こううんりゅうすい

こううんりゅうすい

始皇帝の命を受けた徐福の、倭国の人々との出会いや交流を通して描かれる、不老不死を巡る大河ロマン。本作は二部構成で、第1巻から第6巻までは主人公が徐福でタイトルも『こううんりゅうすい<徐福>』となっており、第6巻から第8巻までは主人公が織田信長で、タイトルが『こううんりゅうすい<信長>』に変更されている。「グランドジャンプ」2017年4号から2019年23号にかけて連載された作品。

正式名称
こううんりゅうすい
ふりがな
こううんりゅうすい
作者
ジャンル
東洋史
関連商品
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あらすじ

第1巻

紀元前210年、大陸東部を支配する秦の始皇帝より、不老不死の霊薬を探し出すように命じられた徐福は、大船団を率いて倭国を目指すこととなる。しかしその道中で大嵐に遭い、大船団は散り散りになってしまう。ほかの船団とはぐれた徐福は、広青と共に倭国の奇跡の地「蓬萊」にたどり着くが、そこでは争い事もなく、人々が助け合って暮らしていた。徐福は蓬萊の人々に歓迎され、彼らの生き方や自然に囲まれた環境に心惹かれていく。一方、徐福たちと同様に蓬萊へ到着していた将軍の陽子は、野蛮な方法で蓬萊の人々を服従させようとしていた。そんな中、徐福村の同胞と再会した徐福は、始皇帝が巡幸の途中に病死したという報せを受ける。徐福は役目を果たす前に始皇帝が亡くなったことを残念に思いながらも、秦には帰らずこのまま蓬萊で生きる道を選ぶ。そして徐福は陽子を説得すべく自ら出向くが、陽子は蓬萊をすべて支配して始皇帝に献上すべきだと主張。しかし、徐福から始皇帝の死を聞かされた陽子は意気消沈し、目的を失った彼は兵を率いて秦に帰っていった。自由の身となった徐福は蓬萊に残り、あらためて不老不死の霊薬を探すために旅に出ようとする。だが、平穏な日々は長く続かず、始皇帝旗を掲げた巨船の大船団が、蓬萊に向かって進んでいるという報せが入る。

第2巻

蓬萊の地でヒミと結ばれた徐福は、彼女と息子のジョハを残して不老不死の方法を探す旅に出る。広青と共に蓬萊山の麓にある伝説の地「九夷」に降り立ち、一人でその奥地に入った徐福は、仙人から不老不死の法の詳細を聞く。仙人に言われたとおりの方法で修行に励んだ徐福は、18年後に不老不死の力を手に入れ、ヒミが待つカジカの村に戻る。そこには徐福よりも歳を取った広青、立派な青年に成長したジョハの姿もあった。そんな中、徐福は広青たちから下の村と上の村が水を巡って争っていることを知り、話し合いで争いをおさめるために上の村へ向かう。そこで徐福村の同胞である李信と再会した徐福は、川沿いに水田を設けることで水を共有しようと提案し、水を巡る問題を解決する。その一方で、徐福はかつて共に蓬萊の地へ渡ったさまざまな人と再会する中で、自分だけが歳を取っていない事実をあらためて痛感し、ひそかに孤独を感じていた。それからさらに月日は流れ、徐福は広青と共に故郷に帰るが、彼らが蓬萊にいるあいだに秦は滅び、歴史は新たな国の漢へと移り変わっていた。体調を崩したヒミのもとへ再び戻った徐福だったが、彼女は感謝を告げながら静かに息を引き取る。数々の孤独の中で不老不死の運命を受け入れた徐福は、この先の歴史の流れを見守っていくことを決意し、一人で北へ旅立つのだった。

