あらすじ
第1巻
「初潮前の少女しか愛せない」と公言する鴨居つばめは、ある事情によって自衛官を退役し、新たな仕事を求めて職業安定所を訪れる。そして、白人の美幼女を愛でられるような仕事はないかと相談するが、当然ながらそんな仕事はあるわけもなく、すげなくあしらわれてしまう。職業安定所をあとにして、世知辛さを感じながら街の中を歩いていたつばめは、高梨家で家政婦を募集している貼り紙を発見する。かつて高梨家の庭で、高梨エレーナと遊んでいた高梨ミーシャを目撃していたつばめは、あわよくばミーシャに近づけるかもしれないと期待して、さっそく高梨康弘に応募の意思を伝える。しかし、家政婦を雇うことに反対するミーシャから、泥水を浴びせられてしまうものの、まったく動じることなく元自衛官ゆえの頑丈さとタフネスを見せつけ、康弘から即座に採用される。ミーシャへの愛を隠そうとしないつばめは、彼女からの妨害をものともせず、ミーシャがプレイする「YONAOSHIGUILD」を通じて友達になろうとしたり、いっしょにキャンプをして距離を縮めようとしたりと、さまざまな方法でアプローチを繰り返すが、そのたびに鬱陶しがられる。そんな中、つばめはミーシャが不登校であることを知り、康弘からの頼みもあって彼女に学校へ行くよう説得を試みる。ミーシャは、自分の見た目ばかりを気にする同級生たちに嫌気が差していたが、内面を知ってもらうには時間がかかるとつばめに諭され、相手を理解することから逃げていたことを悟る。そして、つばめの過干渉から逃れるという意味でも学校に行くべきだと思い至り、登校することを決意。翌日、学校に向かったミーシャは、やはり外見を気にされていることを苦々しく思っていたが、クラスメートの鷲崎みみかに声を掛けられ、彼女の屈託のない仕草に親近感を抱く。そんな中、学校でハムスターが増え過ぎていた問題をミーシャが解決したことで、クラスメートたちからも頼られる存在となる。努力を重ねれば内面も見てもらえることを知ったミーシャは、つばめに対しては相変わらず忌避感を持ちつつも、学校でもうまくやっていけるかもしれないと希望を抱くのだった。
第2巻
不登校を脱した高梨ミーシャは、なかよくなった鷲崎みみかを家に招くことになった。長らく引きこもっていたミーシャは、初めて自分の部屋で友達と遊べることを心待ちにしていたが、その一方で、鴨居つばめが要らぬ行動を起こすのではないかと心配していた。しかし、つばめはみみかを快く招き入れると、邪魔にならぬよう配慮しながら自作のアップルパイを振る舞う。ミーシャはつばめのさりげない行動に感心するが、みみかにつばめ自作の服を着せようとするなど、やはりつばめはつばめだと落胆する。だが、みみかはつばめの作った服に喜んで袖を通し、その姿を二人に賞賛される。さらに、髪の毛をミーシャに褒めてもらったり、つばめから特殊な眼鏡フレームを用意してもらったことで、みみかは今まで嫌いだった自分の外見を少しは好きになるのだった。ミーシャもまた、みみかとより一層関係が深まったことを喜び、コンプレックスだった自分の外見に少し誇りを持つようになる。その後、自分をライバル視する森川ゆいとおしゃれ対決をしたり、体育祭で久々に身体を動かしたりと、つばめの干渉をいなしながら学校生活を楽しんでいく。そんなある日、つばめの自衛官時代の上司であった鵜飼みどりが高梨家を訪れる。つばめに並ならぬ思いを抱くみどりは、つばめを自分の専属メイドにしようと目論んでいた。ミーシャもまた、彼女につばめを押し付けることで自分が解放されることを望み、利害が一致したと考えて協力する姿勢を見せる。そして、高梨康弘に断ることなくみどりをメイドとして雇い入れ、つばめにクビを言い渡す。すると、つばめは抵抗することなくそれを受け入れ、康弘にミーシャを責めないように懇願するメールを送ると、その場を立ち去ってしまう。ミーシャは、つばめの過干渉を受けなくなったことを喜ぶが、つばめを一方的に遠ざけたことへの罪悪感からもやもやした気持ちを抱える。さらに、みどりは料理が壊滅的で出前を取ることが多くなり、そのたびにつばめの作るごはんが恋しくなる。ここに至ってミーシャは、つばめに戻ってきてもらうよう求める。そして、みどりの提案により、一か月のあいだつばめとみどりの二人を高梨家で雇うことになるのだった。
第3巻
鴨居つばめと共に高梨家で働く鵜飼みどりのもとに、みどりの両親から家に帰るようにと連絡が入る。みどりの実家は資産家で、みどりは自衛官を辞めて以来、両親の所有するホテル、グレートコモラントベイサイドの最上階にあるスイートルームに泊まっていたという。高級ホテルに興味津々の高梨ミーシャは、つばめと共にグレートコモラントベイサイドへと向かう。二人は、スイートルームの豪華なベッドで一夜を過ごし、翌朝はブッフェで高級料理に舌鼓を打つ。一方みどりは、高梨家で働いて一か月が過ぎようとしていたため、次の職を探す準備に入っていた。そして後日、ミーシャが一抹の寂しさを覚える中、みどりは高梨家の家政婦の仕事を終え、去っていく。そのわずか1週間後、みどりは退職金で始めたFXで思いがけずに大金を手にし、高梨家のとなりに家を買って起業することにする。そして11月下旬、ミーシャは高梨康弘から、連休が取れたため、二人で温泉旅行に行こうと提案される。グレートコモラントベイサイドでの宿泊を経験していたミーシャは、素っ気ない態度を取るが、行き先がテレビで人気のカピバラといっしょに温泉に入られる甲斐原旅館と聞いて途端に乗り気になり、さらに二人きりということでつばめの干渉を避けられることを喜ぶ。しかし、二人が旅行に行くことをあらかじめ知っていたつばめは、彼らに先回りして中居として甲斐原旅館で働いていた。ミーシャは、結局つばめの干渉を受けることを不満に思いつつも、カピバラとの触れ合いを楽しんでいると、そこにパンダのような模様の動物が一瞬だけ姿を現す。部屋に戻ったミーシャは、康弘にいっしょにパンダを探しに行こうと誘うが、疲れていた康弘はそのまま眠ってしまう。ミーシャはやむなく一人でパンダのような模様の動物を探しに行くが、入り込んだ山の中で道に迷ってしまう。目を覚ました康弘は、夜になってもミーシャが戻ってこないことに気づき心配する。しかし、事情を知ったつばめはミーシャを連れ戻すと宣言し、一人で山の中へと赴くと、無事に彼女を救出する。ミーシャは、旅館の従業員や康弘に心配をかけたことを謝り、素直じゃないながらも、つばめに感謝の意を示すのだった。
