こんなにあった! 小説が原作のアニメ7選418 Pt.

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著者は『四畳半神話大系』や『夜は短し歩けよ乙女』の「森見登美彦」で、著者初となる動物が主人公の作品をアニメ化したもの。狸の名門「下鴨家」の父で狸界の頭領である「総一郎」が、ある日前触れもなく狸鍋にされ、帰らぬ人ならぬ帰らぬ狸となってしまったことから物語は始まる。主人公は、「下鴨家」三男にして偉大なる父の「阿呆の血」を色濃く受け継いだ「矢三郎」。「面白きことは良きことなり」をモットーに天狗の「赤玉先生」の世話をしたり、神通力を得た人間の美女「弁天」の美しさに惹かれたり、「夷川家」との空中決戦を繰り広げた果てに、父が鍋にされた真相が明らかになる。「下鴨家」を襲う絶体絶命の危機、果たして一家の運命はいかに!? 人間・狸・天狗が繰り広げるハートフルコメディ。「矢三郎」の阿呆さにくすりと笑え、家族愛に涙腺を刺激される作品。ほのぼのとした中にもシリアスな部分が織り込まれ、作品に深みを出す。笑って泣いて「家族ってこんな感じだよね」と思える作品である。第2期『有頂天家族2』が2017年4月から放送中だ。

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著者は『風が強く吹いている 』などの「三浦しをん」。出版社「玄武書房」は中型国語辞典「大渡海」の刊行計画を進めていた。定年を間近に控えたベテラン編集員「荒木公平」は後継者を探していたが、これといった適任者が見つからない。その一方で、同じく辞書編集員の「西岡正志」は口下手なのに営業部員である「馬締光也」のお粗末な仕事ぶりを目撃し、少しだけ指導する。その後「馬締」との会話などを「荒木」に話すと、早速「荒木」は彼のもとに赴き、「言葉」についていくつかの質問をする。そこから辞書編集部へ異動になった「馬締」は、辞書編纂者として才能を発揮して、個性豊かな編集部員たちと「大渡海」の刊行に向けて奮闘する。もしもあなたが「右」を説明してみろと言われたら、どう説明するだろうか。真っ先に方角について説明するだろうか。「馬締」は「荒木」に質問された時、真っ先に「方向としてか思想としてか」と確認するのである。その後の方向についての「右」の説明は完璧で、他の質問についても淀みなく答えた。彼の言葉へのセンスが非凡であることが分かる。辞書の編纂者たちが、恋に仕事に奮闘し、「大渡海」を完成させるまでを描いた作品である。

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著者は「館シリーズ」などで知られる新本格ミステリー作家「綾辻行人」。一時期ネットで「『Another』なら死んでた」のコメントが流行った本作の舞台は、1998年の春。中学生の「榊原恒一」は、病気の療養と父の海外出張をきっかけに、祖父母の家に預けられる。転入先での登校初日、「恒一」は何かに怯えるクラスメイトたちに違和感を覚える。その中でも目を引くのが、どこか浮世離れした少女「見崎鳴」だった。「恒一」は、転入した3年3組の「災厄」についてよく知らないため「鳴」と接触しようとするが、クラスメイトたちから彼女を「いないもの」として扱うように言い含められる。やがて、クラス委員長が凄惨な死を遂げ、次々に恐ろしい事件が起こり始める。3年3組だけに伝わる「呪い」とは? 「鳴」とは? 物語はクラスメイトたちを巻き込んで、衝撃のクライマックスへ突き進んでいく――。ミステリーとホラーが絶妙で、謎で覆われた真相がとても気になる。また、主題歌を担当した「ALI PROJECT」の曲も本作の世界観にぴったりである。何気ない日常のワンシーンで突然キャラクターが死んでしまうので、非常にインパクトが強く、グロテスクな描写が苦手な人は視聴に注意が必要だ。

