地獄から来た鬼である男子高校生が、とある女子高校生と恋に落ちるラブコメディ。地獄とつながりあった世界を舞台に、鬼である男子高校生・樺山プリンが、女子高校生・金剛寺金剛(こんごうじこんごう)に一目ぼれするところから本作は始まる。「面倒臭い」女子の金剛寺と、樺山が一歩一歩恋人同士としてステップアップしていく本作。文武両道にして生真面目、正論を好む隙のない金剛寺と、純粋で優しい樺山という2人の恋を描いた異種族間ラブストーリーだ。
恋愛に不器用な金剛寺と樺山との純愛の物語である本作。第1話にして早くも両想いとなる2人だが、少しずつ少しずつその心の距離が縮まっていく様子が、見ていてとても微笑ましく、感動的ですらある。そして、その恋愛風景を彩る、独特のコマ割りや吹き出し、せりふ回しといった、作者独自の個性的な演出の手法が本作でも見られる。その特徴的な手法が、これまでの作品を経て本作ではさらに過剰に用いられ、読者を圧倒する。強烈なキャラクターやファンタジー要素といった作者の恋愛コメディの持ち味が、代表作『ラブロマ』や『タケヲちゃん物怪録(ぶっかいろく)』などを経て最大限に発揮された集大成的な作品である。両想いから続いていく2人の物語に、これからも目が離せない。
地獄の住人たちの活躍を中心としたファンタジーコメディ漫画。広大な地獄で膨大な仕事をそつなくこなす鬼神・鬼灯(ほおずき)。閻魔大王第一補佐官として、非常に有能な鬼灯であるが、性格は冷徹にしてドS。そんな彼と、閻魔大王や白澤(はくたく)ら個性的な地獄の住人とが繰り広げる楽しい日々、そしてドタバタな騒動を描いたブラックユーモアあふれるコメディ作品である。スピンオフに『鬼灯の冷徹 シロの足跡』がある。2014年、2017年、2018年にテレビアニメ化。
眉目秀麗な鬼灯や白澤をはじめ、個性豊かな登場人物が多数登場する本作。その出典は日本の神話・御伽噺・怪談のみならず、ヨーロッパの悪魔・中国の妖怪など様々で、枚挙にいとまがない。そんな登場人物たちと、冷徹で慇懃無礼な鬼灯のやり取りが楽しい本作。登場人物にまつわる寓話や、現代の時事ネタ、芸能人ネタなど、本作のアイデアの範囲の膨大さは圧巻。作者の引き出しの多さがうかがえるハイセンスなユーモアが満載だ。本作から地獄などにまつわる知識を得た読者も多いことだろう。本作は『聖☆おにいさん』や『テルマエ・ロマエ』などと並び、2000年代~2010年代を代表する、歴史や伝説(本作では地獄)をテーマとした、日常系コメディであり大ヒット作品である。
生前人斬りであった主人公が、現世で「罪」を集めるビルドゥングスロマン。生前、非道の人斬りとして斬首され地獄に落ちた青年・統兵衛(とうべえ)。彼は地獄で300年の間反省もせず、逃亡を企て続けていた。そんなある日地獄の首魁・エマに、罪を狩ることのできる木刀「咎狩(とがり)」を与えられる。現世で108日間に108の罪を狩ることができれば、新たな生が与えられるとする取引のため、統兵衛の戦いの日々が始まる。続編に『咎狩 白』がある。
江戸時代の極悪人であった統兵衛。彼は人のぬくもりを知らず、生前ただ生き延びるということだけをシンプルなルールとして悪行を行い、地獄に落ちた。300年を経てこの青年が現世に蘇り、殉職した刑事を父に持つ正義感の強い女子高生・浅木(あさき)いつきと出会う。そして、戦いの日々の中、彼女やその祖父らとの交流を経て、統兵衛は徐々に人間らしさを身に付けていくのであった。それと同時に、統兵衛は自らの「闇」を意識するようになり、苦悩することとなる。統兵衛が人との交流や事件の解決を経て、苦悩しつつも人間味を育んでいく本作。『クロザクロ』と並ぶ作者の代表作であり、人間の成長というテーマで通底した作品である。卓越した画力で描かれる自己形成物語の傑作だ。
死した後、地獄の刑吏となった少女が亡者を罰していくショートストーリー形式のホラーコメディ。刺殺された少女は、煉獄に送られるはずであった。しかし彼女は死者を振り分ける役目を持つニノス王に見いだされ、あの世で亡者を罰する刑吏の仕事を与えられる。新人として刑吏番号G103となった少女と、先輩刑吏が地獄に送られた受刑者に刑罰を与える様子が描かれる。ネットストーカーやいじめなど様々な悪行を行った受刑者たちが登場し、彼らに重い刑罰を刑史たちが与えていく因果応報譚である。
シニカルなホラー漫画を描かせたら当世第一の勢いを持つ作者。自身のTwitterで発表し、好評を博した人気作だ。本作ではネットストーカーを行った者には中傷文を舌に焼き印、いじめを主導した「陽キャ」には100年にわたり圧死と再生を繰り返すといった厳罰が与えられる。反面、娘を殺害され被告を殺した母親や、虐待などを苦に自殺した少女には情状酌量がなされるなど、ヒューマンドラマ的な展開もしばしば。ホラー作品で名高い作者であるが、その中でもサイコ系・実話怪談系・時事ネタなど作風は多彩を極める。また漫画のみならず、怪談の執筆や実話怪談イベントなどへの参加など活動の幅が広い。本作はそんな作者の手による、ブラックユーモアが光る因果応報系コメディ作品である。
童貞のまま死んでしまった魂が行く「童貞地獄」に送られた17歳男子の日々を描いたハーレム青春コメディ。交通事故で即死した17歳男子で童貞の間田道貞(まだみちさだ)。道貞が送られた童貞地獄とは、半人前とされる童貞の魂から卒業し、一人前の魂となるための場所だ。そこは昭和日本的な風景の中、女鬼たちが童貞に群がるハーレムであった。道貞はそこで出会った新米の鬼・燈本(ひのもと)オニコと童貞卒業を目指すのであった。
童貞地獄に堕とされた者は17歳のときの姿に戻り、美女の鬼たちと共学のノスタルジックな学校に通うこととなる。一人前になるために道貞らが童貞を卒業することで、童貞を奪った見習いの女鬼もレベルアップができるという仕組みだという。そんな学び舎で、美女の鬼たちが、あの手この手で道貞ら童貞を誘惑してくる本作。純真なオニコをはじめ、登場する美女鬼はいずれも魅力的だ。だが、一見単純明快なハーレムもののようでいて、実は本作は道貞が多数の誘惑に打ち勝ち、オニコへの思いを貫こうとする純愛ものである。同時に、童貞をこじらせてしまった道貞の精神的な成長物語でもあるといってよいだろう。タイトルが強烈で誤解を生みそうであるが、エロというよりは甘酸っぱい王道ラブコメである。