第4巻
高梨ミーシャは、愛用するブランド「KUUMA・KUMA」のもととなった絵本を書いているアルトゥール・アナトリエヴィチ・フォーキンが近所でサイン会を開催していることを知り、鵜飼みどりを伴って会場の本屋へと足を運ぶ。そして、本にサインをもらう傍らで、用意しておいたロシア語のファンレターを渡そうとする。しかしアルトゥールは、ミーシャの顔を見るや否や、満面の笑みを浮かべ、手を握ってロシア語で話し掛けてくる。さらに、クーマの着ぐるみを着て本屋に潜入していた鴨居つばめがアルトゥールを不審者扱いして襲い掛かり、トラブルに発展してしまうも、ミーシャがつばめを叱ったことで事なきを得る。そしてサイン会からの帰り道、ファンレターを通じて交換したアルトゥールのメールアドレスから、高梨家にお邪魔したいとメールが届く。つばめはこれを快諾し、アルトゥールを自宅に招く。アルトゥールはそこで、自分こそがミーシャの実の父親であること、かつて高梨エレーナと恋人同士だったが、今は離れ離れになったこと、そして最近になって、自分とエレーナのあいだにミーシャを授かったことを知ったことを話し、いっしょにロシアに帰って家族で暮らさないかと提案する。そこに折り悪く高梨康弘が帰宅し、ミーシャと離れ離れになることを危惧しながらも、ミーシャが好きなようにするべきだと主張する。そしてアルトゥールは、帰国する3日後までに結論を出して欲しいとミーシャに告げ、その場をあとにする。康弘とミーシャはそれぞれの部屋に戻り、互いへの遠慮から言葉を交わすことができずにいた。そこでつばめは、康弘にミーシャがどうしたいかだけではなく、康弘自身の気持ちを伝えるべきだと主張し、ミーシャに、航空自衛官であったつばめの父親を慕っていたことと、彼と死別したことでしばらくのあいだ強い喪失感に苦しめられたことを語り、会えなくなることで、伝えたいことを伝えられなくなる後悔をして欲しくないと告げる。つばめの言葉を聞いたミーシャは、エレーナと康弘との思い出が詰まった今の家こそが自分の居るべき場所だと確信し、アルトゥールの申し出を断って日本で暮らす決意をする。こうして、ミーシャと康弘の絆はより一層深まるのだった。
第5巻
ある日、高梨ミーシャの家に、鵜飼みどりの年の離れた弟の鵜飼蒼次郎がみどりに連れられてやって来る。蒼次郎は、性格に難のあるみどりと違って良識的で、ミーシャを驚かせる。鴨居つばめも、高梨康弘やアルトゥール・アナトリエヴィチ・フォーキン以外の男性がミーシャに近づくことを警戒していたが、彼が特にミーシャを意識するような行動を見せないことから無害であると認定し、彼にミーシャといっしょに遊ぶようにお願いする。蒼次郎とミーシャは、対戦ゲームをプレイして交流を深めるが、その中で蒼次郎はハウスクリーニングサービス「みどりん」の公式twitterにつばめへの思いが延々とつづられているのをミーシャに見せて、みどりのつばめに対する思慕がうまくいって欲しいと願っていることを明かす。これを聞いたミーシャは、つばめがみどりと付き合えば、つばめからあまり絡まれなくなるかもしれないと考えるが、以前それに似たようなことを実行しようとして失敗したことを思い出し、二人がうまくいくとは思えないことを正直に話す。その一方で、姉思いの蒼次郎の力になりたいと考え、つばめとみどりを交えて遊園地に遊びに行こうと提案する。そして翌日、四人はそれぞれの思いを胸に遊園地へと向かい、メリーゴーランドなどのアトラクションを楽しみ、楽しいひとときを過ごす。しかし、蒼次郎はみどりとつばめを接近させようとするあまり、つばめの気持ちを考えていなかったことをみどりに注意され、つばめに謝罪する。そして、よくも悪くも目立つところの多い姉のみどりが、家督を継ぐのにふさわしいのではないかと打ち明ける。その話を聞いたつばめは、まだ若い蒼次郎は自分を平凡と決めつける前に自信を持ってできることを探すべきだと諭す。その言葉に蒼次郎は、自分が焦っていたことを自覚し、風変りなみどりも、周囲の人たちからはしっかり人柄を認められていることに安心する。そして、相手の長所を見抜いて的確なアドバイスをするつばめの洞察力と優しさに感銘を受けつつ、帰路に就くのだった。
第6巻
季節は春を迎え、高梨ミーシャたちは3年生に進級する。ミーシャは春休みの最終日に、高梨康弘や鷲崎みみか、森川ゆいを伴い、鴨居つばめと鵜飼みどりが主宰する進級祝いのお花見を楽しむ。そして、新学期を迎えたミーシャのクラスに、転校生の鶏内ひよこがやって来る。ひよこは、控えめな性格で自分に自信が持てず、学校の中でもつねにパンダの着ぐるみを身につけて生活していた。その特異な外見に、クラスメートたちはひよこに対して好奇の視線を向けてしまうが、かつてその見た目にコンプレックスを抱いていたミーシャは、いっしょに帰ろうと誘ったり、互いに好きなゲームの話をするなど、さまざまな手段でひよことなかよくなろうと行動を起こし、彼女の心を開いていく。そんなある日、ミーシャはひよこから、動画配信サイト「NyaaTube」についての話題を振られる。そして、「HIYOKIN」と呼ばれる配信者について一通り聞かされ、帰宅後に調べてみると、ひよこ本人がHIYOKINとして動画を配信していることを知る。早速、つばめやみどりと共に、ひよこが配信した動画をリアルタイムで視聴するが、その内容はすぐに本人だと発覚するような、セキュリティの甘いものだった。ひよこのプライバシーの侵害を懸念する三人は即座にひよこの家に向かい、彼女に配信した動画を削除し、素性がばれないように再アップロードすることを勧める。そしてひよこは、動画に加工を施して再アップロードを行うが、加工の仕方があまりにも極端で、シュールな動画に変貌してしまう。その結果、皮肉にも動画としての面白さも増したことで、HIYOKINの人気が急上昇する。ひよことすっかりなかよくなったミーシャは、かねてからやりたかった飼育小屋の当番の日を迎え、浮かれながら学校へと向かう。そして、いっしょに当番を行うみみかやひよこと共に小屋の掃除を行い、動物たちの世話を三人でやり遂げる。ひよこは、パンダの着ぐるみを脱ぐほどの自信を持てないままだったが、友達が増えて学校生活が楽しくなったことを喜ぶ一方で、優しくリーダーシップにも優れるミーシャに、尊敬のまなざしを向けるのだった。
