ワンダンス

ワンダンス

吃音症で人と思うように話すことのできない少年の小谷花木は、同級生である湾田光莉との出会いをきっかけに、言葉を発さずとも自分を表現できるダンスに興味を示す。花木がダンス部に入部し、類いまれなる才能を発揮していく姿を描いた青春部活ストーリー。「アフタヌーン」2019年3月号から連載の作品。

正式名称
ワンダンス
ふりがな
わんだんす
作者
ジャンル
その他スポーツ
 
部活動
レーベル
アフタヌーンKC(講談社)
巻数
既刊11巻
関連商品
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あらすじ

ダンス部入部

高校1年生の小谷花木は、中学時代にダンスの授業で失敗した経験から、ダンスに極端な苦手意識を持っていた。そんな花木は、一凛(いちりん)高校に入学してすぐのある日、校内で踊っている女子、湾田光莉を見かける。その後の合同授業がきっかけで光莉と話すようになった花木は、光莉もまた人と話すのが得意ではなく、言葉を発さずとも自己表現ができるダンスに興味があることを知る。この会話の中で花木は、苦手意識を持ちつつも、自分が強くダンスに惹かれていることを自覚し、光莉と共にダンス部への入部を決意する。こうしてひとまず仮入部を果たした二人だったが、これまで個人で踊り続けてきた光莉に対し、初心者でさらに部内でも数少ない男子である花木は、周囲との実力差に気後れしてしまう。そこで花木は光莉に頼んで二人だけの練習を始める。そんな中、部長の宮尾恩は、ひそかに花木と光莉に注目していた。特に花木は耳が非常によく、踊る曲をよく理解したうえでうまくダンスで表現しようとする意志が感じられることに惹かれていた。そこで恩は、6月に行われるコンテストに向けて1年生の選抜オーディションを行い、あらためて花木たちの実力を把握しようとする。

ゆらとの練習

小谷花木湾田光莉は、1年生16名の中から、6月に行われるコンテストの選抜メンバーに選ばれた。しかし落選した1年生部員の仁上ゆらは、この結果に納得がいかずにいた。ゆらはダンス経験者で、1年生の中では自分が最も優れているダンサーだと自負していた。だが実際に選ばれたのは、花木たちのようなきれいに構成されたダンスが踊れているとは思えない四名だったからである。そこでゆらは、宮尾恩にあらためて選考基準を尋ねる。そしてゆらは、選考は誰かの独断で行われたものではなく、部長の恩や副部長の神野支岐、顧問を含めた3年生全員で話し合った結果であることを知る。そして恩から、上達したいのであれば、まずは好きなダンサーの間の取り方に注目するようにアドバイスを受ける。こうしてゆらはその方法を実践し始めるが、これまでライバル視していた光莉のダンスにばかり目が行くことに気づく。そこでゆらは花木に頼んで、花木と光莉が二人で行っているダンスレッスンに参加させてもらうことにする。そして三人いっしょに踊った動画を見ることで、自分に欠けていた部分と、光莉の優れている部分を理解し、無意識にずっと光莉にあこがれていたことを自覚する。

VS伊折

コンテストに向けて本格的な練習が始まったが、小谷花木は新たな問題に直面していた。現在一凛(いちりん)高校ダンス部には男子が二人しかいないのだが、もう一人の厳島伊折は、高度なダンステクニックを持っているにもかかわらず、幽霊部員状態だった。そのためコンテストにも参加しない予定なのだが、周囲の高校からは、一凛高校ダンス部の男子といえば伊折と認識されていた。そのため、今回花木が部内唯一の男子として出場することで、伊折とまちがえられて注目される可能性があった。花木はこれにプレッシャーを感じつつも練習を重ねていたが、そんな中、校内で偶然伊折に出会い、ダンスバトルに誘われる。伊折は宮尾恩から花木のことを聞いており、一度対戦して花木の実力を知っておきたいと思っていたのである。花木は驚きつつもその申し出に応じ、その代わりに自分が勝利したら部に復帰してほしいと伝える。こうしてあき教室で始まったダンスバトルは、序盤は花木が善戦したものの、終盤はギャラリーに注目されたいという焦りから思うように踊れず、伊折の勝利となる。しかし伊折はこの結果を受けて、さらにほかの新入部員にも興味を抱く。恩からは、面白い1年生とうまい1年生がいると聞いていたのだ。そして伊折は、まだ会ったことのない湾田光莉に関心を示す。

