動物を作り出す天界デザイナーたちの奮闘を描いた異色コメディ漫画。天界の「天地創造社」デザイン部は、動物たちのデザインを考える部署。クライアントは神様で、自分で動物を造ることが面倒になり下請けに出している。デザイン部の面々は、神様からの無茶ぶりともいえるオーダーに応え、新たな動物を生み出すべく日々奔走している。動物を「デザイン」という斬新な切り口から学べる上、登場した動物たちを紹介する「生きもの図鑑」も収録されている。
天地を創造したという万物の神が、動物のデザインと製造をOEM(相手先ブランド名委託生産)で下請け会社に出しているという設定だ。神様は面倒くさがりなようで、オーダーはかなり雑。たとえば、「すっごい高いところにある葉っぱを食べられる動物」といったざっくりした依頼のもと、デザイナーたちは仕事をスタート。見た目だけをデザインするわけではなく、地上で生きていけるように形態や生態にも工夫を重ねていく。読者は、彼らの苦闘を通じて、動物についての理解を自然に深めていけるだろう。もちろん、デザイナーにもそれぞれ個性やこだわりがあり、依頼と己のこだわりとの間で揺れる迷走ぶりが笑いを誘う。神様がオーダーした動物の多くは実在するだけに、ファンタジーとは思えないリアルさも楽しめる。
デザイナーやアートディレクターをとおして広告業界のリアルを描いたお仕事漫画。桜川茜は、やる気だけは人一倍の新人デザイナー。敏腕アートディレクターの宇津見映子の下で働くことになるが、彼女は、デザインコンペの勝率100%を誇る業界でも有名な人物。自分の表現にこだわる茜に対し、デザインとは、自己表現でもセンスでもなくロジックだと豪語する。茜は宇津美のやり方に反発を覚えるが、その仕事ぶりを通して広告デザインに必要なことを学んでいく。
本作で描かれているのは、グラフィックデザインによる広告製作の現場。宇津見は、クライアントの要望を理論的に組み立てデザインを作り上げる、きわめてロジカルな思考の持ち主だ。センスが全てと思われがちなデザイナーの仕事も、「自分が理解できない法則を、センスだ才能だと実態のない言葉に置き換え」ているにすぎないと言い放つ。デザイナーとしての個性にこだわる茜にも、「自己表現がしたいなら、芸術家でもやってりゃいいでしょ」と手厳しい。広告デザインのイロハが、宇津美のクールで突き抜けた仕事ぶりと、それに食らいつく茜の成長と共に描かれていく。清々しい読後感が得られると共に、デザインが生み出されるリアルな現場を知ることができる作品だ。
クリエイターたちの熱いぶつかり合いを描いた群像劇。元アートディレクター・かっぴーによる同名作品のリメイクだ。朝倉光一は、有名になることを夢見る若手デザイナー。力を入れて取り組んでいた案件から外され落胆し、故郷の横浜をふらりと訪れる。そこは、光一が、圧倒的な絵の才能を持った山岸エレンと出会った場所だった。デザイナーやコピーライター、モデルなど、あらゆる才能が集う広告業界で、エレンという天才を中心に、クリエイティブにかける人々の姿が描かれる。
本作の冒頭で、「天才になれなかった全ての人へ」という言葉が掲げられているように、デザインという仕事を語る上で外すことができない要素が「才能」だろう。主人公の光一は、美大を目指す高校生だった頃、圧倒的な才能を持つエレンと出会い、自分は天才ではないことを思い知らされた。それでも自らの可能性を信じ、がむしゃらにデザイナーを目指し続ける。そんな彼が辿りついた広告業界もまた、才能を競い合う場だった。原作漫画を手掛けたかっぴーは、大手広告代理店の勤務経験者。それだけに、本作で描かれるクリエイター同士のシビアなぶつかり合いは、デザインの仕事の厳しさと、それにかける人々の情熱をリアルに感じさせる。
漫画の装丁デザイナーの仕事現場を描くほのぼの4コマ漫画。人気漫画の装丁を多数手がける、天才デザイナーの冬坂律が率いる「冬坂事務所」。スタッフは律をはじめ女性ばかりで、新人男性デザイナーの斎藤麦はドキドキの日々。次々と舞い込む仕事をこなす先輩たちを手伝いながら、「レジまで持っていく魔法」をかける漫画の装丁のイロハを学んでいく。
本作に登場するのは、漫画雑誌やコミックスを手掛ける装丁デザイナーだ。「本を売りたい」漫画家や編集者の望みを叶えるべく、作品の「絵と世界をいかす」ことを第一としながら、より読者へアピールするものになるように腕をふるう。新連載のロゴデザインを手掛ける際は設定資料やネームを読み込み、長期連載の人気作などは、新たな魅力を引き出すため表紙イラストの構図の提案から行うこともある重要な仕事だ。冬坂事務所は、オールマイティにこなす律を筆頭に、少女漫画を愛し繊細でかわいいデザインを得意とする秋本ヒナや、ポップで力強いデザインセンスが光る二之宮千夏など凄腕揃い。時には徹夜も続くハードな仕事だが、彼女たちが大好きな漫画のために頑張る日常が描かれる。装丁デザイナーとして少しずつ成長していく麦の姿が微笑ましい。
一人前を目指す新人デザイナーの奮闘記。花井裕太は、大学卒業後に世界中を旅していた。帰国後、デザイン事務所「3.2.1.」に、デザイナーとしてなんとか入社を果たす。しかし、徹夜続きの過酷な労働環境に加え、月額85000円という薄給ぶり。歩合制のため、仕事を取れれば給料が増えると奮起するものの、したたかなクライアントを前に右往左往する。曲者揃いの先輩や同僚に囲まれて、半人前から抜け出すべく力を振り絞る。
本作では、なかなかに厳しい新人デザイナーの日常がつまびらかに描かれている。デザイン事務所「3.2.1.」には、映画のタイトルロゴからwebサイトやノベルティ商品のデザインまで、さまざまな仕事が舞い込む。主人公の裕太は、入社1年目の半人前。先輩のアシスタント業務をこなしながら仕事を覚えている。1年目の新人に任される業務は、クライアントから次々に舞い込む修正作業や機械的な反復作業が多く、また業務量が多いため徹夜することもしばしばだ。ようやく独り立ちしてクライアントを持っても、デザインになかなかOKが出ないことも珍しくない。お洒落なイメージがあるデザイン事務所で、トライ&エラーを泥臭く繰り返す裕太の奮闘が胸にしみる。