オタクの男子高校生の妄想が、あるきっかけで美少女として具現化し、彼女らを用いて戦うこととなるバトルコメディ漫画。男子高校生・君塚(きみづか)アオイはオタクであることを理由に、女子生徒からいじめられ、3次元に見切りをつけるべく萌えアニメの200時間連続視聴を敢行。それにより悟りを開きかけた結果、美少女のM・S DOLL(モーソードール)「八乙女(やおとめ)」を生み出す。同じくDOLLを持つM・S(モーソー)マスターと出会ったアオイはM・S FIGHT(モーソーファイト)の存在を知るのだった。
現実を否定する強い妄想の末、理想のツンデレ美少女・八乙女を生み出してしまったアオイ。同様に彼のように理想の美少女・美男子を生み出したM・SマスターがM・S DOLLの自慢をしあうというM・S FIGHTにアオイと八乙女は足を踏み入れることとなる。バトルは「口撃」によるもので、格闘シーンは皆無であるが、M・S FIGHTの試合が進むごとに、妄想のレベルが上がっていくのは独特の見どころである。また、全てのDOLLには「幼なじみ」や「男の娘」といったマスターの妄想に即した属性が付与されている凝りようも面白い。物語冒頭では、いわゆる「キモオタ」に過ぎなかったアオイがバトルで繰り返す中で、オタクである自分を肯定して成長していく点も評価できるバトルコメディだ。
高校生の抱く妄想の毎日を描いた学園コメディ漫画。男子高校生の名護は何かを目にするにつけ、それを美少女として擬人化し日々妄想している。彼の友人・橘はそんな名護に呆れつつ、その妄想を実感するために実際に物として作りだす。第1話では名護の「ポットがもしも美少女だったら」という性的な妄想を橘が立体化し、実際に使ってみるというシュールな話だ。こういった思春期の真っただ中である、高校生の妄想をテーマに描いた作品だ。
思春期特有の若さと勢いがこれでもかと迫りくる本作。高校生の日常をゆるく描いた作品は今日多数あるが、本作はとくに着眼点がユニークだ。前述したポットにとどまらず、妄想の域はハンガーや牛乳パックに至るまで身の回りのもの全てがエロく見えてしまうという男子高校生の性(さが)を、誇張はあるもののリアルに描いている。他にも第2話では、女子高校生でおっとりしたお嬢様育ちの草加と、一般的な育ちで気の強い照井といった対照的な2人の文化的なギャップを描いている。基本的に仲の良い友人同士2人のボケツッコミで物語は進んでいくのが本作の特徴。そういった高校生コンビの日常を描いているのだが、日本人が例えば時代劇に求めるような、よい意味でのマンネリ感があり、安心して読める作品だ。
可愛らしい動物が繰り広げる、少し奇妙な日常を描いた4コマ形式の不条理ギャグコメディ。主人公は少しぼうっとしたラッコの子どもである「ぼのぼの」。空想癖のある彼を中心に、シマリスくんやアライグマくん、ぼのぼののお父さんといった仲間たちが、独特の「間」で描かれるどこかシュールなギャグ漫画である。1995年、2016年にテレビアニメ化。1993年、2002年に劇場アニメ化された。
ぼのぼのの妄想上の存在「しまっちゃうおじさん」。悪いことをした子どもをしまってしまうという戒めのような、子どもの恐怖心を具現化したような存在だ。そのインパクトからひそかな人気を得ているキャラで、彼単独のアニメDVDや絵本なども発売されている。本作の単なるギャグではとどまらない「ほの暗さ」を象徴するかのような存在だ。実写映画化もされた『かむろば村へ』をはじめ、『I』、『Sink』などでは本作とは打って変わった人間の闇の部分をリアルに、ユーモアも交え描き出した作者である。本作はそういったどこか暗さを持った作風を得意とする作者ならではの不条理ギャグであり、そのシュールな笑いと妙な読後感は、例えば世界各地に伝わる寓話を思わせる傑作だ。
名門女子中学を舞台に、個性あふれる生徒会の面々が恋愛について研究しあう4コマ形式の学園ラブコメディ。「ワイルドの君」とひそかに呼ばれている主人公・私立藤崎女子中学校2年の倉橋莉子(リコ)が、生徒会へ所用で赴いた際に、会長で、「藤姫様」と呼ばれ生徒たちに憧れられている真木夏緒(マキ)が抱き枕を相手にキスの練習をしている場面を目撃してしまう。それをきっかけに2人は打ち解け、リコは会長補佐に任命されるのであった。2013年にテレビアニメ化。
完璧な美少女かと思われていたマキだったが、実は恋愛に対して並々ならぬ関心を持っており、生徒会の権限を用いて恋愛研究に励むという日々を送っていた。恋愛に対し、さまざまな妄想をするマキであったが、異性とあまり関わったことのないお嬢様育ちであるため、そのズレ具合にしばしばリコにツッコミを入れられる。マキとリコ以外にも書記のメガネっ娘で引っ込み思案の棚橋鈴音(スズ)、副会長でツンデレ女子の榎本結子(エノ)、会計でクールなメガネっ娘の水嶋沙依理(サヨ)など個性的な面々の恋愛研究の日々が描かれている。等身大の女子中学生の友情と恋愛がいっぱいにつまった作品だ。『僕らはみんな河合荘』など、ラブコメを得意とする作者の13年続いた代表作である。
品行方正なクラス委員と、破廉恥なクラスメイトという2人の高校生が織りなす日常を描いたコメディ作品。新学期、真面目なクラス委員の八橋(やつはし)みやこと、その隣の席になった都城玲華(みやこのじょうれいか)。隣り合って早々、みやこは玲華に「パンツをはき忘れたので、みやこのパンツを見せてほしい」という謎の論理でスカートの中を覗き見られる。生真面目なみやこは、性的に奔放な玲華を更生させようと、奮闘する日々が始まるのであった。
みやこと玲華の2人のやりとりがおもしろい本作。まず玲華の発するストレートで、どぎつい下ネタとそれに対するみやこの激しいツッコミが見どころである。性的好奇心が旺盛で妄想たくましい玲華は、クラスではそのために孤立している。初めてできた友だちであるみやこに対し、親愛以上の想いを抱き、暴走気味の玲華であったが、徐々に2人の心の距離は縮まっていく。たれ目がちでおとなしめな外見のトランジスタグラマーなみやこに対し、つり目で人目を引く外見のスレンダーな美少女の玲華、正反対の2人のやり取りがどこか、「百合」テイストがあり、そちらのジャンルを好む読者にも勧められる作品だ。ありそうでなかった女子お下品ギャグコメディである。