メディアミックス
TVアニメ
2018年10月5日から3月24日にかけて、本作『うちのメイドがウザすぎる!』のTVアニメ版『うちのメイドがウザすぎる!』が、TOKYO MX、サンテレビ、KBS京都、BS11、AT-X、TVQ九州放送で放送された。制作は動画工房、監督は太田雅彦、脚本・シリーズ構成はあおしまたかしが担当した。鴨居つばめ役を沼倉愛美、高梨ミーシャ役を白石晴香、高梨康弘を役加瀬康之が演じている。ストーリーは基本的に原作を踏襲しているが、最終回はアニメのオリジナルストーリーになっており、作者である中村カンコは「本当に素晴らしい最終回だった」と、あとがきの中で絶賛した。また、最終回で語られた要素は、原作漫画にもある程度反映されている。
関連作品
漫画
本作『うちのメイドがウザすぎる!』の公式アンソロジーコミックが、2018年11月12日に刊行された。中村カンコ以外の漫画家やイラストレーターたちによる、鴨居つばめや高梨ミーシャおよび周囲の人々の交流が描かれた内容の漫画が掲載されている。カバーイラストは中村本人が担当しており、漫画は私屋カヲルやクール教信者、水口尚樹、木村光博などが手掛けている。
登場人物・キャラクター
鴨居 つばめ
高梨康弘や高梨ミーシャの家で、家政婦を務めている女性。年齢は28歳。父親は航空自衛官で、彼を強く敬愛していたが、小学生の時に事故で亡くなる。美人ながら、それに不釣り合いな逞しい身体つきで、料理や家事、サバイバル技術に長け、忍耐力や身体能力も非常に高い。また、かわいらしい服を仕立てたり、動物を意のままにあやつるなど、多種多様な特技を持つ。極めてポジティブな性格で、美しい幼女をこよなく愛すると公言してはばからず、ミーシャに並みならぬ愛情を抱いているが、愛情表現がことごとく重いうえデリカシーがなく、時として変態に近い行為を平然と行うことから、ミーシャからは嫌がられ「ウザすぎる!」と一蹴されている。一方、ミーシャの同級生である鷲崎みみかや森川ゆいにも好意を向けており、みみかたちからも完璧な立ち振る舞いから尊敬されている。中でも、ミーシャとのオシャレ対決の中で知り合ったゆいからは、衣服やアクセサリーのコーディネートが巧みなことから「師匠」と呼び慕われるようになる。鵜飼みどりからは愛情を注がれており、彼女に対して苦手意識を持っているものの、人柄自体は認めている。かつては、つばめの父親と同様に航空自衛官に所属していたが、あるきっかけで右目が失明してしまい、眼帯を付けるようになる。そして、それを機に自衛官を退職し、職業安定所に白人の美幼女を愛でられるような仕事を紹介して欲しいと求めるが、受け入れられなかった。しかし、ミーシャが暮らす高梨家が家政婦を募集する看板を掲げていたことから、即座に応募して、持ち前のタフネスぶりを気に入った康弘に採用される。それからは、ミーシャに鬱陶しがられながらもなかよくしようと日々奮闘し、母親を失ったことで引きこもりがちだった彼女をよりよい方向へと導いている。なお、失明した理由に関しては秘密にしており、ミーシャから直接尋ねられた時も、三択のクイズを出題する形ではぐらかした。
高梨 ミーシャ
ロシア人の女子小学生。年齢は8歳。高梨エレーナの娘で、高梨康弘の義理の娘にあたる。KUUMA・KUMAブランドの服や筆記用具を好み、その原作者であるアルトゥール・アナトリエヴィチ・フォーキンを尊敬して... 関連ページ:高梨 ミーシャ
高梨 康弘
高梨ミーシャの義理の父親。システムエンジニアの職に就いており、部下や同僚とは良好な関係を築いている。妻だった高梨エレーナとは既に死別しているが、今でも彼女を深く愛しており、彼女の忘れ形見であるミーシャを心から大事にしている。しかし、ミーシャからは嫌われてこそいないものの、「パパ」ではなく「ヤスヒロ」と呼ばれているため、そのことを寂しく思っている。一方で、鴨居つばめに恐れをなしたミーシャから助けを求められた時に、頼られた嬉しさから寿司を取ろうとするなど、かまってもらえた時の喜びようがやや極端なところがある。多忙のため満足にミーシャにかまってあげることができず、家政婦を雇っても、エレーナとの思い出がある家に他人を招き入れることを嫌うミーシャに追い出され、彼女が引きこもりになっても有効な対策を取れずにいた。そんな中、ミーシャの容姿に一目惚れしたつばめを雇うと、家事を完全に任せられるようになり、ミーシャ自身は迷惑がりつつも、彼女の引きこもりが改善され、心が休まる時間が増えるようになる。高梨康弘自身も、家に帰ってからつばめが作る料理を食べることが楽しみの一つとなり、ミーシャにいい影響を与えたことも含めて彼女に感謝している。また連休が取れると、人気の甲斐原旅館への旅行にミーシャを連れて行こうとするなど、より彼女となかよくなれるように努力している。その甲斐原旅館で、不注意からミーシャが行方不明になった時は大いに取り乱すが、ミーシャを追って中居として潜入していたつばめから、必ず連れ戻してくると宣言され、彼女を信じて送り出す。そして、二人が無事帰還したことを喜ぶものの、心配をかけたミーシャを初めて叱った。ミーシャの実の父親であるアルトゥール・アナトリエヴィチ・フォーキンが家に訪れ、ミーシャにいっしょにロシアに帰ろうと持ち掛けた時は、ミーシャの気持ちを考えるあまり、彼女の好きにすればいいとしか言えず、自分の気持ちを伝えられていないことをつばめから指摘される。しかし、ミーシャが康弘や今の家を大事に思うことからアルトゥールの申し出を断ったことを知ると、より彼女を大切に思うようになる。
クマゴロー
