世界観
本作『この人類域のゼルフィー』は、ゲートというワープ技術を手に入れた人類が広大な宇宙空間へ進出し、その活動領域である人類域を拡大してから1000年という時間が経過した未来を舞台に描かれている。作品の開始時点で、人類は「人類域の門番」と呼ばれる巨大な組織によって管理されている。「人類域の門番」を除く支配体制はすべて崩壊させられており、主人公のリーシャ・リオン・イルファージトはそんな「人類域の門番」に滅ぼされた、対となる支配体制「ザイシオン連合王国」の元王子という立場にある。本作に登場するこの2つの支配体制は、かつて存在した2人の女性社会科学者によって提唱された「千年実験」という社会実験のモデルケースとしてそれぞれが別の思惑のもと、生み出された体制である。この実験思想の違いが作品の世界観やテーマを形作るうえで大きな役割を果たしており、リーシャたちが宇宙を駆け巡るうちに体験していくさまざまな冒険や逃走劇に重みを与えている。
あらすじ
人類域標準暦1001年。6年前に終結したザイシオン戦争の結果、人類域は星間軍事連合体である「人類域の門番」の支配下に置かれていた。彼らによって滅ぼされた王国「ザイシオン連合王国」の元王子であるリーシャ・リオン・イルファージトは、外の世界に出ることを夢見ながら、複合衛星都市ファジマールで配管工として日々を暮らしていた。外の世界に出るために「人類域の門番」に所属する軍人「オーダーズ」を目指すリーシャは、ある日、同郷の軍人であるウォディック、パーモ、スウェイナの起こした騒動に巻き込まれる。複合衛星都市ファジマールを治める門将であるイクセーニスに取り入ろうとした4人は、イクセーニスの秘密を垣間見てしまい、命を狙われることとなる。ウォディックらと分かれてスウェイナとともに逃げ出したリーシャだったが、途中でオーダーズの操るH・Sに襲われ包囲されてしまう。逃げ道もなく覚悟を決める2人だったが、そこに言葉を喋る猫、宇宙海賊エーノクが現れる。リーシャを探していたという彼は、リーシャの胸に埋め込まれた人工心臓を見てその設定を変更する。その瞬間リーシャの体に電撃が走り、彼がかざした手から放たれた衝撃波によって、オーダーズのH・Sが吹き飛ばされるのであった。
掲載情報
本作『この人類域のゼルフィー』は「月刊ヤングキング」に2012年10月号から掲載していたが、連載途中で「月刊ヤングキング」が雑誌名の変更を行っている。変更後は「月刊YKアワーズGH」という誌名になったが、連載は作品完結の2015年4月号まで継続された。
特殊設定
本作『この人類域のゼルフィー』の特徴的な設定として、星系間を結ぶワープ用の通路であるゲートの空間に満ちている「アノジウム」という物質の存在が挙げられる。「アノジウム」はコンピューターに必要な「チューリング完全」と呼ばれる性質を備えた物質であり、各星系を繋ぐ形で連結、拡大されたゲート内に満ちている。それはあたかも、宇宙空間に張り巡らされた人間のニューロンのような形を取っており、ゲートその物がいずれ知性を得るのではないかと予測されている。
単行本の装丁
カバー下の本体表紙には各巻ごとにそれぞれカバー表紙のラフ画が掲載されているが、コミックス2巻の本体裏表紙には作品の設定に関する簡単な解説が掲載されている。作中で登場した専門用語の説明や、アイテムに関する設定が描かれており、作品世界をより深く理解していくうえで役立つ情報となっている。
タイアップ
作者である塩野干支郎次がスクウェア・エニックスや少年画報社、講談社をはじめ、さまざまな出版社で同時連載を行っていることから、企業の枠を超えたタイアップ企画が幾度か組まれている。2013年の3月25日には講談社の『セレスティアルクローズ』、ワニブックスの『心剣機装備ムサシデュアル』、スクウェア・エニックスの『Übel Blatt(ユーベルブラット)』との同時発売を記念したフェアが開催されており、アニメイトやとらのあなといった書店で対象商品を購入した際に、特典が配布された。2013年10月25日には本作と講談社の『セレスティアルクローズ』、スクウェア・エニックスの『Übel Blatt(ユーベルブラット)』が同時に発売され、3社合同フェアを開催。各コミックスの帯に印刷された3種類の応募券を集めると、ラフや資料が収録された小冊子『塩野干支郎次の作り方』を、応募者全員にプレゼントするという形で配布した。他にも、2014年11月25日に同様の2作品との同時発売に絡めたフェアが開催され、応募券を送った応募者から抽選で100名に、塩野干支郎次の画業15周年を記念したクオカード「ALL HERO&HEROINE CARD」がプレゼントされた。クオカードには、塩野干支郎次の歴代作品に登場したキャラクターたちのイラストが描き下ろされている。
著名人との関わり
著者である塩野干支郎次は、PCゲームブランドである「little witch」に所属していたことがあり、「白詰草話」の製作に携わっていた。「白詰草話」の製作には、のちに、漫画家やイラストレーターとして個人で活躍する人物が数多くスタッフとして参加していた。著名な人物として、ブランドの主催者であった大槍葦人をはじめとして、同時期に所属していたメンバーである遠藤沖人や佐々原憂樹らが挙げられる。