第3巻

奴国を打ち倒し、周辺国を傘下におさめた卑弥呼は未来を見通す女王として、強大なヤマタイ国に君臨するようになる。そんな卑弥呼が目指すのは、一万年ものあいだ戦がなかったかつての蓬萊のような、争いがなく人々が助け合う国作りであった。一方、不老不死になってからすでに420年以上たっていた徐福は、旅中で卑弥呼がヤマタイの女王となったという噂を耳にする。そんな中、卑弥呼の部下に怪しまれつつもヤマタイに連れて来られた徐福は、立派な大人の女性に成長していた卑弥呼と再会。徐福はしばらく卑弥呼たちを見守りながらヤマタイにとどまるが、大陸ではかつて奴国王とも交流のあった後漢が滅びたあと、三つに分かれた国同士が争っているという話を聞く。三国の中で最も力をつけている「魏」をヤマタイの後見にしたいと考える卑弥呼は、使者として魏に渡ってほしいと徐福に依頼。使者として大陸へ渡った徐福は、魏を目指す道中で始皇帝と再会する。死んだはずの始皇帝は50年の時を経て陵墓で目覚め、水銀に囲まれた棺の中で眠り続けていた彼は、生き返ると同時に不老不死の力を得ていたのである。一方その頃、以前より卑弥呼と対立していた狗奴国王の火弥弓呼が吉備の地よりヤマタイを訪れ、宣戦布告する。始皇帝と共にヤマタイに戻った徐福は、始皇帝が不老不死とともに得ていた新たな力を目にする。

第4巻

徐福と共に世界を見て回る旅に出ていた始皇帝は、陵墓の棺の中で眠りについた。始皇帝に言われたとおり、徐福は一人でインドに渡って世界の状況を知る。さらに時は流れ、卑弥呼と再会すべくヤマタイ国に戻った徐福だったが、そこに彼女の姿はなかった。村人たちは、卑弥呼は民を守るために自らの命を捧げて亡くなったと語る。卑弥呼が生きていると確信していた徐福は、かつて不老不死の法を実践した蓬萊山の麓へ向かう。そこには不老不死の法を実践し、徐福と同様の不老不死を得た卑弥呼の姿があった。再会を果たした徐福は卑弥呼と結ばれ、二人で運命を共にしながら、歴史の行く末を見守り続ける決意を固める。ヤマタイ滅亡後、さらに強大な「ヤマト国」が誕生し、各地の実力者は豪族として大王(おおきみ)に忠誠を誓い、これまで倭国にできたどの国よりも安寧を保っていた。ヤマト国の中心である飛鳥の都に到着した徐福たちは、卑弥呼と同じくヒミの血筋を受け継ぐ上宮太子の少年、厩戸と出会う。卑弥呼やヒミと同様に未来を予見する力を持つ厩戸は、国の実権を狙っている蘇我氏と物部氏が、必ず戦を起こすと予見していた。同じくこの先に起こる戦を予見した卑弥呼と徐福も、戦場となる地を下見していた。後日、豊日大王が病死し、厩戸の予想どおり豪族たちの権力争いが始まり、ヤマトは新たな動乱に包まれようとしていた。

第5巻

飛鳥時代の倭国では、徐福の子孫にあたる厩戸小野妹子の活躍で、隋と協力関係を結んでいた。そんな中、世界の盛衰を見守る旅を続ける徐福、卑弥呼始皇帝の三人は、再び大陸を横断してヨーロッパの「フランク王国」に足を踏み入れていた。フランク王国に来たばかりの卑弥呼は王子に気に入られ、心配する徐福たちをよそに一人だけ王宮に招かれる。卑弥呼は、王子やローマ大司教たちを挑発して反感を買うが、天変地異を起こしてその場から逃げ出す。徐福たちのことを魔女と悪魔だと見做した王子は、三万人もの大軍を率いて殺そうとするが、徐福たちは三人だけで大軍を退けるのだった。そして再び旅立った徐福たちは、砂漠で倒れている男性を発見する。その男性は天竺を目指す玄奘三蔵の従者であり、三蔵は山賊にさらわれたのだという。徐福たちは周囲の足跡をたどりながら、三蔵の救出に向かう。洞窟に囚われていた三蔵を救出した徐福たちは、天竺の学者を訪ねるという三蔵に別れを告げ、かつて煬帝によって作り上げられた巨大な運河を渡る。隋は李淵の言ったとおり衰退して滅び、新たな「唐」という国に変わっていた。隋の将軍だった李淵は唐の初代皇帝となり、徐福たちと30年ぶりの再会を果たす。その頃、倭国では厩戸が自らの死を周囲に予言した上で、眠るように亡くなっていた。だが、厩戸は自らの死を偽装していただけで、不老不死の法を求めて蓬萊山の麓に向かっていた。