オスのフェレット。高梨ミーシャのペットで、高梨エレーナを失って悲しみに暮れるミーシャに高梨康弘がプレゼントし、それ以来は一番仲のいい友達となった。ミーシャが家に引きこもっていたあいだ、彼女の唯一の話し相手になっていた。さらに会話を重ねることで、ミーシャがクマゴロー以外の動物とも自在に意思を交わす能力を身につけた。鴨居つばめが家政婦として雇われてからは、彼女を追い出す作戦の片棒を担がされるが、何一つうまくいかずに終わる。つばめの圧の強さに恐れおののくことが多いが、ほかの動物と異なり彼女の言いなりになることはなく、つばめからもミーシャに対する忠誠心を高く評価されている。その一方で、注射を過剰に恐れており、ミーシャからいっしょに病院に行くように誘われただけで家から脱走したうえ、居合わせた森川ゆいなに家まで連れ去られたこともある。ミーシャが学校からハムスターの「ダイキチ」「チューキチ」「ショーキチ」を連れてきた時は、会うなりすぐに意気投合し、いっしょに寝たり、彼らの兄貴分として行動を共にすることが多くなる。また、ミーシャと康弘が甲斐原旅館に旅行に出かけた時は、旅行に行くことをつばめに知られたくないミーシャの意向で、ハムスターたちと共に鵜飼みどりの家に預けられる。世話自体はしっかりとされていたが、彼女のマゾヒスティックな願望を叶えるための奇行の数々を見せられ、そのたびに怯えていた。
高梨 エレーナ
高梨ミーシャの母親にあたるロシア人の女性。夫の高梨康弘からは「エーリヤ」と呼ばれている。顔立ちはミーシャによく似ており、彼女から非常に懐かれていた。つねに明るくポジティブな性格で、家族の清涼剤的な存在。かつて美術大学に通っており、恋人のアルトゥール・アナトリエヴィチ・フォーキンと共に絵画の勉強に励んでいた。しかし、卒業を間近に控えて、アルトゥールに就職の話を振ると、彼からお金持ちの実家の世話になりつつ、絵本を出版するために就職をしないことを告げられる。これにより、人生設計に関する大きな隔たりを感じて、卒業と同時に彼の前から去ってしまう。その後、アルトゥールとのあいだに子供が授かったことを知るが、それを彼に告げることなく、一人でミーシャを出産する。それからは日本に渡り、しばらくのあいだデザイナーの仕事をしながら女手一人でミーシャを育てていたが、やがて康弘と出会って恋に落ち、彼と結婚してミーシャと共に高梨家に入った。それからは、家の中にアトリエを構えてデザイナーの仕事に精を出しつつ、ミーシャと康弘に囲まれて幸せな日々を過ごしていた。しかしある時、病に侵され、そのまま帰らぬ人となる。高梨エレーナの死は、残された二人に強い衝撃と悲しみを与え、ミーシャは心を閉ざし、家に引きこもる原因となってしまう。なお、「ミーシャ」と呼ばれる子熊のキャラクターがお気に入りで、アルトゥールと別れて一人でミーシャを出産した時に、その名前を娘に付けた。
鷲崎 みみか
高梨ミーシャや森川ゆいと同じ小学校に通う女子。年齢は8歳。家に二人の弟がおり、彼らの面倒を見ているうちに現実的かつしっかりとした性格になった。自分の容姿があまり好きではなく、特に三つ編みにしないとすぐに跳ねてしまう髪の毛や、かけている眼鏡がかわいくないことがコンプレックスになっている。また運動が苦手で、体育祭を休むために病気になりたいと願うほど。ミーシャと同様に動物が大好きで、2年生の時は彼女と同じ飼育係を担当している。ミーシャが不登校に陥っていた際、学校からのプリントや気遣うメッセージを残していたことから、密かに感謝されていた。そして、鴨居つばめの影響で久々に登校したミーシャに声を掛け、彼女の学校に対する不安を和らげる。さらに、ミーシャがフェレットのクマゴローを飼っていることを知ると、それに強い興味を示し、ミーシャからの懇願もあって家に遊びに行き、彼女とのひと時を楽しむと共に、つばめのお手製の服やかわいらしいフレームの眼鏡をもらい、自分の容姿に少し自信を持てるようになる。いっしょに遊んだことをきっかけに、ミーシャからつばめとは別の意味で引きこもり癖を解消した立役者の一人として認識され、やがて彼女の一番の親友となり、「わしわし」のあだ名で呼ばれるようになる。内心では「みみか」と呼んで欲しいと思っているが、それを口にする機会に恵まれず、やがて名前で呼ばれることをあきらめる。つばめに対しては、幼女に対する並みならぬ思い入れを知らないこともあって、ゆいと共にあこがれの感情を向けている。
先生
高梨ミーシャや鷲崎みみかのクラスの担任教師を務めている女性。おっとりとした雰囲気を漂わせ、つねに柔らかな笑顔を浮かべている。基本的には優しい性格ながら、森川ゆいが調子に乗った時は、笑顔のままお説教をして彼女を委縮させたこともある。また「将来の夢」を題材とした作文の発表会で、ミーシャが小学2年生にしては現実的な人生設計を発表すると、感心すると共に彼女の前途が心配になり、のちに高梨康弘に相談するべきかと考える。一方で、後先を考えず行動することがあり、1学期の終業式でオスとメスのハムスターをいっしょのケージに入れたところ、たくさんの子供が生まれ、ミーシャから呆れられた。ミーシャたちが3年生に進級してからも引き続き担任を務め、新学期を迎えた際に、転入生の鶏内ひよこを紹介する。
森川 ゆい
高梨ミーシャや鷲崎みみかと同じ小学校に通う女子。年齢は8歳。語尾に「っしょ」と付ける癖がある。ギャル系を自称しており、おしゃれに興味を持っている。時おり自撮りの写真をソーシャルネットワークサービスを通じてアップロードすることがある。その際、「ローアングルおじさん」と呼ばれる変質者にネット上で付きまとわれていたことがあったが、森川ゆい自身が知らないあいだに逮捕された。女子小学生を対象にしたファッション雑誌である「じぇえっす!」を愛読しており、情報収集に関しては余念がない。自分の容姿に自信を持っているため、友人から褒められると簡単に調子に乗ってしまう。このことから、友人たちからは「脊髄で考えて生きている」と揶揄(やゆ)されることもある。また、強気でおてんばなところがあり、自分よりかわいいと思われているミーシャに対して対抗心を抱き、ことあるごとに勝負を挑むため、彼女からはめんどくさいと思われている。しかし、妹の森川ゆいながミーシャの飼っているクマゴローを勝手に持ち帰った時は、ゆいなを叱ったうえでミーシャにそのことをしっかりと謝るなど、根は素直で筋の通った性格をしている。本心ではミーシャとなかよくしたいと思っている節があり、みみかや鴨居つばめからはそのことを微笑ましく思われている。つばめからは、おしゃれについて幾度か指南を受けたことがあり、それが効果的だったことから彼女のことを師匠のように慕うようになる。
森川 ゆいな