ダンスコンテスト

ダンスコンテスト当日。結局、厳島伊折は不参加となったが、観戦には訪れていた。小谷花木は緊張しつつも湾田光莉と最後の調整を始めるが、そこを通りがかった昌谷(さかや)高校の生徒が、不格好なダンスだと笑っているのを耳にする。これに腹を立てた花木は、昌谷高校にだけは負けないという気持ちで本番に臨むのだった。こうして始まった本番で、花木は光莉とのペアダンスをみごとに踊りきって一凛(いちりん)高校は一位に輝き、さらに光莉が個人賞を獲得する。そして、昌谷高校の生徒は花木たちを笑っていたのではなく、自分たちの振り付けが不格好であると話し合っていただけであることが判明。こうして誤解も解け、すべてがうまくいった大会かのように思えたが、花木は複雑な心境でいた。今大会でダンス部と光莉は認められたが、自分は思うような成果を出せなかったからである。そんな花木に、伊折はダンスバトルを勧める。女性ダンサーはあまりバトルを好まない傾向にあり、それは宮尾恩だけではなく、女子の多い一凛高校ダンス部においても同様だった。しかし伊折は、花木のような即興に強いタイプのダンサーには、バトルを通じてテクニックを伸ばすべきだと考えていたのだ。花木はこれがきっかけでバトルに関心を持つようになるが、大会後初の部活に向かうと、なぜか恩と伊折がダンスバトルを繰り広げていた。

高校対抗ダンスバトル予選

宮尾恩厳島伊折がダンスバトルをしていたのは、恩が勝てば伊折が現状の方針のまま部に復帰、逆に伊折が勝てば、今後部は方針を変えて、ダンスバトルコンテストにも出場するという賭けが行われていた。結果は恩の勝利となり、伊折は部に復帰することになる。これによって、小谷花木と伊折の距離は以前よりもさらに近づいていく。そんな夏のある日、花木と湾田光莉は伊折に誘われ、地元のダンサーが集まって練習している公園に向かう。そこで花木は、伊折と因縁のあるダンサーの壁谷楽と出会う。伊折は以前主にブレイキンを踊っていたが、楽との対戦に負けたことがきっかけで、自分にはハウスの方が合っていると考えて転向した経緯がある。しかし楽はこれを快く思わず、伊折がブレイキンから逃げたととらえていた。この誤解を解くために伊折は、今度楽が出場する高校対抗ダンスバトルに一凛(いちりん)高校ダンス部として出場し、決着をつけたいと考えていたのである。これまでの経緯を理解した花木は楽に、高校対抗ダンスバトルに出場することを宣言。最終的に一凛高校はダンス部としてではなく、希望者のみがエントリーするという形で参加を決めるのだった。そして当日は恩、伊折、花木、光莉の四人が参加し、全員無事に予選を突破する。

登場人物・キャラクター

小谷 花木 (こたに かぼく)

一凛(いちりん)高校1年4組に在籍する男子で、出席番号は14番。あだ名は「カボ」で、ダンス部に所属している。黒のマッシュショートヘアで、手足が長くスタイル抜群。ダンス映えする体型のため、非常に目立つ。しかし吃音症で、言葉を話すときは同じ音が連続してしまう「連発型」と、言葉そのものをうまく発せない「難発型」が混ざった症状を呈する。そのため、自分の名前を発音するのも苦手で、思うようにコミュニケーションが取れずに、周囲に合わせがちで内気な性格となった。しかし一方で、見る力や聞く力に長けており、中学時代に所属していたバスケットボール部でも、仲間の動きを予測したプレイに定評があった。中学時代のある日、体育の授業でダンスを踊り、このダンスの録画を見て自分のダンスの出来にショックを受け、いっしょに見ていたクラスメートたちに笑われたことがトラウマになっている。以来、ダンスに強い苦手意識を持っていたが、高校に入学してすぐの日、校内で踊っている湾田光莉の姿に釘付けとなる。そしてダンスなら、言葉を発しなくても自由に自己表現ができることに気づき、ダンス部に入部を決意する。苦手意識を克服して持ち前の長身と耳のよさ、高い理解力を生かして、その才能を開花させる。特に踊る楽曲の意図を認識する力に優れ、即興に強いダンサーとなる。

湾田 光莉 (わんだ ひかり)

