ハガレン作者「荒川弘」特集！絶望の淵から希望を見出す物語からコメディまで0 Pt.

二人はかつて、亡くなった母親を生き返らせようと錬金術の中でも禁忌とされる「人体錬成」に手を染めていた。しかし、錬成は失敗しエドは片腕と片脚を失い、アルもまた全身を失いエドの手によって鎧の身体を手に入れる。身体を元に戻すには「賢者の石」が必要と考えた二人は旅をするが、石にまつわる意外な真実を知り愕然とする。そして、道中彼らを付け狙う「ホムンクルス」なる人造人間たちが現れる。彼らは「焔の錬金術師」の名を持つロイ・マスタング大佐などを仲間に加え、ホムンクルスや黒幕と対峙してゆく。本作は、過酷な運命に晒された兄弟の闘いと絆の物語だ。エドは武器となる「機械鎧（オートメイル）」なる義手を携え、迫力あるバトルシーンもまた見どころである。

八軒は、かつて札幌の中高一貫校に通うエリートであった。しかし、東大に進学した兄へのコンプレックスや家族との軋轢から逃げるようにエゾノーへ進学したのだ。八軒は入学早々、牛舎から逃げ出した仔牛を追いかけ広大な農地に迷い込んでしまう。馬に乗って彼を助けに現れたのは同級生の御影アキであった。農家の跡取り娘であるアキをはじめ、野球部のエースで酪農家の息子・駒場一郎など生まれも育ちも異なるクラスメイトと交流を深めながら、八軒は自分自身と向き合っていく。本作は農業高校出身である作者の実体験が色濃く反映されている。食べられる運命の豚に「豚丼」と名付けたり、偶然見つけた釜でピザ焼きに挑戦したりと八軒が巻き起こすエピソードの数々がシュールで面白い。

攻撃陣の先頭にいたアルスラーンは、王の失脚を企むカーラーンの裏切りに遭い総攻撃を食らう。命を奪われそうになった彼を助けたのは、パルス王国最強の武将・ダリューンであった。二人は遁走し、王都・エクバターナは陥落したことを知る。彼らは王都を奪還すべく、山奥に隠遁していた軍師・ナルサスと彼の侍童・エラムを訪ね仲間に加えることに成功。一方、銀仮面をつけたルシタニアの武将・ヒルメスはアンドラゴラスたちに強い復讐心を抱いていた。アルスラーンは徐々に仲間を増やし、戦いの狼煙をあげヒルメスと対峙してゆく。激動の時代を駆け抜けるアルスラーンの生き様に心熱くなる。また、原作小説の世界観を余すことなく描いており、骨太な戦記ものとして楽しめるだろう。

賢嘉爛舞を手に入れた岱燈であったが、剣を狙う賢帝国の将軍・慶狼伯烽（けいろうはくほう）の部下・史明なる男に襲われる。史明は岱燈の義妹・頼羅青蓮（らいらせいれん）を人質に取るが、激昂した岱燈は力を制御できず大暴れする。実は岱燈は国に災いをもたらす凶星・破軍の星を持つ運命だったのだ。健闘虚しく剣は史明に盗まれてしまい、彼は賢嘉爛舞を奪還すべく頼羅ら仲間たちと旅に出ることに。紆余曲折を経て同じく凶星・貪狼（とんろう）の星を持つ慶狼と対峙してゆく。古代中国を彷彿とさせる世界観に、残酷な殺し合いや裏切りの数々が絡み合う骨太なストーリーを楽しめる。己の運命を受け入れ、国の存亡をかけた闘いに巻き込まれながら逞しく生きる岱燈に好感をおぼえるだろう。

朝から晩まで牛の世話と畑仕事に追われ、倒れたら誰かがフォローするというブラック企業のような農家の日常にイシイは驚愕する。また、牛乳の消費量が減れば「生産調整」が入りせっかく搾乳した大量の牛乳を廃棄することもままあるという。そんな逆境にも負けず、型破りで豪快な父、農作業に家事育児とフルパワーで働く母、三人の姉と末っ子の弟と個性派な荒川家のメンバーは消費者の「美味しいね」の言葉を聞くために日々頑張るのであった。本作は、豪雪地帯の農家あるあるや一風変わった日常や行事、農作業で培われた「農筋」エピソードなど荒川のシニカルな視点で描かれている。特に牛に関する考察がリアルで、知られざる酪農家の一面を垣間見ることができるだろう。