あらすじ
第1巻
ある日突然、眠りから目覚めることができなくなった女の子のスズメは、「ルテティア」という「さめない街」に迷い込み、小さな喫茶店キャトルで働いている。店主のハクロが作るコーヒーはおいしいものの、お客さんはめったに来ない。一方のスズメは、自分が夢の世界にいることを認識しており、元の世界にはまったく未練はなかった。そんなことを考えながらドーナツを揚げていると、ハクロがやって来てドーナツをつまみ食いする。日も落ち、今日もお客さんが一人も来なかったことに落ち込むスズメだったが、そこへ常連客である巨大なネコが来店するのだった。(第1話。ほか、19エピソード収録)
第2巻
さめない街「ルテティア」の住人のハクロは、時折ルテティアにやって来るスズメのことを長いあいだ見守ってきた。スズメはよく涙と共にこの街にやって来ては、ハクロと2~3日過ごすと元気を取り戻し、いつの間にか姿を消す。次に姿を現した際、この街を覚えているときもあれば、初めて来た時のような反応をすることもあったが、不思議と街とハクロのことを恐れることはなかった。ある時、ハクロはスズメからこの街が夢であることを聞かされ、自分の役割を知る。ハクロは幼い頃のスズメの記憶を思い出しつつ、今日もスズメのことを優しく見守る。(第21話。ほか、19エピソード収録)
登場人物・キャラクター
スズメ
夢の世界「ルテティア」の小さな喫茶店キャトルで働く女の子。アパートのベッドで眠りにつき、そのまま目覚めることができずに、キャトルの屋根裏に住んでいる。自分が夢の世界にいることは認識しているが、ルテティアの居心地がいいこともあり、特に気にしていない。お菓子作りが趣味で、喫茶店以外でもおいしい喫茶メニューを作っている。
ハクロ
喫茶店キャトルのマスターを務める長身の男性。店ではおいしいコーヒーを淹れている。丸眼鏡を掛け、ベレー帽をかぶっている。店の2階に自分の部屋があり、そこで夜遅くまで絵を描いている。実はスズメが小さい頃から、時折現れる彼女と出会っており、温かく見守っていた。
ひな
スズメの妹。一人暮らしをしているスズメとは違い、実家に住んでいる。姉妹の仲はよく、小さい頃から姉にねだってドーナツを作ってもらっていた。
メンタ
喫茶店キャトルの常連客で、ルテティアの2区で飲食店を営んでいる女性。スズメとはすぐになかよくなり、自分の店でスズメに料理を教えてあげることもある。お酒が好き。
エルド
ジト目の若い男性で、いい匂いに釣られて喫茶店キャトルへやって来た。スズメの作るスイーツとハクロの淹れるコーヒーに魅了されて、常連客となる。マーニ、ソールという双子の妹がいる。
マーニ
スズメがルテティアの5区で出会った双子の魔法使いの少女。甘いものが大好きで、甘い香りがするスズメに飛びついてきた。ソールと顔はそっくりだが、ツインテールの髪型が少し異なり、マーニは直毛。
ソール
スズメがルテティアの5区で出会った双子の魔法使いの少女。甘いものが大好きでおやつが食べたいと泣き出し、スズメにさつまいもを使ったスイーツを作ってもらい、なかよくなった。マーニと顔はそっくりだが、ツインテールの髪型が少し異なり、ソールは髪をカールしている。
ジア
ルテティアの3区でパンと本の店を営む若い男性。祖父から本屋を受け継いだが、客が来ないのでヒマつぶしにパンを焼いている。そのパンを使った料理も作っており、ハクロに頼まれてパンを買いに来たスズメが、あまりのおいしさにパンを買うのを忘れて帰ってしまったほど。喫茶店キャトルへ客としてもやって来る。
本好きの女性 (ほんずきのじょせい)
スズメが公園で偶然出会った風変わりな女性。名前は不明。スズメが飲んでいたコーヒーの香りに誘われて、草むらから出てきた。オートミールは嫌いだったが、スズメが作ったキャラメルのオートミールのおいしさで考えを改める。ジアの本屋のお得意さんとなり、大量の本を購入している。読書家でアイデア出しに苦しんでいる様子から、作家と思われる。
場所
ルテティア
眠りから目覚めることができなくなったスズメが滞在する「さめない街」。全部で12区あり、飲み屋が多い2区、若者でにぎわう3区、魔法使いが多くいるとされる5区、海辺で爽やかな8区、変わり者のアーティストが多い11区と、区ごとに特徴がある。スズメが働く喫茶店キャトルは4区、メンタが経営する飲食店は2区にある。1週間に一度はほとんどのお店が閉まる日があり、その日は街の各所で市が開かれ、食品を中心とした乳製品や魚介、採れたての果物などが売られている。現実の世界と異なる点は、動物たちの大きさが違っていたり、魔女がいたり、街の住人が夢を見ないこと。基本的な生活は現実の世界といっしょで、人々が優しいことから居心地がいい。