一凛(いちりん)高校1年3組に在籍する女子で、ダンス部に所属している。胸の下まで伸ばした銀色のストレートロングヘアを姫カットにした、小柄でかわいらしい雰囲気を漂わせている。また犬っぽいところがあるため、「ワンちゃん」と呼ばれることもある。素直で心優しい性格で、周囲に左右されない、自分の価値観を持っている。人と話すのはあまり得意ではなく、スマートフォンのアプリやインターネットのSNSにも疎い。そのため、マイペースで不愛想だと誤解されてしまうこともある。ダンスを習った経験はないが踊るのが大好きで、ダンス部に入部する前から、校内で一人踊っていた。入学してすぐのある日、小谷花木に踊っている姿を目撃されたのをきっかけに花木と親しくなり、いっしょにダンス部に入部した。マイケル・ジャクソンのファンで、世界一のダンサーになりたいという夢を抱いている。入部当初はこの夢を誰にも話せずにいたが、6月に行われるコンテストを機に花木にこの夢を打ち明け、花木とペアのダンサーとして、世界的なダンスコンテスト「ワールド・オブ・ダンス」を目指すこととなる。考え事に集中していると、無意識のうちに奇妙な表情になってしまうことがあり、花木からはこの表情を驚かれている。以前空手を習っていたが、体力に自信があるわけではなく、握力は15キロと貧弱。字を書くのを得意としている。以前短期間だけレンタルDVDショップでアルバイトをしており、退職した現在も店長とは仲がいい。

宮尾 恩 (みやお おん)

一凛(いちりん)高校に通う3年生の女子。ダンス歴は10年で、ジャンルはポッピンをメインにしつつ、ロッキン、ヒップホップ、ワッキンとさまざまなジャンルを踊ることができる。ダンス部に所属しており、部長を務めている。ダンス部では顧問が未経験者であることから、指導者としての役目も担っているが、「部長」と呼ばれることは好きではない。また、不要な上下関係は取り払いたいという考えがあるため、下級生にも自分のことは「ちゃん」付けで呼ぶようにうながし、気さくに接している。胸の下まで伸ばした紫色のロングヘアで、小柄でかわいらしい女子。高校ダンス界では有名人で、高校1年生ながらダンススタジオのインストラクターを務めるほどの実力を持つ。しかしそれを鼻にかけることはなく、明るい性格に加えて精神的にも成熟していることから、部員たちから非常に慕われている。小学生の頃、Ne-Yoにあこがれてダンスを始め、バックダンサーやインストラクターの経験を経て、演出家を志すようになる。だが、ダンサーとしても強い情熱を持っており、入学してからずっと、指導者として部員全体の実力を底上げしたりしながら、いつか自分自身だけでなく、部としても大きな結果を残したいと願っていた。そんな高校3年生の春、湾田光莉や小谷花木といった有望な1年生が入部したことで、ダンスコンテストでの優勝を目指すようになる。以前は大阪府に住んでおり、当時から有名人だった。

厳島 伊折 (いつくしま いおり)

一凛(いちりん)高校に通う2年生の男子。ダンス歴は5年で、ジャンルはハウスがメインで、ハウスに転向する前はブレイキンを踊っていた。ダンス部に所属しているが、ダンス部がハウスを扱っていなかったため、2年生の夏に宮尾恩との賭けに負けて復帰するまでは幽霊部員状態だった。長めのふんわりとした前髪を刈り上げている。イケメンのためにつねに自信満々で、不遜な印象を持たれがちだが、実際はあまりコミュニケーション能力は高くなく、特に同世代とはうまく話せない。2年生になって再活動するまでは、部活動としてのダンスを軽視していた。そのため、部を見下しているととらえられ、一部の女子たちからは一方的に嫌われている。この経緯もあり、当初はダンス部への関心は低く、地元のダンサーが集まる練習場やクラブで踊るのが主だった。しかしある日恩から、新1年生には面白いダンサーとうまいダンサーがいると聞き、興味を示す。そして小谷花木に声を掛け、ダンスバトルをしたのをきっかけに再びダンス部とかかわるようになる。またその過程で、ダンス部が魅力的な場所であると考えを改めた。それからは特に花木に目をかけ、花木に向いているダンスや学外で練習できる場を教えるなど、親しくなっていく。趣味はFPSゲームや古いアニメ鑑賞で、甘いものが大好き。体が硬いことにコンプレックスを持っている。

仁上 ゆら (にがみ ゆら)

一凛(いちりん)高校に通う1年生の女子で、ダンス部に所属している。ふんわりとしたロングヘアをポニーテールにしている。ダンスに強い情熱を抱いており、非常にまじめにダンスに取り組んでいる。振り付けを覚えるのも早く、1年生の中で最も優れているダンサーは自分であると自負している。そのため、自分よりも劣っているダンサーを見下しがちで、全体的にきちんと構成されたダンスを良しとするあまり、周囲からは型にはまりすぎていると評されている。そのため1年生の春、コンテストに向けた部内オーディションも落選した。自分の至らなさを薄々自覚しつつも、具体的に何が欠けているのかわからずに悩んでいた。しかし宮尾恩のアドバイスをきっかけに、一方的にライバル視していた小谷花木や湾田光莉と打ち解け、以前よりも柔軟な考えを持ってダンスに取り組むようになる。

舘 葵 (たち あおい)