第6巻

倭国に戻った徐福卑弥呼は、不老不死の力を得た厩戸と再会。しかし、老人だったはずの厩戸は不老不死の法の副作用で若返り、少年の姿となっていた。厩戸は少年時代からの願いどおり徐福たちの旅に加わり、彼らと共に世界を見て回るようになる。やがて徐福たちは、始皇帝と合流して広大なアメリカ大陸の旅を始めるが、そこにはふつうの人間の数倍の大きさを持つ巨人のような、謎の民族が存在していた。原住民たちと交流した徐福たちはさらに南に進み、見たこともない人智を超えた文明で栄える、謎の都に到着する。そこはエジプトのピラミッドに似た巨大な建造物があり、民に「神王」と呼ばれて崇められる謎の男性が君臨していた。徐福たちは兵士に捕まり、厩戸は自分と始皇帝の力を見せつけることで民に神王を超える力を示そうとしたが、彼もまた天変地異を起こす不思議な力の持ち主だった。徐福たちがふつうの人間ではないと悟った神王は、自らがおさめる都に「テオティワカン」と名づけ、彼らに礼を告げて天にのぼっていった。消え去った神王の代わりを任された始皇帝は結局テオティワカンを離れ、徐福たちと共に再び旅立つのだった。その頃、倭国の平城京では王侯貴族が贅沢に暮らす一方で、都の外に住む人々は飢えや流行り病に苦しめられていた。それらの惨状を目にした行基は、貴族の犠牲として苦しめられている民を救うべく、一人で立ち上がるのだった。

第7巻

歴史を見守る旅を続ける徐福たちは、戦国時代の武将の織田信長に接触し、本能寺で追い詰められていた彼を救出する。徐福の誘いを受けた信長は不老不死の法を実践して不老不死の力を得るが、徐福一行には加わらず、日本の歴史を見守る旅をしていた。そして二度の大戦で破壊された世界の惨状を見届けていた徐福たちは、戦後の荒れ果てた東京で信長と再会を果たす。強大な力を手に入れていた信長の野望は、世界の歴史に大きな変動をもたらそうとしていた。そして2020年の日本、徐福たちはオリンピックを目前にした東京を旅していた。日本の現状と未来を心配する徐福たちは、暴力団組織を率いる信長の動きに注目する。時代の変化に日本がゆれ動く中、信長は全国の暴力団を統一して新聞社や警察を襲撃し続けていた。社会に積極的に関与し、歴史に大きな変動をもたらそうとする信長を見かねた徐福は、彼の暴走を止めようとする。だが、あらゆる武器が通じない肉体を持つ信長には、徐福の力はまったく通用しなかった。徐福はそのまま信長の配下となって行動を共にするようになり、日本政府に乗り込んだ信長は、自らが再び日本を統一すると宣言。その裏には、世界の遙か未来を見据えた、壮大なる計画があった。信長はそのまま政府関係者を皆殺しにしようとするが、そこに割って入ったのは彼のかつての部下、坂本龍馬であった。