森川ゆいの妹。幼稚園に通っている。年齢は5歳。姉によく似た容姿で、ゆいが二人の写真をソーシャルネットワークサービスにアップロードしている。また、おしゃれに詳しい姉を尊敬しており、森川ゆいな自身も、幼いながら服装に気を遣っている。一方で、姉に劣らぬおてんばな性格で、ゆいを振り回している。ある日、高梨ミーシャの家の前を通りがかった時に、病院に行きたくないという理由で脱走を図ったクマゴローを偶然発見すると、おしゃれなマフラーとカン違いして家へと連れ去る。のちに、それをミーシャや鴨居つばめたちに知られて、返すように求められるが、よほど気に入ったのか頑として応じようとしなかった。しかし、つばめに連れ去るそぶりを見せられると怯えてしまい、さらに同じことをクマゴローにしようとしていたことを思い知る。そして、ゆいからも返すよう言い聞かせられ、ミーシャたちに謝罪する。
鵜飼 みどり
鴨居つばめの自衛官時代の上司だった女性。年齢は33歳。筋金入りのマゾヒストで、苦境に陥ったり、叱責や罵倒を受けることに快感を得ている。感情が高ぶると、関西弁でしゃべるという癖がある。実家は大金持ちの実業家で、グレートコモラントベイサイドなど、いくつものホテルを経営している。かつては、みどりの両親から後継者になるように育てられ、恵まれた境遇や決められた生き方を要求されることに、次第に息苦しさを感じるようになる。それに伴い性格を拗(こじ)らせていき、自分は病院で取り違えられた存在で、本当はこの家の子ではないと思い込むことで、なんとか心の均衡を保ってきた。それでも、あとを継がねばならないというプレッシャーからは解放されずにいたが、のちに弟の鵜飼蒼次郎が生まれると、鵜飼みどりがあとを継ぐことを避けたがっていることを知るみどりの両親から、蒼次郎を後継者として育てることを宣言され、自由に生きるように勧められる。そして被虐趣味から、できるだけ辛そうな仕事を探し、やがて自衛隊の警備班に就職する。就職後は、警備犬を育成する役割を任じられ、流星号などの訓練を行っていた。そこにつばめが配属され、犬たちが次々と彼女の強者のオーラに従属される姿を目の当たりにし、みどりもたちまちつばめに魅了されてしまう。それからは、つばめに気に入られようと何かにつけて彼女の気を引こうとするが、幼女しか興味のないつばめからは冷たくあしらわれる。その対応が逆にマゾヒズムを刺激し、結果としてますますつばめを気に入り、より充実した生活を送るようになった。しかし、つばめが失明をきっかけに自衛官を辞めたことで張り合いがなくなり、やがてあとを追うように自衛官を退職してしまう。それからは、職を探しながらつばめや高梨ミーシャに付きまとっていたが、やがて意図せず大金を得たことで、みどりんという自前のハウスクリーニングサービスを立ち上げる。ミーシャからは、出会った当初は不信感を抱かれていたものの、つばめより懐かれるようになる。その度合いは、時にはつばめが軽い嫉妬心を抱くほどだが、その一方でつばめからは、二人の相性のよさやミーシャの信頼がみどり自身の人柄のよさからくるものであることを認められており、苦手意識を持たれながらも、一目置かれている。なお、自衛官を退職したあとも、つばめからは「二尉」と呼ばれている。
流星号
自衛隊で飼育されているオスのシェパード。プライドが高く、当初は誰の命令も聞かなかったが、新たに警備犬管理班に着任した鵜飼みどりが辛抱強く訓練を続けた結果、彼女の言うことだけは聞くようになる。そして、頑なだった性格も次第に軟化し、みどりに懐くようになった。しかし、新たに着任した鴨居つばめを見るや否や、その凄まじい威圧感に即座に服従の意思を見せてしまう。その光景はみどりにも強い衝撃を与えるが、それは流星号がつばめ以外の人間に即座に懐いたことがショックだった訳ではなく、プライドの高い流星号を一瞬で手懐けたつばめの手腕によるものだった。
みどりの両親
鵜飼みどりと鵜飼蒼次郎の両親。グレートコモラントベイサイドなど、複数のホテルを所有している実業家で、ゆくゆくはみどりに財産の所有権と経営権を譲渡し、彼女にホテルを経営してもらおうと考えていた。それに伴い、みどりが何一つ不自由することなく育て上げるが、そのことが逆にみどりに息苦しさを感じさせるようになり、自らを追い込む性格を形成させてしまう。そして、それがエスカレートした結果、とうとうみどりが家族と血のつながりがないと妄想するようになり、それは年の離れた蒼次郎が生まれても改善されることはなかった。そのため、彼女に経営権を譲渡するのは、家のためにも彼女のためにもならないと判断し、蒼次郎にあとを継がせて、みどりが自由に生きるように取り計らう。ただし、その後もみどりを放り出したわけではなく、彼女が自衛官を辞めたあとは、しばらくのあいだグレートコモラントベイサイドの最上階にあるスイートルームに住まわせるなど、依然として彼女には甘く接している。
パンダのような模様の動物
甲斐原旅館付近の裏山に生息している動物の子供。甲斐原旅館の敷地内にある「ふれあい広場」でカピバラと遊んでいた高梨ミーシャの前に、突如として姿を現す。全身の色が白く、手足と目の周りが黒いことから、ミーシャからはパンダの仲間と認識され、カピバラ以上に彼女の興味を引く。そして、パンダのような模様の動物をスマートフォンで撮影したいという考えを持つようになり、一人で遠くに行かないようにという高梨康弘の言いつけを破って、裏山に出かけて遭難するきっかけを作ってしまう。気まぐれながら物怖じしない性格で、ミーシャに見つかっても特に敵意や恐れを抱かせることはなく、お腹が空いた彼女のために川を泳いでいる魚を取って差し出すようなことも行う。しかし、よく見ると身体の細部がパンダとは異なり、やがてヒグマの子供であることが発覚する。さらに、タイミングが悪いことに母親の熊が現れ、ミーシャを絶体絶命の窮地に陥れる。
流雲号
