜穂に残酷すぎる未来を伝えてくる。自分がこれから少しずつ想いを寄せていくことになる転校生・翔が自殺してしまうというのだ。そして手紙は、未来を変えるために行動することを促すのだった。読み進めるほどに、手紙の送り主が、手紙にこめた本当の想いの重みを感じるはずだ。

一通のラブレターから始まる恋を描いた、甘酸っぱいことこの上ないラブストーリーだ。主人公の葉月は、高校1年生らしく恋愛にもそれなりの憧れがある。しかし、いざ自分が告白されてみると、不安や戸惑いが先だってしまい断ってしまう。それでも、手元に残された手紙を何度も読み返しては赤面してしまうのだった。複雑な乙女心を抱えて夏休みの補講のために登校すると、部活動のために登校していた泉と遭遇してしまう。それまで名前も知らなった男の子だったのに、葉月は泉を意識するようになった自分に気づいていく。ふられたとはいえ、まだ葉月を好きな泉と、泉を意識してむずむずとした感情を覚えてしまう葉月の、初々しい恋愛の始まりが夏休みの浮き立つような雰囲気と共に描かれる。

「文香屋金魚」の看板商品である文香は、手紙にそえる専用のお香だ。その品揃えは幅広く、商品をおさめた引き出しは天井近くまであり、壁いっぱいに並んでいる。春には桜、夏には梔子、秋には金木犀、冬には蝋梅、と季節に合わせて香りを変えたり、手紙にこめた想いに合わせて香りを選ぶこともできる。しかし、店主の金魚にいわせると、その片隅にある「0」番の棚だけは、特別なお客にしか出せないという。どうしても伝えたい思いを抱えた客が訪れたとき、金魚はその文香を手渡すのだ。実は店主の金魚は、不思議な力を有した存在。差出人が手紙にこめた想いを、文香を介して受け取り手に夢のような幻として見せることができるのだった。そして、金魚はその対価としてあるものを受け取る。