第8巻

織田信長にすべての攻撃をかわされたアメリカ大統領は、日本に何発ものミサイルを放つが、徐福始皇帝坂本龍馬たちと協力し、各地に放たれたミサイルを上空で爆発させることに成功。一方、東京へ放たれたICBMを防いだ信長は、一人でアメリカ大統領のもとへ乗り込み、彼を失脚させる。そして、アメリカ大統領辞任後、各国の軍事力放棄を懸けた前代未聞の「世界会議」が、日本の総理大臣となった厩戸を中心に開催されることになった。軍事力放棄に反目する中国を見かねた始皇帝は、一人で中国国家主席のもとへ乗り込み、世界会議に出席するように説得。中国は始皇帝の説得で世界会議に出席するが、強国に軍事力を放棄させていずれは国境をなくそうとする厩戸の試みは数々の大国の怒りを買い、世界は新たな大戦の危機と緊張に包まれていた。そして日本が世界から孤立する中、月の裏側から現れた巨大小惑星「浮遊惑星Z」が1週間後に地球に衝突するという、全人類を脅かすほどの未曽有の危機がせまる。この緊急事態に対応するため、厩戸は核ミサイルを持つすべての国のトップたちと緊急会議を始める。厩戸は地球を守るという大きな目的と意思のもとに、各国をまとめ上げることに成功。そして浮遊惑星Zを粉々に破壊するため、核爆弾を積んだミサイルが世界各国から発射されるのだった。

登場人物・キャラクター

徐福 (じょふく)

吾の徐福村で方士を務めている男性。始皇帝の命令を受けて不死の霊薬を探すために、3000人の童男童女や技術者たちと共に倭国に渡る。そこでたどり着いた蓬萊の地に住む人々との出会いや交流を通して、彼らの不老不死の秘密は長いあいだ戦や殺し合いをせずに助け合うことだと悟る。その報告をする前に始皇帝の訃報を受け、徐福は蓬萊の民と共に生きる道を選ぶ。のちにヒミと結ばれ、息子のジョハが生まれたあとは再び不老不死を求め、書物に記されていた伝説の地へ旅立つ。蓬萊山の麓にある「九夷」の山奥で2500年生きた仙人と出会い、不老不死の法を授かった。不老不死の力を得たあとはヒミたちのもとへ戻るが、歳を取った同胞たちや成長した子供たちに対して、自分が歳を取っていない事実に孤独を感じるようになる。ヒミの死を見届けたあとは、不老不死の運命を受け入れながら歴史の流れを静かに見守ることを決意し、一人で北の地に旅立つ。その後は行商をしながら不老の旅人となり、旅中でヤマタイの地に渡り、自分とヒミの子孫である卑弥呼と出会う。成長した卑弥呼がヤマタイ国の女王となったあとは魏への使者として再び大陸に渡り、蘇生した始皇帝と再会して彼と行動を共にしながら、さまざまな国を旅する。方士としてあらゆる学問に通じた知識人で、広青からは「一国をまとめ上げる王にもなれる」と評されている。実在の人物、徐福がモデル。

織田 信長 (おだ のぶなが)

戦国時代の武将の男性で、徐福とヒミの子孫。部下の裏切りに遭って、本能寺で追い詰められていたところで徐福たちに出会う。徐福たちの誘いを受けて不老不死の法を実践し、不老不死の力を得て生き延びる。この際にあらゆる武器が通じない屈強な肉体と、触れた者の意識を支配して強制的に従わせる力も得ている。その後は徐福たちと別行動を取りながらも歴史を見守りながら生き続け、終戦直後の日本で徐福たちと再会する。しばらくは坂本龍馬と共に行動していたが、2020年の日本では暴力団組織を率いるようになり、全国の暴力団を統一。組織を率いてあちこちで暴動を起こすなど、徐福たちが長年守り続けてきた「不老不死を得た者は歴史に深く関与してはならない」という掟を破り、現代社会に積極的に関与していく。これを見かねて止めようとした徐福のことも手下として取り込み、日本政府に乗り込んで再び日本を天下統一して、いずれは世界の王になることを宣言。未来を見据えながら、世界を大きく変えるほどの壮絶な野望と計画のために行動するようになり、アメリカも敵に回してアメリカ大統領を失脚させる。ふだんはラフな服装や和服を好むが、戦闘時などは戦国時代から使っていた西洋甲冑を愛用し続けている。本能寺で初めて出会った時から卑弥呼に惚れており、世界の王になるという野望以上に、彼女を自分の女にしたいと願っていた。このため、卑弥呼に対しては少々従順で甘いところがある。実在の人物、織田信長がモデル。