作家情報
塩野干支郎次は長野県出身の漫画家。本作『この人類域のゼルフィー』を始め、出版社をまたいで同時連載を幾つも持っているという多作・速筆で知られ、複数の出版社からのコミックス同時発売に絡めた応募者プレゼント企画などのタイアップが企画が組まれることがある。漫画家以外の活動として、PCゲームブランド「little witch」にて「白詰草話」というゲームソフトの絵コンテ担当の1人として参加していた。
登場人物・キャラクター
リーシャ・リオン・イルファージト (りーしゃりおんいるふぁーじと)
伯爵領小惑星イルファージトの領主にして、ザイシオン連合王国の5番目の王位継承者だった19歳の青年。6年前のザイシオン戦争によって王国が滅亡したため、身分を失い平民となった。ゲートにほど近い人工の星である複合衛星都市ファジマールで暮らしている。とある事件がきっかけで心臓を旧式の人工心臓に入れ替えており、それが原因の成長障害によって19歳とは思えない少年のような外見をしている。 3年前に学校を卒業して以来、軍に所属するために試験を受けているが、人工心臓と成長障害による持久力の低さが原因で試験に落ち続けていた。スウェイナやその兄であるウォディックとはザイシオン連合王国が健在だった頃からの知り合いで、同じ学校に通っていた仲でもある。 ゲートの開削や、テラフォーミングの工作機械などに対して深い造詣がある。
ゼルフィー
「人類域の門番」にその存在を狙われている女性型アンドロイド。薄青色の長い髪をした少女の外見をしているが、一人称は「僕」。味覚機能のチェックと称してリーシャ・リオン・イルファージトに唐突にキスをしたりと、性差について理解していない素振りを見せる。「人類域の門番」の戦闘用アンドロイドとして登録されているが、本人にその自覚はない。 「人類域の門番」から「棺」というコードネームでかねてより捜索されており、AI付き多機能バッテリーユニットの中に隠蔽されていた。リーシャから「ピコピコ」と呼ばれていたバッテリーユニットのAIそのものでもある。
エーノク
人の言葉をしゃべる、宇宙海賊を自称するオスの黒猫。猫であるにもかかわらず、宇宙戦艦の操船などもこなす。古い友人からの頼み事として、イクセーニスの手勢に追われていたリーシャ・リオン・イルファージトを助けた。6年前に終結したザイシオン戦争の際にザイシオン連合王国の救援として駆けつけたが、その際の「人類域の門番」との戦闘で肉体を失っており、今の姿は猫型擬体へ脳を移植した仮初めの姿である。 虫や鼠が苦手で、海賊戦斗艇内に出る鼠にいつも怯えている。その正体はかつて勇名を馳せた海賊であるストグラ・アコル・アタタクスヴァールである。
アルヴェラ
人類域警察機構の女性捜査官。亡くなった父親であるアウニアルヴは人類域警察機構の創設メンバーの1人。非常に強い正義感の持ち主で、「海賊の星」とも呼ばれる惑星ティルクシーの地上本部に所属している。「公務執行ポイント」と呼ばれる警察機構内で流通しているポイントを集めるため、元海賊が集まるティルクシーへと転属してきたものの、予想に反して治安が良かったためにまったく重大事件が起こらず、ポイントを貯めることができていない。 別部署へ移ろうにも転属願いを出すために必要なポイントが高く、惑星ティルクシーから抜け出せずにいる。
ルニアーブ・リオラクシム (るにあーぶりおらくしむ)
リーシャ・リオン・イルファージトたちがテュエドニア=ミュルストで出会った海賊見習いの青年。ライトスーツという全身をまとうスーツを身に着けた厳つい姿をしていたが、スーツを脱ぐとウェーブのかかった黒髪の優男然とした外見をしており、顔に横一文字の傷が走っている。お調子者でずる賢い性格だが根はお人好しで、幾度となくリーシャたちの危機を救っている。 有名な海賊であるストグラ・アコル・アタタクスヴァールの名を騙っていた。
ワイアディム・オールクス (わいあでぃむおーるくす)
かつて存在したとされる有名な宇宙海賊。「ザイシオン王家の友人」と称される人物で、ザイシオン戦争のおり、ザイシオン連合王国を救援するために駆けつけ、絶命しかけていたリーシャ・リオン・イルファージトに自身の人工心臓を与えた。かつて「思索者」ファラスとともに「人類域の門番」を創設し、最初の高位騎士となったディムリース・クレオン・クレオーリオンその人でもある。
スウェイナ
ザイシオン連合王国出身の少女で、ウォディックの妹。王国が健在だった頃に参加した王宮の晩餐会でリーシャ・リオン・イルファージトと知り合っており、それ以来、彼のことを思い慕っている。しかし、王国の軍高官でもあった父親が、ザイシオン戦争時にいち早くザイシオン王国を見限って敵である「人類域の門番」へと寝返ったため、リーシャに対しては後ろめたさも同時に感じている。 現在は「人類域の門番」の軍に所属し、「倍力階級章」を与えられたオーダーズの1人。軍の中で偉くなり、リーシャが生きていけるように手助けできるだけの権限を手にすることを夢見ている。のちに功績を積み重ね、リーシャたちの海賊戦斗艇を追跡するため特別に編成された艦隊の新造戦艦艦長に任命される。
