あらすじ
第1巻
月島明日海の家族は、念願叶って新築タワーマンション「キャナルタワー羽浪」に入居。明日海は中学生時代に壮絶ないじめを受けたことがトラウマになり、人付き合いを苦手としていたが、娘の月島杏のために周囲とうまく付き合っていくことを決意する。そんなある日、明日海は入居説明会で出会った楠紗都に誘われ、同じマンションに住む、春から自然の森ようちえんに入園予定の子供を持つ丸山朋代、桜庭心菜を紹介される。さらに別の幼稚園ではあるものの、同じ年の子供がいることから、間宮孔美子もあいさつに訪れる。だが孔美子は、中学時代に明日海をいじめていた主犯格であり、明日海は激しく動揺してしまう。紗都と朋代のフォローもあり、その場はおさまったものの、その日から明日海は心菜に心ない噂を流され、新たな交友関係を築けなくなってしまう。そんな中、紗都は孔美子と親睦を深め、人気者の朋代はいつも忙しく、明日海の孤独はますます深まっていく。後日、桜庭玲央と桜庭理央の誕生会が開かれることになり、明日海は周囲と交流を持つため、勇気を出して参加することにする。
第2巻
誕生会の途中で、月島杏のアレルギーが発症するトラブルが起こったため、月島明日海は桜庭心菜の心証を悪くしてしまう。しかし、このまま落ち込んでいても仕方がないと、明日海はまず間宮孔美子と二人で話をする機会を設け、過去は過去として割り切り、自分は幸せになると宣言。そんな明日海に対して孔美子は表面上は平静を装いながらも、内心で不快感をあらわにする。そして本格的に自然の森ようちえんでの保育がスタートし、明日海は係決めで頭を悩ませることになる。そんな中、園では周囲との親睦を兼ねた親子遠足が催され、以前心菜が流した噂によって周囲から警戒されている明日海は、不本意ながらも孔美子、心菜、楠紗都のグループに入ることになってしまう。親同士の確執とは別に杏と間宮陽美紀はすっかりなかよくなり、杏は美しい孔美子にも懐くようになる。そして明日海が係の仕事をしている最中、孔美子は杏をこっそり誘い出し、人気のない場所に連れ出す。
登場人物・キャラクター
月島 明日海 (つきしま あすみ)
新築タワーマンション「キャナルタワー羽浪」のフォレストタワーに家族と共に住んでいる女性。夫は月島航で、一人娘の月島杏がいる。職業はフリーランスのイラストレーターで、現在は育児と両立すべく、仕事量をセーブしている。中学生時代に酷いいじめに遭った経験から、人付き合いを苦手としており、月島明日海なりにコミュニケーションを取るための努力をしているが、空回りをすることも多い。あこがれだったタワーマンションに引っ越したものの、奇しくもいじめの主犯格であった間宮孔美子と再会してしまう。現在はお互いに家庭を持ったために子供同士や保護者同士の付き合いもあり、葛藤しながらも過去のトラウマと対峙することになる。
間宮 孔美子 (まみや くみこ)
新築タワーマンション「キャナルタワー羽浪」のコアタワーの最上階に家族と共に住んでいる女性。年齢は36歳で、一人娘の間宮陽美紀がいる。主婦業のほかにメイクやファッションを指導する「イメージコンサルタント」という肩書を持ち、メディアにたびたび登場している。仕事のためにキャナルタワー羽浪内に部屋をもう一室購入し、サロンとして活用している。いわゆる「セレブ」で、華やかな見た目と誰もがうらやむ高級ブランドに囲まれた裕福な生活を送っている。中学生時代は月島明日海に酷いいじめを行っていた主犯格で、最後まで謝罪することはなかった。明日海に再会してからは、明日海の周辺を探ったり、何かと理由をつけてはかかわり合いを持とうとするなど、不審な行動を取っている。いつも穏やかな笑顔を浮かべているものの、決して他人に本心を見せず、言葉巧みに楠紗都や桜庭心菜を味方につけているが、二人を信用しているわけではない。心菜からは「クミちゃん」と呼ばれている。
丸山 朋代 (まるやま ともよ)
新築タワーマンション「キャナルタワー羽浪」のフォレストタワーに家族と共に住んでいる専業主婦。年齢は36歳で、一人娘の丸山芽依がいる。丸山朋代自身が長年アトピー体質で悩んだこともあり、刺激の少ない自然派の衣食を好む。食事やおやつも手作りで、間宮孔美子が渡した高級ブランド菓子を躊躇なくごみ箱に捨てるなど、非常にこだわりが強い。決して目立つタイプではないものの、おおらかで穏やかな性格から、自然と人が集まってくる人気者。月島杏のアレルギーについての話も真剣に聞き、アドバイスを送るなど、月島明日海に対して友好的に接する。明日海からはもっと親しくなりたいと思われているが、ほかの人との付き合いもあるために自然と距離が生じている。周囲の人間関係はうまくいっているが、大手外資系保険会社に勤務している夫との関係は不仲。