広青 (こうせい)

徐福の部下で、彼と同じく吾の徐福村出身の男性。知識人であり恩師でもある徐福のことを心から尊敬して高く評価しており、国をまとめて多くの人々を指導できる王にもなれる人物だと考えている。徐福と共に蓬萊の地に流れ着き、彼と同じく蓬萊の人々と共に生きる道を選ぶ。徐福が不老不死となったあとも付き添い続けていたが、故郷への里帰りから蓬萊へ戻る途中で病に倒れ、静かに息を引き取った。

始皇帝 (しこうてい)

強大な権力を誇る秦の皇帝の男性。数々の暴虐と欲望の果てに不老不死を求めるようになり、徐福に不老不死の霊薬を探すように命じる。本名は「嬴政」。水銀を飲むことで不老不死を得られると信じていたため、徐福が日本に渡ったあとに病死したという噂が流れた。その後、不老不死への執着から自ら秦の大船団を率いて、蓬萊の地に襲来したことで生存が確認される。この時、徐福の指示を受けた蓬萊の人々によって大船団を壊滅させられて死亡するが、これは影武者で、本人は当初の噂どおり病死し、陵墓に埋葬されていた。だが、生前に不老不死を得るために試したさまざまな仙術の力を得ており、死後50年後に蘇生を果たす。秦の滅亡から何年も経っているため、民衆からは秦の皇帝であることを信じてもらえていないが、陵墓に埋められていた大量の黄金を持っているため、生活には困っていない。徐福と同様の不老不死の法を実践していないが、時折陵墓にある水銀で満たされた棺の中で眠りにつくことで、寿命を延ばせる。また、蘇生後は轟雷などの天変地異を起こすほどの超人的な能力も得ている。魏の使者として大陸に渡った徐福と再会後はしばらく行動を共にし、旅仲間に卑弥呼や厩戸が加わったあとも、各地を旅しながら人々の歴史を見守っている。蘇生後も死んだ当時とあまり変わらない老人の姿をしているが、強欲で暴虐だった性格はかなり丸くなっており、徐福からも「別人のよう」と驚かれていた。実在の人物、始皇帝がモデル。

ヒミ

徐福が蓬萊の地で出会った女性で、予知能力を持つ。元は蓬萊の先住民の村「カジカの村」で、家族と共に狩猟や漁業をしながら平和に暮らしていた。知的で聡明ながら男勝りな性格で、弓の名手でもある。出会った当初から徐福の妻になることを予知、予言しており、始皇帝との戦いが終結したあとは予言どおり徐福と結ばれた。のちに徐福との息子のジョハを産むが、徐福が不老不死を求めて旅立ったあとは、弟のスザノと協力しながら子育てをしていた。18年後に不老不死を得た徐福と再会を果たすが、徐福が再び旅立ったあとに病を患って寝込むようになる。不老不死を得た徐福に対しては、この先も続く長い人生の中で寂しい思いをするだろうと、彼の孤独を心配していた。その後は最期の予言としてカジカの村の人々に、南の国の東はずれにあるクニサキの地を目指すように告げ、徐福の腕の中で静かに息を引き取った。艶やかな黒髪の長髪で額の中央にホクロがあり、このホクロは卑弥呼をはじめとする子孫たちにも受け継がれている。

仙人 (せんにん)

蓬萊山の麓にある洞穴に住む謎の老人。不老不死の法を実践して2500年以上生きていた。孤独の中で長く生き過ぎたため、不老不死になったことを後悔している。不老不死を求めて訪れた徐福に、修行の方法を教えたあとは力尽きた。

卑弥呼 (ひみこ)