リリフィーネ
「人類域の門番」に所属する軍人の少女。気位が高く、自身の能力に強い自信を持っている。「人類域の門番」に反逆を疑われることを恐れた、とある一族の出身。「人類域の門番」に対する忠誠を示すために一族から差し出されたため、オーダーズとなって「倍力階級章」を埋め込まれたことを内心快く思ってない。出世株だったスウェイナに対抗意識を持っていたが、直接対決において敗北を喫して以来、彼女のことを認めるようになる。 のちに、新造戦艦の艦長に就任したスウェイナを補佐するため、副艦長となる。
アッジャニー教官 (あっじゃにーきょうかん)
スウェイナやリリフィーネの教官を務めていた女性。「人類域の門番」に所属する軍人。決しておごらず、教習生に対してまっすぐ真摯に接する。訓練において優れた才覚を示したスウェイナのことを高く評価していた。
アシニス・イルグ (あしにすいるぐ)
ザイシオン連合王国の元騎士で、犬のような顔立ちの種族の男性。元は惑星オズリオンの王女であるスクセラ・リオン・オズリオンに仕えていたが、スクセラ王女の旅行中にザイシオン戦争が始まったため、本国へ帰れなくなっていた。病気を患っていたスクセラ王女が終の棲家に選んだ惑星ロクスティレンで、墓標代わりの船をスクセラ王女が亡き後も守護している。
ジーズニ
かつて「人類域の門番」に所属していた、最高峰のアンドロイド技師の男性。世界でも五指に入るほどの技術者だが、「思索者」のファラスによって軍でのあらゆるアンドロイド研究が凍結されてしまったために職を失った。失職後は工業惑星アルディニンでしがない技師として生計を立てている。根っからの技術者で、興味深いことがあればたとえ「人類域の門番」に逆らうこととなろうと挑戦する気概の持ち主。
リグジーブ・バノン (りぐじーぶばのん)
監獄惑星アルデウズに囚われていた海賊の壮年男性。厳つく角張った顔立ちをしており、筋骨逞しい巨漢。優男然としているルニアーブ・リオラクシムとは似つかないが、ルニアーブのおじにあたる親類。「巨艦殺し」の異名を持ち、凄腕の海賊としてその名を知られている。
ファラス
「人類域の門番」を統括し、支配している存在。少年のような外見をしている。ありとあらゆる知識を掌握しており、人類域内で起こっている事象のすべてを把握しているかのような素振りを見せることすらある。「人類域の門番」の秩序を脅かす者には一切の容赦がなく、時に部下ですら冷酷に処罰する。ピコピコのことを「人類域の門番」を脅かすものとして付け狙っており、破壊するためにあらゆる手段を講じ、リーシャ・リオン・イルファージトらへと刺客を差し向ける。
ラゲラシャー
思索者ファラスに付き従う「人類域の門番」の軍人。男性で、顔以外の全身をまとう長いローブを着用しており、頭ははげ上がっている。ファラスの意向に常に従い、些末事の処理などを行いサポートしている。一方で、彼の「思索者」としての深い知識や権力に強い興味を示し、隠しきれない欲を覗かせることもある。
グロクシス
思索者ファラスの命により、ピコピコの破壊を命じられている人物。「人類域の門番」に所属する高位騎士の中でも、「剣聖」と呼ばれる突出した能力を持つ存在である。のちにリーシャ・リオン・イルファージトがピコピコを連れて逃げ出したため、彼らを追いかけて幾度となく戦闘を繰り広げる。優れた作戦立案能力と圧倒的な戦闘能力を誇る。
エノンヴァール
グロクシスに付き従う女性。「人類域の門番」に所属する軍人で、思索者ファラスの命により、リーシャ・リオン・イルファージトと、彼とともに行動しているピコピコの消滅を目的に活動している。宇宙空間に飛び出し、単独で海賊戦斗艇を強襲するなど、卓越した戦闘技能を有している。人間らしい瞳や鼻が存在しておらず、代わりに顔の中心に大きな十字が刻まれている。
ウォディック
ザイシオン連合王国出身のオーダーズの青年で、スウェイナの実の兄。厳つい顔と体格をしている。父親はザイシオン連合王国の軍の高官だったが、ザイシオン戦争が勃発すると早期に連合王国を見限り「人類域の門番」へと寝返った過去がある。そのため、リーシャ・リオン・イルファージトに対して負い目を感じており、その反動から逆恨みに近い形できつく当たっていた。 また、そうした背景から強迫観念的な出世欲に囚われており、ことあるごとに功を焦っている。自身よりも優秀な成績を残し、出世していく妹に対して僻みを感じている。
パーモ
ウォディックと常に行動をともにしているオーダーズの青年。功を焦って暴走しがちなウォディックを宥めたりと、サポートに回ることが多い。淡々としており、感情を顔に出すことはあまりない。一方で、ウォディックと同様に出世欲を覗かせる場面もあり、海賊として有名になったリーシャ・リオン・イルファージトや艦長まで上り詰めたスウェイナと自身の現状を比べ、不安を抱いている。
イクセーニス
複合衛星都市ファジマールの総督。非常に眉目の整った男性で、ウェーブのかかった金色の長髪をしている。そのため、市民の中でも特に女性たちに人気があり、会見の際には黄色い歓声が上がるほど。普段は好青年を装っているが、その実、高圧的な人格の持ち主。「人類域の守護者」からピコピコを探し出して秘密裏に処分するという役目を与えられているが、そのために辺境である複合衛星都市ファジマールに送られたことを快く思っていない。 風呂好きで、アヒルを模したかぶり物をかぶって風呂で遊ぶことを癒やしとする屈折した趣味を隠し持っている。