楠 紗都 (くすのき さと)
新築タワーマンション「キャナルタワー羽浪」のベイタワーに家族と共に住んでいる専業主婦。年齢は42歳。楠蓮、楠岳の男の子二人と長女を持つ三児の母親で、出産前はライターとして出版社に勤務していた。夫はその時に知り合ったモデルの楠英治で、有名人であることを内心自慢に思っている。情報通でサバサバとした姉御肌タイプだが、デリカシーに欠けるところがあり、思ったことを遠慮なく口にする。また噂好きで口が軽く、聞いてもいないことをペラペラと話すことから、英治と蓮からは疎まれている。間宮孔美子から親しくなりたいと言われ、メイクやファッションなどの指導を受けるなど密な交際をしていることもあり、何かトラブルが起こると孔美子の味方をする。孔美子から利用されることも多いが、楠紗都自身はまったく気づいていない。月島明日海に対しては最初は友好的だったが、とにかく物事を孔美子中心に考えているため、結果的に攻撃的になっている。自分が一番孔美子と親しいと自負しており、何かと孔美子と仲がいいとアピールしている桜庭心菜を面白くなく感じている。
桜庭 心菜 (さくらば ここな)
新築タワーマンション「キャナルタワー羽浪」のベイタワーの最上階に家族と共に住んでいる女性。双子の桜庭玲央、桜庭理央の母親。月島明日海の周囲の母親の中では最年少で、見た目も言動も若々しい。思ったことはすぐに口に出すタイプで、後先を考えない短絡的な快楽主義者。明日海が学生時代に受けたいじめの主犯格だった間宮孔美子を避けていることに関しても、何年も前のことを引きずってネチネチしつこいと否定的な感情を抱き、何かにつけて明日海を格下に見ている。現在の住居は義理の両親に買ってもらっており、玲央と理央の育児や家事も義母に任せきりになっている。夫の桜庭篤とは財産目当てで結婚したために愛情はいっさいなく、ほかの男性と連絡を取り合っているなど、浮気をすることにもまったく抵抗がない。SNS映えするキラキラとした世界観を好み、セレブな孔美子といっしょにいれば得することが多いといった打算から、何かにつけて孔美子の味方をする。孔美子と親しくしている楠紗都のことを、内心邪魔だと敵対視している。また、紗都の夫の楠英治を誘惑している。
月島 航 (つきしま こう)
月島明日海の夫で、ごく一般的な人材派遣会社に勤務している。明るく穏やかな性格の持ち主で、人付き合いが苦手な明日海をフォローすることも多い。一人娘の月島杏の面倒もよく見るなど、夫婦仲は非常にいい。明日海からは「こうちゃん」と呼ばれている。
月島 杏 (つきしま あん)
月島明日海と月島航の一人娘で、自然の森ようちえんに通う幼稚園児。人見知りをしない素直で明るい性格で、誰とでもすぐに友達になれる。間宮陽美紀のかわいらしさにあこがれ、特に親しくしている。卵、牛乳、小麦粉アレルギーを持っており、市販のお菓子を口にすることができない。
間宮 陽美紀 (まみや ひびき)
間宮孔美子の一人娘で、自然の森ようちえんに通う幼稚園児。おとなしい性格の物わかりのいい優等生タイプで、母親の孔美子に対しても反抗的な態度を取ることはいっさいない。まるで人形のように整った容姿をしている。月島杏と親しくなり、「ひびたん」と呼ばれている。新築タワーマンション「キャナルタワー羽浪」に引っ越してくる前は、近隣でも有名なお受験幼稚園に在籍していた。
丸山 芽依 (まるやま めい)
丸山朋代の一人娘で、自然の森ようちえんに通う幼稚園児。健康に配慮した自然派の衣食を好む朋代から、手塩にかけて育てられている。おっとりとした性格で、お絵描きが好き。
楠 岳 (くすのき がく)
楠紗都と楠英治の息子で、自然の森ようちえんに通う幼稚園児。兄の楠蓮と姉がいる末っ子。年相応のやんちゃな性格で、じっとしていることが苦手。姉とよく遊んでいる。
楠 蓮 (くすのき れん)
楠紗都と楠英治の息子で高校生。英治に似た端正な顔立ちをしており、非常にクールな性格の持ち主。何かにつけて口うるさく、噂好きの紗都に嫌気が差している。つねにイヤフォンをしており、家族と会話をすることはほとんどない。
楠 英治 (くすのき えいじ)