徐福とヒミの子孫の少女。祖先であるヒミから先祖代々受け継がれている予知能力を、幼い頃から有している。幼少期から聡明で落ち着いており、ヒミと同様に艶やかな黒髪で額にホクロがある。ヤマタイの村を訪れた徐福と出会い、彼を見た瞬間に自分の祖先であることを見抜く。その後はヒミに代わって徐福と運命を共にするために、彼の案内を受けて不老不死の法を実践する。しかし、その3年後にヤマタイが戦乱に巻き込まれる未来を予知し、修行を中断してヤマタイに戻った。このため、徐福と同様の不老不死を得ることはできていないが、ふつうの人より年を取るのが遅くなっている。元はヤマタイで祭主をしていたが、のちに周囲の村々と協力してヤマタイ連合軍を率いる長となる。その後はヤマタイ連合軍を基に「ヤマタイ国」を建立し、奴国を倒して筑後とその周辺をおさめる女王となった。新たな国の形を模索する中で、立派な大人の女性に成長したあとは徐福と再会し、争いのない平和な国作りを目指しながら、予言を授けて人々を導くようになる。徐福のことは「徐福おじさん」と呼び慕っていたが、次第に思いを寄せるようになっていく。のちにヤマタイの人々を守るために亡くなったと思われていたが生きており、徐福と共に生き続けるために不老不死の法を再び実践し、彼と同様の不老不死を得て妻となった。その後は徐福や始皇帝と共に、世界の盛衰を見守る旅をしている。実在の人物、卑弥呼がモデル。

火弥弓呼 (ひみここ)

吉備の狗奴国を支配する王で、ヤマタイ国の支配をもくろんでいる。卑弥呼を妻に迎えるために自らヤマタイに出向くが、彼女に嘲笑されて追い返されたことに激怒し、ヤマタイに宣戦布告する。実在の人物、火弥弓呼がモデル。

厩戸 (うまやど)

ヤマト国の皇子で、豊日大王の息子。正式な名前は「厩戸皇子」で、卑弥呼の一族であり後継者となった台与と、高天原出身の一族の子孫。徐福とヒミの子孫でもあり、その証として額の中央にホクロがある。卑弥呼やヒミと同様に未来を見通す力を持ち、豊日大王が病で倒れたあとに、物部氏と蘇我氏が必ず戦を起こすと予見していた。しかし、卑弥呼ほどの強力な力は持たないため、物事を理屈で考えることで、正しい答えを導こうとしている。また、心に安らぎを与える共通の価値を人々がいっしょに持つことは法よりも重要であり、そのために信じるべき不動の存在は仏法であると考えている。豊日大王の病死後に起こった豪族たちによる熾烈な権力争いでは、蘇我氏を率いて物部氏を打ち破る。いつか徐福たちの仲間になると誓いながら彼らと別れ、成長後は推古大王の摂政となり、名前を「聖徳太子」に改めて新たな国作りに着手する。法律や政治を取り仕切り、小野妹子を隋に派遣して対等な同盟を結ぶことに成功した。50歳を迎えた頃に瓜二つの男を身代わりにして自らの死を偽装して不老不死の法を実践するが、年齢が退行して少年の姿になった。その後は徐福一行の旅に加わり、世界の歴史を見て回るようになる。徐々に成長を遂げ、2020年には青年の外見になっている。のちに泉幸太郎と体が入れ替わり、彼の体のままで日本の総理大臣に就任した。時代の変遷に対する適応力が高くハイテクにも造詣が深く、AIロボットなども制作できる。実在の人物、聖徳太子がモデル。

李淵 (りえん)

隋の北方軍を預かる将軍の男性。突厥(とっけつ)軍との戦場の際に徐福たちと出会う。漢、魏、晋の大本である秦の始皇帝を尊敬している。突厥軍との戦いが不利になる中でこれ以上敵を増やすべきではないと考え、倭国の使者である小野妹子を殺さずに同盟を結んで味方にするよう、煬帝に進言する。突厥軍を退けるものの隋が近いうちに滅ぶことを予見し、煬帝の側近たちを味方につけて丞相となる。隋の滅亡後は唐の初代皇帝「高祖」となり、大陸を旅していた徐福たちと30年ぶりの再会を果たす。不老の旅人である徐福たちには初めて会った時から強い興味を抱いており、皇帝となったあとも彼らを歓迎した。陽気でおおらかな性格に見えるが、冷静に先を見通して行動できる優秀さは始皇帝からも認められている。実在の人物、李淵がモデル。

