初めての恋に戸惑う中学生たちの三角関係ラブストーリー。澄川晴流(すみかわはるる)は、札幌に住む中学1年生。違う中学に通う福住凪(ふくずみなぎ)と付き合っているが、二人きりで会うと緊張して自然にふるまえず、いつもぎこちなくなってしまう。そんなある日、クラスメイトの平岸颯(そう)に陸上部のマネージャーになってくれないかと誘われる。晴流は、颯と一緒にいる時は自然体でいられる自分に気づき、凪と颯の間で心が揺れていく。
思春期の初々しい恋愛模様が、すぐに溶けてしまうはかない初雪に重ねられるようにして描かれていく。主人公の晴流は、小学校のクラスメイトだった凪に卒業式で告白されて付き合うようになるが、凪は私立中学校へ、晴流は地元の公立中学校へ進学したため、なかなか会えずにいた。一方で、晴流は颯からのアプローチにドキドキした自分に戸惑ってしまう。そんな初めての恋愛に揺れる気持ちが、札幌の街を舞台に描かれていく。初雪の日にメールを送ったり、白鳥の飛来に心躍らせたり、雪道に足を滑らせたところを助けられたりと、北国らしいエピソードも恋心をもりあげる。ちなみに、澄川、福住、平岸といった登場人物の苗字は札幌の地名。札幌に縁のある読者なら、ピンとくるスポットも多数登場する。
吹奏楽部に入部したヒロインが、野球部の同級生と励まし合いながら成長していく青春漫画。小野つばさは、吹奏楽部と野球部の名門校である北海道札幌市立白翔(しらと)高校の1年生。甲子園で野球部を応援するブラスバンドに憧れていたつばさは、入学を機に初心者ながら思いきって吹奏楽部に入部。厳しい練習にくじけそうになるが、野球部の山田大介の何気ない言葉にはげまされ、二人は共に甲子園に行くという共通の目標を抱くようになる。2016年に実写映画化。
本作は、札幌に実在する公立高校をモデルに描かれた作品だ。全国大会常連の名門吹奏楽部をモデルとしているだけあって、描写は細部にわたりリアル。作中で描かれる練習も厳しい。もちろん部員は全国大会出場を目指す経験者ばかりで、そんな中で初心者として入部するつばさは異色の存在。必死で頑張っていても、上のレベルを目指す部員達の足をひっぱるお荷物になってしまっている自分に落ち込んでしまう。そんなつばさの支えになったのが、愚直なまでに努力を重ねる大介の存在。つばさは自然と大介に恋心を寄せるようになり、大介もまたつばさを心の支えにしていく。純粋で真っ直ぐな高校生達が、共に夢を追う爽やかな姿は、札幌のからっと晴れた青い空にぴったりだと感じるはずだ。
天涯孤独だったヒロインが、美形でくせ者ばかりの異父姉兄弟とひとつ屋根の下で暮らし始めるところから幕を開ける恋愛ドラマ。育ての親だった祖母が亡くなり天涯孤独となった18歳の枕野ゆりは、祖母の遺言で生き別れの母と姉兄弟が札幌にいることを知る。しかし、訪ねてみれば、恋多き女優の母をはじめ、兄も姉も弟も自分と違い全員超美形で、しかも性格は難ありだった。美形ではないゆりはコンプレックスを刺激されながらも、新しい家族と札幌の街で暮らし始める。
本作の舞台となるのは、薔薇をはじめとした美しい花々に彩られた瀟洒な洋館。札幌の郊外に位置する花屋敷(はなやしき)家の邸宅には、母の花屋敷照子(てるこ)、姉の芙蓉(ふよう)、兄の菫(すみれ)、弟の葵(あおい)が住んでいた。全員容姿端麗だが、突然血縁者として現れたゆりは彼らに似ても似つかないため、彼らは不審の念を隠しもしない。そのうえ、「デブ」「チビ」と容赦ない言葉を浴びせるため、美形ではないゆりにとっては酷な環境だ。しかし、初めこそ家政婦同然の扱いをされるものの、ゆりの素直な性格ゆえか次第に家族との距離も縮まり、ゆりは兄の菫に許されない想いを抱くようになる。ゆりの気持ちの変化に寄り添うように、花であふれる花屋敷家の庭をはじめ、自然豊かな札幌の季節の移ろいが美しく描かれる。雪の舞う時計台デートやスキー旅行での告白といった北国らしい出来事が、ドラマティックさに花を添えていく。
中学時代は部活一筋だったヒロインが、高校入学を機に素敵な恋愛を夢見て邁進するラブコメディ。主人公の長嶋晴菜は、少女漫画のような恋愛に憧れる高校1年生。「モテ」を目指して努力しているが、中学時代はわき目もふらずにソフトボールに打ち込んでいたせいか、空回りしてばかり。女子からモテまくっている高校の先輩・小宮山ヨウにモテのコーチ役を頼み込む。2011年に実写映画化。続編として『高校デビュー―遠恋編―』がある。
主人公の晴菜は何事にも前向きで明るい性格。持ち前の一生懸命さで「モテ」を目指すが、部活一筋だったせいで恋愛にもファッションにもまるで疎い。うまくいかない姿を見かねたヨウは、自分のことを絶対に好きにならないという条件でモテのコーチを引き受ける。実は、ヨウは女子からモテすぎることが原因で恋愛にトラウマがあったのだ。しかし、心根の真っ直ぐな晴菜と接することで、その傷は癒えていく。例えば、体力自慢の晴菜が、自分なりにヨウの役に立とうと、黙ってヨウの家の前の雪かきをするというくだりは、彼女の性格と札幌らしさが同時に感じられる名エピソードだ。札幌ならではのエピソードに加え、丁寧に描かれる恋愛描写から目が離せない。
札幌在住のアラサーOLが主人公の食べ歩きコミック。旅行会社勤務のOL・小田早織(さおり)は、6年も付き合った彼氏と破局したばかり。何を食べても美味しくなく味気ない日々の中、勇んで参加した合コンも空振りに。しかし、親友に連れられていった「さっぽろラーメン横丁」で出会ったとあるラーメンが、早織を美食に目覚めさせる。地元民に愛される庶民的な人気店から、一度は訪れてみたい憧れのレストランまで、札幌に実在するお店が登場する。
札幌は、食の宝庫といえるほど北海道中の美味しいものが集まっている街だ。本作は、そんな札幌の街のOL・早織の日常を追う形で、美食スポットを紹介してくれる。不発に終わった合コンの後で訪れた弟子屈(てしかが)ラーメンの店に始まり、札幌ではお馴染みのスープカレー、北海道名物のジンギスカン、勝負デートでも使えそうな鉄板焼きのレストランと、ジャンルも幅広い。珈琲好きが多いといわれる札幌市民に愛される本格派の珈琲店や、歴史ある建物で絶品スイーツが楽しめるスポットも紹介。また、市内でも街中からちょっと足をのばせば楽しめる温泉やホーストレッキングといったレジャー等も登場するあたりは、雄大な自然を誇る北海道らしい。美食から力を得た早織に、新たに芽生える恋の行方も気になるところだ。