チョウザーン
惑星ティルクシーの兵器研究開発製造区バズドームに存在する、兵器工場の工場長を務めている男性。筋骨隆々の逞しい肉体と厳つい外見の持ち主で、右腕が巨大な機械腕となっている。工場のことを非常に大切に思っており、製造ラインが完璧に美しく保たれていなければ我慢ならない神経質な一面を持つ。かつては中央の兵器研究所で兵器開発をしていたが、隠れて兵器を試しまくった結果事故を起こして左遷させられており、中央へと舞い戻ることを夢見ている。 兵器研究者としては非常に優れており、新たに開発したH・Sと外部ユニットは人類域警察機構の戦斗艇を圧倒していた。
モドナック
チョウザーンの弟で、惑星ティルクシーで兵器研究開発製造区バズドームの副工場長を務めている。顔の中央を横一文字に通るプレートのようなものを装着した独特の外見をしており、瞳もレンズのように真円。また、鼻や口にあたる部分には「人」という字のような青い溝が走っている。兄に比べて気弱な性格をしており、主に彼のサポート役を担う。
本部長 (ほんぶちょう)
惑星ティルクシーにおける人類域警察機構の地上本部にて、本部長を務めている初老の男性。普段はどこかひょうきんで気楽な性格をしている。「人類域の門番」の圧倒的な力に屈する前の人類域警察機構を知る人物で、現在とかつてのギャップに忸怩(じくじ)たる想いを抱いている。
イグザ・オルグリアッジ (いぐざおるぐりあっじ)
「人類域の門番」の男性軍人。オーダーズの一部隊を率いる指揮官を務めている。根っからの軍人気質で、「人類域の門番」に対して忠誠を誓っており、また、一兵卒としての分をわきまえている。そのため、上層部の意図がどうであれ命令には忠実であり、実行に移すにあたって市民の犠牲などをいとわない。その一方で軍人として優秀な素質を備えている人間を見かけた場合、敵であろうと軍へスカウトするという性癖がある。 ラゲラシャーの命令を受け、ピコピコのことを狙っていた。
フォリオノーラ・クラリーレン (ふぉりおのーらくらりーれん)
「人類域の門番」に所属する高位騎士。実直で任務に対して真面目な女性。「人類域の門番」の方針を決める絶対的存在である思索者ファラスの考えと命令に信頼を置いている。その一方で、ファラスの命令によって研究の全面的な凍結が行われたアンドロイドに対して愛情を抱いており、コリフィナという戦闘用アンドロイドを付き従えている。 蛇腹剣のような形状の特殊な剣から攻性重力ビームを発射して相手を拘束、切断する「重力縛鎖」。そして、対象の内部に攻性重力ビームの針を突き刺し、内部で炸裂させる「重力撃針」という2つの必殺技を持っている。
コリフィナ
フォリオノーラ・クラリーレンに付き従う戦闘用アンドロイドの少女。軍人としては、準騎士という扱いになっている。無表情ながら、内実、好奇心の強い性格をしており、任務で赴いた土地の名物などを気にする一面を見せる。体内に超小型の反応炉が搭載されており、供給するエネルギーによって理論上数千年は無補給で活動できる。
ポデマス
工業惑星アルディニンに存在するジャンク鉱山の6割を専有する「ポデマス商会」の会長。小柄でずんぐりと太った体格の男性で、卵のような形の、空中を浮遊する椅子に乗って移動している。廃船に紛れ込ませて取引の禁止された宇宙生物を密輸するなど、陰で汚いことを行っている。
ギッザボロー
惑星ストリオの惑星将を務めていた男性。リーシャ・リオン・イルファージトを追跡するためグロクシスのもとに編成された艦隊の、新造戦艦建造の任を負っていた。全星を挙げての作業を行っていたが、工員に暴動を起こされ、紛れ込んでいた海賊によって命を狙われることとなる。その後、建造中の新造戦艦を置き去りにして逃げ出したため、処罰を受ける。
ピコピコ
リーシャ・リオン・イルファージトらがダストシュートの終点である集積エリアで出会った存在。軍用のバッテリーユニットだが、AIや簡易な腕が搭載されていたり、自力での歩行が可能だったりと多機能。逆三角形の形に、3つの穴が開いた側が顔となっている。同じく、集積エリアに廃棄されていた海賊の戦斗艇に搭載されていた。ピコピコと音を発するため、リーシャによって「ピコピコ」と名付けられた。 軍用AI用の可聴域低速通信用プロトコルで会話しているため、その知識がない者には何をしゃべっているのか理解ができない。
イザベラ・ザイシオン (いざべらざいしおん)
人類域標準暦249年頃に存在したとされる女性社会科学者。人類を未来へ導くための実験である「千年実験」を提唱し、実行した2人の女性社会科学者のうちの1人。ウェーブのかかった長い黒髪の女性で、メガネをかけた知的な容姿をしている。かつて「王国理論」という理論を編み出し、提唱していた。新たな王家を誕生させ、人類域の半分を千年間統治させ、その経過を観測して未来へ繋げるという遠大な計画を立案し実行に移した。 精子バンクから選び出した精子を使って、のちに人類の半分を支配した王国である「ザイシオン連合王国」の「最初の王」を作り出した。
