数ある梶原一騎作品の中でも『柔道讃歌』で描かれた巴突進太と「鬼利鎌」こと利鎌竜平の関係は、最高のライバル関係と言えるでしょう。兄を不遇の死に追いやった女の息子として、スパルタ式にシゴキまくっていた鬼利鎌。だが、その真意は日本柔道が失った「柔よく剛を制す」の精神を突進太に託すものだった。しかし、利鎌は突進太をより強くするため、師ではなく敵の道を歩んだ。「男を成長させるものは、なまじの味方との平和よりも、すぐれた敵との激闘の嵐である!!」という言葉を残し。そして突進太は打倒利鎌を目標に鍛練を積み、ついには利鎌を倒して柔道世界一に輝く。まさに鬼利鎌という嵐は突進太を大きく成長させたのでした。
『ドラえもん』で描かれる友情といえば、ドラえもんとのび太のそれがまず頭に浮かびますが、誰よりも「友情」とか「友」とかいう言葉を口にしていたのは、やはりジャイアンでしょう。一見しなくても暴君そのものとして子供の世界に君臨するジャイアンですが、ああ見えて自分に対する評価は高くありません。いつもリサイタルと称して強制的に聞かせる歌だって、みんな喜んでいないのは内心分かっているのです。だからこそ、彼は自分のしたことをほめてもらうと心から喜ぶのです。そう「きみだけだ、わかってくれるのは。きみこそ親友だ。心の友だ」と。もっとも、そんな彼の想いを裏切ったら、待ち構えているのは手痛いしっぺ返しだったりするのですが……。
『キン肉マン』といえば80年代のジャンプ黄金時代の一角であり、漫画史の中でも「努力・友情・勝利」を体現する漫画の代表と言えます。連載開始から終了まで、幾多もの戦いとそれに伴う超人たちの友情シーンが描かれてきましたが、それらをまとめると最終回の「友情は成長の遅い植物である。それが友情という名の花を咲かすまでは、幾度かの試練・困難の打撃を受けて堪えねばならぬ」という言葉に集約されるでしょう。元ネタはアメリカ初代大統領であるジョージ・ワシントンの言葉ですが、キン肉マンとライバル超人たちとの闘い、そして闘いの中で芽生えた友情と絆の深さを考えると、実に感慨深い言葉です。
『キャプテン翼』といえばみんなすぐに思い出すフレーズは「ボールはともだち」でしょう。でも、正確には「ボールはともだち こわくないよ」だというのは意外と知られてないと思います。このセリフは南葛のキーパーである森崎有三が日向小次郎のシュートを顔面に受けて、ボールに対してすっかり怯えきったときに、大空翼が言ったものです。この言葉を発したあと、翼は自分でも相手のシュートを顔面ブロックしています。そして「ねっ ぜんぜんへいきでしょ」と森崎を励ましました。これによってすっかり怯えていた森崎は、ゴールキーパーとして復活したのです。友達のトラウマの克服、有言実行、折れない心、みんなが何気なく口にする「ボールはともだち」にはこうした意味もあったのです。
『寄生獣』の泉新一と彼の右腕に寄生したミギーは、奇妙な友情関係にあった「バディ」でした。当初、新一の脳を狙っていたミギーは「感情」を持たずに自分の生存を優先する寄生生物でしたが、新一との共存関係と自身の知識欲によって、次第に変化していきます。そして、強敵・後藤との戦いの中、新一の体から離れてしまったミギーは新一を逃がす献身的な行動を取りました。新一から離れたままのミギーに待つのは死なのに。そして相棒との別れ際に「いちばんはじめに、きみに出会って…きみの…脳を奪わなくてよかったよ…」という言葉を残しました。非人間的な存在が、人間のような心を得て、相棒を助けて退場する。これもまた熱い友情と言えるでしょう。まあ、ミギーは後に復活するのですが。