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著者は『怪盗探偵山猫』シリーズなどを執筆した「神永学」。「小沢晴香」は幽霊に憑依された友人を助けようと、大学の映画研究会の「斉藤八雲」を訪ねる。「八雲」には霊能力があるらしいが、彼はぼさぼさ頭で愛想のない、どこか心を閉ざした口の悪いひねくれ者だった。霊能力があることについて半信半疑だった「晴香」だったが、誰にも打ち明けなかった幼い頃の悲しい経験を言い当てられ、その能力を確信。真相解明に動いた「八雲」と共に行動する「晴香」は、やがて事件の裏に潜んでいた謎と、「八雲」の秘密を知る。見事事件を解明した2人だったが、以降、様々な事件に関わっていく……。基本的には心霊現象などが絡んだミステリーなのだが、「晴香」と関わってから、心を閉ざしていた「八雲」により良い変化が生まれ、事件を追う2人の相棒のような、友達以上恋人未満のような関係性にも注目したい。

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著者は「柳広司」で、『ジョーカー・ゲーム』は2009年に「第30回吉川英治文学新人賞」と「第62回日本推理作家協会賞（長編および連作短編集部門）」を受賞している。本作の舞台は、世界大戦の火種がくすぶる昭和12年秋の日本。帝国陸軍「結城中佐」は、陸軍中枢部の反対意見を押し切って、スパイ養成部門「D機関」を秘密裏に設立した。本作の第1話は、陸軍中尉の「佐久間」が参謀本部から監視の密命を受け、「D機関」に訪れたところから物語が始まる。「佐久間」がそこで目にしたのは、一般の大学を卒業し、超人的な選抜試験を平然とくぐり抜けた若者たちだった……。原作小説はオムニバス形式で、アニメも物語が1～2話で終わる形を取っている。また、1話と2話以降は、世界に各地に旅立った機関員たち一人ひとりにスポットが当たっており、本編のナンバリングと時系列はバラバラ。だが、公式サイトでは全12話の時系列図が掲載されており、物語の流れがはっきりと理解出来る。魔術師のごとき知略を持つ「結城中佐」の技術を全て身につけた機関員たちの、スパイとしての鮮やかな行動は見逃せない。

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著者は『精霊の守り人』で知られる「上橋菜穂子」。元「霧の民」である母と、民族の違う「闘蛇衆」の父との間に生まれた「エリン」。「獣ノ医術師」である母は、戦の道具である「闘蛇」を世話していたが、死なせてしまったために責任を問われ、処刑されることになる。母を助けようとしたが「エリン」は失敗し、天涯孤独の身の上となる。その後、蜂飼いの「ジョウン」に助けられ成長した「エリン」は、母と同じ「獣ノ医術師」になることを決意。「カザルム王獣保護場」の学舎へと入舎する。やがて、「エリン」は決して心が通じないとされた崇高な獣「王獣」を操る才能を持っていたことが発覚。その才能から王国の勢力争いに巻き込まれていくのだった……。本作は、主人公「エリン」の波乱万丈な人生と成長を描いたファンタジー作品。種族の違う「王獣」との絆や、困難に立ち向かう様子が丁寧に描かれている。50話前後と話数は多いが、壮大で濃密なストーリー構成で見応えあり。視聴中はキャラクターたちに感情移入して、涙を流すことが多いかもしれない。

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著者は『塩の街』などの「自衛隊三部作」や『三匹のおっさん』などで知られる「有川浩」。2019年の架空日本が物語の舞台。公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる法律として「メディア良化法」が成立・施行された。図書館は「図書館の自由法」を制定し、不当な検閲から「本」を守るために武装した防衛組織「図書隊」を持つ。「笠原郁」は高校生の時、「良化機関員」の検閲から愛しい本を守ってくれた王子様（図書隊員）に憧れ、入隊した。鬼教官「堂上篤」や、笑い上戸の上官「小牧幹久」、同僚の「手塚光」「柴崎麻子」たちと出会い、様々な事件や戦いを乗り越え、成長していく。「熱血バカ」と言われるが、真っ直ぐで明るく、本が大好きな「郁」。彼女は、顔を忘れてしまった「王子様」を長く想い続ける純情さを持つ。正義感も強く、非常に好感の持てる主人公である。主人公以外のキャラクターたちも、個性的で面白い。著者の作風であるSF・ミリタリー的な要素と、「ベタ甘」と評価される恋愛要素も織り込まれた見応えある魅力的な作品だ。