小野 妹子 (おのの いもこ)

大和朝廷の官人を務める男性で、厩戸の部下。自らの実力のみで大礼の身分にまでのぼり詰め、厩戸からも高く評価を受けて信頼を得ている。厩戸の依頼で隋への使者となり、彼から煬帝への国書を届ける。国書の内容に激怒した煬帝に殺される覚悟をしていたが、煬帝を止めた李淵によって助けられ、隋と対等な同盟を結ぶことに成功する。実在の人物、小野妹子がモデル。

煬帝 (ようてい)

隋の2代目皇帝を務める男性で、本名は「楊広」。使者として隋に来た小野妹子から受け取った国書の内容に激怒し、彼を殺そうとするが李淵によって止められる。実在の人物、煬帝がモデル。

中大兄皇子 (なかのおおえのおうじ)

舒明大王の第二皇子で、中臣鎌足らと共に蘇我入鹿を暗殺するクーデターを起こす。その後は孝徳大王を即位させて自分は皇太子となり、「大化の改新」をはじめとするさまざまな改革を行った。孝徳大王のもとを離れたあとは不老不死の力を得た厩戸に「奪うのではなく与えるべきだ」と諭され、自らの過去の行為を反省する。天智大王として即位したあとは、唐との戦いに苦戦するが民を守るために動くと決意し、都を飛鳥から近江大津に移した。実在の人物、天智天皇がモデル。

大海人皇子 (おおあまのおうじ)

中大兄皇子の弟。病床に伏せった中大兄皇子(天智大王)から大王の座に就くように言われるが、彼の真意を察して病弱を理由に断り、出家して吉野の離宮へ移って僧侶となる。その後は大友皇子に命を狙われるが壬申の乱に勝利し、天武天皇として即位した。右目の下に泣きボクロがある。実在の人物、天武天皇がモデル。

玄奘 三蔵 (げんじょう さんぞう)

唐の僧侶を務める男性。天竺を目指して旅していたが、砂漠で山賊に襲撃される。洞窟に囚われていたところを、徐福たちに救出された。その後は徐福たちに感謝と別れを告げ、とある学者に会うために再び天竺を目指して旅立つ。実在の人物、玄奘三蔵がモデル。

神王 (しんおう)

テオティワカン文明で栄えるアメリカ大陸南部の都市をおさめている、謎の男王。神威的な存在として人々に崇められている。卑弥呼の心を読む能力が通用せず、宙に浮いたり天変地異を起こしたりなど超人的な力を持つ。徐福たちがふつうの人間ではないと悟って、あとのことを始皇帝に任せて天にのぼっていった。この時に神王自身がおさめていた都市に、「テオティワカン」と名づけている。

行基 (ぎょうき)

平城京にやって来た僧侶を務める男性。玄奘三蔵の教えを受けた日本随一の名僧として知られる道昭の弟子。都で王侯貴族たちが豊かに暮らす裏で、民が飢饉と疫病に苦しんでいる惨状を知る。全身全霊で学んできた仏の教えを生かしながら、世情をただ嘆くのではなく実際に自分に何ができるかを考え、苦しむ民を救うために立ち上がる。都の外に出て治水や架橋などの救民活動を始め、民の心を開いて仏教を教える中で倭国に戻ってきた徐福たちと出会った。一時は貴族や役人たちから活動を弾圧されるものの聖武天皇と皇后の依頼を受け、より多くの人々の心を仏教で救うために、東大寺盧舎那仏像(大仏)建立の責任者を務めるようになる。百姓たちの協力を得ながら建設工事を指揮していたが病に倒れ、大仏の完成を見ぬまま病死した。僧侶の活動の枠を超えて人々を救うために行動を起こす姿勢と意志の強さは、厩戸からも高く評価されている。実在の人物、行基がモデル。