ゼニア・スペトラーナ・エムエル (ぜにあすぺとらーなえむえる)
人類域標準暦249年頃に存在したとされる女性社会科学者。人類を未来へ導くための実験である「千年実験」を提唱し、開始した2人の女性社会科学者のうちの1人。色素の薄い長い髪と睫を持つ。イザベラ・ザイシオンの「王国理論」に対して「機械知性理論」に基づく遠大な千年実験を行った。自己を再構築し続ける機械知性群が人類を統治した場合の経過を観測することを目的に、「ゼニア・スペトラーナ・エムエル博士の計画に基づく千年実験自律会議体」が作られ、自律会議体によって人類の半分が統治されることとなる。
ストグラ・アコル・アタタクスヴァール (すとぐらあこるあたたくすゔぁーる)
「海賊ストグラ」と呼ばれ恐れられていた人物で、銃の名手として知られた伝説の海賊。ザイシオン戦争において生死不明となった。アノトガスター級中型戦斗艇を操船し、「人類域の門番」の艦隊を幾つも壊滅させたという実績を持つ。その勇名は各地に轟いており、海賊見習いであるルニアーブ・リオラクシムもその名を騙っていた。
スクセラ・リオン・オズリオン (すくせらりおんおずりおん)
ザイシオン連合王国に連なる王族の1人で、惑星オズリオンの王女を務めていた女性。リーシャ・リオン・イルファージトのいとこにあたり、互いに何度か会ったこともある。旅行中にザイシオン戦争が勃発し、本国へ帰れなくなった。病を患っており、医薬品を満足に手に入れられなくなったため、終の棲家として惑星ロクスティレンを選んで降り立ち、その後に他界した。 ロクスティレンはスクセラ・リオン・オズリオンが生まれた年にテラフォーミングが始められた惑星で、完了次第、スクセラ王女の所領となる予定だった。
集団・組織
人類域の門番 (じんるいいきのもんばん)
星間軍事連合体。人類域の完全支配を目的とした存在であり、人類域に存在していた大小の支配体制をすべて滅亡させた。人類域に存在するすべてのゲートを支配下に置いており、新たなゲートを開削することを固く禁じている。思索者ファラスと呼ばれる存在によって統括されているが、その強引な支配に対して不満を抱えている者も多い。 「倍力階級章」という特殊な紋章を与えられた「オーダーズ」という軍人が存在している。
オーダーズ
「人類域の門番」が保持している軍人たちの総称。「倍力階級章」という紋章が額に刻まれており、紋章の力によって筋力などが普通の人間よりも強化されている。反面、「倍力階級章」は「人類域の門番」に対して反抗しないようにという監視装置の役割も果たしており、明確な反逆意志を示した場合には紋章を剥奪されるのみならず、その存在自体を抹消されることもある。
人類域警察機構 (じんるいいきけいさつきこう)
「人類域の門番」が支配下に置いている地域の公安維持を任務とする警察組織。アルヴェラが所属している。「公務執行ポイント」というポイント制度があり、禁止薬物の取引を検挙するなど、業績に応じてポイントを得られる。貯めたポイントは、別の部署への転属願いなどをする際に使用することができる。
ミオモル人 (みおもるじん)
鼠のような外見をした人類の一種族。ミオモル人のギャングが宇宙都市グリオヴァニスに襲撃を仕掛けて、重アノジウム天体から精製されたアノジウムを強奪しており、住民を困らせていた。ネズミの顔のような形をした独特の戦斗艇を使用している。
ヒドロコ人 (ひどろこじん)
カピバラのような外見をした人類の一種族。惑星開拓に適した頑強な肉体を持ち、頭身の低いずんぐりとした外見には似つかない器用さを持っている。食文化が人間とは大きく異なっており、ウチュウカマドウマなど食用の虫を主食としている。
場所
人類域 (あいおーん)
宇宙の広大な空間の内、人類が活動域としている範囲。ゲートが開発されて以来、星系間の行き来が可能となったことでその範囲は爆発的に拡大を続けていた。人類域内にはさまざまな支配体制や国家が存在していたが、現在では「人類域の門番」によってすべてが制圧、管理されており、ゲートの新たな開削も禁止されている。
複合衛星都市ファジマール (ふくごうえいせいとしふぁじまーる)
ザイシオン星系の一都市。リーシャ・リオン・イルファージトをはじめとしたザイシオン連合王国出身の人間が多く生活している。都市内には温泉街イウラクスグールがあって、その温泉を通すための配管が地下に張り巡らされている。中心には反応炉が存在しており、発生したゴミなどの廃棄物をエネルギーに変換している。
温泉街イウラクスグール (おんせんがいいうらくすぐーる)
複合衛星都市ファジマールに存在する温泉街。リーシャ・リオン・イルファージトが配管工として働きながら生活している。温水配管区域にはチューブワームというミミズのような生物が棲んでおり、放っておくと巨大化して人を襲うこともある。そのため、チューブワームの駆除がリーシャたち配管工の主な仕事となっている。
ザイシオン連合王国 (ざいしおんれんごうおうこく)