鵜飼みどりが家で飼っているオスのシェパード。流星号の兄にあたる。外見は流星号にとてもよく似ており、額に十字型の傷が刻まれていることまで共通している。かつては警察犬として活動していたが、引退を機にみどりに引き取られる。しかし、流星号と異なりみどりのいうことをいっさい聞かず、許可を出すまでエサを食べてはいけないと言い含められても、それを完全に無視するほど。その一方で、鴨居つばめには凄まじい威圧感を感じ、初対面の彼女の命令をおとなしく聞き、みどりがつばめに惚れ直すきっかけとなった。高梨ミーシャがクマゴローを脱走させてしまい、途方に暮れていたところ、クマゴローの匂いを嗅がされ、つばめから居場所を突き止めるよう命令される。途中で、ミーシャの家を嗅ぎ当ててしまうというトラブルに見舞われるものの、最終的にはクマゴローの居場所をみごとにつき止めた。なお、みどりの嗜好から散歩をする際は彼女の首に首輪をつけ、それを引いて歩いている。
アルトゥール・アナトリエヴィチ・フォーキン
絵本作家として活動しているロシア人の男性。クーマを主人公とした絵本を何冊も書き上げており、やがて絵本に登場するキャラクターを題材としたブランドであるKUUMA・KUMAを立ち上げる。ロシアのみならず日本でも高い人気を誇り、サイン会ではアルトゥール・アナトリエヴィチ・フォーキンを一目見ようと長蛇の列ができるほど。高梨ミーシャもファンの一人で、高梨家の近くの本屋でサイン会を開いた時は迷わず参加した。ミーシャはもちろん、高梨康弘も知らなかったことだが、実はミーシャの本当の父親であり、高梨エレーナとは同じ美術学校に通っていた恋人同士で、彼女からは「アルトゥールシュカ」の愛称で呼ばれていた。しかし卒業を間近に控えたある日、就職する意思を持たず、絵本を書くために金持ちの実家に頼ることを堂々と宣言したことで、人生観に大きな隔たりを感じたエレーナがアルトゥールのもとを去った。その時すでに、エレーナのお腹の中にはミーシャがいたが、エレーナからは最後まで打ち明けられず、ミーシャの存在を知ったのはエレーナが病没してからのことだった。日本を訪れたのは、ミーシャに会えるかもしれないという希望を抱いてのことで、偶然ながらサイン会で彼女と出会うと、自分がミーシャの父親であることと、その証としてエレーナとの馴れ初めを話し、共にロシアでいっしょに暮らすよう誘った。康弘と同様、純粋にミーシャの幸せを望んでおり、ロシアに招こうとしたのも、彼女が日本での生活になじめないのではないかと危惧してのことである。そのため、ミーシャが自ら康弘と共に日本で暮らすことを選ぶと、食い下がることなく素直にその選択を尊重する。そして、ミーシャが日本でも楽しく暮らせていることに安堵すると改めて彼女の幸せを願いつつ、時には遊びに来て欲しいと告げてロシアへと帰って行った。また、帰り際にアルトゥールの妻とのあいだにアルトゥールにとっては二人目の娘であり、ミーシャの腹違いの妹「アルヴィナ」が生まれていたことを伝える。
アルトゥールの妻
アルトゥール・アナトリエヴィチ・フォーキンのサイン会で、彼の傍らに控えていたロシア人らしき女性。日本語が堪能で、サイン会では通訳を務めていた。ボディガードの役割も兼ねており、アルトゥールが高梨ミーシャの家を訪れた際も同行し、鴨居つばめが早とちりからアルトゥールを家から追い出そうとした時は、彼の前に立ちふさがり、その立ち振る舞いからつばめですら手を出すことを躊躇するほどの威圧感を見せた。その正体は、アルトゥールが高梨エレーナと別れてからしばらくしたあとに出会った結婚相手で、4年前にミーシャの腹違いの妹「アルヴィナ」を出産している。アルトゥールと外見年齢がだいぶ離れていたことや、彼女がボーイッシュな外見を持つために女性と思われていなかったことから、この事実を知ったミーシャやつばめ、みどりから大いに驚かれることとなった。
クーマ
アルトゥール・アナトリエヴィチ・フォーキンが執筆している絵本シリーズの主人公を務めているキャラクター。KUUMA・KUMAブランドのマスコットキャラクターでもある。ロシアに住んでいる気弱な性格のオスの子熊で、日本のアニメを好んでいる。「ゴロクマー」と呼ばれる友達のオコジョから、日本で仕入れたアニメのグッズを高額で売り付けられることが多く、ほかにも借金の連帯保証人にされることから、つねに金欠状態。見た目に反してシビアな設定から子供向けとは言い難く、クーマの登場する絵本に初めて触れた鵜飼みどりからは、人気が出る理由がわからないと難色を示される。しかし、高梨ミーシャはこれに対して、弱者が搾取されつつも、めげずに日々を生き抜くクーマの姿が判官贔屓(びいき)の日本人に受けていると主張し、事実アルトゥールのサイン会では、クーマを支えてあげたいと母性本能をあらわにする女性や、あくどいゴロクマーも内心ではクーマの純粋さに救われているに違いないと感動するファンなどで賑わいを見せた。なお、ミーシャはクーマの登場する絵本を読むことで借金の恐ろしさを知り、これを見た鴨居つばめは、ある種の反面教師として機能していることを実感する。
つばめの父親
鴨居つばめの父親。航空自衛官をしていた。明るく前向きな性格で、身体を鍛えることを生き甲斐としており、これは娘のつばめにも受け継がれる。つばめに兵士のフィギュアをプレゼントするなど変わったところがあり、これがかわいらしいものや幼い女の子を好むつばめの人格を形成する原因となった。また、拙い語彙力で空を飛ぶことを心底楽しむ様子を語っては、幼いつばめを喜ばせていた。つばめが成長する前に事故で他界し、残された彼女に強い喪失感をもたらすと共に、もっとたくさん話をしておけばよかったと後悔の念を植え付けてしまう。しかし、つばめが大人になっても身体を鍛えることを続けて航空自衛官になるなど、その生きざまは彼女の人生に大きな影響を与えた。つばめがつばめの父親を慕う気持ちは現在に至ってもまったく変わっておらず、仮に血がつながっていなくても、彼を大好きだったに違いないと言い切るほど。
鵜飼 蒼次郎
