概要・あらすじ
記憶を失って荒野をさまよっていた十三妹は、老古仙人に龍鳳の剣を与えられる。武器は得たものの、食料や衣服なども持たない十三妹は、それらを求めて切り立った岩山の上に立つ古い寺を目指していた。しかし、その岩山には魔物達が住みついており、十三妹に襲い掛かって来る。魔物達を倒しながら進む十三妹は、ついに荒れ寺へと到着した。 十三妹が足を踏み入れた荒れ寺は、野盗の赤面虎黒風大王によって占拠されていた。しかも、今まさに一人の少年の命が奪われようとしている。その少年、安驥を救うために十三妹は剣を振るう。難を逃れた安驥だったが、突然現れた十三妹にお礼の言葉もなく、一人で寺から逃げ出してしまう。ところが丸腰の安驥は盗賊にとっては格好の餌食で、ふたたび荷物を奪われそうになる。あとを追って来た十三妹が盗賊を退治して、無防備な安驥には護衛が必要だと説き伏せる。(第1話「プロローグ」、第2話「女盗賊・十三妹」、第3話「能仁古刹」)
安驥の旅につき従う事になった十三妹だが、その道中、再び老古仙人と巡り会った。そして龍鳳の剣に北斗七星の力を宿す新たな力を与えられると共に、自分が何か使命を持っている事を知らされる。龍鳳の剣を振るっているうちに、自分が何者かを理解できるという。また老古仙人は、安驥にも倭の大刀を与える。(第4話「龍鳳七星剣」)
雨宿りのために洞窟に立ち寄った十三妹と安驥だったが、龍鳳の剣の力に反応して水煙の向こうに謎の楼閣が現れる。近くに埋まっていた墨壺によって、その楼閣が蜀時代のものだとわかるのだが、本来なら倒壊して地面に埋まっているはずの建物だった。その楼閣へと向かった二人は、一人の女性が縛りつけられているのを見つける。楼閣で縛られていたのは、十三妹と瓜二つの張金鳳だった。彼女は盗賊達が生き胆を食うために捕らえていたのだ。十三妹は、盗賊達から金鳳を救い出そうとする。(第5話「睡虎幻楼」、第6話「光と影」)
金鳳を加えて三人に増えた旅の一行は、白骨が散らばる荒れ果てた大きな道を進んでいく。盗賊の襲撃を受けながらも、一行は朽ち果てた街の跡地に到着する。うっかり古井戸に落下してしまった安驥を救うために降りて来た十三妹は、地下深くで謎の女性に出会う。その女性は、地上に残してきた金鳳に危機が迫っている事を知らせる。 黒衣の女の忠告を聞いて金鳳の無事を確かめた十三妹と安驥は、再び地下に戻る。しかし黒衣の女は、白骨化した姿になっていた。その手にはまるで十三妹へと差し出すように、銀の髑髏で装飾された髪飾りと首飾り、耳飾りが握られていた。(第7話「白骨霊白骨大道<其之一>」、第8話「白骨霊白骨大道<其之二>」、第9話「死せる王女との絆」)
突然に空から降って来る頭蓋骨や、水がないのに青々と茂っている森など、不思議な現象に見舞われながら三人の旅は続いていく。安驥は水源がないのに森が豊かなのは、地下に水脈があるからだと予想する。そして実際、地底を流れる温水の川を見つけ、一行は一時の休息を取る。しかし地底には、時代から取り残された生物達が潜んでいた。(第10話「“想い”の伝言」)
長旅を共にしてきた安驥の愛馬が力尽きてしまう。涙にくれる安驥を心配して、一行は野営をする事にする。馬の墓の前にたたずむ安驥だったが、どこからともなくたくましい馬が現れる。鞍に大龍馬王と名前を刻み込まれた名馬は安驥に心を許し、以降はその愛馬となった。(第11話「大龍馬王」)