かつて存在していた連合王国。リーシャ・リオン・イルファージトはザイシオン連合王国の王家に連なる人物で、王位継承権5位の王子だった過去を持つ。6年前に終結したザイシオン戦争に敗北し、滅亡した。現在では「人類域の門番」によって支配下に置かれており、王都のあった宙域には残骸が広がっている。「イザベラ・ザイシオン博士の計画に基づく千年実験連合王国」という風変わりな正式名称を持つ。 リーシャの他、スウェイナやウォディックの出身地でもある。
ザイシオン
かつて存在していたザイシオン連合王国の主星。リーシャ・リオン・イルファージトの故郷だが、ザイシオン戦争の結果、現在では宙域にかつての残骸がデブリとして散らばるのみとなり、惑星の痕跡は跡形もなく消滅している。
ティアリー=ヴァーディズ門 (てぃありーゔぁーでぃずげーと)
ザイシオン星系とミュクスティレン星系を結ぶゲートの名称。複合衛星都市ファジマールと惑星ティルクシーの近くに位置している。複合衛星都市ファジマールから海賊の戦斗艇を使って脱出したリーシャ・リオン・イルファージトたちが逃走の際に利用した。
惑星ティルクシー (わくせいてぃるくしー)
ミュクスティレン星系に位置する惑星で、「海賊の星」とも呼ばれる。ゲート「ティアリー=ヴァーディズ門」の近くに存在している。「人類域の門番」によって兵器工場都市を建設し、元海賊たちを労働力として兵器の開発、製造を行っている。
兵器研究開発製造区バズドーム (へいきけんきゅうかいはつせいぞうくばずどーむ)
惑星ティルクシーに存在する兵器工場都市の一画。かつて中央の兵器研究所で働いていた兵器開発者のチョウザーンが工場長を務めている。最新式のオーダーズ専用H・Sを製造しており、また、H・Sに装備するための大火力高機動ユニットをはじめとする新兵器開発も行っている。
監獄惑星アルデウズ (かんごくわくせいあるでうず)
惑星の表面が絶対防衛システムと呼ばれるバリアーに覆われた惑星。監獄として利用されており、ザイシオン戦争後に捕らえられた有名な海賊たちが絶対防衛システム内に閉じ込められている。周辺宙域には惑星を取り囲む形でS・Dに反応する機雷が隙間なく設置されており、防波堤の役割を果たしている。
ウズペルゼル
「人類域の門番」の主星。高度な文明を有し、高層建築物が惑星の表面を覆っている。星都テュルスグリアイムには思索者ファラスが存在しており、「人類域の門番」に対してこの星からありとあらゆる場所へ指示を飛ばしている。
ユニアヴァニス宙域 (いにあゔぁにすちゅういき)
惑星ティルクシーを離脱し、監獄惑星アルデウズを目指していたリーシャ・リオン・イルファージトたちが通過していた宙域。グロクシスの船と遭遇し、激しい戦闘となった。基本的に何もない空間だが、宇宙ゴミが散逸している。
第2ミュクスティレン (だいにみゅくすてぃれん)
ミュクスティレン星系に作り出された、比較的新しい重アノジウム天体のこと。巨大なクリスタルのような形状をしている。ミュクスティレン星系繁栄の礎となった第1ミュクスティレンが、採掘され切った結果鉄の塊となったために、超次元領域から新たに発掘された。周囲には、元は第1ミュクスティレンを利用していたプラントや商業ユニットが集結し、工業都市であるテュエドニア=ミュルストを形成している。
テュエドニア=ミュルスト (てゅえどにあみゅるすと)
第2ミュクスティレン周辺に形成されているアノジウム精製工業都市。かつて存在していた重アノジウム天体である第1ミュクスティレンが採掘で削り尽くされたため、新たに発掘された第2ミュクスティレン周辺にプラントや商業ユニットが集まった結果、工業都市を形作ったという経緯がある。現在、ファグラ・テプクという軽アノジウム類を好んで食べる巨大宇宙生物の被害に悩まされている。
周遊交易都市ユニアヴァニス (しゅうゆうこうえきとしゆにあゔぁにす)
ミュクスティレン星系の一都市。「人類域の門番」によってゲート開削機能を封印された巨大なゲート開削船を転用して作られた都市で、ゲートの近くに位置している。そのため、「人類域の門番」の軍人がこの都市を利用することも多い。
宇宙都市グリオヴァニス (うちゅうとしぐりおゔぁにす)
巨大な猫の顔のような形をした宇宙都市。猫が人になったような種族が暮らしている。元々は、重アノジウム天体を指す名前だったが、現在では宇宙都市も含めてその名で呼ばれるようになった。かつてはいくつもの商業衛星が並ぶ大観光地だったが、現在では見る影もないほどに廃れている。住人たちは縮小した重アノジウム天体からの供給や、その輸出で生計を立てているが、ミオモル人のギャングに襲撃されており、生活が脅かされている。
惑星ロクスティレン (わくせいろくすてぃれん)
海賊戦斗艇を損傷し、空調システムに異常をきたしたリーシャ・リオン・イルファージトたちが一時的に着陸した惑星。カピバラのような外見のヒドロコ人が主に住んでいる。テラフォーミングを行っている最中で、テラフォーミング用の工作機械を除いてほとんど人工物が存在していない。丘の上には風化した船がシンボルのように残されている。
ドゥイーグノルフ宇宙港 (どぅいーぐのるふうちゅうこう)
惑星ロクスティレンに存在する宇宙港。名目上首都の近郊にあるということになっているが、テラフォーミング用の工作機械を除いて周辺は一面の原っぱで、宇宙港とは名ばかり。オーダーズのH・Sを襲うほど大きな虫が生息している。
