天才軍師・諸葛孔明が実は泣き虫だったという新解釈の三国志コミック。およそ1800年前の中国、後に「千人に一人の神算鬼謀の軍師」と呼ばれることになる諸葛孔明は、叔父や姉と共に暮らすひょろりとしたのっぽの少年だった。横暴にふるまう薪屋の息子にいじめられてもやり返せずぼろ泣きする泣き虫ぶりに姉もあきれ顔。しかし、泣いた後、孔明はある策を巡らせるため、薪屋の厨房に入り込んでいた。原作は酒見賢一による同名タイトルのベストセラー小説。
諸葛孔明といえば、中国の歴史書「三国志」に登場する希代の軍師。軍師といえば、孔明を思い浮かべる人も多いはずだ。「天下麻の如く乱れた凶悪無残の地獄に、天が平和を求めてつかわした一人の涼やかな忠烈義仁の男」ともいわれるクールで涼やかな英雄像が一般的。しかし、本作で描かれる孔明はちょっと違う。移民に対して横暴にふるまう薪屋の息子には、ちょっとの暴力で怯え号泣する泣き虫ぶりを披露。そうして怪しまれずに厨房に入り込むと、発火装置をしかけてなんと放火。さらには突然の火事に呆然とする薪屋に駆け寄り、涙ながらにお見舞いの言葉をかける厚顔ぶり。「作戦の神様」とも呼ばれる孔明らしいといえばらしいかもしれない。長じて軍師となってからも大人げない奇策が炸裂する。
「史記」に登場する美形軍師・張良を描く中国史ギャグ漫画。始皇帝の国・秦を倒した英雄・劉邦を助けたといわれる軍師・張良が主人公。隣国の秦によって滅ぼされた韓の国の貴族の子として生まれた張良は、秦の王を討つために仕える主君を求めて流浪の旅に出ることを決意。幼い頃から体が弱い張良だったが、ずば抜けた美貌と頭脳で戦乱の世を渡り歩いていく。劉邦をはじめ、同時代を戦い抜いた英雄・項羽も登場し、古代中国史を4コマで楽しく学べる一冊。
張良は、中国の歴史書「史記」に登場する英雄の一人。「史記」を書いた司馬遷によると、張良の肖像画はキレイな女性のようだったそうで、体も弱かったらしい。英雄らしからぬエピソードだが、本作でも張良の美形っぷりに部下はメロメロ。張良のどんな無理難題もきいてしまうのだ。そして、ずば抜けた頭脳の持ち主だった張良は、後に天才軍師・諸葛孔明と並び称される策士でもあり、長じて出会うことになる劉邦は張良のたてた作戦で多くの戦果をあげ、前漢王朝の始祖にまでのぼりつめた。ちなみに、張良は秦の始皇帝の暗殺計画も立案しており、その様子も本作で描かれている。希代の美形軍師の活躍ぶりが「史記」のエピソードをもとにコミカルなタッチで描かれ、いかにして戦乱の世を生き抜いていったかが学べる作品だ。
軍師を目指す女子高生を主人公にした三国志パロディ×学園コメディ。ごく普通の高校生・徳武操司(とくたけそうじ)の隣の席には、ちょっと変わった女子生徒が座っている。頭に謎の帽子、羽毛扇を手にした郭河奉子(かくかわほうこ)だ。どうやら軍師に憧れているらしい。君子危うきに近寄らずを心掛けて気にしないようにしていたけれど、奉子から「二人で天下を獲ろう!」と勝手に主君認定されてしまったことから、三国志風味の学園生活が始まった。
本作に登場するのは、軍師に憧れる女子高生・奉子であって軍師ではない。しかし、その出で立ちは、どこからどう見ても諸葛孔明のコスプレを連想させる。奉子は三国志を読んで以来、軍師という生き方に傾倒。軍師のように生きたいと仕えるべき「主君」を探していたのだ。そんなある日、テスト中にトイレに行きたくなった奉子は、計略を巡らせ操司を巻き込んで事なきを得る。それを許してくれた操司に、奉子は「ぬしこそがその主君! 仕えるに値する英傑ぞ!」とロックオン。勝手に臣下となってポンコツ軍師っぷりを発揮することになる。三国志をはじめとする中国古代史の英雄エピソードや、ちょっとためになる蘊蓄(うんちく)を織り交ぜながら展開する、三国志ファンなら爆笑必至のコメディ。
豊臣秀吉の軍師として知られる黒田官兵衛の半生をコメディタッチで追う4コマ漫画。1569年、織田信長がその勢力を伸ばし上洛を果たした頃、黒田官兵衛は、播磨(はりま)の国の大名・小寺(こでら)家の家老を務めていた。今孔明(いまこうめい)と呼ばれ、木下(豊臣)秀吉を支える知将・竹中半兵衛に憧れる官兵衛は、智略で敵に打ち勝つ日本一の軍師を目指していた。やがて、戦乱の世に躍り出ていった官兵衛は、半兵衛の後を継ぐ軍師として秀吉の天下とりを支えるまでになっていく。
黒田官兵衛は戦国時代に活躍した武将。大河ドラマの主人公としても取り上げられたことで、興味をもった人も多いだろう。希代の天才軍師と呼ばれる官兵衛だが、本作ではせっかちな人物として描かれ、才女であったといわれる妻・光(てる)にたしなめられている。そして、本作にはもう一人の軍師も登場。官兵衛が憧れる秀吉の軍師・竹中半兵衛だ。ただ、病弱という設定のため血を吐きながら話す一面も。官兵衛の才能を見抜いた半兵衛は自らの後を継ぐ逸材だと確信し、官兵衛にその道を示している。ちなみに本作は、戦国時代を描いた作者・重野なおきの代表作『信長の忍び』と同じ世界観で描かれた作品。羽柴秀吉や織田信長といったキャラクターの設定も共通しており、あわせて楽しめる。
独眼竜と恐れられた武将・伊達政宗と彼を支えた智将・片倉小十郎の固い絆を描いた歴史コミック。戦国時代末期、19歳の片倉小十郎は伊達家の嫡男・梵天丸(ぼんてんまる・後の伊達政宗)の傅役(もりやく)を務めていた。しかし、幼い頃に疱瘡(ほうそう)を患った梵天丸は、膿んで飛び出た右目を厭い塞ぎこんでおり、小十郎は梵天丸のためにその右目を抉りだすことを決意。主君に刃を向けるという小十郎の行動は周囲に大きな波紋を呼ぶが、二人をより強い絆で結ぶことになる。
織田信長が天下統一の野望の下に勢力を拡大させていた戦国末期、東北はいまだ群雄割拠の時代にあった。伊達政宗はそんな頃に、出羽国米沢に誕生した戦国武将。幼い頃に患った疱瘡のため、右目を失明しており、そんな彼の右目となるべく仕えたのが、片倉小十郎だ。片倉小十郎は忠義に厚い武将として知られており、本作でも織田信長からの誘いを蹴って政宗に生涯仕えることを宣言するエピソードが描かれている。ちなみに、信長が小十郎をヘッドハンティングしようとした最大の理由は、その軍師としての才覚。1581(天正9)年の政宗の初陣の際に、小十郎がみせた見事な采配が信長の耳にも入ったのだ。忠義に厚く、軍師としても最強。そんな小十郎の魅力が存分に描かれている作品だ。