情緒的で色っぽい着物女性と、油絵に没頭する大学生のラブロマンス。日本人が持つ繊細で情緒的なロマンチズムがたまらなく美しい作品。人間としての綺麗な性がここにある。本記事では、『夏の前日』を紹介する。
情緒的で色っぽい着物女性と、油絵に没頭する大学生のラブロマンス。日本人が持つ繊細で情緒的なロマンチズムがたまらなく美しい作品。人間としての綺麗な性がここにある。本記事では、『夏の前日』を紹介する。
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情緒的で色っぽい着物女性と、油絵に没頭する大学生のラブロマンス。日本人が持つ繊細で情緒的なロマンチズムがたまらなく美しい作品。人間としての綺麗な性がここにある。本記事では、『夏の前日』を紹介する。
「青木哲生」は日吉ヶ丘芸術大学に通う4年生。油絵に真摯に向き合う真面目な男性だが、人付き合いが下手で、いつも人の親切につっけんどんな態度をとってしまう。そんなとき、アルバイトのひので画材に着物の美人女性がやってきた。月下画廊に勤める「藍沢」と名乗るその女性は、画廊の催し物のチラシを画材屋に置いてもらっているようだった。
暑い夏の日、河原で汗をかきながらストイックに、秋季作品展に出す油絵を描く青木。そこへ藍沢が通りかかって、咥え煙草をしながら苦悩する青木の顔を見た。その日から毎日青木が描いているところにやってきて、様子を見にくるようになる。青木もはじめはうっとうしく思っていた。秋季作品展に描いた作品を展示しているところへ、藍沢がやってきた。ごはんを食べに誘われるが断る青木。そんな青木をごはんではなく、美術展で釣って誘い出す事に藍沢は成功した。食い入るように絵画を見つめる青木を待つ藍沢であったが、青木は「もうこれっきりにしてください。迷惑だ。」と言い放つ。藍沢は「素敵な絵を見せていただいたお礼よ。あたしとのデートじゃお礼にもなんないかしら。」と返す。青木はそんな藍沢にからかわれていると思い、そう言ったのだった。
ひので画材でバイト中に雨が降ってきた。他のバイトの子が、お店にあった傘を店長に借りようとするが、藍沢の忘れ物であるからと断られているのを聞いた。いつもチラシを置きに来ていたのに、顔を出さなかった事に怒りを覚えるが、傘を藍沢に届けにいく。大雨の中、返す傘もささずに藍沢に傘を届けにきたびしょ濡れの青木が健気で、藍沢は気持ちを抑えきれずキスをしてしまう。びしょ濡れの青木を着替えさせる為に藍沢は青木を自宅のマンションに連れて行くが……。青木のかわいさと純粋さと誠実さに惹かれている藍沢は、この後どうするつもりなのであろうか――?
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この作品を見て思い出すのは、大正ロマンの美人画家「竹久夢二」という作家である。着物の女性と、その扉絵は似ている雰囲気を持つ。青木と藍沢の二人の性描写はとてもリアルであるが、生々しいいやらしさがなく、誠実に向き合っている感じがする。青木がつっけんどんで虚勢を張っている様子は、藍沢からするととてもかわいく、母性本能がくすぐられていくのが伝わる。まさかの童貞だという事がわかったときも、その健気で女性に真面目で純情なところもときめくほど惹かれるのである。
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青木も初めての女性に心をときめかせて、女性に没頭していく様はとても見応えがあり、ほどよいエロチズムがロマンティックであり、美しく感じる。藍沢にのめり込みそうになっていると、絵の事が考えられなくなり、距離を置こうとするが若い男の欲望に圧力をかけてしまったら、たいていそれは暴走するのであるが、我慢しようと試みるところが青木の幼く誠実で純粋なところである。この恋をずっと見届けたい……。そしてずっと続いて欲しい。あわよくば、自分もこんな綺麗な恋愛がしたい。人間の欲と性が上質のものであれば、こんなにも純文学を読んでいるかのような気持ちになるのであろうか。
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日吉ヶ丘芸術大学 洋画科4年生。油絵に真剣に取り組んでおり、真面目で純情だが、人付き合いが苦手で攻撃的。そんな自分を責める葛藤の多い男性。親の支援は受けず、一人でアルバイトをしながら制作に挑んでいる姿はとても男らしい。好きな女性のタイプは気が強い年上の女であり、やさしく叱られたい願望を持っている。
月下画廊に勤めている、着物の美人。豊満な肉体を持つ。油絵に真摯に向き合う青木が気になり、見てるだけで良いと思いながら、それだけでは我慢ならなくなっていく。青木の不器用なところをかわいいと思っている。
『夏の前日』第1話が公開されている他、吉田基已の活動について掲載されている。
『夏の前日』は前作の『水の色 銀の月』のビフォアーストーリーであるため、青木と晶の関係の最後はどうなるのか、吉田基已の作品を読んでいる読者であればある程度予想できてしまうのであるが、その結末をどう結んでいく過程を楽しみながら読める作品である。作画がスクリーントーンやPCなどを使わず、全て手書きで描いてあるような、暖かみのある画風である。現代というより、昔の雰囲気を大事にしているのだろうかと窺える。
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