暁に立つライオン

暁に立つライオン

殺人犯として手配された兄の消息を探すため、女子高生がトルコで事件の真相を追うサスペンスロマン。トルコの風景や風俗の描写も見所の1つで、「Betsucomi」2003年5月号から7月号にかけて掲載された。巻末には本作『暁に立つライオン』の現地取材の様子を漫画化した「トルコ取材雑記」も収録されている。

正式名称
暁に立つライオン
ふりがな
あかつきにたつらいおん
作者
ジャンル
推理・ミステリー
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概要・あらすじ

高校3年生の和泉えりなは、トルコで難民支援の仕事をする兄の和泉鷹士が殺人犯として国際手配されたとの知らせを受ける。無実を信じるえりなは、鷹士の上司であるシンクレア・ショーンの求めに応じてトルコへと向かう。現地で鷹士の恋人だったというシェリフェ・ミカ・アイドードゥや、鷹士の同僚のアルプ・アスラン・タネルを紹介されたえりなは、その矢先に突如何者かに命を狙われる。

身の危険を感じながら、次に訪れたサフランボルの町でも再び殺されそうになるが、危ういところをアルプに救われる。こうしてえりなはアルプとともに鷹士の行方を追い、その真相に迫っていく。

登場人物・キャラクター

和泉 えりな (いずみ えりな)

高校3年生の女子。セミロングの髪型をしている。早くに両親を亡くし、兄の和泉鷹士とともに叔父夫婦に引き取られた。鷹士を心から慕っており、幼い頃には鷹士と結婚したいと口にしていたほど。鷹士が殺人犯として追われるようになってからも彼の無実を信じ、濡れ衣を晴らすと決め、迷わずに鷹士のいるトルコへと向かう。鷹士の友人を名乗りながら、正体がはっきりしないアルプ・アスラン・タネルを不審に思うこともあったが、行動をともにするうちに、次第に信頼感を抱いていくようになる。 気が強く、身に危険を感じてもくじけない勇気や行動力を備えている。

アルプ・アスラン・タネル (あるぷあすらんたねる)

トルコ人の青年。NPO組織「ヒューリエット」の一番新しいメンバー。和泉えりなの兄・和泉鷹士とは親しい友人だった。カラ・ケチリという古い遊牧民の一族の血を引いている。もともとは単独で鷹士の行方を捜していたが、えりなの危機を救ったことをきっかけに、彼女と行動をともにするようになる。頼りがいのある男性ながら、その正体ははっきりとしない。 常に煙草を吸っているヘビースモーカー。

和泉 鷹士 (いずみ たかし)

和泉えりなのたった1人の兄。優しく穏やかな性格の青年で、両親の死後は叔父夫婦のもとで暮らしながら、えりなを見守ってきた。大手商社に入社して間もなく、突然難民支援の仕事をしたいと言い出して、トルコに行ってしまった。NPO組織「ヒューリエット」のメンバーとして活動していたが、同僚のミハイル・シムキンを殺した容疑で国際手配され、いまは消息不明になっている。 「ヒューリエット」で同僚だったシェリフェ・ミカ・アイドードゥとは恋人同士だった。

シンクレア・ショーン (しんくれあしょーん)

難民を支援するNPO組織「ヒューリエット」の創設以来のメンバーで代表者の青年。常に品の良さそうな身なりをしており、眼鏡をかけている。和泉鷹士が消息を絶つと、日本にいる妹の和泉えりなのもとを訪れ、鷹士を見つけるために協力して欲しいと熱心に要請する。アメリカで事業をしており、相当の資産家として知られている。

シェリフェ・ミカ・アイドードゥ (しぇりふぇみかあいどーどぅ)

日本人とトルコ人のハーフの若い女性。緩いウェーブのかったロングヘアの髪型をしている。NPO組織「ヒューリエット」のメンバーの1人で、メンバーの中では日本語を一番上手にしゃべれる。和泉えりなの兄・和泉鷹士の恋人だが、えりなはその存在を鷹士から聞かされていなかった。

オスカー・ランドリーガー (おすかーらんどりーがー)

ドイツ人の青年。和泉えりなの兄・和泉鷹士が所属するNPO組織「ヒューリエット」の創立以来のメンバー。「ヒューリエット」の本部が置かれたトルコのイスタンブールの屋敷で、アルプ・アスラン・タネルやシェリフェ・ミカ・アイドードゥとともに暮らしている。

ミハイル・シムキン (みはいるしむきん)

ロシア人の青年。年齢は29歳。和泉えりなの兄・和泉鷹士が所属するNPO組織「ヒューリエット」のメンバーだったが、何者かに殺され、遺体として発見された。同時期に行方不明になった鷹士が犯人の容疑をかけられており、国際手配されることとなった。

叔父 (おじ)

和泉えりなと和泉鷹士の叔父。幼くして両親を亡くしたえりなと鷹士を引き取って育ててきた。優しく思いやりのある男性。鷹士が突然仕事を辞めた時は、将来を案じたり、えりなのトルコ行きにも、心配を口にしていた。

叔母 (おば)

和泉えりなと和泉鷹士の叔母。幼くして両親を亡くしたえりなと鷹士を引き取って育ててきた、とても面倒見が良く、世話好きな女性。えりながトルコに出発する時は、過剰なほど心配して世話を焼いていた。この時に半ば強引に持たせた防犯ブザーが、のちにえりなの危機を救うことになる。

集団・組織

ヒューリエット

シンクレア・ショーンが設立したNPO組織。アフガニスタンやイラクからトルコへ流入してくる難民の支援を目的にしている。トルコ語で「自由」を意味する。イスタンブールに本部が置かれ、シンクレアが個人的に所有する広い屋敷を、本部兼メンバーの宿舎として提供している。本部のメンバーは誰もが語学に堪能で、日本語をはじめとした3~4か国語をしゃべることが可能。 和泉えりなの兄・和泉鷹士は2年前に活動に加わった。

カラ・ケチリ (からけちり)

トルコ北部のヨリュック村に住み、古い遊牧民の純粋な血を受け継ぐ一族。「黒い山羊の民」という意味で、NPO組織「ヒューリエット」のメンバーであるアルプ・アスラン・タネルはこの一族の出身。11世紀末に遊牧民のトルコ民族は、中央アジアからアナトリア地方へ入った。いくつかの一族は地方都市に住み着いて他の民族と混血せず、かつての遊牧民の純粋な血を、現代までほぼそのまま残した。 カラ・ケチリはこうした一族の1つで、とても珍しい例だといわれている。

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