鵜飼みどりの年の離れた弟。高校2年生の男子。年齢は18歳。被害妄想を拗らせたみどりからは、勝手に義理の弟と認識されているが、非常に仲がよく、鵜飼蒼次郎自身も自由奔放なみどりを尊敬している。よくも悪くもエキセントリックな言動が目立つみどりとは対照的に、良識のある一面を見せる。一方で顔立ちはみどりに似ており、感情が高ぶると関西弁をしゃべるなど、共通点も多い。富豪の子息として何不自由なく過ごし、みどりの両親から後継者に指名されたことで、将来はホテル経営をはじめとした実業家になることが確実視されているが、親に決められたレールを歩んでいるだけで、姉のように自分の道を進む勇気も自信もないことにコンプレックスを抱いている。また、物事をはっきり伝えることが苦手で、それが原因で高梨ミーシャから不審人物ではないかと疑われたこともある。しかし、誤解が解けてからは一転して懐かれるようになり、彼女からは「じろりん」と呼ばれるようになる。みどりが鴨居つばめに思慕の情を向けていることを知っており、なんとか思いを成就してあげたいと願っている。そのことをミーシャに相談した末に、みどりとつばめを含めた四人で遊園地に遊びに行くことになる。そして、みどりに対してつばめと二人きりになれるように取り計らうが、気遣いを感謝されつつも、つばめの気持ちをないがしろにしたことを咎められ、彼女に謝るよう求められる。そのことから、自らに他者を思いやる気持ちが欠けていると考えて余計に落ち込んでしまうが、つばめからは、むしろほかに対する気遣いができる点がみどりにそっくりだと言われ、彼女の言葉に感銘を受ける。そして、自分が平凡な人間で、主体性が不足していることに悩んでいると打ち明けると、若い身でありながら、ふつうであることを理解できることは、将来人の上に立つにあたって大きな武器になると諭される。この言葉で自分に自信が持てるようになり、つばめに尊敬の念を抱きつつ、みどりが彼女に思いを寄せる理由を改めて理解する。
たぬき
高梨ミーシャが夢の中で出会った性別不明の狸。夢の中で鴨居つばめや高梨康弘、クラスメートたちとお花見をしていたミーシャが、お弁当のおにぎりを食べていたところに突如として現れ、彼女の手からおにぎりをかっさらって去っていった。ミーシャからは、お弁当を取られたことはいいとしても、結果的に餌付けを行ったことで自然に悪影響が及ばないかを心配されるが、つばめたちから離れた場所で再会し、お弁当をくれたお礼と称して高梨エレーナに変身する。そして、ミーシャと楽しいひと時を過ごしつつ、山でいっしょに暮らさないかと誘う。しかしミーシャからは、山にはwi-fiが通っておらず、つばめもいないので美味しいごはんが食べられないからと断られた。夢から覚めたミーシャは、後日改めて現実のお花見を楽しむが、その先で夢の中のたぬきと瓜二つの容姿を持ったたぬきと出会う。当然ながら、そのたぬきがエレーナに変身することはなく、お弁当を取られることもなかったが、ミーシャに夢の中での出来事を思い出させると共に、自分や康弘の中でエレーナが息づいていることを実感させる。
鶏内 ひよこ
北海道出身の小学生女子。3年生に進級した高梨ミーシャのクラスに転入してきた。小柄な体型で、身長はミーシャより一回り小さい。極端なまでの恥ずかしがり屋で、学校の中ではつねにパンダの着ぐるみを身につけている。また、自己紹介の際に家族も自分と同じように着ぐるみを着ていると語るが、それが本当かどうかは定かではない。その性格ゆえに、他者とかかわることを恐れているが、人嫌いというわけではなく、クラスメートを楽しませようとユニークな話をしようとしたり、怖い話をした時は森川ゆいを慰めようとするなど、本来は心優しい性格の持ち主。不器用で感情表現がうまくできず、さらに着ぐるみを着ていることから奇異な目で見られることも少なくなく、羞恥心と周囲に溶け込みたい願望のジレンマに悩まされている。しかし、かつて外見ばかりを見られていたことで悩んでいたミーシャから積極的に声を掛けられ、やがて好きなゲームなどの話題で盛り上がるようになり、次第に心を開いていく。そして、動画配信サイトであるNyaaTyubeに、「HIYOKIN」の名前で自作の動画をアップロードしていることをほのめかす。その動画には、すぐに素性が判明するような要素がそこかしこに見え隠れしており、悪意のあるユーザーにより迷惑を被る可能性を危惧した鴨居つばめとミーシャに注意を受け、その後はプライバシー保護に配慮した動画投稿を行うよう心がける。そしてその結果、シュールかつコミカルな内容の演出に成功し、密かに人気を博するようになる。これをきっかけとしてミーシャとなかよくなり、のちに彼女や鷲崎みみかと共に、1週間のあいだ飼育小屋の当番を任される。飼育小屋の掃除や動物たちの世話をしている時も着ぐるみを脱がなかったため、動物たちは、突然大型動物がやってきたと認識し、一時パニック状態に陥る。しかし、ミーシャがあいだに入ったことで自然と騒動が収まり、動物たちと心通わせるミーシャに敬意を表した。当番を続けるうちに1匹のインコとなかよくなるが、つい家に連れ帰って体調を崩す原因を作ってしまう。つばめとミーシャの適切な処置で事なきを得るものの、鶏内ひよこ自身の軽率さを恥じることとなる。しかし、つばめのフォローもあって塞ぎ込む事態にはならず、ミーシャをより尊敬するようになり、もっとなかよくなりたいと願うようになる。
おじいちゃん
鶏内ひよこの祖父。ひよこと同じ家で暮らしている。ひよこを溺愛しており、彼女が登下校をする時は車で送迎する。彼女がNyaaTubeに配信するための動画を撮影している時も、せき込んでいるという理由で構わず姿を現すなど、心配性な性格をしている。また、思い付きから遺言状の書き方を学ぼうと考えたり、老眼ゆえにwebサイトの閲覧が自由にできないことを面白おかしくほのめかしたりと、コミカルな一面も見られる。動画撮影中に姿を現すと、決まってコントのような会話が繰り広げられることから、ひよこが「HIYOKIN」の名前で投稿している動画では、鴨居つばめや高梨ミーシャから面白い人と認識されている。
佐々木 よし子
高梨ミーシャや高梨康弘の家の近所に住んでいる中年の女性。息子は既に独り立ちしており、夫も単身赴任で滅多に家に帰ってこないため、現在はほぼ一人暮らしの状態が続いている。近所の主婦仲間と噂話をすることが大好きで、鴨居つばめの奇行や彼女と康弘の関係を邪推することもある。一人暮らしが続くことでヒマを持て余すようになり、ソーシャルネットワークサービスのスタンプを自作するようになる。その内容は、佐々木よし子の自画像がさまざまなセリフをしゃべるという簡素なもので、知名度はなく誰もダウンロードしていなかった。しかし、偶然それを発見した鵜飼みどりが知った顔だという理由でダウンロードを始めると、自分の作ったスタンプを喜んでくれている人がいると自信を持つ。そして、次々にリリースすることで、やがてシリーズ化を果たす。購入者は相変わらずみどり一人だったが、スタンプを見てもらうこと自体に充実感を覚え、やがて実生活にもいい影響を及ぼすようになる。