一凛(いちりん)高校に通う1年生の女子で、ダンス部に所属している。ショートヘアで、長身のために中性的な印象を与える。ダンス映えする容姿ながらダンスは初心者で、あまり自分に自信が持てずにいる。しかし1年生の春、コンテストに向けた部内オーディションで合格し、なぜ自分がほかの部員を差し置いて選ばれたのかわからずに悩んでいた。しかし宮尾恩のアドバイスと、いっしょに合格した湾田光莉のサポートもあり、次第にテクニックを磨いていく。

平井 匁 (ひらい もんめ)

一凛(いちりん)高校に通う2年生の女子で、ダンス部に所属している。ふんわりとしたロングヘアをツインテールにしている。釣り目で気の強い性格の持ち主で、2年生部員の中では最もうまいダンサーとして知られている。男女ペアのダンスに関心があるが、これまで男子部員は幽霊部員の厳島伊折しかいなかったため、実現できずにいた。しかし小谷花木が入部し、当初は花木のことを下手なダンサーだと思っていたが、めきめきテクニックを上達させる花木に注目するようになる。

神野 支岐 (かんの しき)

一凛(いちりん)高校に通う3年生の女子。ダンス部に所属しており、副部長を務めている。ロングウエーブヘアのポニーテールで、大人っぽくセクシーな雰囲気を漂わせている。穏やかで落ち着いた性格で、部長の宮尾恩を陰から支えている。顔立ちや雰囲気が小谷花木が中学時代に思いを寄せていた女性に似ているため、花木は蛍原にこのことをからかわれることがある。

壁谷 楽 (かべや がく)

鐘光(かねみつ)高校に通う男子で、ダンス部に所属している。ダンス歴は6年で、ジャンルはブレイキンがメイン。マッシュボブヘアで、つねにマスクをしている。小柄な体型で、さらに顔立ちや髪形が中性的な印象のため、女性とまちがえられることもある。あだ名は「壁」。高いダンステクニックを誇り、ブレイキンに強い愛情を抱いている。しかしダンスの世界では、ブレイキンはほかのジャンルに比べて軽視されがちなことに苛立っており、ほかのダンサーにはやや攻撃的に接する。そのため、ブレイキンを見下す相手には、ダンスバトルで必ず圧倒してやろうと考えている。しかし、この気持ちが強すぎるあまり、ブレイキン以外のダンサーは全員ブレイキンから逃げたダンサーであるという、極端な考えを持っている。特に厳島伊折とはダンス大会で対戦した際、自分が慕う人物の練(ねり)を小ばかにしたことから、一方的に敵視している。それでも表面上は伊折とふつうに接している。小谷花木とは彼が高校1年生の夏、伊折の紹介で知り合った。花木がまだ特定のジャンルのダンスを踊っていないこともあり、有望なダンサーとして気に入っている。スーパーマーケットでアルバイトしている。

蛍原 (ほとはら)

一凛(いちりん)高校1年4組に在籍する男子で、あだ名は「ホト」。バスケットボール部に所属している。小谷花木とは中学時代からの付き合いで仲がいい。ツーブロックヘアで、たれ目が特徴。やや口が悪く、悪乗りしがちなところもあるが、本質的には素直な性格の持ち主。そのため、出会った当初は険悪だった相手といつの間にか親しくなっていることがよくあり、特に異性とは険悪な関係を経て交際に至ることが多い。花木の吃音症についても理解しており、率先してこのことを周囲に伝え、花木の人間関係をサポートしてきた。その一方で、花木と自分はいつもいっしょの存在だという考えを持ち、花木離れできていないところがある。そのため、一凛高校入学後は、花木が中学時代いっしょに続けてきたバスケットボール部ではなく、ダンス部を選んだことにショックを受けていた。しばらくダンス部に否定的な意見を言ったり、バスケットボール部への入部をうながしたりしていた。しかし、ダンスという新たなことに挑戦する花木を見守るうちに考えを改め、応援するようになる。

書誌情報

ワンダンス 11巻 講談社〈アフタヌーンKC〉

第1巻

(2019-05-23発行、 978-4065154830)

第2巻

(2019-11-22発行、 978-4065174821)

第3巻

(2020-05-22発行、 978-4065194553)

第4巻

(2020-09-23発行、 978-4065207246)

第5巻

(2021-03-23発行、 978-4065226629)

第6巻

(2021-09-22発行、 978-4065248171)

第7巻

(2022-02-22発行、 978-4065268629)

第8巻

(2022-06-22発行、 978-4065278628)

第9巻

(2022-10-21発行、 978-4065294963)

第10巻

(2023-02-21発行、 978-4065305621)

第11巻

(2023-09-22発行、 978-4065319741)

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