大正時代の日本を舞台に、鬼によって家族を惨殺された主人公が、鬼と化した妹を人間に戻すため戦い続ける姿を描く和風ダークファンタジー。竈門炭治郎(かまどたんじろう)は父親を亡くし、家族を支えるために炭焼きをしながら暮らしていた。ある雪の日、街に炭を売りに行った炭治郎が家に戻ると、そこには惨殺された家族の遺体と、瀕死の妹・禰豆子(ねずこ)の姿があった。混乱する炭治郎に、普段とは様子の変わってしまった禰豆子が襲い掛かる。2019年4月から9月までテレビアニメが放送。2020年1月18日から2月2日まで舞台「鬼滅の刃」の公演が行われた。
物語冒頭から、炭治郎に辛い現実が降り掛かる。炭治郎を除く家族が鬼に襲われたのだ。母親はおろか、幼い弟妹も血の海に沈んだ。唯一助かった禰豆子も傷口に鬼の血を受けてしまい、鬼へと変化してしまう。鬼とは人を食べる存在だ。千年以上も前に生まれた最初の鬼、鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)の血が人間の体内に入り込むと鬼へと変貌する。記憶は曖昧となり、飢餓状態となっては肉親であろうと食べるために襲い掛かる。炭治郎は鬼と化した妹を人間に戻すために戦い続けることになるのだが、舞台では長い戦いの一端が演じられる。2.5次元作品は概ねキャラクターの再現度が高いため、同公演でも各キャラクターのビジュアルは大きな注目を集めた。優しい性格が窺える炭治郎に可憐ながら人ならざる妖しさを秘めた禰豆子など、いずれも原作の雰囲気を損なっていないキャスト陣は好評だった。アクションの多い作品でもあるので、殺陣のシーンは見所の一つ。各々の剣術と本作特有の戦闘技術である「呼吸法」がどのように表現されるのか、舞台ならではの演出を楽しみたい。
高度産業文明を崩壊させた戦争後の汚染された大地が広がる世界を舞台に、二つの大きな国の戦いに巻き込まれながらも、大地と人間の共存を模索する主人公の戦いを描くSFファンタジー作品。すべてを崩壊させた「火の7日間」から1000年。大地は汚染され、異形の生物たちが暮らす森「腐海」が広がっていた。辺境国「風の谷」族長の娘ナウシカは、ある日墜落した避難船に搭乗していた少女から、秘石を託される。1984年3月にアニメ映画が公開。2019年12月に本作を原作とした新作歌舞伎の公演が、新橋演舞場で行われた。
戦争の後に広がったのは、不毛の大地だった。人の身体に害を与える毒素を吐く菌糸類が広がる腐海には、巨大化した蟲のような大きな生物が多く生息している。本作は言わずと知れた名作アニメ映画の原作である。漫画版とアニメ版は違っているところも多いのだが、特に漫画版では世界観や国家の関係がよりわかりやすくなっている。大きな戦争があった後の荒廃した世界で、二つの大きな国の争いに巻き込まれる、辺境国の族長の娘、ナウシカ。強くて優しい我らが「姫ねえさま」が、なんと現代に顕現した。新作歌舞伎として上演されたのである。未来世界を描いた漫画作品と古典芸能の融合という意味でも興味深いが、長大な物語をどうまとめたのかも気になるところ。古典芸能の柔軟性に驚かされること必至だ。
考古学を愛する主人公が古代エジプト王の墓を暴いたことで呪いを受け、古代エジプトにタイムスリップし、数々の試練に立ち向かっていく大河ラブロマンス。16歳の社長令嬢、キャロル・リードは考古学を学ぶためにエジプトに留学中。墳墓の発掘調査に同行していたところ、父親が出資していた事業の一環で新たなエジプト王の墓が発見されたことを知る。カイロの町に移送された王のミイラだったが、保管室に泥棒が侵入。その際の騒動で貴重な粘土板を破損させてしまう。2016年8月に帝国劇場にてミュージカルを上演。2017年4月に再演が行われた。
最も長く連載されている少女漫画の一つが本作である。連載が開始されたのは、1976年の10月号。その時からアメリカ人の少女、キャロルと古代エジプトとをつなぐ壮大な物語が始まったのだ。キャロルは古代エジプト王国の第一王女、アイシスの呪いを受け、古代エジプトにタイムスリップしてしまう。その後は考古学や現代人としての知識を駆使して生き残り、その容姿の珍しさから古代エジプトを助ける存在として慕われることになる。そして古代エジプト王国の青年王、メンフィスと恋仲になるのだ。40年以上も前に連載が開始された作品だが、設定から話の流れまでタイムスリップものの王道が押さえられている。タイムスリップものの少女漫画の元祖が本作と言っても過言ではないだろう。現在でも同類作品で親しまれる要素がぎゅっと詰まった本作がなんとミュージカルになった。ビジュアルのきらきらしたところなどは、まさしく原作通り。華やかでキラキラとした世界とミュージカルならではの表現を堪能したい。
太陽系の星々の守護を受け、地球を守るために戦うセーラー戦士の戦いと、過去の因縁を描く戦闘美少女ラブファンタジー。中学2年生の月野うさぎは、ドジで泣き虫。ある日額に三日月形の模様がある猫を助ける。ルナという名のその猫は人の言葉を話し、うさぎは選ばれた戦士だと告げた。ブローチを渡されたうさぎは、光に包まれセーラー戦士へと変身するのだった。1992年のテレビアニメ化をはじめ、メディアミックス多数。1993年から2005年、2013年から2017年までミュージカルを上演。
中学生くらいの少女が不思議な力で変身し、悪と戦っていくという設定は、今でも多くの女の子たちを魅了している。戦闘美少女ものの元祖と言うべき作品だが、いまだにうさぎたちセーラー戦士に憧れている大人の女性は多い。物語冒頭のコミカルな日常から、前世の因縁から続く壮大な愛と戦いの物語が展開されるとは、だれも想像していなかっただろう。戦う美少女には、常に過酷な運命が付きまとうのだ。テレビアニメの印象が強い本作だが、ミュージカルのシリーズを上演している期間がとても長い作品でもある。「セラミュ」の愛称で親しまれており、歴代キャストのファンも多い。2018年、2019年には「25周年プロジェクト」として人気アイドルグループ乃木坂46のメンバーによる上演も行われた。