あらすじ
第1巻
継母の百合から疎まれ嫌がらせを受け続けて来た秦千暁は、祖母・初江との二人暮らしを実現するために、大学に通いながらキャバクラ「蝶々」でアルバイトをしていた。その勤務中、千暁は初恋の人であり、ある日突然、音信不通になってしまった紺野快陽と再会する。快陽は水商売用のドレスを取り扱うアパレル会社「LOVE CREATURES」に勤務しており、ドレスのデザインのヒントを得ようと「蝶々」を訪れていたのだった。快陽は千暁の事を幼なじみだとは気づいていない様子だったが、一方の千暁は快陽と再会できた事を心から喜んでいた。だがそんな中、百合の嫌がらせはさらに加速し、同時に千暁の父親・道男や義弟・大倭までをも巧みに懐柔していく。百合の話を信じて疑わない道男の姿を見て絶望した千暁は、家を出て初江の家で二人暮らしをスタートさせる。
第2巻
秦千暁は祖母の初江との二人暮らしを始め、さらに紺野快陽とも再会を果たし、日々楽しい気分で過ごしていた。だがそんな中、初江が転倒して頭を強く打ち、亡くなってしまう。そして初江の葬儀日、快陽が現われて小さな頃にお世話になった初江の葬儀に参列させてほしいと申し出る。千暁はやっと自分の事を思い出してくれたと快陽に対し親しみを抱くが、一方の快陽は、身体の関係にしか興味がないと冷たく突き放すのだった。初江が死去した事もあり、心に深い傷を負った千暁は、初江の遺品の中から、快陽が初江に宛てた複数の手紙を見つける。
第3巻
初江と紺野快陽の手紙でのやりとりが気になった秦千暁だったが、快陽はまるで取りつく島もない。そんな中、百合の巧みな演技により、親族からさらに孤立を深めた千暁は自暴自棄になり、快陽に抱いてほしいと訴え、身体の関係を持つ。それ以来、千暁はますます快陽への恋心を募らせていくが、そんな他人に恋焦がれる様子を目の当たりにした大倭は、千暁を無理矢理犯してしまう。大倭に汚された記憶を忘れようと千暁は快陽に会いに行くが、そこで千暁は快陽が初江と手紙のやりとりをしていた真の理由を知る事となる。
登場人物・キャラクター
秦 千暁 (はた ちあき)
管理栄養士を目指し大学に通いながら、キャバクラ「蝶々」に勤務する女性。年齢は20歳。「蝶々」での源氏名は「アキ」。幼い頃に母親を病気で亡くし、父親の道男が再婚した事で、継母の百合と、百合の連れ子で血のつながらない弟・大倭ができた。百合からは非常に疎まれており、二人きりの時はいつも嫌味を言われ続けている。 そのせいで物事を深く考えない力や空気を読む力を身につけ、これにより奇しくもキャバクラ嬢として大成している。なお、「蝶々」で働いているのは大好きな祖母の初江と二人で暮らす費用を稼ぐためであり、キャバクラ嬢として人気になる事にはあまり興味はない。紺野快陽は幼なじみで初恋の相手だったが、6歳の頃に突然拒絶された過去がある。 以降は音信不通になってからも思い続けていた。千暁が勤務している「蝶々」に快陽が偶然にも客として訪れた事で再会。距離を縮めたいと接近し、身体の関係を持ってしまうも、快陽の内面に踏み込む事はできずにいる。
紺野 快陽 (こんの はやひ)
アパレル会社「LOVE CREATURES」に勤務する男性。年齢は25歳。長身の美男子で、何もしなくても目立つタイプ。自分について多く語らず、ミステリアスな雰囲気を漂わせている。秦千暁とは幼なじみで、「快くん」と呼ばれている。千暁が6歳の頃に一方的に彼女を拒絶し、そのまま音信不通になった過去がある。しかし、実は密かに千暁の祖母・初江と手紙のやりとりをしており、千暁が百合によって窮地に立たされた際には守ってあげてほしいと、千暁の状態を細かく知らされていた。 千暁とは上司の日村に連れて行かれたキャバクラ「蝶々」で再会したが、相変わらずつれない態度で、当初は他人のふりをしていた。その後は千暁との身体の関係は受け入れるものの、自身の内面に踏み込む事は許さない。
大倭 (やまと)
