「雪女」が登場する漫画65 Pt.

人間を凍死させる恐ろしい妖怪だが、その一方で、愛情深い美しくも悲しい女性。小泉八雲が「怪談」で描いた雪女のイメージは、実に印象深いものがある。日本で最もメジャーな女性妖怪といっても過言ではない、雪女キャラが登場する漫画を紹介しよう。

雪女といわれて真っ先に頭に浮かぶのは、本作に登場する雪子姫という読者も多数いるだろう。雪子姫は、主人公・火炎のえん魔の出身である「閻魔一族」に並ぶ、地獄界の名門「雪女家」の姫君である。雪女家の住む土地は寒冷地獄。雪女一族の女に恋をした人間の男たちが氷漬けにされ、樹氷のように林立している。シャッポじい曰く「雪女と恋愛をして氷漬けにされないのは、えん魔くんぐらい」とのこと。ちなみに雪子姫は、大の入浴好き。ただし、入るのは温泉ではなく、自らの能力で作りだした氷風呂。カチカチに凍った氷を湯船のように扱う雪子姫の入浴シーンは、いにしえの時代劇のサービスカットといった風情がある。

本作に登場する雪女は「ゆきめ」。「鵺野鳴介のフィアンセ」を自称する彼女は、『なごり雪－季節はずれの雪女』のエピソードで初登場。ゆきめは、まだ幼い雪ん子だった頃、山で猟師に殺されそうになる。当時大学生で、スキーに訪れていた鵺野は、その場面に遭遇し、ゆきめを救う。かくして「ゆきめ」は、恩人の鵺野を一生愛すると心に決めた。やがて大人になった「ゆきめ」は、鵺野に会うために上京。ただし、雪女の愛し方は、「人間を自分の里で氷漬けにして永遠の命を与える」というものだった。紆余曲折の末、鵺野を氷漬けにするのは諦めたゆきめだが、鵺野への想いは増すばかり。結局ゆきめは、童守小学校近くのスケートリンクでバイトをしながら、鵺野の側で暮らすこととなる。

本作に登場する雪女は、主人公・奴良リクオの側近の1人である少女・氷麗（つらら）。クォーターであるため、1日の内1/4しか妖怪の姿でいられないリクオの護衛役として、彼と同じ中学校に通っている。マフラーがトレードマークで、普段着である和服だけでなく、セーラー服着用時も首に巻いている。また、彼女は冷気を放出して正体に気付かれないように、基本的に夏でも厚着をしている。同年代と言うこともあり、リクオと氷麗は幼少の頃から大の仲良し。リクオに対して、主従関係を超えた恋心を抱いている。それ故に氷麗は、リクオの周囲の女性に対しては、反発することも多い。少々ドジなところもあるため、氷麗の反発心が思わぬトラブルを招くことも。誰にも負けないリクオへの忠誠心を持ち、戦闘能力もある氷麗は、奴良組にとって頼もしい雪女だ。

本作に登場する雪女は、1年A組に所属する新入生・日下部雪。雪女といっても、日下部は、いわゆる妖怪ではなく、ちょっと特殊な体質の人間だ。日下部は、普通の人より体温が低く、暑さに弱い。第三者の目にわかりやすい変化といえば、たまに身体から弱い冷気や、氷の涙が出るくらい。中学校までは雪国の田舎町にいたこともあり、日下部は自分の体質にあまり疑問を持たずにいた。ところが、都会の高校に入学したことで、彼女の環境は激変。気が滅入った状態で入浴した際、日下部は、湯船に氷が浮いているのを発見する。その日以来彼女は、「伝承の雪女のように、自分には人を凍死させる程の力があるのかも」という悩みを抱え、他人との接触を避けるようになる。彼女が抱えている悩みのせいで迎える結末は、実際に物語を読んで確認して欲しい。

本作に登場する雪女は、ヒロイン・白石無垢。ただし、作中で彼女は自らを雪女ではなく「雪の妖怪」と語っており、一般的な雪女とは、やや異なる体質を持っている。中でも、最大の違いは、愛情や暖かい感情を向けられると、溶けてしまうという点だ。これこそ、白石が福住を振った理由である。福住が自分に好意を抱いてくれたことは嬉しいが、恋人として付き合うことは命に関わる。彼女の事情を知った福住は、仲良くなり過ぎない程々の距離の関係を提案。2人は、有り体に言う「友だち付き合い」を始めることとなる。しかし、元々が熱血系な上に恋愛経験もロクにない福住は、ついつい感情を昂ぶらせがち。一方の白石も妙に大胆なところがあり、2人の付き合いは、かなりスリリングな綱渡りとなっていく。