妹を高校に入学させるため中学卒業後に働き始めた主人公が、自分を見下していた人間を見返すため、通信制高校に入学する群像劇。片桐真実(かたぎりまこと)は妹の真彩(まあや)と二人暮らし。母は病気で他界し、父親は服役中のため、中学卒業後に就職していた。しかし、高校進学を目標としていた真彩がまさかの中学浪人。真実も職場の指揮係になる予定が大卒のコネ入社社員にその立場を奪われたため、周囲を見返してやろうと、妹と同じ通信制高校に通い始めるのだった。2018年にweb配信アニメ化。
中学卒業後、すぐに高校に入学した学生はまだ子どもだ。将来についての想像はまだ漠然としており、何をしたいかも自覚できていない。そのため、高校生としての3年間過ごすことは、どうなりたいかを考えるための猶予期間という一面もあるだろう。しかし、家庭の事情でそれがかなわない子どもも中にはいる。真実は中学卒業後、妹の真彩を養うために物流会社で働き始めた。自身は進学せずに働き続け、職場でも評価されて自信をつけた。そんな時、大卒の新入社員が自分よりも上の役職になるというのは、あまりにも辛い。高卒よりも大卒のほうが優秀という偏見があるように、中卒という経歴に世間からの風当たりは厳しい。真実は一念発起して通信制の高校に通うことになるが、周囲に反発し当たり散らしてしまう。それでも色々な経歴を持った人の集まる場所だけに、たくさんの学びを得る機会となるのだった。
転職のために定時制高校に通い始めた21歳の主人公を中心に、定時制高校に通う生徒たちの人間模様を描くヒューマンドラマ。赤山七海は中学卒業後、進学せずに工場で働き始めた。しかし仕事はキツく給料が安いため、転職しようと考えるも、中卒対象の仕事の募集は少ない。そこで七海は最終学歴を高卒にするべく、職場に近い定時制高校に通うことを決めた。けれども年齢が若い同級生に馴染めず、周囲と距離を置いてしまう。ある時、体育でペアを組んで授業を受けることになるのだが、七海は誰とも組めない。そのうちに、七海の頭に中学時代の辛い思い出が蘇ってくるのだった。
真面目に働いていても、中卒という経歴は就職時に不利をもたらすというのが現実だ。七海は転職するために定時制高校へ通い始めたのだが、定時制は夜に通う学校である。昼間仕事をしている生徒も多く、七海も昼間仕事をしてから学校へ行く。働いた後の勉強はしんどい、というのが社会人定時制高校生の本音である。七海も最初は周囲との関わりを極力避けていたが、体育の授業で出会った年下の同級生たちとの関わりから、周囲と話をするようになる。ゴールデンウィーク明けは生徒が減るなど、定時制高校あるあるを交えながら、定時制高校の日常が進んでいく。垣間見られるそれぞれの人生はけして平穏ではない。どんな事情を抱えていても、同じ時期に定時制高校に通っているという、不思議な縁もある。同級生も重要だが、応援してくれる周囲の存在も忘れがたい。心配し、アドバイスしてくれる同僚もまた、七海にとってかけがえのない存在だ。
家が貧しいことを隠し、将来のために努力を続けていた主人公が、ひょんなことから定時制に通う男子生徒と知り合い、恋に落ちるラブストーリー。全日制と定時制との二部制になっている高校の、全日制に通う1年生の朝香なずなは、母親と暮らしている。家が貧しいことを隠しており、バレないように友人たちと遊ぶことを控えていた。定時制の生徒に自身の境遇を重ね、文句を言う全日制の生徒に対して怒っていたところ、定時制に通う夜野皐月(よのさつき)と知り合う。その日、忘れ物を取りにきたなずなを、皐月はとっておきの場所に連れていくのだった。
定時制高校は専門の校舎があるわけではない。昼間は別の生徒たちが勉強している教室を、夜は定時制の生徒たちが利用するというシステムである。そのため、定時制高校との二部制になっている学校の、全日制の生徒は下校時間が厳密に決められていた。下校時間と登校時間が重なれば、互いに顔を見合わせる機会もあるだろう。なずなと皐月は、昇降口で出会った。家が貧しいという事情を抱えているなずなは、定時制の生徒たちに同情的だ。自身も普通の高校生とは言えず、将来のために勉強を続けている。そういう意味では、より勉強をする理由が明確になっている定時制の生徒たちとは感覚が近いのかもしれない。その後、なずなが定時制に通うことになったため、2人は急接近していく。学校は恋愛イベントの宝庫だが、定時制となると印象が変わる。見慣れた校舎のはずなのに、夜というだけでどこかちがう場所のようだ。
とある定時制高校を舞台に、普通の高校生からお迎え間近の高齢者、宇宙人、と個性的すぎる生徒たちと先生たちが、彼らにとっての普通の学校生活を送る学園日常ギャグ。トラブルメーカーと呼ばれ、入学した高校を3日で退学することになった藤嶋隼人は、青葉高等学校定時制に転入することになった。自分の過去を省みた隼人は、人とはなるべく関わらず、平穏無事に暮らそうと心に誓う。しかし、校門を入った時点でカウンターを押しながら付いてくる、小さな宇宙人のようなものを見つけてしまうのだった。
普通の定時制高校に宇宙人はいない。が、青葉高等学校定時制にはいる。作品冒頭から普通の定時制高校でないことを察することができる上、普通であることを探すほうが難しい。まず、生徒。年齢も背景も様々な生徒が通っているとはいえ、医者と看護師を引き連れた臨終秒読みの生徒が通っているとは思わないだろう。勉強するという意志があることは尊いが、身体は大事にしてほしいものだ。けれど、生徒はそれぞれ学校生活を楽しんでいる。過去は変えられないが今を楽しめばよいのだ。そして、教師。教師も個性的で、生徒に振り回されるのではなく、逆に振り回す有様だ。個性あふれる生徒をまとめるにはそれくらい強者じゃなければ務まらないのかもしれない。
母親と暮らしている主人公が、唯一自分らしくいられる定時制高校のハンドボール部にかける青春を描く、スポーツヒューマンドラマ。17歳の才谷駿(さいたにしゅん)は母親と二人暮らし。一家心中により父と幼い弟妹を失ったことで、生きる気力を失った母親を支えるため昼間は働き、夜は定時制の高校に通っている。職場でも口さがない人々の言動にイラつき、不満がつのる駿。唯一自分らしくいられるのは、ハンドボール部活の時間だった。
駿は中学生の時、父親と幼い妹と弟を失った。母親は一命をとりとめたが過去しか見ることができず、口にする言葉は死を思わせるものばかり。生活費を稼ぐため、駿は昼間製作所で仕事をしていた。そこでも駿は、口さがない人々の、噂話の標的にされてしまう。家でも仕事場でも息の詰まる日々の中、唯一自分を解放できるのが定時制高校の部活動の時間だ。ハンドボールは7人が2つのチームに分かれ、1個のボールを手でゴールに投げ入れながら得点を競うスポーツである。手で行うサッカーのようなものだが、ゴールを狙う選手は高く飛んで勢いよくボールをゴールに叩き付ける。長身の選手が多い中、身長163センチの駿も負けていない。駿はプレイヤーとしてだけではなく、司令塔としてチームに欠かせない存在なのだ。ゴールにボールを叩き付ける瞬間の選手は、空を飛んでいるようにすら見え、辛い現実を生きる苦しみを吹き飛ばしてくれる。好きなことがあれば、人はどんな状況でも前を向いて生きることができるのだと教えてくれる。