小学生の若狭結姫(わかさゆうき)が、世界を滅亡の危機から救うべく神々の世界「高天原」を旅する異世界ファンタジー。ある日、学校へ向かう結姫のもとに空から謎の勾玉が落ちてくる。それを学校のトイレで確認しようとしたところ鏡に謎の女性が映り、悲鳴を上げてしまう結姫。しかし、何か言いたいことがあったのではと思い家の鏡の前で再び勾玉を取り出す。すると同じ女性が鏡に映り、世界が滅亡の危機にあること、そして勾玉を持つ者だけが世界を救えるのだと語り始めた。
本作は日本神話の天岩戸伝説をモチーフにしており、三種の神器のうちの一つである勾玉を手に世界を救うという、スケールの大きい物語に仕上がっている。もちろんラブストーリーとしての完成度も一級品であり、想い人と瓜二つながら真逆な性格の男子と出会った結姫が、相互理解をもって徐々に距離を近づけていく展開は必見だ。また、クラスメイト達が結姫の学校生活を描くためだけのキャラクターかと思いきや、舞台が異世界に移った後も物語に深く関わってくることに意外性を感じられる。冒険活劇を女性視点で楽しみたい人はもちろん、少女漫画×ファンタジーを好きな読者にもおすすめだ。
小学生の神路木(かむろぎ)ヤマトが、神の化身「バケガミ」として他の神々と激闘を繰り広げるアクション漫画。ヤマトが学校の宿題で漁師の仕事を取材すべく漁船に同乗していたところ、突然海からいくつもの首を持つ怪物「ヤマタノオロチ」が現れ襲いかかってくる。その衝撃で船から落ちた漁師の娘を救うべくヤマトが海へ飛び込むと、程なくして謎の剣を手にしたヤマトは海を切り裂き、ヤマタノオロチをあっという間に倒すのだった。
船から落ちた女子を助けに迷わず海に飛び込むなど行動力抜群の主人公が、三種の神器の一つである草薙剣(くさなぎのつるぎ)を手に神々と戦いを繰り広げる展開は、爽快の一言である。突然出てきた敵を突然目覚めた力で倒す突拍子もない展開ではあるものの、全体的に絵柄の線が濃いめであることが戦闘の迫力に拍車をかけており、アクション漫画好きなら間違いなく楽しめるはずだ。また草薙剣でヤマタノオロチを倒すシーンなど神話通りの戦いも多いので、日本神話を多少なりとも学んでおけば楽しめるポイントがさらに増えることだろう。なお本作は全2巻となっており、紙の本は1巻のみで入手が非常に困難なので、気になる方は電子書籍サイトをチェックしてみてほしい。
女性の太い足を好む美少年のタケハヤが、「むちむちを愛せ」という太古の価値観を守るべくM・ゲームを繰り広げるエロコメディ。タケハヤは足のぜい肉に悩む女子高生・内子を自宅に連れ込み、執事の仕切りのもとM・ゲームに参加させる。ゲームの内容は「好きな場所に置いたリンゴを内子が足だけで守り、タケハヤは手だけでそのリンゴを取る」というものだったが、タケハヤはヌルヌルの腕である「草薙剣」を内子の脚の間に突っ込み瞬く間にリンゴを手にするのだった。
ムチムチの足を持つ女性たちを痩せたい欲求から守るべく、日々ゲームと称して女性の太股に腕を突っ込むという斬新すぎるストーリーが魅力。三種の神器の中でも草薙剣を扱う漫画は数多いが、本作ほど使いみちがフザケている作品はそうそうないだろう。また女性の理想の体型が時代とともにスリムになっていったという背景や、「むちむちの足はエロい」というタケハヤの性的嗜好など、妙に「なるほど」と思わせる要素がさらなるシュールな笑いをもたらしてくれる。ヌルヌルの腕である草薙剣が女性の太股の肉圧と戦っているシーンは実際卑猥ではあるものの、脚を除いた肌の露出はエロコメディとしてはむしろ少ない部類なので気軽に読み進められるのではないだろうか。
MS(モビルスーツ)ユニオン族の勇者である騎士ガンダムが、世界を救うべく三種の神器や石板を探し求めるファンタジー作品。MSジオン族の侵略によって存亡の危機に瀕するラクロア国では、伝説の槍を抜き取れる存在「勇者ガンダム」の到来が待ち望まれていた。そんなある日、刺さっている槍に祈りをささげる者たちへジオン族であるゴブリンザクが襲いかかってくるも、岩の中で寝ていた騎士ガンダムがこれを瞬く間に撃破する。するとゴブリンザクの口から、ジオンの魔王の正体が「サタンガンダム」であることが語られるのだった。
ファンタジックな世界観や三種の神器を探し求める展開など「ガンダムシリーズ」の派生作品の中でも特に珍しい物語を楽しめるほか、アムロやセイラなどガンダム本編でおなじみのキャラクターも多数登場するので、ガンダムファンであれば本編とのギャップにニヤニヤしながら読み進められることだろう。三種の神器の謎やジオンの魔王が勇者側と同じガンダムである理由など、物語のスケールを広げる要素も話の冒頭から多数ちりばめられているので、後の展開が非常に楽しみである。ストーリーは一貫して勧善懲悪であり、またガンダムをはじめとしたキャラクターデザインが総じてデフォルメされているので、小さなお子様に読ませる児童書としてもおすすめだ。
ロトの血を引く勇者のアロスが、多くの人々や呪文が一度に消失した「失われし日」の謎に迫るファンタジー作品。失われし日を境にすべての記憶を失っていたアロスは、盗賊として5年ほど村などで盗みを働いていた。そんなある日の夜、アロスが属する盗賊団「鷹の師団」のアジトを別の盗賊が襲う。頭領や強い仲間らの活躍でこの騒動はほどなくして鎮まったものの、争いの中で1人を殺害してしまったアロスは眠れない日々を過ごすようになる。
アロスは盗みの現場や戦闘の最中でも殺しをためらう「悪になりきれない」性格であるほか、盗賊団の仲間もなんだかんだでアロスを心配するなど、殺伐とした世界観の割に良い人が多いのが魅力。また「アロスを団へ引き入れた盗賊が実は驚きの身分だった」など、設定の何から何まで謎に満ちているからこそストーリーを追う中で絶えず新たな発見を楽しむことができる。なおアロスの冒険にはジパング(日本)に由来する三種の神器が関わってくるが、そのすべてに炎や雷といった属性、そして人格を持った精霊が宿っている。本作は『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』の続編であり、「ドラクエ」シリーズ新規参入者はそちらを先に読んでおくとスムーズに物語に入り込みやすくなるだろう。