ネガティブな主人公が演劇を通して成長していく様子を描いた高校演劇漫画。主人公は他人とコミュニケーションを取ることが苦手な男子高校生・吉井すばる。彼は転校初日、クラスメートとまともに話せずに自己嫌悪に陥る。自分のことが大嫌いなすばるは、自意識に殺されることを防ぐためにある現実逃避行動を取っていた。それは嫌いな「僕」を離れて「誰か」になりきるというもの。誰もいない教室でクラスの人気者・御影千理(みかげせんり)になりきっていたすばるは、その現場を御影本人に目撃される。
他人とコミュニケーションが取れず、ひたすらネガティブで何もかも上手くいかないすばる。一方、御影は学年トップで運動もでき、人当たりが良い爽やかなイケメンで、クラスメートからは「王子」と呼ばれている。すばるは誰もいない教室でこっそり御影になりきり自己紹介をし、周囲から歓迎の拍手を送られる想像をしていた。そこに、本物の拍手の音が聞こえてきた。すばるの演技を、御影本人が見ていたのだ。気持ち悪がられると怯えるすばるであったが、御影はすばるに文化祭で行われる公演で転校した部員の代役として出てほしいと言い出す。コンプレックスの塊であるすばるが演劇の世界に足を踏み入れることで仲間を得て成長していく姿は、読者に勇気と感動を与えてくれる。
演劇研究会にスカウトされてしまったあがり症の少女が「女優」を目指す高校演劇漫画。主人公の麻井麦(むぎ)は熊鷹芸術学院に入学したばかりの15歳の少女。彼女は緊張すると声が出なくなってしまう極度のあがり症で、とてもネガティブな性格の持ち主だ。そんな麦が、偶然発した大声をきっかけに演劇研究会に目をつけられ、半ば無理やり入部させられてしまった。麦は人前で演技をしなくてはいけないという恐怖から挫折しそうになるが、周囲から支えられて少しずつ成長していく。
極度のあがり症である麦が、演劇研究会に入ってしまったことから物語は動き出す。人前に立って喋るのが苦手な麦が演劇研究会に入部したのは、先輩たちの勧誘から逃れたかったため仕方なくのことだった。すぐに辞めよう、もしくは裏方として働こうと考えていた麦であったが、彼女は部のある事情から役者として舞台に立たなくてはならなくなる。実は、この学校では演劇研究会と演劇部が対立しており、互いの存続を賭けて演劇で対決することになっていた。部員数が3人だけだった演劇研究会には、舞台に立つ役者が必要だったのだ。麦はあがり症を克服し「女優」になることができるのか。他者との関わりを通して成長し、怯えながらも苦手なことにチャレンジしていく麦の姿から勇気をもらおう。
声優の生田善子が自らの経験をもとに原作を手掛けた、目立つのが嫌いな女子高生の演劇生活を描いた高校演劇漫画。主人公は、埼玉県立百澤高等学校に通う女子高生・樋口一華(いちか)。彼女は内気で目立つのが嫌いな少女だ。そんな一華は少女漫画が大好きで、登場人物になりきって漫画のセリフを音読するという趣味を持っていた。ある日、一華は学校の屋上で漫画の音読をしていたところを、演劇部の部長・永井荷菜(にな)に目撃され、彼女から「やろう! 一緒に演劇を!」と誘われる。
役者はもちろん音響・照明・舞台装置制作まで生徒自身がこなす大変さから文化部の体育会系とも呼ばれる総合芸術の部活、それが高校演劇。演劇部部長の荷菜は、部員たちの頑張りを認めつつも出場した大会を通して「何かが足りない」と感じていた。観た人の心を動かす何かを探し求めていた荷菜は、偶然にも屋上で漫画を片手にノリノリで音読をしている一華を目撃。演劇部に足りていなかったものを一華が持っていると確信し、彼女を部に勧誘する。内気な一華は一度は断るものの、実際に舞台を見て演劇の世界に心惹かれ、ついに役者としての一歩を踏み出すことになった。一華や荷菜を通して、自分以外の誰かになれる楽しさ、皆で1つの世界を作り上げる高揚感を体験することができる作品だ。
創作を諦めた少女が高校演劇や仲間との出会いによって改めて表現することの楽しさに目覚める青春群像劇。仙台星見高校に入学した主人公の少女・土暮咲良。彼女は小学生の頃から漫画を描くことが大好きだった。しかし、幼なじみの何気ない一言がきっかけで自信を喪失。作品を他人に見せることに恐怖を感じるようになり、高校入学を機に描いてきた漫画を全て破棄しようとしていた。しかしひょんなことから作品の1つが演劇部の手に渡り、新入生歓迎会で舞台化されてしまう。
漫画ノートを誤って学校に持ってきてしまい、しかもそのノートを教師に持っていかれてしまった咲良。後日、新入生歓迎会で演劇部の出し物を見た咲良は驚愕した。自分が描いた漫画が劇にされていたのだ。ショックを受ける咲良だが、新入生たちが舞台に惹き込まれているのを見て、自分の作品が他者を惹きつけていることに快感を覚える。とはいえ、誰にも見せたくなかった作品を盗作されたことに変わりはない。演劇部に文句を言いに行った咲良であったが、演劇部員の佐藤萌佳はそんな咲良を部に勧誘した。この出会いをきっかけに、咲良は演劇部の脚本担当として活動することになる。本作では、表現することの素晴らしさと難しさが、個性豊かなキャラクターを通して生き生きと描かれている。
いじめられっ子の少年が演劇と出合うことで起こる環境の劇的な変化を描いた高校演劇ドラマ。主人公の男子高校生・東雲東(しののめあずま)は、人に嫌われることを極端に恐れている。高校に入学して1ヶ月、誰からも嫌われないように周囲の顔色を窺い続けた東雲は、友人を作るどころか、周囲から都合よく扱われるパシリに成り果てていた。そんな彼の前に現れた京都からの転校生・西園寺彩(さい)。彼との出会いが、東雲のつまらない灰色の人生を劇的に塗り替えていく。
東雲の高校に転校してきた2年生の西園寺彩。彼は中学時代、自筆の脚本で演劇部を全国大会までのし上がらせ、しかも大会側に特別賞まで設立させたという才能の持ち主だ。彼は日常と劇場の違いは、ルールの違いであると語る。対立を生まないように空気を読んで無難に仲良くが日常生活のルール。しかし劇場では、役者も観客も全員が変態だ。役者は演じることで観客に喜びや悲しみ、時に不快感や恐怖心を与え、それに観客は興奮する。西園寺が見せたルールを壊すことで成り立つ演劇の世界は、日常生活のルールに縛られてきた東雲に衝撃を与えた。東雲は西園寺と共に演劇部に入り、演じるということを通して自分の知らなかった一面や、苦手としていた他人と向き合っていく。