生き方に悩むお年頃「アラサー女子」特集42 Pt.

2019年1月に『トクサツガガガ』がテレビドラマ化。そこで『トクサツガガガ』にちなんでアラサー女子が主人公の漫画を紹介。アラサー女子ならではの悩みを描いた人間ドラマ5作品をピックアップした。

本作には、主人公・仲村叶をはじめとした、様々な「特撮ヒーローオタク」が登場する。オタクゆえの「あるある」や悩み、幸せを描いた物語だ。アラサー女子の仲村は、ワンルームマンションで1人暮らしをしている。大好きな「特撮ヒーロー」のDVDやグッズが溢れている家には、誰も呼べない。仲村は「特撮ヒーロー」にお金をつぎこむため生活費を節約し、会社には弁当を持参している。疲れていても、「特撮ヒーロー」の名言に倣って、電車では老人に席を譲る。そんな行動により、実態とは裏腹に、彼女は会社で「女子力が高い」と評されている。だが、ある日「特撮ヒーローオタク」の友達ができたことで、彼女の生活にも変化が訪れる。彼らと交流し、大好きな趣味について語り合うことで、ひとりで楽しんでいた時には考えられなかった問題や悩みにも直面する。オタク趣味の楽しさだけでなく、それゆえの悩みや、深い闇の部分まで言及した作品だ。

稚野鳥子の代表作『クローバー』の続編。主人公・鈴木妃女子は、前作のヒロイン・鈴木沙耶の同期だ。同じ「鈴木」という苗字を持つ妃女子と沙耶は、よく比較されていた。沙耶は「ホテル東洋」社内でも屈指のエリート・柘植暁と結婚して退職。アラサー女子となった妃女子は、社内で「負け組の鈴木」と呼ばれている。妃女子たち3姉妹の両親は、妃女子が中学生の時に事故で亡くなった。それ以来、2人の妹を立派に育てるため、母親代わりとして奮闘してきた。妹たちが就職し、自分の人生を生きようと気づいた時には「アラサー女子」。妃女子は、孤独感と年齢的な焦りを抱えていた。そして、「玉の輿に乗れる」というジンクスを持つ同僚・細谷武人に声をかける。打算的な気持ちから始まった関係だが、やがて妃女子は、細谷のことを本気で好きになる。しかしこの恋には大きな障害があった。自分の気持ちだけでは恋に向き合えない、アラサー女子の複雑な恋愛を描いた物語だ。

アラサー女子の深田柚季と原洋一は、初対面で結婚の約束をした。お互いのことを何も知らない状態からのスタートだ。2人を繋いだのは、洋一の作ったパン。柚季は、彼のパンを食べて、「この人となら美味しくご飯が食べられる」と感じた。自然と「結婚」をイメージできたので、結婚を申し込んだのだ。洋一も柚季の申し出を受け入れ、彼女の両親に挨拶することに。その後、洋一は徐々に柚季に過去を明かしていく。ある老夫婦から店を譲り受けたこと、その時にパンの作り方も受け継いだこと、15年付き合って別れた彼女がいたこと…。しかし洋一には、さらなる過去があった。贅沢な材料を好きなだけ使って作るパンは、美味しいけれど経費が嵩む。赤字経営のはずなのに、洋一はお金に困った様子もない。それは洋一が、突然休載した売れっ子漫画家だからだ。アラサー女子からの唐突なプロポーズから始まる物語、目の離せない展開が続く作品だ。

主人公・道上帆南は、アラサー女子だ。幼い頃から母親に、言葉に出すと本当のことになりやすいという「言霊」の話を聞かされて育った。幼い頃にいつも「魔法少女になる」と言っていた帆南。30歳を迎える頃、その「言霊」が現実となる。別世界からやってきた、人間の言葉を喋る猫・メイシンの力で、「魔法少女」になったのだ。しかしメイシンは、帆南（ハンナ）が10代の少女ではなく、アラサー女子なことを嘆き悲しむ。自分を拾ってくれた心優しい人間を「魔法少女」にする力を持つメイシンは、かわいい少女に拾われたかったのだ。失恋、そして年齢的にアウトな格好での魔法少女活動で、帆南の日常は、悲惨なものになっていく。本作では、ストーリーが進むにつれて、ファンタジックな話よりも、人間関係に焦点が置かれるようになる。リアルな人間ドラマが描かれているのが特徴的な作品だ。

鎌田倫子、香、小雪の独身女3人組は、いつも女子だけで呑み会をして、日頃の憂さを晴らしていた。3人の話は、「こうしていたら」「ああしていれば」と根拠のない「もしも」の話ばかり。そんな倫子たちを、「タラレバ女」と命名したイケメンがいた。彼は、KEYという芸名の人気モデルだった。脚本家として働く倫子は、自分が脚本を担当するドラマの撮影現場で、ばったりKEYと再会。脚本を批判したKEYに、喧嘩をふっかけてしまう。結果、倫子はドラマから降ろされる。脚本家を辞めると荒れた倫子は、傷心旅行に出かける。そんな倫子のもとにKEYが駆けつけ、2人の距離は縮まる。その後も、自分の幸せを追うあまりに、都合の悪いことから目を逸らし続ける、アラサー女子3人組。KEYもまた、彼女たちに痛烈に真実をぶつけ続ける。幸せとは何か、後悔しない生き方とは何かを真剣に考えさせられる物語だ。