工業惑星アルディニン (こうぎょうわくせいあるでぃにん)
ジャンクの山ばかりの星。巨大なジャンク鉱山が存在しており、その6割をボデマス商会が専有している。そのため、金銭的に裕福な住人は少ない。アンドロイド技師をはじめとした、職にあぶれた技術者が多く居住している。名物は「ウチュウクルマエビの断末魔焼き」。
惑星ストリオ (わくせいすとりお)
リーシャ・リオン・イルファージトを追跡するためグロクシスのもとに編成された艦隊の、新造戦艦が建造されていた惑星。建造のために全星を挙げての作業が行われていたが、工員たちによる暴動が発生する。
イベント・出来事
ザイシオン戦争 (ざいしおんせんそう)
人類域標準暦995年に終結した「人類域の門番」と「ザイシオン連合王国」の間で行われた宇宙戦争。この戦争の終結を機に、人類域に存在するゲートのすべてが星間軍事連合体である「人類域の門番」の支配下に置かれることとなった。また、敗北したザイシオン連合王国は主星を失い、滅びる結果となった。
その他キーワード
S・D
多様な目的に使用される短距離ワープ。巨大な戦艦の移動や戦闘時の回避行動のみならず、S・D技術を転用した兵器などその利用方法は幅広い。戦艦などが使用した場合は、A・Pエンジンがエネルギーを回復して再起動するまで、一切の移動が行えなくなるというデメリットがある。
戦術S・D (せんじゅつしょーとどらいぶ)
戦艦などが戦術目的で行うS・Dを利用した攻撃方法のこと。S・Dによるワープ空間から通常空間へと復帰する際、周囲に放射される極大のA・Pを利用して攻撃を行う。戦斗艇サイズのものが発動すれば、素粒子を1つも残さず周囲のものを消滅させるほどの威力を発揮する。通常のS・Dと同様にA・Pエンジンが再起動するまで身動きが取れなくなるため、ハイリスクハイリターンな攻撃手段となっている。
零距離S・D (ぜろきょりしょーとどらいぶ)
戦術S・Dに対抗するための戦術的なS・Dの使用方法。戦術S・Dによって放射された極大のA・Pに対して、座標移動を行わないその場でのS・Dを行って、即座にA・Pを発生させてA・P同士で相殺することを目的としている。相手の戦術S・Dに対して咄嗟の判断で行わなければならないため、難易度が高い。
ザイシオン無次元流体術 (ざいしおんむじげんりゅうたいじゅつ)
ザイシオン連合王国の王族とその指南役にだけ伝承されるといわれる武術。リーシャ・リオン・イルファージトが修めている。代表的な技として、相手の腕に飛びつき全身を使って腕と首を極める「メビウスの輪」という技がある。
ゲート
人類が宇宙へ大々的に進出する鍵となった、別の星系へと繋がる宇宙空間へ開けられた門。ゲート開削船という巨大な宇宙船によって、宇宙空間を開削することで新たなゲートを作ることができる。ゲートの先には通常とは異なる空間が広がっており、ゲートが崩壊すると、有害で危険な粒子を宙域にまき散らすゲート崩壊風という現象が発生する。 内部はアノジウムと呼ばれる物質で満ちている。
ゲート開削船 (げーとかいさくせん)
ゲートを切り拓くために作り出された巨大な宇宙船。先端にはゲートを開削するための開削装置が備え付けられている。細長い筒状の形をしており、人工物としては他に類を見ない大きさを誇る。「人類域の門番」によって新たなゲートの開削が禁止されたため、現在はゲート開削船もその役割を失い、大半が廃棄されたか、都市として利用されている。
ゲート崩壊風 (げーとほうかいふう)
崩壊したゲートから危険な粒子が放出される現象。宇宙空間に漏れ出た粒子が風でたなびいているように見える。大きな被害を伴うため、ゲートの崩壊を修復したり、新しい経路を開削する場合にはゲート崩壊風から宙域を護るための防壁を展開する必要がある。
千年実験 (せんねんじっけん)
人類域標準暦249年に、イザベラ・ザイシオン博士とゼニア・スペトラーナ・エムエル博士という2人の女性社会科学者によってそれぞれ計画、開始された実験のこと。「人類種の爆発」の時代を経て、既存の政治体制や、あらゆる思想、価値観、社会科学が力を失う新たな時代を向かえた人類を未来へと導くことを目的としている。 イザベラによって開始された実験は、新たな「王家」を誕生させ、人類域の半分を千年の間統治させ、その経過を観測することで未来への手がかりを見つけ出すというもの。精子バンクから選び出した精子を使用してイザベラが自ら生み出した1人の男の子を最初の王として、「イザベラ・ザイシオン博士の計画に基づく千年実験連合王国」、通称「ザイシオン連合王国」が誕生。 当初はままごとと区別もつかないほどの小国だったが、やがて本当に人類の半分を支配する王国へと発展を遂げた。だが、人類域標準暦995年に終結したザイシオン戦争に敗れ、滅ぶこととなる。一方のゼニアは「機械知性論」という考えをもとに、自己を再構築する機械知性群による人類の統治を1000年行うことで、未来への手がかりを見つけ出すという計画を始動し、「ゼニア・スペトラーナ・エムエル博士の計画に基づく千年実験自律会議体」を作り上げた。 この「自律会議体」は、のちに「人類域の門番」が組織されるきっかけを作ることとなる。
