起承転結すべて部屋の中!オススメ漫画5選98 Pt.

自室を舞台とする漫画の多くは、生活におけるどんな些細なことさえネタになる究極の日常コメディである。本記事では話のほとんどが部屋の中で完結する漫画のオススメ作品を、ミステリーなどの変わり種も含めて5作紹介する。

作成日時:2019-11-29 10:00 執筆者:マンガペディア公式

起承転結すべて部屋の中!オススメ漫画5選

出典:小学館


『吾輩の部屋である』

『吾輩の部屋である』

出典:小学館

築41年のアパートで一人暮らしをしている大学生の鍵山哲郎が、家の中で起こる些細な出来事に対し哲学的な考察を繰り広げる日常コメディ。哲郎は同じ研究室の植村さんをデートに誘うも明確な返事を得られず、催促のメールを送るべきか迷っていたところ、台所のたわし入れが2度にわたり落下する。その後、吸盤を熱で元の形に戻してたわし入れをしっかり固定し直したところで、恋愛も押すだけではダメということを吸盤から学ぶのだった。2017年にテレビドラマが放送された。

登場人物が哲郎一人であるうえに舞台もほぼ自室内で完結しており、ツッコミ役はもっぱら部屋の置物や家具というシュールな設定が本作の最大の特徴。その哲郎は学業に消極的である一方、家具の配置や些細な汚れに関しては並々ならぬ几帳面ぶりを発揮しており、今どきの一人暮らしの学生をリアルに表現した非常に自己投影しやすい主人公である。レポートの提出期限が迫っている状況で突然部屋中を掃除し始めたり、洗濯物の乾きやすい干し方の発見など些細なことで天才を自称する様には共感できる人も多いはずだ。接着力が落ちた吸盤の復活方法など実生活に役立つ情報も度々紹介されているので、彼の暮らし方を少しでも現実に取り入れてみれば今の暮らしが精神的により充実するかもしれない。


『ストレッチ』

『ストレッチ』

出典:小学館

ストレッチに詳しい蘭と高校時代からの先輩である慧子が、ルームシェア生活の中で様々なストレッチを実践していく日常コメディ。ルームシェアを始めて間もないある日、仕事から帰ってきた慧子に対し蘭は「顔的に肩こりひどそう」と指摘する。それを挑発と受け取った慧子が蘭の胸ぐらを掴むと蘭はなぜかそのまま肩の上下運動を始め、慧子は顔をひきつらせながらも彼女に言われるまま様々なストレッチを実践し肩をほぐしていくのだった。

おっとりした雰囲気の蘭と男勝りかつズボラ気味な慧子という、正反対の2人の女子による小気味よいやり取りが魅力で、ストレッチのレクチャーがメインの漫画でありながらユルい気持ちで読み進められる。互いに再会を喜ぶなど高校時代からの強い絆をうかがわせる場面も多く、2人が昔どのような仲だったのか、またルームシェア生活がこれからどうなっていくのかに注目しながら読んでいく楽しみもある。ストレッチ自体はかなり実用的であり、いくつかのストレッチを組み合わせて、体ほぐしプログラムという形式で紹介されていく。現実に肩や腰などの凝りを感じているならば、本作を参考に実際の生活にストレッチを取り入れてみるのもオススメだ。


『ひまじん』

『ひまじん』

出典:amazon

会社を辞め自宅で内職を始めた森川つぐみが、親友の和久井理沙に度々怒られつつも悠々とグータラ生活を送っていく日常コメディ。つぐみは会社を辞めてから働かない生活を送っていたが、度々家を訪れる理沙に再三働くよう言われた末に造花の内職を始める。結婚式用にバラのブーケを作るなど頼まれ事を引き受けるなど、つぐみ本人は現状のグータラをよしとしているようだが、ラムネの瓶を交換用に取っておくほど家計は苦しい。そのため、怠け者なつぐみと自立を勧める理沙の関係性は変わらないままである。

つぐみは季節も時間も関係なしにコタツで惰眠を貪り、外出もコンビニに行くくらいという典型的な引きこもりであるにもかかわらず、やたらと明るく何事にも前向きな変わり者である。親友に世話を焼かれている生活自体は褒められたものではないが、家計が苦しいであろう中、呑気かつ陽気に日々を過ごす姿には見習える点もあるだろう。また何かと部屋を訪れる理沙の粗暴ぶりが良いアクセントになっており、つぐみの怠けっぷりをピシャリと一喝するというやり取りが本作に独特のテンポを生み出している。なお労働に積極的でないのは2人とも共通しており、「働いた方が負け」などぶっちゃけトークも少なくないので、中高生など将来に不安を抱いている人も本作を読めば、多少は気が楽になるかもしれない。


『監禁探偵』

下着泥棒の山根亮太が、忍び込んだ先で女性の他殺体に遭遇するミステリー漫画。コンビニ店員の亮太は女性客の里見玲奈に目をつけ、長きにわたって彼女の部屋を盗撮し続けてきた。そんなある日の夜、亮太はバイト帰りに玲奈の住むアパートへ寄り、服が干されているのを発見するとすぐさま部屋への侵入を決行する。そして性的暴行も企みつつ玲奈を探すが、見つけたのは床に倒れ既に死亡している彼女の遺体だった。2013年に実写映画が公開された。

部屋で死体に遭遇し、自分が捕まらないためにやむなく犯人を探す展開はミステリー作品なら珍しくないものの、本作は主人公が最初から犯罪目的で部屋に入るという新しすぎる設定で冒頭から読者を引きつける。更に推理の相方として登場するのは事件の数日前から亮太が監禁している家出少女であり、真相を探りつつ自身の素性を隠し通すという二重のサスペンス要素にページをめくる手が止まらなくなること間違いなしだ。導入部分だけでも亮太が救いようのない悪人であることは明らかであり、事件を解決して「めでたしめでたし」といかないことは想像に難くないが、だからこそ結末が気になって最後の最後まで飽きずに読み進められる一冊となっている。


『働かないふたり』

『働かないふたり』

出典:新潮社

ニートの兄・石井守と、対人恐怖症の妹・春子が実家で引きこもりライフを満喫する日常コメディ。石井兄妹は、兄が朝のテレビ番組でやっている星座占いを「これから寝るだけなのに運勢もクソもない」と一蹴したり、妹が日曜の深夜にテレビが流れていないことを嘆いたりと、2人揃って昼夜逆転の生活を送っている。しかしほとんど外との関わりがない妹とちがい、守は友人を家に招くなどニートにもかかわらず充実した日々を送っており、春子は人知れず敗北感を抱いていた。

臆病な春子に対して守はやけに堂々としており、ともにニートであるにもかかわらず「立派な兄がダメな妹の面倒を見る」といった関係になっているので、妹ものの漫画が好きな人なら間違いなく楽しめることだろう。またニートや引きこもりを扱う漫画といえば家庭環境が薄暗い作品も少なくない中、本作は兄妹に対する母のお節介など家族愛を思わせるシーンが多々あり、他の登場人物も良い人ばかりなのでひたすら温かい気持ちで読み進められる。数百話に及ぶ長期連載の中、兄妹の状況や春子の対人恐怖症が改善されていく様を丁寧に描いているので、実際彼らと似たような状況にいる人はもちろん、そうした子を持つ親御さんにもぜひご一読いただきたい。


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