高校3年生の男子で、年齢は17歳。百合の連れ子で、義父・道男や義姉・秦千暁とは血のつながりはない。百合から溺愛されており、道男と同様に百合の巧妙な演技にだまされ、千暁が冷たく当たられている事は知らない。千暁の事を義姉ではなく一人の女性として見ており、のちに紺野快陽に恋する千暁に我慢できず、無理矢理犯すという暴挙に出る。
百合 (ゆり)
秦千暁の義母。千暁の父親・道男が再婚した相手で、大倭は実子だが、千暁とは血のつながりはない。見た目は美しいものの、内面は腹黒く打算的。大倭を溺愛し、彼が千暁に懐いている事も気に入らず、再婚した時から千暁には冷たく当たっていた。また、当時同居をしていた姑の初江に対し、都合のいい虚偽の理由をつけて家から追い出している。 道男や大倭の前では猫をかぶっており、千暁を悪者にするためであればウソ泣きも辞さない策略家。一度流産をしており、その原因を千暁のせいにしているが、実際は千暁には非はない。さらに、当時は妊娠中でありながら元夫との復縁を図って暗躍していた。千暁には早く家を出て行ってほしいものの、大学を卒業するまでは実家において利用したいと考えていた。
道男 (みちお)
秦千暁の父親で、妻と死別後に百合と再婚した。百合の連れ子である大倭とは血のつながりはない。千暁の事を愛していないわけではないものの、百合の巧妙な演技にすっかりだまされ、百合寄りの立場を取っている。千暁が自分の母親の初江と二人暮らしをしたがっているのは理解しているが、せめて大学を卒業するまでは実家でいっしょに暮らしてほしいと望んでいた。
初江 (はつえ)
道男の母親で、秦千暁にとっては祖母にあたる。百合と再婚するまでは千暁と道男と暮らしていたものの、百合に都合のいい虚偽の理由をつけられて家を追い出されてしまった。以降狭い家で一人暮らしをしており、初期の認知症の兆候が見られていた。千暁がキャバクラ「蝶々」で働き始めたのも、初江と二人暮らしをする資金と生活費を稼ぐためだった。 もうすぐ二人暮らしが実現するといったところで死去する。千暁には黙って紺野快陽と文通を続けており、快陽に対して千暁には言えなかった百合の真実などを打ち明け、何か起こった時には千暁の味方になってほしいと伝えていた。
水野 時人 (みずの ときと)
美容室のオーナーを務める男性。秦千暁が勤務するキャバクラ「蝶々」のヘアメイクも担当している。スレンダーな美男子で、美容師としての腕もいい事から、美容業界では名の知れた存在。千暁の紺野快陽に対する恋心も知っており、快く相談に乗っている。優しそうに見えるが実は意外に毒舌家。ちなみに恋愛対象は男。
ママ
キャバクラ「蝶々」の代表を務める和服姿の女性。しっとりとした上品な佇まいの美人だが、経営には非常にシビア。詳しい事情を聞いていないものの、秦千暁が家族に関して悩みを抱えている事に気づいており、優しい言葉をかけたり励ましたりと気にかけている。
征哉 (ゆきや)
かつて秦千暁の恋人だった美容師の男性。年齢は27歳。明るく社交的な性格で、客としてやって来た千暁を気に入り、アプローチの末に交際をスタートさせた。しかし千暁と義母・百合との関係の悪さに口を挟み、事情を知らないにもかかわらず、千暁に対し「もっと大人になれ」と説教をした事で、破局を迎える事となった。
日村 (ひむら)
アパレル会社「LOVE CREATURES」で営業本部長を務める男性。紺野快陽の上司にあたる。リサーチと趣味を兼ねてキャバクラで遊ぶ事が多く、秦千暁と快陽が再会するきっかけを作った人物でもある。初めて会うキャバクラ嬢には、「とにかく明るい日村です」と自己紹介する。
場所
蝶々 (ちょうちょう)
ネオン街にあるキャバクラで、秦千暁がアルバイトしている。ママが代表を務めている。キャバクラといっても落ち着いた雰囲気のお店で、客が女性キャストに触れる事は厳禁。
LOVE CREATURES (らぶくりえいちゃーず)
主に水商売の女性向けドレスの企画・生産・販売を行っているアパレル会社。日村が営業本部長を務め、その部下として紺野快陽が働いている。業界ではデザイン性ばかりに特化したドレスが多い中、「LOVE CREATURES」のドレスは見た目はもちろんの事、縫製や生地もしっかりしているとキャバクラ嬢のあいだで評価が高い。