分解炉 (ぶんかいろ)
ザイシオン戦争で発生したさまざまな残骸などを分解し、エネルギーとする炉。複合衛星都市ファジマールの中心には巨大な分解炉が存在しており、発生したエネルギーを生活へと役立てている。
倍力階級章
「人類域の門番」が特定の兵士に与える階級章のこと。与えられると、筋力や反射能力が向上する効果がある。その一方で、反逆防止機構が組み込まれており、一種の監視装置としても作用している。倍力階級章を与えられた兵士のことを特に「オーダーズ」と呼ぶ。
H・S
「人類域の門番」が使用している兵器の一種。人が搭乗することのできる大きなパワードスーツで、宇宙空間をはじめ、大気圏内やゲート空間内での活動も可能とする。各種のさまざまなユニットを装着することによって、あらゆる状況に対応ができる。なかでも「HS-985A」という機体はオーダーズ専用の最新鋭機である。
アノジウム
さまざまな技術に使用されているエネルギー物質。ゲートを構成を構成する大きな要素の1つで、ゲート内部には膨大な量のアノジウムが存在している。コンピューターとして使える「チューリング完全」と呼ばれる性質を持っている。
A・P
超安定性多次元高エネルギー物質であるアノジウムを利用したエネルギー現象。A・Pエンジンなど、さまざまな用途に使われている。使い方によっては絶大な威力を生じ、戦斗艇などがS・Dをすると周囲に極大A・P放射が起こり、これに巻き込まれた物質は素粒子1つ残さずに消滅してしまう。
A・Pエンジン
戦艦や戦斗艇に使用される、A・Pの効果を利用したエンジン。エネルギーとしてアノジウムジェルと呼ばれる、超安定性多次元高エネルギー物質を加工したジェルを使用している。S・Dを使用すると大量のA・Pを周囲に放出し停止してしまうため、再起動までに時間がかかるという欠点がある。
重アノジウム天体 (じゅうあのじうむてんたい)
超次元領域から掘り出された人工の天体で、巨大なクリスタルのような形をしている。超安定性多次元高エネルギー物質の塊であり、接続された各種プラントユニットによって削り取られ、精製・加工されることによりさまざまな用途に利用されている。
フライングモール
惑星開拓用の有人工作機械の一種。大きな箱の下部に簡易な2本の作業用アームを取り付けられた形状で、宙を飛ぶことも可能。惑星開拓用ということもあり、基本的に武装は施されていないが、強力な運河開削用の岩砕ビームが搭載されているため、それを利用して攻撃することは可能。
チューブワーム
温泉街イウラクスグールの温水配管区域に棲息している、大きなミミズのような生物。放っておくと巨大化し人を襲うため、街の配管工によって日常的に駆除されている。駆除に成功すると配管工たちの給料にボーナスがつく。
ダストモンスター
分解炉へと続くダストシュート内の異物やゴミを粉砕し回収するための自動機械。チューブワームに似た巨大な筒状の機械で、口にあたる先端部には4本のアームが備え付けられている。平時であれば人を識別して襲わない設定になっている。さまざまな型式が存在しているが、作中に登場したのは「IHPMI-DM333PH ダストモンスター333PH型」と呼ばれるもの。
ファグラ・テプク (ふぁぐらてぷく)
ミュクスティレン星系に存在している巨大な宇宙生物。重アノジウム天体から精製された軽アノジウム類を好んで食べるという性質がある。採掘され尽くした第1ミュクスティレンの跡地で残りかすを食べて生きていたが、食べ尽くしてしまったため、第2ミュクスティレンへと移動してきている。
ウグズブッツ
ずんぐりとした体型の宇宙生物。H・Sですら軽くひねり潰すほど巨大で強い力を備えた腕を持っている。非常に凶暴な性格で人を襲うため、人類域検疫法で星間移動が禁止されている。
海賊戦斗艇 (かいぞくせんとうてい)
リーシャ・リオン・イルファージトらが、複合衛星都市ファジマールのダストシュートの終点、集積エリアで見つけた戦斗艇。エーノクが身分証明札を偽装し、公的にはファジマール船籍の海賊戦斗艇を回収した宇宙生物調査船「アグリーダックリング号」ということになっている。広義には文字通り、かつて多く存在した海賊たちが使用していた戦斗艇のことを指す。
A・P・G
H・S用の対戦斗艇兵器。星間巡洋艦並みの装甲がなければ防ぐことのできない、高火力を誇る兵器。大口径の粒子を放つ銃火器で、着弾した箇所には水しぶきのようにエネルギーが飛び散る。チョウザーンは右腕の義手と交換して使用していた。
外付け航法覚器
「宇宙航法覚野」と呼ばれる感覚野を脳に持たない旧型人類のために開発された補助装置。リーシャ・リオン・イルファージトなどが装着しており、細長い耳のような形をしている。「宇宙航法覚野」を持たない人間は、この装置がなければ宇宙船を正常に操舵できない。
宇宙海賊カード (うちゅうかいぞくかーど)
惑星ティルクシーにいる元海賊たちの間で現在も取引されているトレーディングカード。もとは海賊たちが子供の頃にミュクスティレン星系で流行したスナック菓子のおまけ。カードには、実在の宇宙海賊たちの写真が使用されている。「人類域の門番」の軍人に見つかると没収されてしまうため、元海賊たちの間で秘密裏に交換会が開かれている。