稀代の漫画原作者・梶原一騎の手掛けた作品5選40 Pt.

数々の漫画原作や、小説・映画のプロデュースを手がけた梶原一騎。その作品は『巨人の星』や『タイガーマスク』など誰もが知る名作ばかりだ。今回は梶原一騎原作の漫画から選び抜いた珠玉の5作品を紹介しよう。

本作の魅力は何といってもタイガーマスクの正体である「伊達直人」の生き様だ。彼は、悪役レスラーとしてデビューしながらも、孤児院にファイトマネーを寄付し続ける心優しい一面を持つ。正体を誰にも明かすことなく孤独に戦い続ける彼の姿はまさにヒーローそのものだ。最終回で伊達直人の身に訪れる衝撃の出来事も彼らしさが招いた結果といえるだろう。また、ジャイアント馬場やアントニオ猪木などの実在するプロレスラーを登場させることで、フィクションとノンフィクションが入り混じった奥深い作品になっているところにも注目したい。

本作は実話を基にした熱血サッカー漫画だ。1969年当時、高校総体・国体・高校選手権の三冠を達成した高校サッカー界の強豪「浦和市立南高等学校（現：さいたま市立浦和南高等学校）」をモデルとしている。さらに、主力メンバーは皆、当時活躍していた実在のサッカー選手がモデルになっているのもポイントである。主人公・玉井の、お調子者だが男気のあるキャラクター性が読者の心を掴んだ。次々と現れる強敵チームや、数々の心躍る必殺シュートなど見応えも抜群！ 後世のサッカー漫画『キャプテン翼』（作：高橋陽一）に先駆け、第一次サッカーブームを巻き起こした火付け役といえる。

実在する人物でありながら、「牛殺し」の異名など、常識離れした超人的な武勇伝を多く持つ空手家・大山倍達。彼の強さや素晴らしさといった魅力のすべてが、この作品に集約されているといっても過言ではない。物語の冒頭には「これは事実談であり、この男は実在する。」というフレーズがあり、「実話を基にしたノンフィクション作品」である事が強調されている。もちろん、多少の脚色はあるだろうが、大枠は大山倍達本人から語られた事実を基に構成されているのためだ。本作に刺激されて極真会館に入門した者は非常に多く、大山倍達と極真会館の知名度向上に一役買ったといえるだろう。

『巨人の星』といえば、飛雄馬が投げる魔球「大リーグボール」や、飛雄馬が幼少時につけていた「大リーガー養成ギブス」を思い浮かべる人が多いだろう。もちろん、これらの奇想天外な要素やライバル・花形満、左門豊作の存在は『巨人の星』の面白さを引き立てる重要な要素である。しかし、『巨人の星』の根底にある魅力は「父子の絆」にほかならない。息子を「巨人軍のエース」とするため、鬼となって飛雄馬を鍛える父・一徹。父に反抗しながらも、その思いに応えようとあがく息子・飛雄馬。時に親子二人三脚で、時に敵味方に分かれていがみ合う、父子の長きに渡る絆の歴史が本作に詰まっているのだ。

最大の見どころは矢吹丈のライバル・力石徹の存在だ。少年院での初対決から始まった二人の因縁。ボクシングで決着をつける事となるのだが、その試合は互いの命を削り合うほど凄まじく、ボクシング漫画史上に残る名勝負のひとつといえる。だが読者の心に深く刻まれるのは、勝負よりも試合後の展開かもしれない。なんと力石は、過酷な減量と試合のダメージで亡くなってしまうのである…。多くの読者に悲しみを与えた力石の死は、架空の人物ながらも実際に葬儀が行われる事態になった。社会現象になるほどの人気を集めた本作は、後続のボクシング漫画に、多大な影響を与えている。