楠紗都の夫で、楠蓮と楠岳の男の子二人と長女の三児の子を持つ父親。メンズファッション雑誌の人気モデルとして活動しており、身長が高く抜群のスタイルを誇る。芸名は「EIJI」。結婚前、紗都が雑誌のライターとして働いていた縁で、結婚した。社交的で誰とでも明るく接することができるが、やや軽薄な性格をしている。何かにつけて口うるさく、噂好きの紗都に辟易しており、会話も聞き流すことが多い。紗都と桜庭心菜が敵対していることは知らず、心菜から誘惑を受けて心がゆれている。
桜庭 玲央 (さくらば れお)
桜庭心菜と桜庭篤の息子で、桜庭理央の双子のきょうだい。自然の森ようちえんに通う幼稚園児。意地悪な性格の理央とは異なり、子供らしい無邪気で明るい性格をしている。ただし、心菜が篤を見下していることは理解しており、篤の言うことは聞かない。とにかく元気で、園内を走り回ることが大好き。
桜庭 理央 (さくらば りお)
桜庭心菜と桜庭篤の娘で、桜庭玲央の双子のきょうだい。自然の森ようちえんに通う幼稚園児。幼いながらも機転がきき、無邪気なふりをしてターゲットに特定した相手を貶めるなど、ひねくれた性格をしている。母親の心菜が月島明日海を見下していることにも気づいており、月島杏に対しても何かと意地悪な態度で接したり、わざと怒るように挑発的な態度を取ったりする。
桜庭 篤 (さくらば あつし)
桜庭心菜の夫で、桜庭玲央と桜庭理央の父親。父親が地域でも有名な区議会議員を務めており、非常に裕福な家庭に育つ。心菜の美しさにほれ込んで結婚したため、子育てや家事を自分の母親に丸投げしていることについても何も言わない。家事や育児にも協力的だが、心菜に異常に執着している。
桐ヶ谷 カイ (きりがや かい)
新築タワーマンション「キャナルタワー羽浪」のフォレストタワーに住んでいる男性。カメラマンを生業にしており、家族構成は不明。月島明日海と月島杏がしゃぼん玉で遊んでいる姿を撮影したことをきっかけに、明日海と会話を交わすようになる。
鷹谷 悦子 (たかや えつこ)
自然の森ようちえんの園長を務める高齢の女性。自然と触れ合うことや園内でのスマートフォン禁止、手作り弁当へのこだわりなど、強い教育理念を持つ。どんなときでも笑顔と優しい口調で接するが、自分の考えに妥協をすることなく、他者の考えを聞き入れない頑固な性格をしている。健康に配慮した自然派の衣食を好む母親のあいだでは有名な存在で、丸山朋代も入園前からのファンだった。
場所
キャナルタワー羽浪 (きゃなるたわーはなみ)
運河沿いに完成したばかりのタワーマンション群。「ベイタワー(地上33階建)」「コアタワー(地上50階建)」「フォレストタワー(地上33階建)」の3棟から構成されている。ベイタワーが運河に近いこともあって見晴らしがよく、コアタワーが高級志向で、フォレストタワーは道路沿いにある。3棟を通して価格は間宮孔美子と家族が住む「コアタワー」の上層階が3億と最も高い。タワーマンション内に子供を遊ばせることのできる「キッズ&ペアレントルーム」や、展望スペース「ラウンジ」などの設備が整っている。マンションの付近には公園や小児科、幼稚園など子育てに特化した施設が多数ある。
自然の森ようちえん (しぜんのもりようちえん)
新築タワーマンション「キャナルタワー羽浪」にほど近い場所にある幼稚園。園長は鷹谷悦子が務めている。土地遊びや動物との触れ合いを大切にしており、園内はスマートフォンでの撮影を禁止するなど、さまざまなルールがある。また、園のイベントも多いために親の参加が求められている。
書誌情報
おちたらおわり 10巻 講談社〈BE LOVE KC〉
第1巻
(2019-10-11発行、 978-4065175613)
第2巻
(2020-02-13発行、 978-4065187029)
第3巻
(2020-07-13発行、 978-4065205440)
第4巻
(2020-11-13発行、 978-4065214756)
第5巻
(2021-05-13発行、 978-4065233511)
第6巻
(2021-10-13発行、 978-4065257319)
第7巻
(2022-04-13発行、 978-4065270769)
第8巻
(2022-10-13発行、 978-4065292280)
第9巻
(2023-04-13発行、 978-4065313978)
第10巻
(2023-10-13発行、 978-4065331279)