集団・組織
みどりん
自衛官を辞めた鵜飼みどりが経営するハウスクリーニングサービス会社。みどりの実家は資産家だが、立ち上げの資金は、自衛官の退職金をFXで増やしたもので、家の援助はいっさい受けていない。みどり自身のマゾヒスティックな性格から、孤独死を迎えた人の部屋や、いわゆる「事故物件」と呼ばれるいわくつきの家など、ふつうの人が忌避するような場所を好んで掃除することから、一定の需要に恵まれている。公式Twitterが存在するが、その内容は鴨居つばめに対する思いをつづったもので、閲覧者からは不信感や同情などを集める結果にしかなっていない。社員はみどり一人しかおらず、清掃はすべて彼女自身が行っている。また掃除の際は、高梨ミーシャの家でメイドの短期アルバイトをしていた頃の制服をそのまま使用している。
場所
グレートコモラントベイサイド
みどりの両親が経営しているホテルの一つ。鴨居つばめや高梨ミーシャが住む街の駅とつながる高層ビルの中にあり、豪華な客室や高級料理の数々が楽しめるビュッフェのほか、プラネタリウムや水族館など、さまざまな施設が内包されている。住民たちからは超高級ホテルとしてあこがれの目を向けられ、康弘も、みどりの両親が経営していることを知って驚愕した。また、みどりが自衛官を退職すると、みどりの両親の言いつけで最上階のスイートルームを使用するようになるが、彼女は部屋の備品にいっさい手をつけず、持ち込んだテントの中で暮らしている。しかし、みどりが利用していることをミーシャが知るや否や、つばめといっしょにスイートルームを満喫した。
甲斐原旅館
北海道で最近オープンした温泉旅館。温泉の中でカピバラと交流できるという触れ込みで、主に若い世代から人気がある。高梨ミーシャからも、いつか泊まってみたい旅館の一つとして挙げられていたが、つねに予約が殺到しているため、中々泊まることができない。しかし、連休を取れた高梨康弘が、会社の仲間たちと協力して予約を取ることに成功し、ミーシャと共に旅行で訪れることとなる。ミーシャが、鴨居つばめにあとを追われないよう、旅行は内緒にしていたが、結局つばめにバレてしまい、中居として潜入されてしまう。また、実際は温泉の中でカピバラと触れ合えるわけではなく、マジックミラーごしに覗けるだけで、ミーシャからはガッカリされる。ミーシャが遊んでいた裏庭にパンダのような模様の動物が姿を現すなど、裏山と隣接していることから地元の動物が時おり迷い込むことがある。
その他キーワード
ムリーナ
「じぇえっす!」の付録として用いられているマスコットキャラクター。小腸の内側に無数に存在するという「柔突起」に命が宿ることで生まれた妖精という設定ながら、見た目が致命的にかわいくないため、「じぇえっす!」の愛読者たちからの受けはよくない。森川ゆいが「じぇえっす!」を買う際には、必ずムリーナが付録としてついてくるため、彼女を悩ませている。ただ捨てるのももったいないと、どんなものでもかわいくアレンジする鴨居つばめになんとかできないかと相談するが、結局うまくいかなかった。しかし、やや特殊な美意識を持つ高梨ミーシャに気に入られたことで、少額で売り渡すことを決意。これによって、ミーシャはムリーナを愛でることができ、ゆいもムリーナを損なく手放せたため、互いに得をする結果となった。
KUUMA・KUMA
ロシア発祥のブランドの一つ。アルトゥール・アナトリエヴィチ・フォーキンが手掛けた絵本の主人公であるクーマがマスコットキャラクターとして使われており、彼の姿を模した文房具や、プリントされている衣料品などが売られている。日本でも人気があり、高梨ミーシャも関連商品を好んで集めている。のちに原作者のアルトゥールがミーシャの実父であることが判明するが、彼女はそのことにこだわることなく使い続けている。
YONAOSHIGUILD
高梨ミーシャがプレイしているオンラインゲームの一つ。架空の都市を舞台に、街に迷惑をかけている人々を攻撃することで浄化させ、治安を守ることが主な目的となっている。武器は魔法のステッキから拳銃まで幅広く、銃で人の頭を撃ち抜いても死ぬことはなく、何故か容姿の整った人間に姿を変えてしまう。オンラインゲームらしく、プレイヤーキャラの外見や服装を自由に設定できるが、ミーシャは自分が小学生だと思われたくないことから、中年男性のアバターを使用している。鴨居つばめは、このゲームを通じてミーシャとなかよくなろうと目論み、即座にミーシャが操作するキャラクターを発見し、交流に成功する。しかし協力プレイの最中に、ミーシャからもつばめが操作しているキャラクターであることをつき止められ、なかよくなる計画は失敗に終わる。
じぇえっす!
森川ゆいが愛読しているファッション雑誌。主に女子小学生を対象としており、一部からはカリスマギャル誌として重宝されている。子供向けの衣服や小物などを紹介しているほか、実際に小学生をモデルにしたスナップ写真が掲載されることもある。ゆいは、「じぇえっす!」のモデルになることを目標にしており、おしゃれをして取材の場所によく赴いている。しかし、自身を差し置いて高梨ミーシャをモデルにしたうえに、ミーシャがこれを断ったことで屈辱を感じ、彼女におしゃれ勝負を挑む一因となる。勝負の最中に鴨居つばめからゆいに足りない部分を補われて、ゆいも晴れて「じぇえっす!」のモデルになることに成功する。これ以降、ゆいはつばめを「師匠」と呼んで慕うようになる。なお、小学生が買うにしては値段が高いため、ゆいは友達と回し読みをしているが、ゆいが買った時に限って不人気のマスコットであるムリーナが付いてきてしまうことが、彼女の悩みの種になっている。
NyaaTube
インターネット上で流行っている、有名な動画配信サイトの一つ。無料で動画をアップロードしたり、アップロードされた動画を閲覧することができる。高梨ミーシャからは、テレビゲームと違って実際に操作することができないという理由から敬遠されていた。しかし、鶏内ひよこが「HIYOKIN」の名前で自撮りの動画をアップロードしていることを知ると、彼女が出ている動画を、鴨居つばめと共に見るようになる。