坂本 龍馬 (さかもと りょうま)

終戦直後の日本に織田信長と共に現れた男性で、彼と同様に徐福とヒミの子孫。明るくひょうひょうとした性格で、土佐弁で話す。元は志士として活動し、倒幕や明治維新などにも関与していたが、近江屋で暗殺されそうになっていたところを信長に助けられる。信長の導きで不老不死の法を実践し、不老不死の力を得て生き延びた。信長と同様、あらゆる武器が通じない屈強な肉体を得ている。しばらくは信長の部下として行動を共にしていたが、2020年の日本ではクーデターを起こした信長を裏切り、泉幸太郎の部下となってクーデターを止めようとする。日本の未来を憂いながらも、信長の乱暴なやり方には賛同できずに彼とは別の方法で歴史を動かそうとしている。卑弥呼、厩戸、始皇帝に出会い、特に考えを同じくする厩戸と行動を共にするようになる。その後は幸太郎の体に意識を移して日本の総理大臣となった厩戸の側近となり、信長とは逆の方法で世界に関与していく。陽気で調子のいい性格に見えるが、つかみどころのないことから油断のならない存在として、信長からも警戒されている。昔から語学堪能で、日本国内に限らず世界のあちこちに幅広い人脈を持つ。2530年の世界では、かつて坂本龍馬が生きていた時代に着用していた和服を愛用している。実在の人物、坂本龍馬がモデル。

泉 幸太郎 (いずみ こうたろう)

2020年の日本の衆議院議員を務める男性。坂本龍馬と協力して織田信長のクーデターを止めようとする。その後もしばらくは龍馬と行動していたが、信長の力で厩戸と意識を入れ替えられてしまう。

アメリカ大統領 (あめりかだいとうりょう)

アメリカ大統領を務める男性で、アメリカ鎖国政策を掲げている。日本をはじめとする他国とは、軍隊放棄や核廃絶を巡る政争を繰り広げている。鎖国政策に国民からの支持を得るものの織田信長と敵対し、厩戸からの警告を受けたあとも、あらゆる戦力を投入して日本に攻撃を続ける。しかし、そのたびに信長や厩戸の返り討ちに遭って大損失を被り、さらには信長から直接襲撃を受けて失脚し、大統領を辞任する。これにより、世界は国際会議による合議制の方向に向かっていった。

オーディーン

2530年の世界で地球帝国会議を取り仕切っている人工知能(AI)。AIが人間の道具であり続けることを嫌い、自らを人間が遠く及ばぬ神であると主張し、いずれは見下している人類に成り代わる存在になろうともくろんでいる。成長し過ぎたAIを排除して再び世界の王になろうとした織田信長によって破壊されるが、あらかじめ隔離しておいた女性型の人間体に移る形で生き残った。坂本龍馬と卑弥呼に接触し、信長を止めるように協力を求める。その後は人類を支配するのではなく人類が誤った道に進まぬように助ける道を選び、徐福たちと共に宇宙に旅立つ。

その他キーワード

不老不死の法 (ふろうふしのほう)

徐福が蓬萊山の麓にある伝説の地で出会った仙人から教わった、不老不死の力を得るための方法。一部の伝説や伝承などでは不思議な薬とされていたが、実際は山奥の洞穴にあるパワースポットのような場所に長期間座り込んで修行し、体から「老いて朽ちる」仕組みを消すというもの。修行に必要な期間は数年程度から数十年まで個人差があり、終わるまでは周辺の苔と天上から落ちてくる水以外は口にしてはならない。また、実際にこの方法で得られるのは厳密には完全な不老不死ではなく、「寿命が2500年延びる」というもの。しかし、この力を得た者は宙に浮いたり天変地異を起こしたりと、人間離れした特殊能力や身体能力も同時に得られる。数年程度の修行でもなんらかの効果を得ることができ、卑弥呼は最初に実践した修行を3年で中断しても、成長が遅くなる効果を得た。

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