一行は、大きな湖のほとりにたどり着いた。十三妹は魚を捕るために湖に潜ってみるが、そこは何の生き物もいない死の湖だった。それでも何かの気配を感じ取った十三妹は、夜には湖の正体が明らかになると予感する。実際、星の光に照らされた湖からは、体が水でできているような水棲女人が現れ、錆大湖という場所だと知らされる。 湖をあとにした一行だが、その背後には迫る野盗の一群があった。大龍馬王の分身能力で危機を乗り越えたものの、野盗の女主人である精妖姫だけは幻術に打ち勝って一行の行く手を遮る。しかも精妖姫は、記憶を失っている十三妹の正体を知っているようなそぶりを見せるのだった。大龍馬王の助けもあって精妖姫を撃退した十三妹だったが、その死体が土に吸い込まれていくのを見て、彼女がこの世の存在ではなかった事を知る。安驥は、精妖姫が持っていた地図を見て、自分達が待ち伏せされていた可能性に気づく。(第12話「霊鬼霊剣之章」、第13話「聖剣と魔剣<其之一>」、第14話「聖剣と魔剣<其之二>」)
精妖姫に続いて、再び十三妹の名を知る敵が現れる。白骨化した騎兵の姿をしているその敵は、ほかに11人の刺客がいる事を告げる。十三妹は龍鳳の剣のおかげで白骨騎士を倒したが、11人の刺客とその後ろにいる黒幕の正体はわからないまま、一行の旅は続いていく。(第15話「鬼火白骨騎士」)
登場人物・キャラクター
十三妹 (しーさんめい)
すべての記憶を失い、布切れ一枚で荒野をさまよっていた美しい女性。超人的な身体能力を持つ。老古仙人から、龍鳳の剣を与えられる。偶然にも命を救った少年の安驥の護衛として旅をする事になった。何か大きな宿命を持っているのだが、記憶を失っているため、運命が導くままに放浪を続ける。
安驥 (あんき)
無実の罪を着せられて投獄された父親を助けるため、一人で旅をしている少年。野盗に捕まって命を奪われようとしているところを十三妹に救われる。将来の夢は自由な学者で、荒事は好まないため、武器を持たずに旅をしていたが、老古仙人から倭の大刀を与えられた。護衛となった十三妹からいつも子供扱いされる事に腹を立てるなど、気位の高さも見せる。
老古仙人 (ろうこせんにん)
フードを目深にかぶり、どんな顔なのかさえわからない謎の人物。十三妹に龍鳳の剣を、安驥には倭の大刀を与えた。十三妹の正体を知っているそぶりを見せるが、運命を自ら見つけるための助言だけを与える。
張 金鳳 (ちょう きんほう)
十三妹と瓜二つの美しい女性。野盗に捕まっていたところを、十三妹と安驥によって救われる。河南の彭徳府の農民である張楽世の娘。運命によって十三妹や安驥と結ばれていると言い、旅に同行する。何か不思議な力を持っているようだが、黙して語らない謎の人物でもある。
大龍馬王 (だいりゅうばおう)
旅を続ける安驥が馬を失ってしまった夜に、騎馬兵の幻影と共に現れたたくましい馬。どこの国とも知れない不思議な装具を身につけていた。安驥に心を許し、愛馬となる。自分と乗っている者とを分身させる幻術を使える。
赤面虎黒風大王 (せきめんここくふうだいおう)
能仁古刹を根城とする野盗の首領。寺の和尚に成りすまして旅人を襲う残忍な大男。無防備に旅を続けていた安驥を捕らえ、殺そうとする。
精妖姫 (せいようき)
盗賊達の女主人。十三妹の正体を知っているそぶりを見せる。十三妹と同じ、双剣の使い手。
その他キーワード
龍鳳の剣 (りゅうほうのつるぎ)
老古仙人が十三妹に贈った二振りの剣。一つの鞘に納められた双剣。星空にかざすと、その刀身に北斗七星を浮き上がらせる。何か特別ないわれのある剣のようだが、その正体は謎。妖魔の類も退治できる破邪の剣でもある。心正しい者が使えば身を守り、邪心ある者が使えば身を滅ぼすという。
倭の大刀 (わのだいとう)
老古仙人が安驥に与えた大ぶりの刀。明国の兵を武器もろともに切り伏せたといういわくを持っている。明国が倭国から購入した150万本の刀のうちで、もっとも大ぶりなもの。体格の小さな安驥には鞘から抜く事さえできないが、老古仙人は、使いこなせるようになれば一人前の男になった証拠だと伝える。